渡る島には雨ばかり・・・か?

 


島だけでなく、伊勢でも降られたが、どうも雨好きのする男らしかった。

ここ徳之島に来て、毎日必ず雨が降る。晴れか?と思っても、パラパラ降る。

降られるだけならまだしも、寒い・・・南大東、伊勢からずっと寒い。

ついに半ズボンを断念し、亀津という便利なまちのダイマルスーパーにて

ジャージのズボンを買ってしまった。

2階の衣料売り場では、何やら責任者らしいオジサンがジャージを探す長男に

熱弁を振るう。

「20年ぶりに改装したんで、長袖を全部夏物の半袖に入れ替えたんですよ!」

だから長袖のジャージの上着が無いのだという。

しかも「農家の方が多いんでハイネックのシャツならあるんですが・・・」

見ると、薄手の綿でできたハイネックの長袖Tシャツがあるのだが

雨続きでは木綿が乾かないので、速乾性のジャージのズボンしか買えぬ。

 

たずねてないのだが・・・オジサンは続ける。

「この島の人は作業着にコダワリがあって、農作業や建設作業は安い物を着て

 夜、飲みに行くときには上物の作業着に着替えていくんです、だからココまで

 いろんな作業着を揃えたんですよ、普通ならスーパーでココまでは入れない」

確かに、この島の軽トラを見たらわかる。白い軽トラに黒い錆止めをオリジナルの

塗り分けを様々に施していて、かなり軽トラに凝っているというのは、昨年、

伊仙の役場に勤めるS氏に聞いた。

だが、さっきから言っているように綿じゃ乾かぬし、まして、旅人で作業着は着ぬ。

暗に「アンタは作業着が絶対似合う!」といいたげだ。

まあね、日焼けして薄頭をものともせず、短く刈って、イカツイめの髭面・・・

気持ちは分からんでもないが、島の男の作業着ファッションには馴染めぬ。

加えて、社長が直接、東京、大阪、名古屋へ買い付けに行くことも話してくれた。

もちろん、たずねてない。

 

かつて、爽やかな麻の半ズボンを求めたのも、このダイマル。

売り場は少し地味だが、モノはなかなかイイ。

まさか、この時期にこの寒さになるとは、ダイマルでも予想外で

対処に苦慮しているようでもあった。

洗濯もままならず、少ない長袖を着まわし、長男も苦戦している。

 

一方宿では、暇な長男を見通して、ファクスの配線工事だの、ボイラーの故障の

対応だのが用意されていたかのようにやってきた。

ファクスは配線を終えたものの、なんと故障品!どうも宿の息子さんが

誰かからもらった時点で液晶が壊れていたようで、設定も何も表示されない。

したがって、これは仕事で来たお客さんが必要なときにだけ使ってもらうことに。

やれやれ、長男の新し物好きから余り出る優良中古パソコンならいざ知らず

簡単に手放し、送ってよこすのも変だ・・・とは思っていた。とんだ贈り物である。

 

さて

土曜は奇跡的に午後から晴れた。

雨が止む前から、その夜出かけるはずの林道を下見に行くことに。

そして、その先にある最も自然あふれる未舗装の林道で鳥を撮影するつもりで。

(下見中、山すその道路にはこんな標識も)

なんと下見でやや遠回りしたときに、クラクションを鳴らす車が・・・

見ればトンボ仲間をガイドした帰りらしいOちゃんであった。

暇なときは、常に島の自然を見続けている彼の姿に恐れ入る。

 

到着まで豪雨にあったり、霧雨になったり、日が照ったりしたが

未舗装の林道に着くころはすっかり晴れていた。

 

アカヒゲ・・・間違って学名がコマドリになってしまった、澄んだ声の小鳥が

あちこちで鳴き、うろついている人間に警戒して、時折キーン!と

鼓膜に突き刺さるような声を上げるけれど、警戒心が強く全く撮影できない。

 

やっと口笛で吹けるようになった、サンコウチョウの鳴き声をやってみると

響きが似ているせいか、アカヒゲの方がよく反応して鳴き返してくるのだが

サンコウチョウはたまにしかやってこない・・・苦笑いだ。

そんな鳴き真似をする余裕もなく、ヒラリとやってきてヒラリと去っていく

長い尾を残した成鳥が木陰を飛び回る。

薄暗いのでオートフォーカスが追いつかない・・・20万もする一眼レフも

まったく役立たずである。

仕方なく、南大東と伊勢で鍛えてきたマニュアルフォーカスで撮影していく。

暗いのでシャッタースピードが限界以下になり手ぶれ補正が利きにくい。

そんななか、見栄を切る瞬間がファインダーから見えたときに

シャッターを切った。

幸い、そのシーンだけ止まっており、ピントもバッチリ!

