島にはたいがい、オトナなワケがある

 


雨が続いていた。

島へ着いた日の夜から、友人宅へ転がり込むことに。

交渉してくれた友人らの情報では、居住は危うそうである。

まー、当面Yさんの家に居候しようと、腹を決めた。

 

名瀬(なぜでなくナセと発音)に済む大家さんがオトナな理由、

墓参で入居が一ヶ月先送りとなり、荷も入れられなくった。

電話では入れちまえ!みたいだったYさんもコロリと姿勢を変えた。

発送後、自分も荷も島に着いてから配送先(引越し先)を変更・・・オトナ?

 

すんなり電話で配達先の変更を受けてくれた女性だったが

配達員のオジサンと全然連携してない・・・それぞれが独立していて

日程の変更も、配送地変更も、全部僕を介して2度伝えることに。

独立独歩 お、オトナだ・・・

 

島に入って6日、いよいよ配達日。

集荷時には、用心のため必ず封のナンバーとチェックするように、

といわれた伝票の番号だったが、配達先変更していても本人確認もなし、

もちろん封はどこへやら、荷物はバラでやってきた・・・しかもクール便?

合理的・・・ オトナだ・・・ 信用社会だ・・・

荷物は雨にぬれ、雨男らしい引越し風情に満ちていた。

オトナは風情を大切にする。

が・・・荷物の中央で、しっかりと除湿機を回すのもオトナだ。

 

心配をよそに

Yさんはオトナの付き合いがあるので自分の家にはまったく居ず、

家は元々ほったらかしだったため、居候しても互いの生活には

影響が出ないことが分かった。

ちなみに、到着した日の夕方、さっそく二人で中掃除。

が、謎のメーカーのサイクロン掃除機は吸引力とは関係なく、

吸い込んだホコリがクルクルするビジュアル系・・・

掃除しない、洗濯物もたたまない、流しはバクテリアと共存。

オトナと言うか、昔ながらの島のオトコ・・・といった方が正しいか。

奥様が居ないと、生活が成り立たんようだ。

 

島のオトコは自炊をしていないのか、自炊するのが珍しいらしい。

  

島の生活で困るのは、基本となる食料だ。

無人販売所が多いが、雨が降りが続いていて

その上、内地で言うところの国道沿いに相当する県道沿いに

当然、路駐する標準仕様となっている。

無人販売所の方が安いと思うが、当然、有人販売所のほうが

品揃えは多い。

無人は一品勝負が多く偏りがち、今は島ミカンがやたら多い。

シークワーサーやポンカンのたぐいだが、種類は豊富。

買わなくても、生えている人んちでナンボデモ食べられる。

 

期待していた島の新鮮野菜はというと

小玉のキャベツをいただいたが少々硬く、味が薄い。

歯茎から血が出そうなくらい・・・ 塩もみしても水分がでない・・・

石灰岩のカルシウム分のためもあるが、苗のうちから豊かな土地で

育ちすぎているようである。 塩もみしたのに甘みがない。

苗の間、水分や養分をギリギリにした方が、強く大きく美味しく育つ。

小さいころから養分も水分も豊富だと、体の中に溜めないみたい。

島の土地を肥やして使うのは大変なことだが、陽光、水分、肥料分を

植物が活かしきれていない・・・もったいないことだ。

 

一方、蛋白源の事情は特殊だ。

 

品揃えが良いと評判のAコープですら、鶏のモモはあるが

ムネ肉は品切れ・・・といった波がある。

島の蛋白源は豚肉がメインのようで、商店でも豚肉は安かったりする。

心臓や肝臓など、その他の部品もそろっている店があるし

いまだに肉屋さんも健在。

乳製品は実質内地から輸入なので、船が来ないと売り切れに

なってしまうという。

お豆腐は島内で生産されており、納豆は輸入だ。

 

魚はほとんど壊滅状態。 ノルウェーの冷凍サバが堂々としている。

唯一島らしい魚は、グルクンの仲間、クマザサハナムロが並ぶことだ。

でも、クセはないが味も薄いので、人気は微妙なよう。

他、煮干の巨大版で出汁用のコアジの煮干?があること。

でもコアジ出汁は鹿児島か南九州の文化だろう。

出汁にするよりずっと食べがいのある保存食材である。

お店によっては出汁用の焼きえびも売っていたが

オトナの理由で、消費期限を一年過ぎていた。

袋からえびの臭いがするので、チンしたら思い切り湿気がでて

カラリと食べられた・・・マヨネーズがよく合う。

 

