西浦にアドベンチャーフィッシングの限界を見た


宿のオジサンに教えてもらった、母島で数少ない磯へ遂に到達しました。

先日の偵察では手ぶらでしたから、今回はビデオに壊れかけたカメラなど

ほぼフル装備で挑んだのですが、それはもう体力の限界がやってき

水分は不足し、行きに帰りに足がおぼつかなく、実に過酷で自虐的な

釣行とあいなってしまったのでした。フル装備とはいっても道具は最小限

リール、竿、ルアーなど、普通だと2セット持っていくけれど

思い切ってと言うか先日の偵察が身にしみているのでワンセットに。

下りなのに片道三十分、幅20センチの獣道を歩き、草を分け、沢を歩き

浜へ出てから、旧海軍の特攻艇の基地の穴のそばの傾斜地を更に登って

ここからは道がほとんど消えかけている状態で手探り足探りの状態

トゲトゲの南洋の植物が葉を繁らせ、亜熱帯の温かさで良く育った葉が

沢山傾斜地に積もって、柔らかく豊かでふわふわの土地を作ってます。

ようやくそこを抜けると30メートルくらい下に潮騒が........

最後に45度を超える角度の「土」の斜面を降りるわけで、緊張の連続。

通常の内地で磯へ降りる道とは違い、ロープも切れかかり

ひとが行かなくなったのか木々や草が生え放題で、道を探したり

足場を探したりするのにズイブンと体力を使いました。

降りてみればそこはカツオドリの飛び回る、のどかな磯で

こんなので釣れるんか?と思うほど静かで穏やかな表情であり

最初はポッパーで回遊魚を狙いましたが、ダツしか反応なし。

珊瑚の浅瀬と、深い場所がくっきりと別れた分かりやすいポイント

しかも足場は平らで、魚が掛かると下へ降りて丁度引きずって

上げられるような波打ち際まであって、釣るには最高なのですが

疲労をいやすために、休み休みの釣りのせいか魚の姿は見えない。

で、ミノーに変えたとたん、何かが磯際から飛び出して食った!

そして、一機にのってしまった!

潮が小さくなり、引潮にかかってからの釣りで、まさか根魚が

こともあろうに明るい表層へ出てくるとは思っていませんから

ちょっと緊張してやりとりしてましたが、やりとりというほど

手応えが伝わってこないのでかまわず巻くと、これがまあ

沖縄では毒魚として名高い、バラハタ。(40センチ以上)

 