雨で何もできず、一週間溜め込んでいた運が爆発的にツイてきた感じだ。

通常のタランとした姿だけでも嬉しかったのだが

長い尾を持ち上げている姿は、普通種ながらナカナカ撮影できない表情、

かなり嬉しい。

そうだなぁ、釣りで言うとヒラズスキを釣ったときの一歩手前くらい嬉しい。

 

カワトンボの美しい姿も撮影できた。

(よっ!と挨拶するオス)

天気がよく、南国の強い木漏れ日を受けて、透ける羽がひときわ美しい。

(羽の美しさを振りまくメス)

見慣れた虫たちも、豊かな表情を活き活きと写せるチャンスは少ない。

 

2時間ほど粘ってコレッポッチか?と思われそうだが、自然が相手

これでも、かなりイケている方だと思う。

 

夕方の釣り、夜のクロウサギ撮影の準備もあるので

早上がりしたのであった。

 

少しシケ気味で良さそうな状況だったが、残念ながら

前の日にいたウミガメが2頭に増え、更に巨大な一頭が加わったことで

魚はダツ以外まったく反応なし・・・

思わず「カメ駄目だ〜、カメ駄目だ〜、カメ駄目カメ駄目だぁ〜」と

ハメハメハ大王の歌を歌ってしまった・・・南国はユルむなぁ。

それと、前日見つけた謎の棒のような首の生物は

ウミヘビだったことが分かった・・・くらいであった。

 

ただ、もう一匹謎の生き物がいて、足元でモワンと出る1m近い

動物がいる。茶色くてカメのようだが、カメなら呼吸し頭を出すのだが

ヌルリとした体をひるがえす動きで頭は出さず、カメではない。

徳之島、海は浅いのに深いぜ。

 

いよいよ夜

Oちゃんは張り切ってご当地の獣医さん、K村氏まで連れて来た。

島の動物のプロ、頂点に君臨?する一人である。

ちなみにOちゃんは虫のプロだが動物、爬虫類はまだアマチュアだ。

だが、走ってみて分かったが、撮影のための運転に関しては

Oちゃんはかなり鍛えてきた。奄美大島ではクロウサギのプロ?にも

直伝を受けてきており、この3年間で撮影を共にし

どうすれば撮影しやすいか、動物が逃げにくいかを徹底して研究している。

ただ観察一筋に出かける人間とは技前が違うのだと今回初めて実感した。

大東に居たころは運転もままならず、助手席が怖かったものだが・・・

 

時間が早かったため、本命の林道へ行く前に別の林道を巡り

夜半に本命ポイントへ突入。

 

しかしクロウサギがなかなか出ない。

しかも、ことごとく遭遇したクロウサギがすぐ逃げてしまう・・・

どうも運転が、逃がしやすい原因のようだと分かってきた。

Oちゃんと長男は、動物のプロにアレコレ運転の注文をつけ

K村氏もかなりカチンと来た事だろう。

 

その上、目の前の草むらで逃げることができず右往左往する

絶好のチャンスがやってきて、目の前を走り去ってくれたのだが

まったくフォーカスが間に合わず、撮影できなかった事もあって

こんな奴のためにチャンスを作っても無駄ではないか?と

思ったことだろう。

 

だが、林道を少し時間を置いて、また往復しようという。

確かに道々、かなりのクロウサギの鳴き声を聞いた。

加えて、K村氏はGPSを用いて、遭遇ポイントを記録しており

次の通過のときに出現ポイントを正確に予測できた。流石だ。

クロウサギがあまり逃げないことは知っていたが

これほど正確に、また出現するとは思っていなかった。

そうしてチャンスはやってきた。

 

広場の真ん中の草の手前に黒い塊がある・・・

 

クロウサギだ!皆がそう思った。

20m弱まで車を寄せ、ついに鮮明なクロウサギを撮影!

