ポレポレなんくるタックル、9

・・・・・・・・オヤジギャフ、こめられた想いはるかに・・・・・・・・


まず、ひみつを打ち明けておく。

あの17キロのロウニンアジを釣ったときの竿は

実は改良しておいてあった。

いわゆる「長男チューン」されていたのだ。

一つ目のチューンは自然に?そうなったもので

穂先(竿の先端)が一節折れたまま。(顛末は記事後半参照)

折れたんだからヤワな穂先など不要!と判断し

やや太くなった穂先に合わせて

何事もなかったかのように、トップガイドを着けてあった。

したがって竿の長さは縮まり、12.5フィートが

12フィートちょっとくらいになっている。

 

二つ目のチューンは奔放?・・・初公開

「結果オーライ長男チューン」であった。

 

何のことはない

ありあわせのガイドに交換してあったことだ。

(ガイド:釣り糸の案内役である、竿に沿って装着された輪)

(方向も逆につけてある)

使うのが細糸、PE3号とはいっても

やたらガイドの多いシマノAR−Cシリーズは

ルアー遠投時の抵抗が大きい。

通常のルアーロッドがガイド数が7〜9コくらいだが、

それには11個あり、しかも極めて小さいものだ。 

昨年の8月、徳之島でのテストでも抵抗が大きくて

ルアーが飛ばなかったので、腹に据えかねたのだ。

 

多すぎるガイドには、この頃らしい事情があるようだ。

 

現在使われる釣り糸素材の主流はPEとなった。

すなわち、糸にヨリをかけながら動作する

スピニングリールではトラブルが起こりやすいのだ。 

腰のないPEラインにヨリが蓄積していけば

ルアーを激しくアクションさせたときや

思い切りりきんで投げるなど・・・

ラインにたるみが出来た瞬間に、勝手に結び目を

作り始め、ガイドにくくり着いてしまうのだ。

 

ガイドを小さく多くすることで

細い繊維をより合わせで作られたPEラインが

繊維の間に水を含み、多くのガイドにへばりつきはじめる。

糸を巻くときも、径が小さく、数多いことで摩擦抵抗が増えて

常に一定以上のテンションでリールへ糸が巻かれる寸法だ。

 

その原理を使ってか、

シャクリとたるみばかりの釣りである

アオリイカ釣りの専用竿は中通し、インナーガイドが

全盛となっている。

竿の中をガイドに見立てて抵抗を作り出し

糸のタルミをほとんどなくすことができ

ライントラブルを減少させていろようだ。

 

が・・・投げるときにも抵抗が発生し

一見、害ばかりに感じる。

 

一見、害ばかり・・・なはずだが

長男には好都合なことが、更に秘められていた。

 

長男の好きな、飛行バランスの悪いルアーを

むりやり投げた瞬間からガイドに抵抗があることで

ルアーの慣性で糸が引き出されるときに

一定のテンションがかかり、ルアーを強制的に

姿勢制御する働きがあるのだ。

 

本来、

バランスが悪く飛行中クルクル回りやすいルアーも

否応なしに安定して飛んでしまうのだ。

同様にイカ餌木こと、オモリが頭の方についている

イカ用の和製ルアーを使うアオリイカ釣りにおいても、

同様の効果が生まれるわけだ。

 

一方、長男のように内地より大型のリールを使うと

糸が放出されるとき、遠心力でおおきく膨らむ。

それが一番手前のガイドで一機に収束するとき、

むりやり小さい口径で受け止めると抵抗が大きすぎる。

然うして、12年前に買って、すぐ折れて放置されていた

がまかつのヒラスズキ用のルアーロッドの高級ガイドを外し

付け替えてみることにしたのであった。

手前の2個のガイドを一回り大型に交換し

二つのガイドで徐々に収束するようにした。

 

ふぅ〜、ガイド交換一つ(ふたつか)に

長い前ふりだったなぁ・・・

 

前の写真を見てのとおり

ゴールドサーメットガイドの名のごとく金色なのが

シックな竿へ違和感を誘うが

見た目より、まず機能を追求しなければ

竿自体の可能性が閉ざされると判断。

(日本橋までガイドを買いに出るのが面倒だったとも言う)

 

ガイドの足を簡単に糸で巻き

30分硬化型のエポキシ接着剤で止めただけ。

ライターの炎の腹で軽く撫でるように熱すると

気泡は完全に抜け、適度に熱がかかったことで

硬化反応が促進される。

白っぽくて、大好きな葛饅頭のような色になるが、強度は十分。

接着・コーティングして一日経ったとき

不思議なほどベタツキ感は一切なかった。

炎の先で焼いてしまうと、竿自体が変質するのでご注意を。

 

そうこうするうちに、竿はいつしか南国仕様へ

変貌していたのであった。


さあて、長い告白はこれくらいにして

本題である。

 

前述のことがあってから、たまたま長年切望していた

3キロ台から使えるギャフ(魚のヒッカケ)をオヤジ殿へ打ち明けた。

オヤジ殿は70歳を超えて、いまだ現役のルアー人だ。

暇さえあれば、朝夕スズキを狙いに出かける。

先日も、結構な大きさにハリを伸ばされたらしい。

ギャフはお守り、ギャフはロマン、ギャフは最後の砦(とりで)

