我が家の料理風味について
せっかくの機会なので、おふくろ様の料理を特集する。
年末年始、皆がそろったので弟や私の好物が登場している。
得意料理と、それぞれの好物が入り乱れている。
ちょっと時期が外れたが、正月といえば餅である。
餅つき機でつきあげてから、手でもみ込んだ丸餅。
もみ込んで、もち米のネバリ成分が強くなった餅は
手の腹でしっかり押さえ、もんだ後に反発力で盛り上がってくる。
しわが、もちの中心に向かっている。
さながら超小型・餅台風の衛星写真?のようになるのが、理想的。
時間とともに低くなり、裏返して冷やすので平たくなるから
焼くときは普通の餅のように、わりと薄べったい。
物心ついた頃は、まだまだ下手だったから
失敗してべったりとネコのウンチ?
みたいになってしまうことも多かったが
苦節40年?・・・ ようやくなんとか技になってきたと思う。
丸めるという動作でなく、円を描いて押し込む感じだ。
円を描いて繊維が練り上げられるので、餅は自力で丸くなる。
焼き物の土の菊練りを、瞬時に行っているようなイメージだろうか?
両手もみをマスターしているのは、家系では私だけになった。 (右が弟)
事実上の一子相伝みたいなもんだが、私は母方のオジーマに習った。
雑煮に入れても、だらり溶けない餅、
しかも焼いて入れるのが我が家の常識である。
香ばしくて、歯ごたえのある餅が味噌汁に浸っている。
このごろは、オヤジ殿の赤味噌へのコダワリが薄れたためか
信州や白味噌も使えるようになった、と、おふくろ様。
やはり具だくさんの味噌汁には、まろやかな味噌が合う。
私の好物は、なぜか正月料理のクワイ、
ひりょうず(ガンモ)である。
クワイは私が皮をむくのが決まりだ。 芽の格好良さが大切。
特に高価な以外、たいした特徴も味もないのだが・・・
なぜか美味しく感じる。
元旦、オトソを交わすとき、これがないと始まらない。
ひりょうずはかなり特殊で、ギンナン入りのもの。
このごろは、ユリ根も好きなので、全部入りとなった。
その流れで、得意料理の大型茶碗蒸しにも両方入っている。
当然、ギンナンの方も入っている・・・
スプーンの大きさから分かると思うが、どんぶり並みの大きさ。
このボリューム感で、メインディッシュではないのだから
胃袋がいくつあっても足りなさそうな感じだ・・・
弟の好物は、ギョウザとピザ。 きれいに韻を踏んでいる・・・
ギョウザは、ほとんど油を使わず電気で蒸し焼きするようになり
だからといってカリッとしていないわけではない。
具がパンパンに入っているのは、つつむ技が向上しているためだろう。
ピザは相変わらずパン種(だね)をベースにしている。
昔はていねいにミートソースを作っていたが、ひき肉とベーコンなどが
ダブってしまうので、このごろはトマトペーストを使っている。
やたら伸び、ボソボソして美味しくないモッツァレラ系チーズは使わず
一般的なとろけるチーズをトッピングし、香ばしく焼き上げてある。
ほかのお惣菜などと同様に食卓にのぼるので、とり皿は和風だ・・・
生地は酵母(ドライイースト)入りで、基本的にパン種仕立て、
ふんわり優しい舌触りである。
基本的に我流で、30年前に作り始めたころとあまり変わっていない。
1980年ごろといえば・・・ウルトラマン80をやっていた茶の間、
当時の山口県で手製のピザを食べていた家は、ほとんどなかったと思う。
貧乏だった我が家で、ケーキやパンを焼いていたおふくろ様が
いよいよピザに乗り出していたのだ。
私がオリーブオイルベタベタのピッツァが食べられないのは、
この時差によるのだろう。
おふくろ様の得意料理というのは、基本的にオヤジ殿の好みの料理である。
もしくはオヤジ殿のかたよった好みを改善する努力のタマモノでもある。
ノンベというほどでもないから、ご飯ものが好きなのだろう。
戦中派でもあることだし。
少々具が多すぎた巻き寿司。
どういうわけか、おふくろ様のおふくろ様、オバーマが得意だった
白身魚のそぼろが入っていないのがナゼかは、まだ問うていない。
なにはともあれ、一口で食べられる直径にすべきだろうな・・・
高級な真珠貝の貝柱が入った炊き込みご飯。
真珠貝の貝柱は、手作業で取り出すためか、とても高価だ。
松阪牛同等の値打ちといっても過言ではない。
必要以上に癖が強くないので、とても食べやすく味わい深い。
真珠産地ならではの、味である。
季節限定、豆ご飯。 当然冷凍して保存している。
黄色く熟したエンドウがとてもホックリとして美味しい。
薄塩味がきいて、おにぎりにしても乙である。
私にとって、ふだん絶対に思いつかないレシピ。
だって、豆ご飯は普通のご飯と同じでオカズが必要だから・・・
ともあれ
主婦にとって毎日のオミオツケ、味噌汁の味が大切である。
前から申し上げているが、私は味噌汁好きだが、シイタケ入りが格別。
やはり、帰省するとシイタケの味噌汁が多い。
生ワカメの味噌汁は、やはりワカメの生えている産地ならでわ。
茎(くき)の入っていないワカメは、どうもパチワカメな感じで