ついでに、オシリも撮影。

残念ながら体が横にならず、ずっと後ろ向きだ。

 

だいぶ息も合ってきた。

おっと、今度は撮影の腕が試される番だが

せっかく障害物が無い路上にポツンと居たのに、逃げられる・・・

チャンスなのに、またしてもピント合わせが追いつかない。

 

K村氏は、ここまで来たら、更にもう一度回ろうという。

この夜行性根性・・・すごいぞ。

 

一息入れてから、再々チャレンジだ。

記録した出現ポイント以外でもかなり出現している。

後ろの席で、Oちゃんは興奮しっぱなしだ。

最初の一往復は調子悪かったものの、その後はすごいペースで

過去最高の遭遇となりつつあったのだ。

 

そしていきなりチャンス!

先ほど鮮明なショットを撮影しているので多少余裕がある。

車をつける腕も、撮影とぴったり合い、息もピッタリあっていた。

しかも、逃げずに何か食べている。

さすがにストロボの光は嫌のようで、強烈な発光に促されるように

茂みへ帰っていった。

 

もう十分だ・・・みなそう思っていたのだが

まだクロウサギは出てくる。

出てくる。

 

それでもって、これでもか!とレア哺乳類のケナガネズミまで出現!

しかも・・・これまでの印象とは違い、ピョンピョン跳ねたり、動きが速い。

よくよく見ると・・・用足し中・・・

張り切ってすることとは、そんなモンですか???

もっとも活き活きしている瞬間が、おトイレとは・・・名実共にレアな生物・・・

 

これも、徹底的に回ろうと運転し続け、撮影のために頑張ってくれた

K村氏の熱意と、何人にも歯に衣着せないOちゃんのお陰である。

ビーム砲はオートフォーカスができなかったが、50%くらいは何とか成功した。

 

実はクロウサギの合間に動きにくい動物で撮影練習していたのだが

4セル懐中電灯の光ではピントの山の出ないデジカメファインダーをのぞきつつ

手動でピントを合わせるのはかなり難しいことが痛感された。

(オビトカゲモドキ)

これ以上の改善は出来ないのだろうか?

次のチャンスまでには、何か活路を見出さねば、K村氏、Oちゃんに

あわせる顔が無いぞ。

 

高性能で機械任せにできる高級一眼レフを買う・・・

てな、最近のプロ、ハイアマのサボリ気味な解決方法には

絶対にしたくないが・・・いつぞや横浜で出遭った

エラソウな猛禽狙いのように、ピピッなんて音を出して撮るような

恥ずかしい動物写真マニアにはなりたくはない。

機材のイカツさで心を満足させる・・・というのは長男流儀に反する。

 

何とか、何とかせねば・・・友が夜っぴて造ってくれるチャンスを

フルに活かせなければ、目標を超えられない。

次のチャンスはいつになるか分からないが、必ず超えねばなるまい。

写真は被写体の珍しさや、寄り具合ではない・・・

出逢いの活きた表情を、瞬間を永遠に焼き付けられるかどうか・・・

だと信じている。


業務連絡

モズ博士Tへ

この鳥、山渓ハンディ図鑑7には出てなかったので同定願います!

(背面は中雨覆の先端が白っぽい)

姿は地味なのに、声は派手ハデ、「ヒロン、ヒロン、ヒロン、ジーン」と

非常に澄んでトロピカルな「ヒロン」と、セミの声にも似た金属音の

「ジーン」とが組み合わさって、微妙なサエズリ。

カゴヌケ鳥にしては、地味すぎるし、ジーンというサエズリが耳障り。

珍鳥なのか・・・それとも普通種の個体差なのか・・・

 

★6/6現在、モズ博士Tの尽力により、極珍しい鳥「ズアオホオジロ」のオスと判明。

  さすがはプロ!大感謝しつつ脱帽です。大阪に足を向けて寝られんな・・・


ではまた