なして?気分は下向き


●くたびれもうけのルアー釣り●


この一年間一日たりとも忘れたことの無い

恋人のような島、南大東。

なのに今回は何やら気乗りしない。

ぶん史上最大の乗りの悪さである。

 

無理矢理完成させた手作りポッパーを携えて

雨模様をよそにあっという間の到着。

心配していたプロペラ機の欠航は

この半年は新型機になって全然心配無し

なんてことは後になって分かったことだ。

 

ムシムシするけど涼しくて、お迎えの車には

宿のキックボクサー館長と名古屋から来た公務員

通称「タダの観光客」が暇つぶしに同乗してい

どうも、雨模様に行くところがないらしいのである。

 

着いたその日の夕食後、普通ならゆっくりするところ。

しかし、タダの観光客を連れて夜の亀池港へ。

暗闇の中がどうも苦手らしく

「真っ暗ですよね、本当に暗いですよね」

などと、大東島の夜のお散歩が刺激的らしい。

  

結局シケ気味の港ではオチオチ竿も振れず

ライントラブルで貴重なミノーを失って

あえなく撤収。

 

どうも本当に独りで動き回れる人間ってのは

それなりに孤独を苦々しく思いつつも

愛しつづけた寂しい人間らしいが

孤独以上に恐れるものが無い状態のようだ。

この「タダの観光客」ことKは

孤独を愛さ無くてすむ幸せた人であろう。

  

最初の朝はゆっくりと起きてたっぷり朝食

ここでは一日二食の生活を基本にしてい、

めし三膳を食べておかないと1日もたない。

一日中時間に縛られずに過ごすために

そうするわけ。

それに、一際夕食が美味いのだ。

 

バイクを借りて北港へ。

日中でも釣れるところで、

お気に入りのジギングポイントだから。

最初の当たりはこのひんがーたいくちゃー

ようやく会えたいつもの顔にホット一息いれたものだった。

ひんがーとはバッチイという意味で

このお魚には失礼至極。

他にもオキアジがひんがーがーらなんてのも

あったりしてひんがーシリーズはまだまだある。

(写真は去年のものですが・・・)

形が今一つ(30センチ程度)なのにルアーを飲んだのか

合わせたとき、多分えらの奥からフックが

口にかかったようで、サイハが折れていて

リリースは不可能。

で、隣で帰ろうとするおじさんに進呈です。

「ルアーで釣るところを初めて見ました」

とヤマトグチで話してくれた。

去年あたりからこの台詞を

どこともなく聞くようになって、

ああ、ちょっとは上達したかなー?

なんて思いこんだりしている。

沖目の深めでハイスピードジギングしないと

食ってこない爽やかなやつで、地元では

とっても珍しいお魚のよう。

かご釣りにもムロアジの泳がせにも食わないので、

釣られていないお魚。

したがって地元の人も良く知らない。

それにしても、

買ってズイブン経つハオリジグで初めて釣れたのが

ぼくとしても嬉しい。

釣れないルアーは大東で使ってみるに限る!というわけだ。

 


●カマスを押しのけるヤツは● 

 

気を取り直して、家で長年寝ていた、

それはもう、いにしえより伝わる

クリスタルミノーを使うことに。

その昔テトラにぶつけたせいかヨタヨタと

とても回転しやすいので、

ゆっくりとしか引く事ができない。

「こりゃあかんわ」と思いきや、当たりが!

でも乗らない。

そこで合わせるのを止めて、何度も当たりを無視し

乗るまでひたすら平静をよそおってく事にした。

 

沖の方でルアーを引き千切ろうと体をひねる

カマスの姿が見え隠れして、とてもはがゆい。

サイズは50センチから60センチ程と

本土のよりチョット大き目。

と、足元まで来たのは

その倍はあろうかというやから、いや 「ヤガラ」であった。

「ありゃ?カマスは???」とつぶやきつつ

再びキャストすると、数度の当たりの後

竿先が引き込まれた!!!

乗った!、まるで、まるでヒラメ釣り。

ヒラメ40的に待って待って乗せたら、おお、そこそこ引く!

