やっぱり昼間は釣れないわ、母島でも


小潮まわりの今日このごろ、昼前に釣れやしないかとお気に入りの東港へ。

悠大な眺めを堪能しながらミノーを投げるけれど来るのはダツさんだけ。

掛かるんだけど上がらないダツさんが上がったのは久しぶりのこと。

途中、島に転勤してきた息子を持つオジサンがやってきて餌釣りを始める。

ゴッツイ掛け鈎の付いた見慣れない仕掛けをたずねると、どうもたこ釣り用

で、それを置竿して放っておいて、細仕掛けの2号を付けた、すごい旧式の

磯竿ともなんとも判断不能な竿で浮釣りを始めたところが、餌は取られるは

鈎まで食われるわで散々。またまた聞いてみると、どうやら20年ぶり位で

昔は、海がつれなくて、沢もやったけど、結局続かなかったらしい。

その時の年代物の意味不明仕掛けが小笠原へやってきたわけだ。

しかし、仕掛けを見る限り、これじゃ釣れないという感じなので、せめてと

持っていた12号の糸をハリスに使ってみれば?とすすめたところ

苦労して鈎を結んで釣り再開。餌もムロアジからカニにチェンジしたけれど

どうやらハギ類の猛襲にあって中身だけかすめとられている模様。

しかし、これ以上の手出しはできないので、僕はルアーを投げてると

最初で最後のカスミアジの回遊!3匹も追ってくるけど、オジサン方面に逃走

結局追いきれずに惜しい所で逃してしまった。形的には30センチオーバーと

可愛いものの、細仕掛けと柔らかい竿で掛けると、とても楽しいはずだった。

仕方なく、ヒラアジ系をあきらめて、浅瀬の根魚でもと珊瑚礁のある

防波堤の付け根方面へ行ってキャスト開始。

すると一投めからヒット!しかし、長いモノが沖合いでグルグルもがいており

またしてもダツか???ヤダなー、外すのも面倒だし.......などと思いつつ

寄せてくるにしたがってやや短い。お、これはカマサー(カマスの沖縄名)!

30センチ後半サイズ、でもまあ、釣れないよりはましなので十分に竿でため

あっけなく引き抜き。南大東以来、二月ぶりくらいのブルーのカマス。

ブルーの背に茶色いラインが二本入っていてとてもきれいなやつなので

味はさて置き、釣った時の目の保養には十分。でもカメラではとらえきれない。

で、今度こそと、一段と浅い方へキャストすると、またヒット!

お?今度はちょっとがんばるぞ、こいつ、と思ったらまたカマス。

最後までがんばるので見てみると、どうやら、群れごとついてきており

ご家族郎党みな元気にルアーを追っていた模様、しかもしつこく浅瀬まで。

家族愛に支えられていたためか、それで引きが一段と強かったみたいだった。

流石に、一族が釣られる瞬間に人影を見たせいか、その後はアタリなしとなり

また防波堤の先に戻ると、おっ???オジサンの竿が初めて曲がってる!!!

