釣友からイソジギという言葉を聞いた。
イゾジギ?、イソシギ(鳥、小型のシギ)なら聞いたことがあるが・・・
100円ショップがヒャッキン・・・などと略されてしまうのと同じ事らしい。
磯でのジグ(重いオモリのようなルアー)を投げる釣り、
磯ジギングを略したものらしかった。
ジギングというのは、ひとつの釣りのジャンルとなっていて
ジギングに赴くと、ジギングばっかりするようなイメージがある。
確かに道具と釣り方を限定することで、船なら船頭さんが楽できる。
しかし、釣り人は釣り方を限定されて不利かも。
しかるに
磯では磯ジギングに専念・・・みたいに
意地を張っても仕方ない釣り方ではなかろうか。
長男には磯ジギングというのは馴染みにくい。
目の前を泳ぐヒラアジやカンパチ、イナダなんぞを無視して
強烈に遠投してしゃくりまくるのは馬鹿らしいではないか。
しかしながら専念したいわりには、しゃくるのがシンドイらしく
竿は短く進化?(退化だと思うが)している。
僕が磯でジグを使うのは、伊豆大島の足元から深い磯と
南大東の港や、とても水深の深い磯だけだ。
あまり内地らしい磯でジグを使ったことが無い。
というか、そういう場所は今住んでいる横浜からは遠いし・・・
今週は久々に伊豆大島へ出陣しようと思ったが
台風2発が沖合いにやってきて、のきなみ4m以上の波浪である。
まいったなぁ・・・・
ましかし、いづれの磯でもミノーやポッパーといった
別のルアーが主役で、あくまで最後の手段の場合が多い。
伊豆大島の磯の場合は特別で、砂地の海底だから
根ガカリ(地球釣り?)せず、心置きなく投げられるから
積極的に使える・・・といった事情がある。
一方、南大東での釣りは過酷で、スグに根ガカリしてしまい
鉛の塊のルアーを海底の残骸にしてしまう危険と隣り合わせだ。
今回は、磯の非常装備、ジグ用タックルを考えたい。
最近コアな釣りとして、とらえられることもあるようだが
コアも何も足元で釣れない時はだんだん沖を狙うしかない。
だから同じ使うなら、超遠な海底を狙える道具の方が有利だ。
以前、マダイを釣ったピンクのワサワサ付きルアーの特集をしたが
あのような60〜90gの一般的なジグから、多少船で使いそうな
より長めものも使うようになった。
狙うのは沖合い100m強くらいが平均的なところか。
風が無いときや追い風の時、それ以上飛ぶと
着水のしぶきすら見えなくなってしまうこともある。
もちろん、楽をして手前でボチャンとやることもある。
竿は長いものが好きである。
短くなってしまった竿では、何しろ飛ばない、ルアーが動かない。
景気良く、カッコ良く?3m未満の短竿をシャカシャカ振っている人を
時折見かけることもあるが、シャカシャカ振っても案外ルアーは
思ったほど泳いでいないのが実情だろう。
遠くへ投げるということは、糸もたくさん出る。
いくら伸びがすくないハイテクPEラインといっても伸びもあるし
ジグや糸に受ける水圧でさすがにアクションは鈍くなる。
勢い、短くなってしまった竿でシャクリを入れても虚しそう。
近い場所に来たら、多少小さなアクションでも大丈夫だが
沈めることもせず、だだっ広い海の中層から表層を
チョコチョコルアーを引いても、魚は寄って来そうにない。
もっとも、このような派手で大きなアクションは
主に回遊魚のカンパチやヒラアジに使うのだが。
おっと、本来どんな魚がジグで釣れるのかを述べていなかった。
「釣れる」というのが微妙で、この釣りで釣れて来る魚は多彩。
正直これを狙おう・・・と思っても狙いが外れることもままあるし
何が釣れるのか楽しみワイ・・・と思って竿を出すことも多い。
内地では通常、濁りきった湾内や、船や沖磯でないかぎり
日が昇ってからルアーは使えぬ。
しかし、水深があるポイントなら、昼でも可能性は高い。
カッコつければ、可能性追求型の釣り方と言えるかもしれない。
(投げ竿と大きなリールだが、魚は小さい)
●伊豆大島
シオ、ショッパチ(カンパチの当歳魚)
イナダ(ブリの幼魚で40センチくらいまでのもの)
ナンヨウカイワリ(たまたま?)
