鳥学会誌とどく
チャンスは一度きりなのか
それとも見過ごしているだけなのか
友が再就職のチャンスをくれた昨年
変わり行く気候に乗じてか、見なれぬ鳥がやってきた。
内地で豪雨が来る前、徳之島ではずいぶん降った。
5月下旬から6月初旬12日も居たのに、3日くらいしか
青空を拝み見ることはなかった。
一瞬の晴れ間、その日は変な声の鳥が鳴いていた。
ズアオホオジロである。
専門家やマニアックな人なら分かるらしいが
スズメ同様の大きさで、県道の上に渡された電線に
鳥がポツネンととまっている。
それに、マニアックな人でも、この鳥のサエズリを
聞いたことがある人は、ほとんど居ないだろう。
撮影するかどうか、かなり迷った。
どうせ暇なのだが・・・
もう次の雨雲が近づきつつあり、小雨がぱらついてきていた。
望遠レンズ、ちょっと濡れるな・・・
ヒホンヒホンヒホン ジ〜ン
澄んだ声と、後半のセミのような金属音を両方だしている。
金属音が、コンクリの家屋やブロック塀に響いて異様だ。
まだまだサエズリはやまないので
とりあえず撮影しておくか、ということに。
走って宿まで帰り、カメラを二台持って再び県道へ。
時折、軽トラックが通りかかっても逃げることはなく
ついでに防水のカメラを使ってビデオモードで
声も録っておいた。
撮影するにはしたが、現像してみてからが、また長かった。
会社を出て暇な長男と違い、モズ博士Tはとても忙しい友人だ。
世界に名を響かせる鳥類学者だから、忙しくて当然だ。
撮影日を含め雨の2日間
パソコンの画面に現像した画像を出し、図鑑とにらめっこだ。
二日間、雨ですることがなかったこともあって
しつこく調べ上げたが、どこにも似ている鳥がいない。
普通なら、少しばかり似ていない・・・というのなら分かるが
全く似ているところがないというのは初めてだった。
どうにもこうにも、やはりモズ博士Tにお願いするしかない!
と、決心しメール連絡。
珍鳥であることは速やかに調べられ、あくる日には回答が。
図鑑好きな長男だが、国内ですら覚えきれないし
なおさら海外の鳥には、とんと知識のない長男。
専門家が居てくれて、本当に助かった。
秘密にしていたが・・・
実は
日本では過去、バードウォッチャー御用達の島、
日本海は能登沖に浮かぶ舳倉島(へぐらじま)で
メスの一羽しか観察されておらず
私が撮影した固体はオス・・・
モズ博士Tのススメと尽力で学会誌に発表しては
ということに。
が、学会デビュー???
自称へっぴりくつな論客だが
大学がゲージツ系だったので、論文一つ書いた事がない
へっぴりくつにふさわしい経歴だ。
モズ博士Tは、他の論文を調べたり
有識者にも問い合わせたりしてくれて
みるみる論文になっていった。
幸い3年も通っていて、周囲に生息する鳥のほとんどを
把握していたので、情報には困らなかったが
なにしろ専門家の鳥の見分け方や、鳥の部位の名称など
知るヨシもなく、とても勉強になる。
そしてついに
念願の鳥学会誌は半年以上の時を経て、出版された。
日本の鳥類学に少しだけ触れることができた気がする。
(合成じゃないぞ!)
モズ博士Tのおかげで、写真は表紙にも採用してもらえた。
本当に、ありがとう。
長男のとんでもなくハタ迷惑な趣味に付き合ってくれて。
まあ
ここまで鳥にのめりこんだのは
モズ博士TとM井君、A谷さんをはじめ研究者軍団らの
影響によるのだが。
釣りの旅が、自然観察の旅になってきたのは
他でもない、徳之島のOちゃんの影響でもある。
鳥の写真を撮り始めて、たった3年目にして
この幸運、この栄誉。
友との巡り合せがなくては、絶対にありえない。
ひとり旅というのは、してみるもんだ。
自分の持っている、凝り固まったチッポケな価値観を
吹き飛ばすような出逢いがそこに待っている。
海にも、森にも、集落にも。
ちょっと、幸運を年初から使いすぎたかな・・・
今年のラッキーが、まだ残っていてくれると良いが。
そろそろ、釣果にもラッキーが必要だな・・・
少し沈滞気味な釣り方面にも、新たなチャレンジが
必要なようだ。
気候変動を幸運に変える出逢いが、またどこかに
待ち構えているはずだ。
変化こそ好機の兆候、さてさて、次は何をしようか
どこへ行こうか。