宿のオジサンが「この島で食べられない魚はない」と言ってたので

ひょっとすると?と思ったけれどリリース。

しばらくまたポッパーで水面を誘って、ミノーに戻すと、再び

磯際から飛び出すうかつな根魚が.......。

今度は分かっていたのでリールをグングン巻くと、無力を悟ったのか

ただ、グルグルと回転して引かれるままに上がってくるのが見ます。

「た、単純なやつ.........」さっきのがもう一回食ったと思うほど

そっくりさんなので、リリースしたら何度でも食うのか?と

思ったけれど、一応違うお魚みたい。

ここは、バラハタ銀座なんだなーと薄々感づき始めましたが

別の磯へ移動した時も、一投めから飛びついてきた奴がいまして

どうも磯で最初に味見する、毒味役のようなお魚みたいですが、自身に

毒を持ってしまうとは、お毒味役と言う以上の存在と言えるでしょう。

実は、このバラハタ、母島では「チギ」といい、フリャー(フライ)に

向いているのだそうで、この島では人気のお魚でした。

もちろん、毒魚と言う事もあって、本土でなんぞ売れるはずもなく、

島の味になっています。

身が柔らかいので、フリャー向きなのだそうです。

そうとは知らず、二度目の大サービスでリリースして、

また反応なし状態へ突入。

で、こういう時はポッパー、あのゴボッとシブキを上げながら

遠くまで水面の乱れを伝えて、沖の魚を呼び込めるのが、これの特長。

しばらくがんばって、昼過ぎのカンカン照りの海にシブキを立てる

そうするとやがて、一匹のスマートなお魚が追跡して、ルアーのそばを

かすめるように、磯際へ去っていく。

ちょっと小さ目だけど、美味しい魚かもしれないと、

ミノーで水中へと誘い方を変えた瞬間、見事にヒット!沖から寄せて

ミノーで食わせるという、思い付き的戦術が見事に適中し、それ以上に

昼間に食いの立っている、いじましいお魚がいて、本当にラッキーです。

大して力がないと思いきや、磯際に寄せたとたん、ものすごい勢いで

沖へと走り去ろうとします。ビュウウウウウウッと数メートル糸を出し

こちらが巻き取ると、また糸を出して、地力のある走りをしてくれ

小さいと油断した心に喝をいれるように走り回るのが印象的です。

しかし、どうにも小さいので、細仕掛けとはいえカンパチを上げたもの

見た目には50センチくらいのお魚に勝ち目はありませんでした。

やがてバテ、姿を見せたのは「あれ???オーマチ?」としか

判定できない、白身のお魚で、姿形はアオチビキ(沖縄名オーマチ)で

色が何とも緑色なのです。これまで見たのは紺色っぽくて暗い色ばかり

しかし、横たえているのはどう見ても明るい色調なのです。

上下二本づつの牙と鋭い尾ビレを持った、「鯉」の武装形態みたいな感じ。

とりあえずスタイルが一致したので近縁だろうと判断し、お持ち帰りに。

重量は2.3キロ、全長62センチとソコソコの形で、食べるには困りません。

どうせ自分でさばくので、はらわたとエラを取って帰路につきましたが

例の斜面を登っている最中に「ウロコをおとしてなかったぁぁぁ」と

気づいてしまい、後ろ髪引かれる思いでの撤退を余儀なくされました。

その後の西浦入口への行程は想像を絶し、前進しようにも足が動かず

汗だけが吹き出して止まらないという筆舌に尽くし難い過酷さで

行きよりもはるかに上りの多い行程に、体力の限界を見たのでした。

「これで、10キロのお魚だと、もう途中でユキダオレだな......」

そう感じるさなかも、メグロはきっちりと有り余る好奇心を発揮して

そんな僕を、近くの枝から観察していたのでした。

(画がないのは、しんどすぎて、カメラを回す余裕がありませんでした)

 

帰って、三枚卸を作って、アラを吸い物用にカットしてから

港の観光協会へ行って確かめた所、アオチビキの写真にそっくりのを発見

どうやら間違いないという確証が得られましたが、島での名前は不明。

それにしても、アオチビキの色は思いのほか美しく

脳裏に焼き付くほどの色合いで、自然の妙を実感させてくれます。

この背ビレにさしたほのかなスカイブルーはなんなんでしょうね。

腹ビレにも青みがさしてまして、それでアオチビキ???その程度で?

と言う印象が強い。でもフォルムは別として色調の美しさは逸品でした。

 

味の方は噂通りで、刺し身は柔らかく、甘く、吸い物は出汁が良く出て

南方の白身魚の王道を行っている様なフエダイ科らしい味でした。

もちろん、脂ものっていて、宿のオバサンの反応も上々です。

南大東で釣れたのが、フエダイ代表のフエダイ、そしてその他

今回の細面なアオチビキや沖縄のグルクン(タカサゴ)、伊豆諸島でも

人気のアオダイやウメイロもフエダイ科、大型になるとバラフエダイや

小笠原で人気のオナガダイ(ハマダイ)など多彩な種族で驚かされます。

 

そう、本土のお魚で一番近いのが、イサキで、身のやわらかいところや

白身の蛋白さとホドヨい旨みと脂をもった出汁が良く似ています。

 

さて、今度は「チギ」が釣れたら持って帰ろっと。

その前にスタミナをつけなくちゃ...........。


ではまた