歩き始めると

 


南国の梅雨明けは清々しい。

来る日も来る日もスッキリ晴れて、空が素晴らしく青い。

気をつけるのは、昼夜かまわずスコールが来ることだけ。

暑いので、当然窓を開けて寝ている、

すると、突如ザーッと来るので、その音で飛び起きて

窓を閉めるわけである。

 

同居人も少し増えた。

ワモンゴキブリがやたらにやってくるようになった。

どうやら、ビール缶のニオイが好きらしい。

毎夜カサカサカンカンうるさいが、ホイホイにもかかりやすく

分かりやすいヤツである。

もちろん、内地のクロゴキブリより一回り大型!しかも派手。

草刈したら、庭先には巨大なオオジョロウグモがやってきた。

そして家の中には、アシダカグモの若いのがやってきた。

どちらも日本最大級。

 

アシダカグモと鳴くヤモリ、ホオグロヤモリはキャラがかぶっている。

どちらかが退くのだろうか?

しかも、家のどこかで卵がかえったようで、

子ヤモリがチョロつき始めた。 

親ヤモリも子ヤモリを追跡することもあるし、

クモだってヤモリを襲わなくもないだろう。 要チェックだ。

 

天気が良い日は

集落の中を歩くと、やはり変な視線があるので通過し

その外側のキビ畑やら、海やら磯やらを巡ってみる。

家の中より、少し風が涼しい。 炎天下でも海辺はなお涼しい。

 

梅雨明けから、台風前限定の真っ青な空が広がり

あ〜、南国へ来て良かったなぁ、これが今は地元なんだなぁ・・・

とかみしめてみたりする。 のだが、まだまだ実感はない。

 

あんまり居心地よさもないので、荷もほどいていない。 

 

日差しさえ避けられれば、常に風が吹いているので

外の方が涼しい家でもある。

 

先日見つけた、アジサシの巣へ行ってみた。

南国の磯は縄文の矢じりのような岩の連続で、少し歩きにくい。

南大東で鍛えてもらっているので、一応手を使わなくても歩ける。

 

100mくらいの行程なのに、時間はそこそこかかるものの

ほとんど疲れることもなく往来できる、便利な磯。

魚も釣れそうに見えるけれど・・・

視線を左に移すと、すぐ平土野(へとの)の沖堤。

そこにはチットモ竿の曲がらぬカゴ釣りのオッサン達。

 

うぬう、竿の出し損っぽい場所だ。

 

シモリ(沈んだ岩、さんご礁)の発達具合も特殊で、

波が極端に強かった時期と、そうでない時期が、ここ数百年くらいで

コロッと入れ替わったような地形である。

今はゆるい時期のようで、奇妙な棒のように立ち生えているさんご礁が

ポツポツあったりする。 潮通しはイマイチか・・・

 

そうこうしていると真っ白いアジサシが怒って

ギーギー叫びながら、コチラめがけて一直線に飛んできた!

思ったとおりである。

 

島でブログを書いている人の記事を見つけ、

沖堤にアジサシが飛んできた、というのがあったから、

もしや?と思ったのである。

沖堤は他にもあるが、アジサシが居そうなところは限られる。

 

遠目には見たことがあったが、美しいアジサシ

エリグロアジサシである。 名づけのセンスは最低・・・

お母さんが襟元のポイント洗いをサボってしまっている

お父さんのワイシャツの如き、情けない名だ。

 

なぜクロエリにしなかったのだろう。

丹下左膳のイメージが強かったとでもいうのか・・・?

南国に丹下左膳もあるまいに。

クロエリと名のつく千鳥などが居るので、

ちっぽけなオリジナリティでも求めたくなったか・・・

 

この名づけの法則だと、クロハラアジサシは

ハラグロアジサシになるのである。

エリグロ呼ばわりにおいても、

後姿は聖なるザビエル風であるのは、救いか。

 

さて

ようやく絶好の撮影ポイントを見つけたと思ったら

いきなりその夜、横になってしばらく・・・のどに激痛!!!

 

のどの左奥がみるみる腫れて大きくなり

しまいには喉をふさぎ始めたので、じっとしていても激痛だ。

もちろん水も飲めない。

激痛で飲めないのもあるが、鼻腔を閉じられなくなり

鼻へ逆流してしまうのである。

救急車を呼ぼうか・・・かなり悩んだが、ネットで調べたら

喉全体が腫れたら呼吸困難とあり、そこまでではないので

痛みに耐えてみることにした。 まー根っからのマゾだから。

 

もちろん、一睡も出来ず。

風邪の症状、鼻水との闘いである。

痛みをこらえて○!△■◎#、途中から血と変な臭いがする。

どうやら、化膿も同時進行しているらしかった。

しかし数時間で???