しかもカナリ重そう.........けれど、タモをしまってあるので

上げようがないらしく、まったく母島まで来て世話の焼けるオジサンである。

見ると40センチをゆうに超えるミナミイスズミが元気に走り回っており

オジサンに、慌てない様に、じっくり弱らせてくださいと断ってから

タモを組み立て、一応、タモ入れして良いかどうかを確認して体制に入る。

このタモ入れの痛ましい事件は後を絶たず、親切と思ってやってくれるのだが

これが往々にしてバラシにつながるわけで、魚の頭を寄せるタイミングと

タモを滑り込ませるタイミングが合わず実に難しい。しかも今回も道糸は2号で

二十年前の2号みたいだから、油断大敵なのであった。

なんとか上げると、本人も満足そうに、掌をわずかに震えさせながら

鈎をはずしにかかっていた。ズイブン飲み込んでいて、結局切ったのだけど

ガリガリの歯にあたっては、2号では到底太刀打ちできないし、おそらく

6号以上なければ絶対に切られる状態で、僕としても良い事をした心持ち。

20年ぶりの手応えだったかもしれないのであって、オジサンの思い出の

一頁を作ってあげたわけで、良かった良かった。

なにしろこの島では釣り具やさんがなくて、糸も1000メートル単位のものが

売れ残ってあるのみ、だから、この島に来て気づいても遅すぎるのである。

良い事はしても回遊魚はまわってこず、代わりに海水浴のカップルが

回ってきてしまったので、回遊魚はアウト。思い出作りに貢献しただけで

美しく、広大なスケールの東港におさらばである。

それにしても、あのイスズミ、とっても臭いそうだなあ、夏場だからなぁ。

お父さんとしては、20年ぶりでかなった大物の釣果を誇らしい気持ちで

持って帰った先の息子さんの反応がちょっぴり心配になる長男であった。

 

で、長男はというと、暑くて何もする気が起こらず、パン一つと牛乳

そして、あと10個(11個だが、一つはいたんでいた)のパッションを

ヤケではなく、冷静に一気食いして、栄養を付けた後、お昼寝であった。

ああ、こういう涼しい風が吹きぬける時は、畳の上でのごろ寝に限る......

あと5日、どうやって過ごすかを考える前に寝てしまった。

 

そうそう、観光協会へ、帰りの便の予約をした方が良いか聞いた所

28日の便は、年に一度の八丈島寄港便で、小笠原返還祭でやったきた

八丈の方々が大挙して乗り込むらしく、危機的状況らしいのだが

母島で船(小笠原丸)を予約できるのは島民だけで、お客は無理とのこと。

小笠原海運でも、二等であれば、当日買っていただければ十分ですという

型にはまった回答しかかえってこなかったので、やるだけはやった。

危機とは言え、回避しようもなく、お昼寝しかなかったのであった。

まあ、こうなっては、なるようにしかならない。

帰れなかったら、次の便で.......前代未聞の現地からの節目休暇延長劇?

どうなりますことやら。

(次の便も予約はできないので「絶対」はなく、7月ともなれば一段と......)

 

夕食は、おまちかねの「チギ」のフリャー、けれどちょっとトラブル。

いつもこの時間には帰ってくる食事の友?、カトウさんが帰ってこず

心配しつつも、6時過ぎに一人の食事に突入。

(待ちきれなかったのではなく、オバサンがすすめてくれたの、念のため)

フリャーとお汁がついており、どちらもカナリいける。

まずはフリャーだけど、これはなかなかのもので、

タダの白身フリャーだけど何というか、サッパリとして味があり

身のしっとり感と旨みが程よく口の中でほぐれていく感じ。

裏に生えているレモンがやわらかな酸味と甘みを加えて

とってもジューシーな味です。(皿の右のがレモン、念のため)

で、お汁の方はこれがまたイケル。脂が乗っていて、出汁がでているし

ふわりとした白身が、確かに鍋向きでもあるというのが実感。

チギ鍋なんて、韓国料理っぽい名前だけど、僕は辛いのがだめだから

こっちの方がはるかによろしい。

暑かろうと寒かろうと、こいつの鍋は間違いなくおいしそうでしょ?

宿のオバサンは時として魚に玉ねぎを加えて味噌汁をつくるので

不思議と関西風なお汁となっているところに注目。

関西ではこれを、ガシラ(カサゴ)なんかの白身で作るし

青魚だと、玉ねぎは入れないけど、いわゆる赤味噌で赤出汁にするわけ。

 

うーん、これで大まか、今回の小笠原の旅の味は食べ尽くしたかな?

そう、まだ、ツチホゼリ(小笠原クエ)とカッポレがまだで

ツチホゼリはまあ、ハタだからルアーのお魚ではないし、味の方も

想像はつくけれど、カッポレはなんとか釣って食べたいもの。

味はヒラアジ類で最高といわれ、黒くて一際パワーのあるボディ

100メートル以上の深場から、浅瀬まで神出鬼没。

嘘かほんとか、美味すぎて思わずカッポレを踊ってしまうという

そんなお魚を食べずして帰るのは心もとないけれど、現在の状況では

全く見通しなしで、カッポレ自体も今回の旅では聞いた事もない。

コツコツとがんばって釣りに行くしかないか........

あと数日、なんとかカッポレにはお目にかかりたいもの。

(なお、食事を開始して10分後にカトウさんは無事帰還、念のため)


ではまた

6月22日号