Yさんちの冷蔵庫にはもっと恐るべきモノが無期限に眠っていて

半分ダークマター化しているように見える。

期限切れだが、辛うじて出汁入り味噌は健在。

他は・・・発掘するのが恐ろしいが、我が食材と同居させるのも恐ろしい。

ど、どげんしょ・・・お、オトナは干渉しない、く、クールだ・・・クールに・・・

 

当面の課題は、やはり予想通り蛋白源の確保だが

思った以上に店やスーパーに並ぶ野菜の鮮度が低く、品も悪い。

やーれやれ、自炊技と調達技の双方を試される場、徳之島。

やっぱり農家か自給自足が基本なんだと思う。

「普通」の水準自体がたくましい島だ。 女性がたくましいのだと思う。

 

好き嫌いの多いOちゃんが、勢いフリカケと缶詰生活に走るのも

無理からぬ状況と分かる。 買い物は専ら品物を探して歩くことだ。

食材は文字通り馳走で、走り回り、足で調達する必要がある。

多分、タイミングとコツをつかめば「魚以外は」何とかなりそう。

  

南日吉商店街のヤオチュースーパーのポーク缶はとても高価だった。

幸い、島ではスパムより減塩仕様で300円〜500円くらいだから

保存がきくことを考えれば相当お手ごろ感がある。

もちろん安いのはワケアリ、消費期限がオトナな品を万年タイムセール・・・

というわけではない、メーカーによって仕入れ値が違うようで一安心。

 

問題の魚。

 

これはまだ開拓準備状態だ。

地元で有名店の「ツリケン」で聞いてみたが、今はミズイカとチヌの

シーズンなんだが・・・ということで、が・・・な感じだそうである。

オトナとして、その先は察することに。

 

夏はヒラアジ、冬はチヌ、らしかった。

「冬」の表現は微妙で、真冬でも晩秋というイメージがマッチする感じ。

コオロギやクツワムシが鳴き、その上カエルが健在。 まぁ晩秋手前かな?

ちなみに春は、冬がなんとなく気分しだいで夏になるコノゴロのようで

雨が降れば寒くセーター、日が照ると暑くTシャツな季節で

釈然としないうち、4月には若夏が来てしまうよう。

 

今年は2月、3月の雨が多く、水潮で魚やイカが散っているのだろう。

(水潮:川からの淡水で薄まった海水)

ツリケンおすすめ、山集落と平土野(へとの)のチヌポイントを巡ってみたが

どこの釣り人も雑魚の手ごたえすらないのかマッタリしている。

まー、これだけ毎日雨が続けば・・・

 

あ、そうそう

島の移動はオトナの「だろう運転」が大切。

県道を走るカブは、そのうち急に右折するだろう、

農道のわき道を幹線へ走りこんでくる軽トラは、絶対一時停止しないだろう、

枯葉(南国は紅葉しないので)マークの車はウィンカーを使わないだろう、

集落の路地を入ると、なぜか両側駐車で、通りがふさがっているだろう、

前を走っている車も、向かってくる車も、予想外の動きをするだろう・・・

キビを積んで爆走する年代モノのトラックからはキビが飛んでくるだろう・・・

とても大事で、かなり的中する「だろう」だろうと思う。

 

カルチャーショックはないが、何事も全てユルく考えると想像しやすい仕組みだ。

みんながユルさを共有、ユルく生活して、無駄とかもったいない、もユルめ。

突き詰めないし、気負わずユルいこと自体が島の生活の根幹・・・?

ユルむことこそ島ではオトナということらしく、伊仙町Y本課長からも諭された。

なーんでも受け入れる、それがオトナよ・・・だって。

かくゆうY本課長は、肝臓でなく心臓で入院していた・・・病まで受け入れるん?

