毛はえ薬は不眠のもと・・・という話じゃ

 


あるところに、ハゲのオッサンが一人暮らしをしていたそうな。

毎夜眠れず調子が悪く、仕事を休んで・・・まったりグッタリしていたところ

グッタリしていても始まらぬので、床屋さんをすることにした。

 

貧乏なオッサンは、セルフ床屋さんをすることで、経費節減とサッパリした

3分刈りを両立させるのを、ちょっとした誇りにしているところがありましたが

村人たちは、チットモ気づいていないようす。

 

さて

その日も調子よく、ブィ〜ン・・・ジャジャジャリリリリリリ〜と髪を刈り始めたところ

敷いてあった、「ソウカがっかり」みたいな名の団体が出している新聞に

ふと目をやると、風呂屋の桶でおなじみのケロリンと同世代みたいな

妙な名の宣伝があったのでした。

 

よくよく視てみたところでは・・・

頭以外の毛に効くと、きっぱり書いてあり

どうやら、頭髪と他のお毛々は、ことなる因子によって生やされているらしい。

 

それにしても、頭の毛以外限定で、生やしたい人がいることを知って

オッサンはたいそう驚いた。

少ない毛が、また抜けそうなくらいの驚き具合じゃった。

 

そもそも眉毛は書けばいい、アソコの毛はとみに好みの問題だし・・・

ヒゲは剃らずに済めば、こしたことはないと思うのに、

わざわざボーボーと生やす意気込みがある人らとは、

いったいどのような人じゃろうか?

オッサンは一瞬悩んだけれど、その場は頭を刈ることに専念しました。

 

刈りながら・・・そのことは

「浮世には、思い知られぬ毛の生やし方があるもんじゃ・・・」と

心に焼き付いて離れなんだ。

 

そもそも、毛生えとミクロとかパスタとかは関係あるんじゃろうか?

オッサンはそれでも気になって仕方がないのじゃった。

 

ようよう調べたところ

なんと!それは男性ホルモンを肌にすりこむというもので、

頭髪は男性ホルモンで薄くなるものの、そのほかのお毛々には効くと

インターネットに書いてあったのを見つけたそうな。

 

おおっ!これは発見じゃ!

これなら臆病なワシの心臓にも毛が生えるに違いなかろう!

オッサンは、微妙に効能とは違った方向性で喜んでおった。

無駄に勇気がほしい年頃じゃった。

 

バサバサとバリカンで刈り落とされる髪を見て、我に返ったオッサンは

「いかんいかん、毛も野望も年並みをわきまえんとならんわい」とわきまえながら

3分刈りを終ました。

 

夕刻

F本どんのところで、パソコンの設定などを営んでいたところ、

期限切れのチョイワル食品でも持っていかんか?とすすめられた。

 

果たして、そこにあったのは

お弁当でなく、なぜか中華麺っぽいものばかり。

 

「どうしよう、中華麺のタレは舌がシビれて困るなぁ・・・」と思いながら

欲をかいて、大きなチャーシューの乗ったパックを手にしてしもうた。

 

家に帰って、パックを開けたところ、白い汁が半端に染みた麺の上に

チャーシュー以外は、ほとんど目に付かない具がのった物体があった。

「こりゃー期限もさることながら、食べて大丈夫じゃろうか・・・」

レンジで一分少々チンして、生暖かくなったナゾの食品が放つラーメン汁臭に

オッサンはたいそう後悔しておった。

 

一口食べて驚いた・・・

「こ、こりゃあ、薄まってない変なラーメン汁がかかっとるんじゃ!」

あまりの雑で濃ゆ過ぎる味に、伸びきったマズイ麺など気にならぬほど

仰天して腰どころか、またしても毛を抜かしてしもうた!?

 

それは、カップ麺用の液体スープが、あまり薄まっておらぬような濃ゆい味の

粗末な汁がかかっていたのでした。

 

焼きラーメン・・・舌が壊れる・・・末代まで絶対食うてはならん!

そう思うたそうです。

 

じゃがオッサンは

果敢に三口ほど食べ進み、浮世の味を我が物にせんと頑張った。

だが所詮、昭和の薄味育ちのオッサンには、やはり無理じゃった。

 

そうして

焼きラーメンパックは、あまりのシビれる味じゃったから

仕方なく、庭の肥やしにするしかなかったということです。

 

「それにしても、シビれる味じゃった・・・」オッサンは、焼きラーメンを

ほとんど味わうことはできなんだが、いささかの達成感を味わっておった。

 

その夜のことじゃ。 床に就いたオッサンの夢枕に、例の薬のことが浮かんだ。

「ん゛? そういや、男性ホルモンは頭を薄くし、ヒゲや胸毛は濃くするんじゃな・・・」

けれど、オッサンはアッチの毛はさておき、ヒゲはとても薄かった。

「なしてじゃろうか・・・?」

頭の毛は男性ホルモンで抜けるのは確かじゃろうが、他の毛が男性ホルモンだけで

生えてくるんか??? 頭の毛以外共通なんて、アリなんじゃろうか?まことか?

それで正しいんじゃろか!?

 

「確かに、眉毛が濃ゆい女子はアッチの毛も濃ゆいよなぁ・・・」

じゃが、オッサンのヒゲは明らかに薄かった。 鼻毛は年々濃くなっているのに。

 

丑三つ時のころ

オッサンは目覚めてからも考えが頭から離れなんだ・・・

なんどもなんどもフェードアウトさせたが、勝手にフェードインしてきて

朝まで続くことが、三日三晩続いたそうな。

 

オッサンは思った。

毛生え薬なんてなくてええ、人はあるがままの方が、ぐっすり寝られるわい。

そう思ったあとも、なぜかオッサンは、その新聞を見た人らが気になって

幾晩も眠られなかったということじゃ。

 

そうしてまた

少ない頭の毛が減って、床屋さんが楽になったそうな。

けれども、ヒゲや鼻毛、耳毛は減るどころか増え、

薬など使わずとも、なぜか要らぬ毛はジャカスカ生えてきたということです。

 

めでたしめでたし・・・


ではまた