奄美大島は

やっぱりナンカすごい − 後編

 


奄美野鳥の会事務所に顔を出した。

会とは図鑑写真などで縁があって、案外世間は狭い。

新たな会長のT飼さんらが、オオトラと呼ばれ酔っ払い扱いされている?

オトラツグミの調査準備にアタフタしている中、K口さんをピックアップして

キンサクバル(金作原)へ向かった。

 

K口さんは元土建業で自然破壊側だったはずが

今はネイチャーガイドというから、人間変われば変わるものだ。

 

ひょっとすると、この構図・・・

稼ぐだけ稼いだら自然が壊れ、自分には開発どころではなくなったから、

然るに、先進国とそうでない国の環境破壊問題にそっくりだ。

稼ぐときには知らんぷりだった人間が・・・今更、立場を変えて保護に回る。

やらぬよりマシだが、そりゃー今働く者にとって、皆目納得イカンだろう。

 

この際面倒だから

破壊を抑え、バランスをとる自然保護側の人間が現れた・・・と解釈しよう。

ガラパゴスにしても自然を観光にして食べてるしなぁ。

 

それはそうと

K口さんは見た目や話し方の優しい感じとは反対に

全く男気の塊のような人で、M山一家とも切れぬ仲らしかった。

そんな持ちつ持たれつのK口さんに付き合って、M山さんも

名ばかり?野鳥の会会員になったという。

大島だけでなく、退職後に自然に目を向けはじめ

野鳥の会に入る方がボチボチ居るようである。

 

そんな人らは、ゼーンゼン鳥の名も知らぬから少々困り者だが

一週間に一羽ずつ覚えてもらえば一年で52羽覚えられるから

渡り鳥などをカレンダーにして、今週はこの鳥を探すウィーク!

みたいにしたら面白かろうと思う。

 

ましかし、そんなこんなで、僕はガイドしてもらえるのだから

あれこれイキサツは置いといて、おおむね有難いことだ。

 

金作原の林道はメジャーな自然観察ポイントらしく

ネイチャーガイドの方々が、先々でグループを案内されている。

観光バスまで乗り付けて、観察している姿はさすがにまいった。

人が多すぎて、生き物はほとんど逃げてしまう・・・

クロウサギなどの動物は、マングースや野猫、野犬の影響で

ほとんど姿を見ない場所とのことだ。 大島もやはり厳しいところは厳しい。

ただ、足元には最近増殖中らしい、イノシシの掘り跡がボコボコしている。

 

思ったより感動したのは、大小シダの多さと、葉の美しさ。

基本的に動かないモノは興味が無いのだが、シダの葉に魅せられてしまった。

恐竜時代のような光景を生み出す、シダの葉の形がどうにも気に入っている。

とんだところで、シダ好きの意外な自分を発見することに。

大東神社の木漏れ日のもとに咲くスイレンに次ぐ発見。

 

ヘゴと呼ばれる、シダに対して大木?というのもナンだが(木の方が後輩)

巨大な種類で、雰囲気の違うヤシみたいなヤツである。

すんごく巨大で、10m近いとんでもない成長力。

葉はとても柔らかい緑で個性的な形、陽に透ける姿は他に代えがたい。

 

オーストンオオアカゲラとコゲラ以外、ほとんど鳥の気配は無いが

シダを見るだけで癒されていく感覚が不思議だ。

キツツキは根性が座ったヤツが多いのだろうか?

(胸が赤いのは婚姻色?)

 

ほかに

Oちゃんがハマっているテンナンショウや、キノコのように

養分を地中から吸い取るだけの植物が咲いていたり・・・

妙な表現だが、自然が生き生きしている。

(やはり名前は即刻忘れた)

 

大島には、田んぼが残っている。

奄美・沖縄は政策によってキビ畑に変わってしまったが

細々と残っている場所がある。 今は田イモ植えのシーズンだ。

田イモは高級食材。

ナンともいえない優しい甘さとトロンとした粘りが

不思議な風味をかもし出す、甘いサトイモ的食物である。

 

まーそれはそうと

田んぼは万年湿地帯であり、自然の理(ことわり)ならば

時とともに乾燥してしまう運命の場所が、ずっと維持される素晴らしさ!

里山の根源には、人の手の造る湿地帯が欠かせない。

湿地帯は生き物の宝庫、昔は蚊が多くてズルズルで嫌いだったが

今は湿地好きといっても過言ではない。

蚊やらトンボやらには昆虫食のウグイス科の鳥たちが、

ドジョウやらコブナやらには、サギ科なんかが寄る。

 

田の脇には、小さなヨシ原があって、ヨシを食べるネズミがいるらしく

上空にはチョウゲンボウがホバリングして狙っている。

 

おー、奄美にも里山の風景がある! 動物も濃いようだ。

キビもミカンも農薬をカナリ使うらしいが、ここ秋名は農薬が少ないのか?

 

ふと

あぜについばむハクセキレイの中に、白くて、福助みたいのが

混じっているのに気づいて車を止めてもらった。

ファインダーで見ると、やっぱり福助だ・・・福助セキレイだ・・・

キビキビしたセキレイなのに、なしてユルキャラ・・・?

(横から見ると福耳に見えなくもない・・・)

後ほど調べたら、福助ではなくホオジロハクセキレイだった。

なげーんだよ!なんで別の鳥の名、ホオジロを冠して

さらにハクつけて、やっと最後にセキレイなんだよ、遅すぎだよ!

 

セキレイ福助じゃダメか?、いやダメだな。

セキレイじゃなくてセキレイ的福助になっちまうもんな。

 

やっぱ、福助セキレイがシンプルでピッタリだわ。 決まり!

