食後の一日目


さて気を取り直して、自転車を借りよう。

みのる荘旧館は昔は宿だったけど今はレンタル屋さん

自転車にバイクも貸しており

表ではだるそうにおばさんやヘルパーの女の子が寝そべっている。

自転車を借りるついでにバイク代も聞いてみた。

すると、旅行ガイドより高い!!!

ガソリン抜きで3500円がガソリン付きで4000円に!

しかも借りっぱなしではなくてイチイチ夕方6時には

返さなきゃいけないのであり、

夕日も見れなければ、朝の釣りにも支障があり

まことにもって甘えたシステムである。

それにどんなに走ってもガソリン代は一日300円いかないから

割高感いちじるしい。

 

この夕日のきれいな島で、夕日を見ずに帰ってこいなどと

観光の何たるかさえ忘れてしまっている情けなさ。

全てが自分達の楽のために作られており

つくづく、とてもイライラする宿である。

 

後で返そうと宿で食事をとっていると

食事中にもかかわらず鍵を返せと催促があるのだから

細かいことを気にしないよう心がけていても

時折物を投げたくなるほどイライラするのだ。

 

その本土的に非常識で島では常識的な

自転車レンタル管理しているのはコレマタ大阪から来た

とても仲の良い女性二人である。

仲が良すぎて夜は抱き合って寝るほどだそうだが

見ていないので真偽のほどはどんなものか?

 

高校生かと思ったらどうも二十歳に近いようだった。

最近子供っぽすぎる女性が増えた気がするのは

僕だけだろうか?都会だけだろうか?

まあ、それは島の甘えとは関係ないし

元気な彼女たちと楽しく話せてたので良しとしよう。

 

自転車は一時間100円と、これは両親価格。

きっちりと磨かれた自転車やバイク類は

島にしては大変よろしい管理である。

ただ、磨かれてはいても整備されているのとは違うようで

ブレーキやチェーンのたるみなど

それなりのレンタサイクルである。

 

チャンと乗れるのでほとんど心配なく、まずは島の南を目指す。

日本最南端を目指すのである。

 

島の道は集落からは想像できないほど整備されており

ほぼ完全に舗装されている。

地図を見ながら行くけれど、どうもうまく行かない。

新しい道があるようで地図では分からないのである。

 

まあ、島ではこれも当たり前。

最近政府のお金が島へ潤沢に流れているので

道はドンドン作られて、島は豊かになるそうである。

 

それはともかく南と信じて走る。

見晴らしの良い、一周道路らしい道にでると

浅い海が見え

磯釣り師をちょっと険しい気分にさせてくれる。

でも、見たこともない新鮮な生態系に心が躍り出した。

(岩にへばりつくような植物群)

風も心地よくて、日差しも柔らかい。

10月末でも28度はあるのだけれど

真夏の沖縄から見ればとても穏やかなのだ。

自転車もチェーンが多少カラカラいっても快調に走る。

 

やがてガイドで見た最南端へ着くと

ガイドでは分からなかった磯が更に最南端の碑から先へ

ずーっとずーっと伸びている。

本州最南端の和歌山県串本もそうだったけれど

最南端といわれたら、岩の先まで行かなくては

行ったとは言えないわけで、先まで歩くのが男らしい。

あまり高くない磯で、先ほどの浅い石の浜へと続いているのだ。

でも反対側は異様に高い磯へと続いており

これはガイドどおりの光景で少し安心した。

聞くところによると、ここも自殺の名所らしい。

ここで死ねれば青い海の大きなサメに食べられるので

思い残すこともないだろう........。

 

それにしても、最南端の碑が何個もある。

企業のものから右向きの方々によるモノ

寝そべってウネウネと長いモノなど様々なのは

島の自由さと無秩序をたたえるものだ。

(右上奥の建物が星空観測タワー)

一番立派なのはやはり、右の人たちが立てた

日の丸印の逸品というのも楽しい。

ただ、いろいろな碑全体に壮大さというかスケールというか

日本最南端を語るには若干小さい物ばかりで残念。

 

日の丸は勇ましくて、日本の誇りとしては申し分ないモチーフ。

しかし、いかんせん小さいのが無念で仕方ないのだった。

もう少し根性入れて作って欲しかった、

国を愛する右の人なのだから。

左(西)を見ると星空観測タワーという

ガイドどおりの施設が見える。

南十字星の見られる島にふさわしい、気の利いたものだ。

税金の使い道としても悪くない。

 

釣り人としてはこの先にある高那崎が問題だ。

あの異様に高い磯のつづきなのだから。

先ほど述べた舗装道路からそれると

ちょっとばかり自転車にはきつい

サンゴの化石だらけの砂利道で

それをひたすら西にむかって走っているつもりなのだが

ゴロゴロでどうも歩く方が早い感じ。

 