なのである。

 

オヤジ殿は二つ返事で、作ってくれると約束した。

彼は、家を建てるときに、たまたま職人が持っていた

ステンレスの棒をせしめていた。

ソレを使って、以前もハンドギャフ(手カギ)を作ってくれた。

 

今回は、細身のステンレス棒を使って

本格的なギャフヘッドを作って欲しかったのだ。

 

ギャフを使った取り込みには空白のサイズができる。

竿による魚の抜きあげ限界を、少し超えた

3〜5キロ弱あたりのサイズである。

中途半端にギャフは大きすぎ、魚はつるりと逃げてしまうのだ。

ギャフ自体が細いことで先端も鋭く、スムーズに貫通できる。

取り込みが素早いと、危険な磯際に立つ時間も短くてすむ。

 

市販のものをずっと使っていたがバランスが悪く

いつも苦労させられていた。

 

なのになして?追究してこなかったかというと

そ、そりゃつまり、その・・・・大物釣らないし・・・・

出番がヒッジョーに少なかったから・・・・・・・

 

多少いびつなデザインだが・・・手作り加工だから?ではなく

掛かった魚が外れ辛くするための長男なりの工夫。

最大の特徴は、フトコロ(尖端からカーブした部分の丸い空間)が

尖端と反対側(画面左)に引っ込んでいるところ。

 

作りたいと相談してからしばらくして

伊勢のおふくろ様から仕事中に電話が掛かってきた。

造るのはオヤジ殿のはずだが・・・

作るから、とっととデザインせよ!との事だったので

昼休みに5分で設計して原寸図?にしたものだ。

(製作所が製作書になっとるぜ・・・)

手前味噌ながら、イイセンいっていると思っている。

実はファクスで10%縮み、その大きさがベストだったが・・・

 

これまでの経験によれば

第一印象、早い話が「勘」が素直に現れるのは

「最初にデザインしたもの」であり

最も正しかったことから、5分でも迷いはなかった。

 

そのギャフヘッドへ、ついで?に

柄も着けたいという申し出に、長男は快諾。

オヤジ殿の竹加工技術は大したもので

長男も少しだけ引き継いでいるが

いつかシッカリ習わねばなるまい。

竹に熱をかけ、ヤニを抜き、曲がりを直すのである。

 

のちに

このためだけに七輪と炭を購入して加工したのだと

おふくろ様が電話口で苦笑していた。

せいぜい、秋には美味い秋刀魚かクサヤでも

焼いて欲しいものだ。

 

長男はバランスウェイトを入れて欲しいと更に注文。

竹の柄の手元側へオモリを入れることで、背負ったときの

ギャフ先端側が重くたれこめるのを防ぐためだ。

オヤジ殿は、竹の柄を使って川床を歩くときの杖にする。

行く先が急深になっていないか確認するためだ。

その機能「いしづき」も追加されていた。

 

しかも、先端側のやや細くなった竹の内側には

補強のためのステンレスパイプが内装されてい、

見た目は内地の和風だが、造りは太平洋仕様となっていた。

我が家の釣りテクノロジーの粋を結集し

ヒラスズキにも、ヒラアジにも負けない造りだ。

(センスはさすが昭和初期・・・)

 

先々週紹介した、BLB氏のギャフとは対極をなす

細いオヤジギャフだが、中物を狙い続けてきた父子の想いが

結晶している。

(上からBLB、市販、オヤジ)

 

だが、思わぬつめの甘さもあった。

 

ギャフで最も錆びるのは、カギの根元だ。

そこが不用意に隙間になっていた。

BLB氏のように、溶接技術を持たないオヤジ殿は

市販ボルトへのアンカー加工と接着の工法で製作した。

ドリル刃の滑る、ボルトへの穴あけは骨が折れたろうに。

 

いかんせん、人力によるステンレス曲げ加工に

尽力したために、固定の後の塩害対策にまでは

至らなかったのかもしれない。

瞬間接着剤では埋まらなかった・・・と電話で白状していた。

 

ここへは、防水シリコンをつめておくことに。

 

このことがあったおかげで

時に命が掛かる釣具の設計・製作には

チェックリストを作っておこう・・・と教訓が生まれた。

使用方針と仕様、チェック項目をメモしておいて

途中途中で目を通し、完成度を高めるのである。

気づいたことをメモしておけば、そのメモに呼応して

また

新たな気づきが生まれる良さもあるからだ。

趣味で妥協したら、趣味人はどこで本気を出すのだ!

人間に画と文字が生まれて本当に良かった思う。

 

ちなみにオヤジ殿は次男である。

その想いが伝わるかは微妙であった・・・・・

 

何かを得たとき、何かが生まれ

何かを失ったときも、何かが生まれる

人間とは不思議な生き物だが

ゆるい生活に慣れすぎたとき、油断は禁物だ。

知恵に絞りすぎということはない。

 

ともあれ、長男とオヤ次ナンの協作?狂作?

はまだ続きそうな雰囲気である。


ではまた