味がしない、物足りない味噌汁である・・・
市販の塩蔵ワカメでも茎が入っていなくて、どうも味がないのだ。
ちなみに
出汁にはあまりコダワラズ、普通に出汁のモトなんかを入っている。
ただ、私が旅立つ朝などは、カツオだしだったりする心遣い・・・
気づかないフリをして島へ帰るのである。
シメは、魚料理。
これはほとんど料理ではない・・・鮮度の見立てと手早い調理に尽きる。
先日、南伊勢町の海辺にある、半端な鮮魚店で見立てたマダイの刺身。
皮は湯びきしてある。
タケノコメバルやソイまじりのメバルや、ガシ(カサゴ)もあったがマダイを選択。
一番鮮度が高く、天然のマダイということに注目した正解の一品。
なぜか安いスズキがあったが、このごろ伊勢近辺で販売されるスズキはオカシイ。
ヒラスズキまがいな体形や顔つきながら、特徴から明らかに太ったスズキであり
しかもスズキでありながらメバルより安価である点は、怪しむに十分である。
近所のスーパー、ピアゴ(ユニー系)で見立てた
激安一尾58円のアジのハンバーグ。
他、一尾398円の活きのいいサバもあったが、サバは調理が限られるし
少々青臭さが強いので、年末年始に食べ飽きたブリとあまり変わらない。
白身魚がないなかで、さっぱりしていて応用の利く魚・・・だったのだ。
ちなみに・・・帰省中のメインディッシュ食材の見立ては私がする決まりで
好みと見立ての鋭さの両立が問われるわけである。
しかも、オヤジ殿の好みは曲がっていて、煮魚はNG、
塩焼きやステーキなど、食材が独立して調理されていなければ、
メインディッシュとは認めないというワガママっぷりである。
ステーキ肉をチンジャオロースにしたい私の意向は無意味なのだ。
我が家の食卓は、まことに甘くない。 砂糖も塩分もひかえめだけに・・・
メバルを選択しなかったのは
メバルの中に懐妊しているメバルや、タケノコメバルが混じっていて
魚屋のサボり癖が気に入らなかったからだ。
しかも小型ながら天然マダイの鮮度と価格が、はるかに魅力的だったのだ。
鮮魚は、目の透明度がどうこうというのではなく、不思議と雰囲気で分かる。
鍋物の具に火が通っているかどうかが、見て分かるのと同様の感覚だ。
以前作った、もらいもののアジで作ったハンバーグを参考にして
ネギとショウガ、少々の豆腐を加え、片栗粉で練ってこさえてもらった。
ニオイ消しと旨みづけに、味噌を加えるのはおふくろ様の知恵だ。
豆腐を加えることで、たとえ焼きすぎても、再度火を通しても
やわらかさが残る仕掛けだ。 入れすぎるとボロボロやわやわになる。
忘れていたが、わずかにニンニクを入れると、和風にも洋食にもOK。
和風の野菜入りあんをかけてもいいし、ケチャップベースのソースを
かけてもイケルわけである。
あらは当然、ウシオ汁になる。
このごろ、酒をのむ最中に汁物で水分補給するのが好ましい。
酒と汁は、腹の中が水浸しになりそうだが、そうでもない。
あとで水をガブノミするより心地よく、あつあつの汁物に体が喜んでいる。
鮮度の良い魚のあらは、とてもいいダシがでる。
のっているのは柚子。
ところで
おふくろ様の料理で、これまでクチビルが腫れたことはなかったが
今回は違っていた。
料理や栄養価の問題でなく、私の体質が変わったことと
食物の量が多いことに加え、3週間も両親と同居したため
不自由はないが、自由でもないためか・・・
精神的なプレッシャーが多かったのかもしれない。
帰ったその晩、山海荘へ赤福を届けにいったまま
ご相伴になった夕食を食べたとき・・・これだ!と感じた。
体が喜んでいる。
内地では味わっていない感覚だった。
味付けは相変わらず甘めすぎだが、異常低温で死んだ魚に
キビ畑のわきに生えていたタカナの料理だったが・・・
なんかこう
とても鮮度がよいためか、体にパワーが流れ込む感じがする。
味覚とは違う美味さが感じられる、とでもいおうか。
本来なら、帰省して食べたかった味わいであったが
期せずして島で味わうことになろうとは。
気になることがある。
帰省中の買い物などを、あとから宅配してもらったが
そのなかに手紙があった。
「楽しい時間を ありがとう」
死を前にした言葉のような気がする・・・
今回はあれこれ葬式がどうとか、へそくりはココとか聞いたが
何か死に急ぐ理由でもあるのか、不安でもあるのか少々妙だった。
確かにオヤジ殿は、とても話し方がスローになっている。
もともと、仕事人間だったから、今はご近所付き合いもなく
おふくろ様以外と話すことはないそうだ。
一応、それはイカンことだと釘は刺しておいたものの、少々おかしい。
私もこのごろ、肝臓が弱ったらしく、顔がほてることが多い。
酒を飲んだり、ちょっと気温の高低差があると、顔がほてって仕方ない。
歳をとると死は身近になるものの、あまり隠しだてしないでほしいものだ。
それにしても
伊勢から帰ってしばらく、自由と睡眠が足りなかったためか・・・
ほとんど一日1、2食で寝てすごす日々であった。
ま、どうせ外はほとんど曇り時々雨なので問題ないか・・・