高那崎は右が異様に高く、左(さらに北西)へは低めの磯。

ほっとする光景がひろがっていて、よかったよかった。

これなら磯釣りもやりやすそう、しかも大東の磯より

そうとうフラットで助かりである。

ただ、低めの磯なのと波が高めなのとで

どうも釣り座が限られるみたい、

その日もかなりのシケ、その中で一人だけやっている

上物師がいただけで、とてもやれそうにはない感じ。

 

それにしても、わざわざ波照間まで来て上物釣りとは

豪気なものであり、どう見てもライジャケに身を固め

バッカンにコマセじゃくなど、間違いなく地元の方ではない。

 

ちなみに南の島ではほとんどカゴ釣りがほとんどで

コマセを打つ人はほとんどいないのである。

上物とはそれほどに魅力的なのだろうか?

それともイラブチャーを釣ってたのだろうか?

 

シケの海を見ていても何もならないので

次は空港を一応見に行くことに。

 

磯から飛行場へ向かう緩やかな上りの草原には

山羊さんが放し飼い状態で

よく見ると5メートルくらいのロープでつながれていて

10メートルの円が出来る風に食べまくる仕掛け。

 

子供の山羊は正に放し飼いで実にかわいい

しかしながら食用である。

 

程なく空港の建物に着いてみると

大東島のものよりさすがに小さく

一日一便だとそれほど大きな空港設備は必要ないわけだ。

少し前の大東島同様、双発19人乗り

琉球エアコミューターの働き者DHC6である。

とりあえず水分を補給すべくアクエリアスを買うと

これがなぜか130円!沖縄にしては高い!本土よりも高い!

ここでも甘えた自動販売機に唖然。

 

喉を潤したら第二の磯を目指して「シムスケ」へ。

途中にはチリ捨て場というのがあり

これが島の全てのごみを捨てる場所らしい。

 

生ゴミから不燃物、果ては自動車まで

処理されぬままテンコ盛りにしてあるわけで

あまりよろしい解決法とは言い難い光景であった。

こういうシーンも島の旅には付き物で

大切な島のイメージでもあるのであり

目を逸らしてはいけない現実なのだ。

 

少ない島の名所にもかかわらず、札やサインはない。

さっきのチリ捨て場は分かるようにしてあるのにここはない。

観光で食う気がないのだろうか?

観光ガイドにはしっかりと載っているものの

確かにここはただの井戸。

近くには水を求めてか美しい蝶も舞うところで

井戸だけを求めては行けない退屈な場所で

取りたてて行くところではないようだ。

聞くところによるブリブチ公園もただの森で

公園という名に誘われてはイケナイという記事をどこかで見た。

この島はあまりジタバタせずビーチで過ごすのが一番のようだ。

  

さて、その日は東の風で、シムスケ下の磯もシケ。

こちらは浅めのリーフが10メートルくらい伸びていて

取り込みに失敗するとリーフ際で切られそう。

(水平線上、右にあるのが西表島)

ポッパーで沖めを狙うと、がーら来そうな良い磯である。

途中に黒牛さんが放し飼い!で迫力もヒトシオ

おとなしいとは言え大きな角の牛さん、

原付のエンジン音で怒りはしないかとチョットばかり不安。

 

怖いのでお写真も撮っておりません、あしからず。

今度行ったら撮ってきましょう。

 

さあ、残るは楽しいビーチ!これまで釣りばかりで

ロクすっぽ泳いだこともなく

ましていつもの大東島にはビーチなどと言う甘美な自然はなくて

憧れていた沖縄の白い天国!!!

思った通り、おトイレとシャワー完備の白浜!

青い海、白い砂、まぶしい太陽、これぞ沖縄ぁぁぁぁっ

というイメージにピッタリ!

やっぱり沖縄はビーチが一番。

 

自転車を返すにはまだ一時間くらいあるので

適当にその辺の畑中をうろつくと

妙なおばさんが怒鳴ってきて、意味不明。

ただ、自転車で道を走っているだけだというのに

なんなんだろうか。

 

人の訪れることの少ない秋の日に

しかも訪れるはずのないとおもわれる自分の畑の前を

心の準備も無しに走り抜けようとする自転車に驚いたようで

それにしても怒鳴ることはないだろうとギロリ睨み返しておいた。

俺も男だ!自転車で走っているだけで

怒鳴られてしまうような理不尽を受け入れるわけにはいかない。

ウチナーンチュのおばあちゃんに ナメられてたまるかである。