ボーズがのしかかる5日目


潮回りと風の状況を見ないで早朝から出かけても

気が焦るばかりで全然くたびれモウケだと覚り

本日はもう朝バイクはやめてしまった。

 

波照間時間で釣りをすればよろしいということで

納得するように決めたわけ。

 

三膳メシの朝食をゆっくりと食べて、それからバイクを借りに行くと

学習能力の優れないバイク管理嬢たちは同じ台詞を繰り返す。

 

4000円を払って出陣だが、日も高くのんびりとした町並みに

こちらも気合が馬鹿らしい、

南の島で焦ってみても始まらんのである。

 

そういえばタレントがロケに来ていたようだが

本日はもう居ないようだ。

この島はタレントに耐えられるようなヤワな島じゃないから

自分から自然を楽しもうとする人間だけが過ごせる島であって

このアタリは大東島と良く似てい

この島が結構気に入り始めているみたいである。

 

集落を抜け、黒牛さんの牧場を抜け

幹線道路を横切り、丘を下り始めると海が見えてくる

途中には今日も山羊さんが草を食んでいる

 

山羊さんの草原を抜けるとすぐに釣場だけど

駐車してから5分くらい歩く。

穏やかな磯とは言っても、やはり珊瑚礁の磯

トゲトゲもあれば低い木で隠れた岩の裂け目もあるし

気を抜いてはいけませんのであり

この行程が沖縄の磯釣り情緒ともなっているのである。

 

明後日までに何か釣らないと「真のボーズ」がまっている。

夏の大東はカスミアジが一応釣れたから

今度こそ丸ボーズになってしまうのであるから

長男としては非常に追いつめられつつあるのである。

 

気負いつつ朝一番のキャスト、もちろんポッパー、

心が通じるのか殺気が伝わるのか、魚はルアーを避けているみたい。

気持ち良く沖へ飛び去るポッパーは気持ち良くスプラッシュしながら

気持ち良く戻ってきてしまう。

時折ダツだかオオザヨリだかが追いかけているけれど

目前で見切っているようで水面を割ることもない。

 

それにしても爽やかな朝、清々しい潮風、美しい海である。

この瞬間が心地よくて釣りをしている.......

などと言ったら負けおしみっぽいけれど

時折、自然と空を見上げたり

海をぼんやりと見入ってしまったりと

心が風になってしまうのではないかという瞬間があるものだ。

 

今度は岸と平行にミノーをセットして投げる。

ラパラミノーは頭にオモリが入り

更に重たいリップ(泳ぎのための水受け板)が付いていて

慎重には慎重を期して毎度キャストするのだけれど

どうにも回転してしまうことが2割くらいあって

何とかならないモノかといつも悩むのだが

こればっかりは一向に改善されない。

最初のころは5割くらいグルグル状態で

投げた瞬間、目撃者がいやしないかと

よく周りを見回してしまったものだけれど

今では20回に一度くらい快心の一投が出て

50メートル以上吹っ飛んでく事もある。

レベルはアップしているという実感はあったが

それでもこの2割がかなりウットォしい。

スズキのルアー釣りをはじめてもう8年以上になるけれど

これほどテコズるルアーは他にないのだ。

これが足元にヒラアジがチェイスしてきた後に失敗しようものなら

長男的自己嫌悪とルアーバランスの悪さを責める心が交錯して

水平線に向かって発狂しそうになるものである。

 

竿は実質石鯛そのものだから、物干し竿のように太く長く

距離は出ても肩にのしかかる重さに

右腕が動かなくなってくる事もしばしば。

夢中で投げていると疲れを感じにくいようで

気づくと異様に肩が重く腕も動かなくなっているのだ。

(足元がどうにも潮干狩り状態だ)

でも沖縄の荒磯でミノーを足元までキチンと引くには

この竿は非常に重宝するのである。

 

ポッパー用の14フィートでは届かないことが多いのである。

ポッパー用としても14フィートは長めで

取り込みの時にリーフのハエ根をかわせる最短サイズだと思う。

 

などなど、釣れない時はいろんな事が頭を過ぎるのだが

タックルまで自作だからテクニックもオリジナルになるので

釣れない時の練習量も大切なのだ!

と思えば、長男の心とて少しは楽になる。

ふと気になるのは昨日の楽しいビーチを演出してくれた

一人旅のギャル達が本日の昼便で立つので

こんな事なら見送れば良かったか?なんて

別の釣りに気が行ってしまう長男でもあった.......。

 

こうして水平線を見つめることで

また釣れもしない新たな道具作りへの未曾有の泥沼へといざなう考えが

浮かんでしまうこともあるマズイ時間でもある。

 

道具で解決できないことは分かっていても

いろいろと考えてしまうモノである。

 

今回ばかりは後がないせいかキャストを半日以上続けて

夕方も磯へ立ってしまった。

たそがれが悲しいほど海に映え考えに考え

投げに投げまくった一日であった。

 

夕刻、新たにやってきたアンデスの浮浪者的(ジプシー的?)

ファッションに身を包んだ休暇中のサラリーマンや

例の小笠原から来た本物の放浪者などと会話しながら

美味しくはないけど楽しくお食事タイムを過ごしていると

突如としてバイク管理大阪女の一人がやってきて

「6時すぎたんでぇ、バイクの鍵ぃ返してもらえますぅ」と

お食事現場の客の前で叫ぶ。

本日はダイビングでやってきた若い女性のグループが

十数人も来ていたりして、一際明るい食堂なのだが

一瞬水を差してしまった。

これがみのる名物の甘えたヘルパーの仕業である。

 

アンデス浮浪者風男も

「食事中に返せなんて、非常識ですよねぇー」と苦笑いしている。

 

思いやりのないカギ返せヘルパーに教育的指導を施すほど

お人好し兼しまり屋でもないので

素直にカギを部屋に取りに行って

それが当たり前かの様に返す。

 

これが僕の楽しみでもあるのだ

このカギ女に、客の扱いやもてなし方を教育してしまったら

もっといやな客に出会わないままスクスク成長してしまい

面白くないではないか!

こんなやつは成長せずいつまでも行き届かない人間で居させ

あとあと世間の荒波に挫折するのが人生というもの、

実に自然淘汰的で自然の島ではよろしい気がするのだ。

 

休暇中は時に良心まで休暇中になることもある。

 

そういえば今日は居候田中氏が名古屋へ戻ってしまう日でもあり

昼間に自慢の道具の一つを見せてもらった。

 

磯から外して持って来たのだそうだが

もって帰るわけではなくて

みのる荘の玄関口右側が置き場らしかった。

実に無駄のない道具で

竿のテンションに加え板バネが魚の強引を吸収し

リールを巻くだけで無理なく大型魚を寄せられるのである。

引きを楽しみたい時は竿を持ち上げれば良いのだという。

なるほど。

その後、彼が特許を取ったというこれまた自慢の一品

糸を伝って魚を捉える自動追尾型?落しギャフを掛けて

高磯から一人で安全に取り込みを行うのだそうだ。

またしても、なるほど。

落しギャフは撮影していないけれど構造は簡単で

しかも確実なもの、でも皆さんにはヒ・ミ・ツっ......。

 

今夜も今夜とてヘロヘロでビールを飲んでバタンキュだった。

ああ、いよいよ真のボーズが目前で

夜も眠れないはずの長男であったが、疲れには素直であった。