 

あくる朝、

徳州会病院へ行ったが、なんだか一時雇いのニーチャン的な

医師が担当で、痛み止めの頓服と、食後一錠飲むだけの

ダーゼンという炎症を和らげ、たんを切る薬だけを処方してくれた。

8度以上熱もあるのだが・・・それに化膿が進まないのだろうか。

ましかし、風邪には特効薬はない。

 

その夜、激痛を抑える頓服も効かず、鼻水がのどに流れ込み

30分おきに息ができなくなるから、起き出しては

痛みをこらえ○!△■◎#・・・・

 

二晩まるまる徹夜である。

 

三晩目はやっと眠られた。

鼻水でのどがつまって咳き込み、定期的に目覚めたけど・・・

寝ないのは体も精神も慣れっこで、だいぶ回復した感覚がある。

普通の風邪のときと同じに戻ったのである。

のどの痛みは60%減。

ニーチャン的医師の読みは素晴らしい。

 

のだが

熱は下がったようで下がらず、微熱が引っ張っている。

別棟のトイレを目指すと、久々にめまいがする。

 

四晩目、今度は咳と腹痛で、また眠れず・・・

扇風機をつけると冷えすぎ、消すと汗がダラダラ出る。

うちわ作戦に出てみたが、どうも体温が上下しているようで

外気温が下がってきている夜半でも、風が肌寒い感じのときと

暑く汗が噴き出てくるときが繰り返される。

冬場の風邪をひいたときと状態はとても似ているから

やっと風邪らしくなってきたのかもしれない。

 

まだまだ、島生活5ヶ月目

気候に体が馴染んでいないから仕方あるまい。

 

日食に近づくにつれ、アジサシをみつけたころより雲が増えた。

スキッと晴れない、モヤッとした晴れである。 なぜか暑さは割増。

湿度も上がっていないのに、暑い。

まだ70%台前半なので、すこしカラッと気味くらいである。

不思議なことに、夏になってから、南向きの風が吹きっぱなし。

夜明け直後と宵の口に一瞬止むが、ずっと南から吹いて、涼しい。

これまで南東だった風が、大陸のある西向きになると雲が出る。

太平洋高気圧は気象現象ではなく大気の大循環現象なので

赤道あたりから上昇した空気が、水分を抜かれて太平洋へ降下する。

東風で雨が降らないのはそのためだろうが、

西向きになると、いきなり大陸から雲が流れ込んできてしまう。

 

どうせ雲の多い晴れ間は撮影できないので、休まれてちょうどいい。

 

一方、

島へ来ている洞窟系M住さんが、日食を見られるか気になる。

彼は晴れ男、けれど僕は春からずっと曇りそうな予感がしている。

例年ならド晴れな日のはずだが、もう例年はあてはまりそうになく

昨年末からシーズンが派手に往ったり来たりし始めている。

 

M住さんには悪いが、日食はドーデモいいので

アジサシのために晴れたまえ!

ザビエル夫妻に会いたいのだ!

 

五晩目はやっと眠れるようになり、時折咳で目覚める程度になって

ようやく夏風邪も落ち着いてきたようである。

エヘン虫との同居状態だ。

 

やはり日食に向けて、天気は悪化し続けていた。

雲がモクモクと空をおおっているので、撮影には不向き。

風邪引きなので、海水浴というのも微妙だし、西風でシケている。

まぁ、まだまだ睡眠不足で頭痛もするし眠いし、ゆっくりしよう。

あーもう引っ越して一ヶ月、ほとんど出かけないで過ごしてしまった。

もう少ししたら、出かける気力が出そうなので、それまではお休みだ。

 

興味はなかったが、せっかくのイベントなので、皆既日食を・・・

描いてみた。

細かいことは気にしない・・・雰囲気、雰囲気。

普通のカメラで、広くコロナが撮影できることはないらしい・・・

一応念のため、撮影してあった月面をうっすら合成してある。

(何のための念か分からぬが)

 

なんだか、インチキストとしての魂がよみがえったような。

 

いよいよ22日午前

さしものM住さんも、泣き出しそうな曇天に

宿でウダウダしているところへ合流。

Oちゃんと、タクシーのM山さんも一緒になってウダウダが花盛りだ。

 

向かう道々、赤や緑のフィルターを手にしている変なオバチャンや

できるだけ北部で、食が大きい場所を目指すカップルとすれ違った。

 

マスコミの過度な報道で、変なことになっているな・・・

 

しかし、思いもよらぬ曇天のチカラが発揮された。

デュワッ!と目にするような日食観察用めがねとか

撮影用のフィルターなどは、とりたてて用意していなかったが

普通に見え、普通に撮れる状況になっていった。

おー、偶然にしては便利な雨雲・・・

周囲は暗くなり、街路灯がついて、すーっと涼しくなる。

 

ピークを過ぎたころ、低い雲で写らなくなったので

宿へドヤドヤとお邪魔して、NHKの特集番組を地デジで見つつ

やっぱり船が一番いいかもな、

いやいや、やっぱり動かない大地の上で見たいぞ、などと確認しあう。

 

やがて雨もパラツキはじめた。

 

悪石島は雨・・・予感は的中だった。

数十万円でテントとか体育館生活を強いられたツアー客も

その時間は竜巻警報で避難指示まで出てしまったらしい。

ま、地球に風邪ひかせたのは我らなんだから仕方ないな。

陸地では、フレアやコロナは観察されなかったようである。

 

ともあれ

今度は本当の台風シーズンである。

スッキリとした奇跡のような晴れ渡りは、もう終わりらしい。

今度はココロの晴れ渡りを期待して、今日もウトウトしよっと。


ではまた