 

しとしと続く雨も、やがては晴れる。

Oちゃんからの電話で、役場でプリンターとパソコンがトラブっているという。

島に来てから初めて、伊仙町へ赴いた。

今週は議会ウィークだが、幸い議会寸前に滑り込み、町長や企画課長とも

会うことができた。

パソコントラブルを解消・・・はできなかったが、ケリをつけて

大潮の引き潮だが、近くの一級釣りポイント、鹿浦漁港を偵察し

島一番の都会、亀津のベスト電器で買い物後、太平洋岸を北上することに。

移住予定の母間集落には、山海荘のオバチャンおすすめのスーパーがある。

身を寄せる天城町の浅間集落は東シナ海側だが、この際回ろうと。

 

ふと県道沿いの駐車スペースに無人販売を発見。 カーナビでは井之川集落。

大雑把な情報は入っている。 一応、国土地理院ベースだから。

(港へ行くと・・・雨でも晴れ晴れとした画面になる)

 

初めて島の無人販売をのぞいてみた。

なーんかこう、怪しげな場所に並ぶ自販機の前で迷っているような・・・

少々、気恥ずかしい感じがする。

 

巨大キャベツだけ、直に150とマジックで書かれている。

ほー、マジックって魔法だよ、本当にキャベツに書けるんだ・・・妙に関心。

ってことは、多分ワンコインしゃく円ってとこだろうぜ、っちきしょうめ

とココロに言い聞かせて200円を鍵付きの貯金箱みたいなのに投入。

島ミカンと、業務用ほうれん草(ネーミングbyぶん)を購入。

おー、オトク感あるある、と謎の納得感。

 

続いて

母間集落のスーパーとくやまの品揃えは巧みで、店舗規模は小ぶりだが

まったく不足を感じない、いやむしろ豊かさを感じる。

すごいぞ母間集落、これは住みやすい!と思わせるに十分。

帰り際、今の地元、天城町のAコープへ寄ってチーズやら黒糖焼酎など

忘れ物を購入したが、スーパーとくやまのような密度を感じない。

まーこれが全国的なAコープ風味だろう。

遠隔地でも品揃えは充実、でもなんとなく・・・ちょっとだけクールな感じ。

 

さて、業務用ほうれん草、でかい!内地のほうれん草が子供に見える。

(炊飯器が小さく見える)

自立しないほどの大きさ、どうやって栽培したのか分からないオトナ感。

おー、何か知らんが色は薄めで倍以上巨大!恐るべし南国ほうれん草。

ポパイのほうれん草も、こーいうのだとパワーの使い方が変わりそう。

悩んだ結果、晴れて昼は暖かいが、夜は寒いのでほうれん草鍋に。

食べるまでほうれん草かどうか疑わしかったが、やっぱりほうれん草。

味付けは地元の甘ぁ〜いショウユ。

少なめに使えば案外と万能調味料、ほの甘く塩分控えめ料理に。

普通に使えば、島風?甘しょっぱい仕上がりに。

ちなみに、先のY本課長は甘しょっぱい系濃い味が大好きだとか。

因果は不明ながら、狭心症の入院明けである。

(トレードマークにふりがな、たい・・・オトナは無限に優しい)

ちなみに、島では甘いショウユ好きが多いのか、刺身をどっぷりと

このショウユに漬けて食べるところが凄い!味は付けて何ぼ!らしい。

素材の味は、活かすというより承知していれば良い、ようである。

 

引っ越して一週間、ようやく食糧物価が見えてきた。

 

ともあれ、何が一番オトナかって?

Oちゃんが伊仙町役場近くのおすすめラーメンスポットで

ラーメンをふるまってくれたことだ。 おー!Oちゃんオトナじゃん!!!

普通、喫茶店のラーメンなど知れたものだが、伊仙恐るべし!

セアブラなど使わぬ正統派、にんにくの香り豊かな南国しょうゆラーメンだ。

温まるが、暑くならない程よさ、麺は冷凍だろうが、かなり美味い。

来るとき、尾道ラーメンの脂濃さと臭さに憮然としたが、これはすばらしい。

ラーメンで感動するのは自身のレアケースだが、これは結構感動した。

ワンコインごしゃく円でチャーシュー自家製は優秀で、島のラーメンは

すっきり系で香ばしいニンニク系らしいのは好感が持てる。

誰もが注文するはずだ、と納得した。

今度は花徳(けどく)の大福食堂、ラーメンチャレンジへと駆り立てる味だった。

 

そんなわけで島ラーメンを受け入れた自身もオトナになったなぁ・・・と?


ではまた