(ヒラメは掛かってから40秒は待てと言う)

 

甘くセットしたドラグがジリリっと出るけど

長い長いヤガラに苦笑い。

 

リバーシーバスやってると時々竹を引っかけて

水の抵抗にタダただ重い思いをしたことがあったけど、

あれに引きが加わっているわけでとても愉快。

ひとしきり弱らせて抜き上げるとまあ、

長いこと長いこと。

(しっぽの先が更に長い!この異形、バイクと比較して下さい)

で、念願のキープヤガラをゲットしたのであった。

130センチ1キロ!キロですよキロ!長物なのに。

前回に引き続き、実にあなどりがたいお魚。

(ステラ10000が大きく見えない)

ヒフキ竹を使ってるみたいだから、

ひーふちゃー

と言うのだそうである。

とりあえずもって帰り、異常にぬめりがキツイ事を知りつつ

晩飯のオカズにとリクエスト。

次は西港へ

のんびりと地元の人が釣っているけれど

当たりなし。

よく見るとウミガメが2頭泳ぎ回っていて

とても魚が寄り付ける状態ではない模様。

好奇心旺盛で頭を水面から上げて覗いている

仕草がとても可愛いのであるけれど

邪魔は邪魔に違いない。

亀が居るとどうしても釣れない、不思議とそういうものなのだ。

 

島の港は3個所、

この日は日曜日で地元優先デー

(地元の人の憩いの日曜に邪魔しないようにしてます)

亀池港は人が多いので北港へ戻るしかない。

結局、低気圧の影響で北港はうねりが港の上へ浸水し始め

港での釣りは出来ず、この日は打ち止め。

  


●北ほど魚は美味しいのか?●

 

夕食にはヤガラの煮付けが登場。

小骨は一切なくて、肋骨も癒合しており

バラバラにならずに背骨と一体化している妙な骨格。

食べやすくて良いけれど、アッサリしすぎて

あぶらが全然ないヘルシー白身ザカナだった。

濃い目のタレが良く合い、久米仙が進む。

無理矢理、タダの旅行者Kにすすめると結構食べてくれる。

素直な人でよかった。

 

それを見ていた横のテーブルのおっちゃんが

気にしているのですすめると全然その気なし。

「魚はやっぱし、北に限るわぁ」なんて

とてもヘンテコなナマリで言うので、

聞いてみると千葉は土浦の人。

カニだ、ウニだと話すけど、オメーが言ってるのは

全部温帯産だぜ!しかも魚じゃねぇ、オヤジぃ。

ろくに沖縄の魚を食わずに何ゆうちょるんかぁ!

と言いたかったけれど、この人には多分

何を言っても駄目な可哀相な人なので

黙って聞いてあげることにした。

仕事で来ていて、ちょっと幸せ過ぎる光景に

一言いいたかったのかもしれないし、

魚にはあまりお金をかけず、

実のところ庶民の味しか知らない人かもしれない。

なーむー。

(心で合掌)

 

こういう無常識な自分へのイイワケ事のような

ナイチャーの所業は沖縄では日常茶飯事。

この人は仕事でしか大東を訪れられなかった

辛い自分が悲しい言葉を言わしめたのであるけれど、

自分で沖縄に来ていながら

こういう言葉しか吐けない人もいらっしゃるわけで、

全く持って痛ましい限り。

事実を受け入れる気が無いのなら

鼻から来ない方が金の無駄も無いだろうに・・・。

 

それに、僕らはヤマトンチュだから

暮らしているその土地の魚が好みなのは当たり前なのだ。

本当にそこでしか食べられない貴重なお魚ってのは

このご時世でもそう簡単には食べられない

安くて美味いものなんてそうあるもんじゃない。

だからこそ

釣りが楽しいってことは

こんなオヤジには秘密

心の奥で、そう思うのだった。

 

ウナギの蒲焼きは確かに美味しい。

でもウナギという事を忘れ、

冷静に食べた事がある人は少ないと思う。

この泥臭みの強いお魚を、無理矢理蒲焼きにしてまで

食べなくてはならなかったのだ、

手間だけが掛かる高級魚として......

文化は味覚を超えているところが

とても大きいことを

忘れているのではないだろうか。

味は感覚を超えた文化であるのだが.......

 

既成概念しか信じない人には

とても迎えられない明日もあるって事を

ここに来て同じ内地人から学ぶとは・・・。

昭和天皇はアメフラシを

きこしめしたという。

 

ナーンテ硬い事はさて置き、

要はウカツに人の好みをケナしてはいけないのである。

 

それにしても、

やっぱりヤガラは煮付けより

カラ揚げが良さそうだ。

無理矢理ヤガラを食べてくれた「タダの観光客」Kは

明日一日しかいられないけど

晴れると良いですね、と言い、雨男も素直にそう思った。

 


第二節へ 目次へ