ヒラメ
ホウボウ
マダイ(たまたま?)
外道(失礼な呼び名だなぁ)ではダツ、エソなどが掛かってしまう。
例:太平洋ならどこにでも居る悪食家、マダラエソ。
海底のジグのみならず水面のポッパーにまでやってくるツワモノ。
●南大東
オニカマス(バラクーダことカマサー)
タイワンカマス(これもカマサー)
イシフエダイ(ヒンガーテイクチャー)
バラハタ(ナガジューミーバイ)など、ミーバイ(ハタ)類
カスミアジ(ガーラ)、カッポレなど、ヒラアジ類
このうち、オニカマスやカスミアジなどは更に特殊な釣り方?で
重いはずのジグを水面でジャンプさせる「スキッピング」という
釣り方で釣れることもある。
(オニカマス)
内地では、残念ながらダツくらいしか来た事がないが
あきらめるのは早い。
遠くに居る魚の群れに、水面をざわつかせ、興味をわかせたり
興奮させたり、更に手前に寄せてきたりする働きもある。
釣れなくても、音や泡をたてることは時に集魚にもなる。
さて
道具立てだが
●竿
4m以上の投げ竿、もしくは3.9m以上の硬めのルアーロッド。
投げやすく、しゃくる時に腹にあてて使えるよう竿尻は木製で自作。
面倒なときは市販で安い、富士のギンバルキャップを使うことも。
投げ竿はもっとも柔らかいものを選ぶと使いやすいと思う。
投げ釣りのオモリは重たく、ジグはそれほど重くなく
竿先が硬すぎると、魚がハリを飲み込み難いような気がする。
●リール
小型の魚を狙うときも、迷わず大きくて恥ずかしいリールを使用し
磯投げ用や、中型スピニングリールの高速巻上げモデルが使いよい。
※上段:○マノ8000H、中段:○マノ10000H、下段:ダイ○5500
(最近のは飛距離が出にくい)
(昔は大型、今は中型に・・・)
(デカいが飛距離は段違い)
大きなリールは比較的巻き上げも速く、更に糸巻き部(スプール)が
前後に長いものが糸の出が良く、飛距離が文字通り飛躍的に伸びる。
ただ、今の磯投げリールはルアー用の高速モデルからすると
巻き上げも遅いので、忙しい。
ちなみに長男が使っている下段のデカいリールは例外で
破天荒に高速ときている。
多分、次のモデルはないだろうと安いこともあって2個買いしといた。
そこらのルアー用より高速といった代物だが、安いから壊れやすい・・・
が、予想通り、次の磯投げ高速モデルは存在していない。
喜んでいいやら、悲しむやら。
●ミチイト、ハリス(ルアー的呼び方は苦手)
ミチイトは2.5号〜3号のPEライン
ハリスは12号(内地)〜16号(八丈)〜18号(南大東)で
糸の出がよい、結びコブの小さな結び方で
オルブライトノットやミッドノットを使う。
●ジグ(ルアー)
水深が浅かったり、流れがゆっくりな場所では60g級で
それ以上の〜90gは水深や潮の流れを見ながら判断する。
長男の経験では、
上記の仕掛けを使った場合、60gでもそれ以上でも
ほとんど飛距離が変わらないので、無闇に重いジグは使わない。
何しろ最近めっきり魚が小さいとですから・・・・
特に長いジグは岩が多い海底で使い、ハリは下でなく
糸の付いている頭のほうに付けておくと
ハリが地球に触れることなく、根ガカリを防いで釣れるのだ。
(同じ重さのジグ2種)
長くなくとも、ハリの付け方で根ガカリはズイブン違う。
●スナップ、ヨリモドシ
小さなトローリングスイベルや八の字、ハワイアンなど
小さくても強いスナップ類を使う。
長距離を引いてくるので、糸にヨリがかかっても影響は少ないが
やはりヨリは少ないほうがよいと思うので、気が向いたときは
ベアリング入りのヨリモドシを付けてみたりする。
●手袋、指ガード
細いミチイトが重いルアーを投げるときに指をジリリとこするとき
案外簡単に指が切れることがあるので、南国で使うような
指先まで付いているフィッシンググローブか、投げ釣り用の
