なにげなく大東の10日間のまえに


●これまでのテンマツ●

 
去年の3月にマイカーで鹿児島へいき、

もっと南の地へ渡れることがわかり、

奄美へいったところ、

ちょっと寒くて中途半端ということが判明。

それではと、

ちょうど一年前の黄金週間に初めてもっと南の沖縄へ。

宮古島では期待がブンブン空振りし、

意外にしけたお魚しか見られなかったものの、

初めてカスミアジを目撃!

 食欲をそそりそうな銀色の美しさとは

全く違った青い閃光に

説明不能なヒトメ惚れに陥ったのだった。

  

初めてのことばかりで、

釣り方も、道具も全て自己流そのもの。

仕掛けも貧弱で、しかもトラブル続きで

まともに釣りになりゃしない。

何しろ、長男のせいか自尊心が強く、

知りもしないのにオリジナルの仕掛け。

(竿などは投げ竿だった....)

竿からリールから糸からルアーから勘で揃えての旅立ち。

全く持って上手くいくはずがないのわけである。

 

複雑な悔しさを胸に宮古島を後にし、

しかして初めての大東では、

都会の観光客には危ないと気を遣って

どこも磯の釣り場を教えてない。

 

いつぞや、ヒラスズキ狙いのとき、

伊豆大島でバスの運ちゃんに

今日は磯は危ないから乗せられん!といって

シケの海を知ったかぶりされたうえに

乗車拒否までされた覚えがあり、

ぼくの釣りは往々にして誤解多発たらしめる。

 

確かに、危険は危険だが、船乗りと違って

海からではなく、直接磯でシケと付き合ってきたし、

シケだからといって出られないプロの漁師さんより

かえって物好きに現場で海を良く見ているところもある。

よく、竿を出せずにじっと磯でたたずんだものだ.....

 

それに、竿を出さなければ帰れないような

買ってしまった餌をもった釣り人でもないわけで

それでも島の人やその筋の人は

都会の人には主張したがる向きがあるのだった。

人生にメリハリがないから

危険が癖になっちまったんだぁぁ!

いいから、黙って連れてけ

なんて、言えやしないし。

 

もちろん相手にだって悪意はない。

でも、シケがなくては釣りにならず困り果てた。

 

さて今回は原付が力強くぼくを支えていて、

島の人が気遣って教えてくれないから

仕方なく、自分で磯を回りつつ

さっそく細仕掛けとドラグの設定ミスで

一日目にして磯でブチキラレ続出!

16ポンドテストなんてテレビでは上手い人が

巧みに大物をあげるけれど、素人では無理むり、ぜーんぜん無理。

結局最後は港をまわり、ようやく人生第一号のヒラアジ

1キロ強、カスミアジをジギングで捕らえたのだった。

嬉しさのあまり、魚がロクに写っていない。

 
たった1キロあまりだけれど、

その晩の久米仙のウマさと言ったら

お察しのとおり、例えようもない。

次から必ず、一日一匹はルアーでだまして魚を釣り上げ

夕食のオカズにしたから、宿の人に驚かれたもの。

 

大東島では効率の悪いルアーは、

やる人はいても釣れることはめったにない。

効率が悪くてすぐ止めてしまうのだ。

ヒラアジなんて回遊性だから、ある程度タイミングが大切。

でも、大東の人にはこらえ性がないというか、

隣で餌釣りの人たちに、たとえ小さくても釣られると、

釣れない自分がやりきれなくなって

断念してしまうらしい。

 

 したがって

この島の人は至ってルアーが上手ではなさそうであった。

でも都会から行った人はまず港で、

何気ナーク、忠告されるのは言うまでもない。

そんなの朝夕しか釣れないとか、

アジを泳がせて釣るのがここの釣りだとかね。

その上、

そんな高い道具なんて要らない

なんて大きなお世話な言葉も標準装備と見ていい。

でも、ナイチャー(本土人)には何か言いたいらしい。

とってもそれが大切で、言いたいことらしかった。

 

で、そんな優しい?言葉に祝福され、

夏休みも台風に見舞われながら渡航。

雨男から台風男へと襲名したことを自覚しつつ、

ほとんど台風で釣り不能。

一日一匹釣る男も大東まできてボーズ連発!

辛うじて竿を出せる港はあるものの、

安全に釣りが出来るほど甘くないことを

30メートルの水柱と大波を見ながら

シミジミ体感したのだった。

ところが、帰る2日前と前日に連釣し、

6キロあまりと5キロ半ばのカスミアジ、

夢のロウニンアジを釣り上げ、

宿の24人前のオカズをまかなってしまった!

島で釣れたものは、例え食べた人が気づかなくても、

島でみんなと食べるのが一番おいしいと実感した。

こうして、南大東は一日たりとも忘れがたい、

腕の悪い磯ルアー釣り師の夢をかなえる

「希望の島」だと思い込んでしまったのである。


●今回のダイジェスト●

 
仕事が忙しかったのか、

エルニーニョで雨が多かったからか、

これまで最低の年間釣行回数

けれど反動どころか、

なぜか気分が乗り切らないままに黄金週間へ突入。

自分を奮い立たせるように手作りポッパーまで作っての大東入り。

実はひそかに、狙いはもっぱらヒラアジよりも

味の良い出汁が出ると言う「たまん」「おもながー」など

白味魚を心ひそかに期待してたのであった。

 これは、伊豆大島でリリースのハマフエフキ(たまん)

ところが、着いた明くる朝からも全然うつむき加減な気分。

雨模様も手伝って釣果もあがらず、ノッケからボーズ。

去年は昼の2時の凪でも大型魚が磯から飛び出し、

とても驚かされたのに、今年は気配もない。

 

とりあえず、

最初は人生最長寸130センチのアオヤガラを釣ったものの、

調子は最悪、ヤガラとカマス以外

魚の反応はなくて気分は引き続き下向き。

しかし、宿の方たち

(どういうわけか従業員、経営者、お客のそれぞれ)

に励まされ、つづく雨模様にマイポイントの磯へ。

 

低気圧のおかげでシケ気味だったために

ふたたびとりあえず

長竿でオカズでもと竿を出したところが?

いきなり10キロ、78センチのバラフエダイが!

毒魚の代表選手だけれど、この島では毒がない!!!

ので、お持ち帰りに!

多少複雑なお持ち帰り方法であったけど。

 

その後は、
6キロ、4.5キロ、1キロ強のカスミアジと

ソコソコの釣果?で、残念ながらロウニンアジは

20キロクラスが足元をかすめただに終わってしまった。

南の島にしては貧相な釣果に終わった割に

またしてもキテレツな出来事が起こり、

とっても思い出深い旅になったのであった・・・。

 


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