ピンチの待つ一日目


島の真ん中の、更に集落の真ん中に空き地がある。

その周りにはガソリンスタンドや

例の食堂のある民宿星空荘、診療所

売店や学校などがあって

当然2時間でほぼ島を一周した僕はオリオンビールを買いに。

店の前には木でできたテーブルとベンチがあって

ここで冷えたビールをいただくのは最高。

昼間からいただくので尚最高である。 

沖縄の熱い風と太陽にはオリオンビールがよろしい。

沖縄に行ったらどこでも変らぬ味オリオン。

これさえあれば沖縄は許せちゃう。

キレもコクも程々これがムシ暑すぎる気候には良く似合う。

爽やかな飲み心地になるのが不思議でもあり

理屈抜きによろしいことになっていて

沖縄では絶対にオリオンしか飲まないのである。

 

おおむね一日の仕事を終えての至福のひととき

あとは晩御飯を待つばかり、

仕掛けでも作って待つとしよう。

 

部屋へ戻って、窓もドアも全開で風を通すと

それなりに心地よい感じがするが

心地よい汗が体中からにじみ出てくる感じもする

沖縄はこうじゃなくちゃイケナイ。

 

で取りいだしたる新兵器、名付けて「旋迅」こと

インターライン投げ竿改造ヒラアジロッドである。

「よーし、早いけど糸を通しておこうかなぁー♪」

などと思いつつ、ロッドケースから取り出して

ふと糸を通そうとした時である

し、しもたぁ!

また忘れモンしちまったぁぁぁ!

中通し竿には専用の糸通しワイヤーが付いているけれど

今回は竿を改造して、腹当てが大きすぎたため

竿袋を置いてきたわけで

ご承知の通り、ワイヤーは竿袋に入ったままであった。

忘れもしない、大東島の磯で原付のシートの下に

道具一式をインロックして以来の

途方もなく自分の失敗が大きな物になったことを

覚ったのであった。

秋には和歌山へライフジャケットを忘れて行き

またしてもやってしまったとは!

もう長男ではいられない.......

僕の繊細なプライドは、ここ波照間で

通り雨に打たれたトイレットペーパーのように

ボロボロと溶け去ってしまったのである。

 

同じ過ちをこんな大切なときに二度も繰り返すとは

几帳面な僕には、信じがたい失敗であった。

 

今年の僕はどうかしてる........

アルミの鍋とアルミのヤカンを

使いつづけてしまった事が響しているのか?と後悔した所で

後の祭りであることに変わりもないから

早速解決策を考えることに。

かなり動転していたので

最初は太目のナイロンラインを通してみようと試みるが

流石はリニアインターライン、しっかりと引っかかって

先へ進まない......

 

こうなったら付属のワイヤーに似た形を再現するしかない!

 

◆崩壊しそうな頭脳中でいろいろ紆余曲折しつつ、中略◆

 

で、

お店へクリップを買いに行くことに。

 

わざわざ数本のクリップを買うのもなんだからと

探し回ってみたけど、島じゃクリップ一本も貴重品だ。

 

さっきビールを買いに行ったお店でクリップとライターを買うと

おばさんはケゲン顔をするのも無理はない。

 

ライターでなまさないとインターラインの先を通す

素直な曲げ加工が出来ないからライター付きで購入。

しかしながら、怪しさもアップだ。

 

宿へ戻って工作タイム。

PEラインとクリップ二本で出来上がった

インターライン応急糸通しがこれ。

長さの調整をキッチリ行うのがコツである。

これで一挙解決!

晩御飯は不安もなくいただけることとなった。

不安はないが、サワラと磯マグロ

サワラはよいとして、マグロはかなり不味かった.......。

 

食後はシャワーを浴びて、外へ風を求めてフラフラと

星はきれいで、ちょっとばかり雲が多めだけど

久々の星空らしい星空が目にも心にも優しく輝いている。

 

ついでにまたまた例のお店へ食後のビールを買いに。

 

シャワーの後は町を歩きながらのビールに限る。

 

次の日からのあまりに過酷な釣り生活など知る由もないけれど

やっぱりオリオンビールを飲んでいるときが一番幸せなのだ。