革製指ガードを使用すると便利。
といった感じで、竿以外はオオムネ普通の道具である。
竿が長いと何が違うのかというと、ひとシャクリのジグの動きと
磯際での突出した岩(ハエ根)のかわしやすさからだ。
上のほうにある太線、赤(長い竿)と水色(短い竿)は
図解するとこんな感じでシャクリ幅が違ってくる。
・・・・印象では分かっていたが、図解すると違うなあ・・・・
竿の長さ分くらい違う感じだ。
実はこの幅だけでなく、上に振れていることが
長男の持論の特色で、海中でのジグの動きに
上下の動きが加わりやすいのだ。
普通、磯からのルアーには上下の動きは加わらないとされるが
水深が深いほど伝わりやすいため、オーバーハンドシャクリと
サイドハンドシャクリを使い分けている。
ただし、上下シャクリは筋力と筋持久力が必要だから
やらない(できない?)人も居るだろう。
長男は毎日このシャクリのための、一風変わった腕立てを
朝の出勤前に70〜80回やっておき、なまらないようにしている。
長男特製ジグ腕立ての詳細は、ここでは割愛する。
アクション(シャクリなど)だが
●カンパチ、ヒラアジなど中層の回遊魚
には、前述の激しい上下シャクリで誘う。
まず、じっくり沈める。とにかく沈める。
着水とともに、糸を張って(止めて)円弧を描いて沈めるときと
糸を引かれるにまかせて、緩めながら指でタルミを抑えながら
サミング(という)で底まで落とすこともある。
前者(ブルーのジグとライン))は糸が比較的まっすぐなので
引いてくるとルアーが浮き難い。斜めに中層を広く探るときに使う。
糸を止めるので、円弧を描いて沈むために距離は縮まる。
後者(オレンジ、サミング状態)は逆に垂直に近いアクションになり、
遠い沖合いのワンポイントを垂直に誘うときに使う。
もちろん、距離をかせいで広く探りたいときは、両者中間の感じで
コントロールすることも出来から、微妙な加減で楽しめる。
かくもしっかり沈めたら、着底と同時にしゃくり開始。
しゃくったらその分余った糸を素早く巻く、を繰り返す。
一秒に一度のときもあれば、一秒に3回程度の連続シャクリを
入れる激しいアクションのこともある。
食いが悪いと、アクションはアレコレ試して、パターンをつかむ・・・
と番組などでは言っているが、同じ手が使えた事はあまりない。
10回程度しゃくったら、再び水深を落とすために沈めて
深い場所から探るようにすると効率的。
沖合いしか食わないかというと、高速回遊する連中だから
余裕で足元まで追ってきて、それから食うことも多く
キチンと足元の水面近くまで引いてくることが大切。
あまり水面近くまで勢い良く引きすぎると、ジグが自分めがけ
砲弾のように飛んでくるので、感覚がつかめないうちは
そこそこ接近してきたらゆっくり巻くようにしてほしい。
長男は飛んできたルアーを何度も手でよけようとして
ハリが手にブッ刺さったもんだ。
今は慣れてしまって、多少の痛みなど気にならないが・・・・・
大島の磯の足元でかけたヒラアジ系、ナンヨウカイワリ。
ちなみに一昔前のマニュアルにあったような
リールを高速で巻くだけで釣れたことは、かつてない。
●ヒラメ、ホウボウなど砂地の底性魚
には、激しい動きは必要なく、ジグが海底に着いたら
かるく2、3回しゃくって沈める・・・を繰り返すか
海底を軽くたたくようにトーン、トーンと竿をあおる。
(派手だが冷水を好むホウボウ)
●磯の底性魚
では、海底をたたくと根ガカリしてしまいやすい。
着水後は竿先で着底を慎重に感じながら、着底同時に一度
大きくしゃくると根ガカリしにくい。
以降、
5回ぐらい、ゆったりとしゃくった後、沈める・・・を繰り返す。
釣れない・・・最悪の場合は海底寸前で寸止めして竿をあおるが
これはと〜っても難しいので長男は苦手。
(3キロ強のバラハタ)