だが事実は曲がらず、ホオジロハクセキレイとして生きるのだ、

今日も福助なままに。

 

(参考:ハクセキレイの横顔)

 

福助の追究はこのくらいにして

人が多くて鳥の姿がない自然観察の森の話題をすっとばし、

奄美フォレストポリスへ飛ぶ。

大和村が誇る、深い山間部に造られた観察と宿泊の双方を実現した

自然好きにはたまらない公園だ。

今は委託を受けて、高倉産業T社長が事業を仕切っている。

バンガローや、ハブから守られたテントが常設されていて

事務所では、なかなか美味しい食事も用意されている。

(目の前にヤマガラがやってくる)

夏は流しそうめんをやっていて、なかなか人気があるようだ。

T社長は以前大雨で池があふれ、もともと大和村が入れた池の鯉が

川に逃げるのを防ぐために、鯉を池から出した。

殺さずに、できるだけ譲り渡して、残りを自分で飼っている。

池はこうして、天然生物のユートピアになったようだ。

 

ここの鶏飯(けいはん)風ラーメンはイケる。

ドロドロの脂ラーメンは食物と思えないが、ここの鶏スープのラーメンは

なかなか美味しい。 更に、ごま油の風味が食欲をそそる。

腰のある冷凍麺だから、カンスイの臭いもせず、とても素直で食べやすい。

 

丁寧に手入れされた園内は、さながら深い森の中に現れた里のようで

珍虫ハネナガチョウトンボが生息する池には、フナ、メダカ、ドジョウがおり

山中なのに大型のアオサギが飛来する。

よくよく見てみると、懐かしいミズスマシがクルクル泳ぎ回る。

 

鳥は、いつも山の中に居るわけではなく、餌をとりやすい森の端っこに寄る。

森に隠れ、湿地や草原で餌をとるから、絶好の観察ポイントでもあるのだ。

まーその・・・今は特に人出が少ないことも特筆すべき・・・?

丁寧に刈られた草原には、警戒心が強い鳥が散歩している。

(左:シロハラ、右ビンズイ)

シロハラが縄張りを主張するような素振りを見せたり

ビンズイ、ツグミの群れが草原を飛び回っている。

姿はチラッとしか見えないが、そこここでルリカケスがジャージャーと

やかましく鳴きわたる。

 

もちろん

メジロ、アマミシジュウカラ、コゲラ、キセキレイ、ウグイスなど

小鳥類も標準装備。

アカショウビンや、オーストンオオアカゲラも姿を見せるという。

春秋、渡りのシーズンが楽しみだ。

 

山の深さは、奄美群島では圧倒的。

アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、ケナガネズミなど

哺乳類も生息する豊かな密林。

これわぁ〜直行便もあるし、釣り場も豊富、ファンが多いはずだと納得。

 

ただひとつ、徳之島は平地が多いので、鳥を見るのは簡単のよう。

さっき、散歩に行ったら、ヤツガシラという珍鳥が電線にとまっていた。

 

そうそう

大浜海岸は名瀬市民の中でも夕日マニアの集まるところ。

カフェもあるのだが、閉店時間がケッサクで、サンセット後30分。

しかし名瀬市民はもっとシビア。 日没直後に一斉撤収!そさささーっと

真っ黒くろすけ風に車が・・・あっという間に居なくなる。

大島の有名サイトを営む、写真家B府さんとも出会うことができたし

京都からやってきた、旅する若女将?D井さんにも会えた。

D井さん、写真を送ってくれてありがとうございます!

 

つごう、

看板に書いちゃったから30分間はボーっとするしかないカフェのご主人。

やっぱり暇だからか?M山さんとは懇意なのか?話がはずんでいる。

せっかくなので・・・と、初体験サトウキビジュースをいただいた。

正直、味はどんなんだろ?と怪しんでいたが、一瞬で吹き飛ぶ。

独特の青草っぽさがとても新鮮で、コクのある甘さと好対照。

ジューシーだけど味が濃く、甘いだけではない特有の美味さ。

これは飲んでみるしか表現のしようがない・・・。

目の前でキビを絞ってくれるので、ビジュアルとしてもイイ感じだ。

多分、冷凍しても新鮮な味は再現できない、本当にココだけの味。

 

夕日は別として

奄美大島はドーンと行ってみて間違いない島。

自然好きなら、リピートしても飽きない島。

最初は手ぶらで、次はカメラ?アクアラング?捕虫網?釣竿?

楽しみ方色々で、冬以外なら南国の遊びはほぼ何でもOK。

なっかなかの島である。

釣り人でなければ、自然テンコ盛りの大島に決めていたろう。

 

え?釣り人が決めない理由?

それは簡単、風やシケに合わせて小回りがきく島が住みやすいから。

豊かな釣り場も、条件があってこそ、条件を選べることがやっぱり第一。

それは多分動物観察も同じかもしれない。

 

ともあれ

名瀬は那覇のように奇妙な都市化をせず、程良く便利な島。

なので周囲は、どちらを向いても自然のデパートである。

旅人にはおすすめ、何年もかけて制覇するのが楽しい島だろう。

 

徳之島にはいない

ルリカケスやオーストンオオアカゲラを観察しに、また出かけよう。


徳之島から大島までは2,980円と格安。

M山さん一家には、とても厄介な野良オジサンだろうけれども

またお邪魔させてもらおうかな・・・

 

M山さん、M山一家の方々、本当にお世話になりました。

これからしばらく、いろいろお世話になり続けさせていただきます♪

写真のこととか、家のこととか。 よろしくお願いします!


ではまた