でも、荒い場所ほど魚も多く、釣り荒れていないのも事実・・・
底性魚はいずれも、着底後ふたシャクリくらいで食ってくることが大半。
油断大敵である。
●バラクーダなど表層の回遊魚
着水後、すぐにリールを高速で巻き上げながらゆっくり竿を立てる。
ジグがバシャッと水面から出たところで、やや減速する。
すると少し水面で泳ぐので、また高速で巻き上げる・・・を繰り返し
魚が水面を割って出てくる瞬間を見逃さないようにシッカリ見る。
魚が掛かる率はかなり低いが、釣れるとかなり気持ちいい。
このとき、バラクーダやダツなど、歯の鋭い魚が食ってくる場合は
下のほうにハリを付けて釣ると切られる事が少ない。
上にハリを付ける場合、アシストフックなどと言うが、バラクーダは
防弾用でもあるデュポン社の最強繊維、ケプラー繊維すらも
簡単に食いちぎるので、アシストにはなってない。
こういうときにはアシストフックの固定にもハリスにもワイヤーを使い
強度を保つことが必要。
ジグは傷みが激しいので安いものを。
(鋭い歯で一撃)
●超遠投中層魚
(思わぬ魚が居る・・・)
南国ではドロップオフというのが島の周りにあり
そこで釣れる事も多いが、文字通り急に海底がドロップしており
魚が深いほうへ逃げるので、ドロップオフの角で切られる。
ソレを計算に入れてカウントダウンし、中層でかけるようにする。
できればドロップオフせず、滑らかで急角度の海底斜面を見つけ
狙うのが理想的。
上の写真は、今や南国の幻になってしまったカッポレだが
沖合いには群れていた。
この手の釣りができるのは、沖磯や急深の地磯だけ。
しかし岸際と違う魚種が居るので、釣れた時の新鮮さはヒトシオ。
遠い沖合いから、少しずつ寄せてくるのもワクワクして楽しいもの。
こういったことで
どうしても本来魚が多い磯際で釣れなくなった時に
遠方を狙うのである。
非常時の釣りの割には、温存体力をすべて使う過酷な釣り方で
とても非常識・・・な釣り方でもあるように思うが
まあ釣れればそれでヨロシイし、よくよく釣れない時は
夕暮れ時ともなれば、体に刻まれた疲労感によって
「あ〜あ、やるだけやったワイ・・・」とも
開き直らせてくれ、それはそれで気分的に爽やかな釣りである。
思えば、この釣り方は、スポーツフィッシングというのに近い。
筋力も使うし、足元が不安定な磯で投げるフォームも大切だし
こういった釣り方自体ができるポイントの見立てもできなくては
釣れない。(この釣り方は特殊で、ポイント情報が少ないから)
時には海図や地図を見ながら地形を予測して現場を訪れ
周囲で誰も使っていない釣具を出し、恥ずかしい思いをしながら
ハリを外してジグだけを投げて海底を探ることも必要だ。
よって
苦労しながら、誰も手を出していないポイントで釣れた時の
シテヤッタリ感はナカナカのもので、一度味わってしまうと
度重なる根ガカリで打ちひしがれながらも辞められなくなっていく。
せっかくハマったのだから
磯ジギングがさかんと言われる九州や関西にも
そのうち足を伸ばしてみたいものである。
最後に、テトラポットや磯、船での釣りには、安全のため
ライフジャケットを必ず着けるようお願いする。
転んだときの緩衝材としても優秀だから、多少着心地が悪くても
着ておいて欲しい。
なお
念のためお知らせするが、海にあなたの遺体が沈んだとき
今度はお魚に自分が食われることになる。
サメならずとも、カワハギ、ヤドカリやカニでさえ食いにくる。
もちろんタチウオなどが居ればテキメンに八つ裂きだ。
次に浮いてくるときは全く原形をとどめていないだろう。
そうならないように、せめて上半身は原形をとどめるよう
ご家族のためにも、浮いておいてほしい。
ま、浮いてりゃ浮いてたで、カモメに目の玉くりぬかれる
だろうけど・・・・自然は冷酷で厳しく、リサイクル優先。
くれぐれも安全第一で。