Inverse Weather !

台風(雨)男 × 梅雨前線 = 晴れ?

 


徳之島は案外晴れるのではないかという憶測があった。

それは題名からもわかるように、この予測のつかない気候につけ

長男の力である雨男あらため台風男の天候への影響を鑑みると、である。

 

すでに徳之島入り前々日には鹿児島が入梅を果たしている事も

長男が本州に居るから前線を呼び寄せているに違いないとも考えられる。

引き付けておいて、一気に飛び込み、跳ね飛ばす・・・新たな雨男の使い道。

 

さて

鹿児島空港に着いたころ、どうも様子がおかしい。

ゲートは変更になっているし、やたらキャンセル待ちの人が多いようだ。

徳之島行きの便に何かあったのだろうか・・・

あたりの人の会話を聞いていると、どうやら午前便は雨で欠航したらしい。

昼過ぎても、まだ奄美地方に大雨警報がでたままのようだ。

 

うーむ

 

考えても仕方ないので、ただアナウンスを待っていたが

どうやら、出発直前に警報は解除されたらしい。

冒頭に予測したことは、到着の時には確かに有効だった。

 

大雨だったのに、ホントに晴れた・・・

 

複雑な心境である。

晴れたということは、先の理論が正しければ

雨が去ってしまったら、今度は雨を呼ぶ事になるのだ・・・

 

到着の夜、無理やりあくる日を休みにしたOちゃんが早速やってきた。

無理をしてでも、この晴れ間のチャンスを逃すまいとする気持ちは

心底正しいと思った・・・

 

早速といっても、深夜11時半。

手にはお土産の僕の名を協力者として連ねてもらった論文集を

携えている。

「関西トンボ談話会々誌・・・?」

なんちゅう究極的なマニア誌なのだろう。

国際トンボ学会の会長、I上氏とは一、二度やり取りしたことはあるが

トンボに詳しくなったわけではない・・・釣りにも関係ないし・・・

 

とりあえず後でじっくり眺めてみることにして

いざ、定点観測ポイントの林道へ。

大雨の後は、これまでもケッコウいけたので、長男とて期待しないでもない。

ただ、昨年からずいぶん状況が変化し

Oちゃんはどうも期待通りの目撃数が出ず、なぜかイラついているようだ。

いつものように、ちょっと足早に運転しているのが、気になる。

 

そしてまた、予想していないポイントでアマミノクロウサギが出現。

一度目は駄目だったが、二度目は一機に二羽出現、一匹がまごついた!

すぐさま車を止めるところは、昨年とは違う我々の新たなメソッドだ。

ドアを開けて半身乗り出さないと、ビーム砲は構えきれないし

ウサギもジリジリと迫るよりは止まったほうが逃げにくいと結論したのだ。

そして、止まった如何なる位置からでも狙えるように

夜はまったく使われない、前代未聞の夜戦ビーム砲戦法が生まれた。

計算どおり、ビーム砲の一門から放射される強烈なオートフォーカス補助光が

クロウサギを照らし、もう一門のレンズが姿を捉えた!

コンマ5秒くらいでピントが合焦されシャッターを切るが

カヤの陰に隠れているので、どこに合焦されたのかは分からないし、

キヤノン20Dのファインダーは改善されたなどと

まことしやかに雑誌に書かれた事もあるが、全くそうは思えぬ。

しいて言えば、前より多少明るくなった気がする程度だから

暗い夜、サーチライトに照らされた程度では、どこにピントの山があるのか

さっぱり分からなくても仕方がない。

とにかく数打てばいつか合うだろうと、信じてシャッターを切るのだ。

サンデーフォトグラファーや、既存の被写体を狙う向きには

十分な性能だろうが、カメラの限界に近づくほど、その甘さに驚かされる機種だ。

安くなったとはいえ、20万円もしたのだが・・・

 

結局シャッターチャンスはたった2回。

10秒くらいでクロウサギはカヤの茂みへ消えていった。

・・・・・・だが、かなり長いほうである。

 

やはり、カヤに合焦していて後ピンだが

これまでとは次元が違う鮮明な写真が撮れていた。

初日のテストはこれで十分である。

 

その後、遠くに出現したが、チャンスになることはなく

週末まで、なぜか役場の仕事を続けたOちゃんを酷使できないため

速やかに帰路に着いた。

 

話題は自然と、Oちゃんオススメの劇レア動物のケナガネズミの話となった。

彼によれば、一度は友人の足元に寄ってきて臭いをかいだという。

友人の足の臭いがイカナル物かは問題ではなかろうが、出現すれば

撮影はたやすかろうというのがOちゃんオススメの理由でもあった。

その話が終わるか終わらないかのうちに・・・

前方左手に中猫くらいの動物が歩いている。

 

Oちゃんが叫ぶ、「ケナガだよケナガ!」

即座にOちゃんは車を停め、僕は半身乗り出して撮影に入る。

(長い尾は先が白い)

遠ざかるので、少しづつ車の前へ出て、ケナガネズミへ接近してみると

やや、嫌がってか、とととととっと急がず騒がず道を遠ざかっていく。

(哺乳類のご先祖的な味のある足の裏だ)

歩いて追いつけなくもないスピードだし、茂みに入ることもなく

しばらく行くと止まって、気になるのか振り向いた!

チャンス!正面に向いている時間は1秒くらいあったろうか。

カヤに隠れていないのと、その名のとおり長い毛がところどころ

ヤマアラシのように出ている剛毛なので、コントラストがあるから

合焦はすばやく決まり、シャッター!

(長い毛は感覚毛だろうか?)

少し迫りすぎたのと、慌てたせいで肝心の半分から先が白くて

体より長い尾がファインダーからはみ出ているのには気づかなかった。

(こんくらい写ってます)

動物写真家のように、自然な目には撮れぬが

姿としては十分綺麗に撮れたと思う。

3年越しの夜戦ビーム砲開発が実を結んだようであった。

 

南大東のテストでは、いきなりダイトウコノハズクが出現したので

また何か出現するのではないか・・・という予感はあったが

まさか本当に出るとは思わなかった。

しかも、狙いの動物を差し置いて、先にバッチリ撮れてしまった・・・

テストにしては、もう十分な成果が出せてしまい

帰りの車内は興奮が冷めない。

Oちゃんのガイド、ドライビングが無ければ撮れない貴重な写真が

また増えたのである。

彼は多分、島の誰よりも島の動物を愛していると思うのだが

この成果が、それを証明していないだろうか?

 

あとは、じっくりとアマミノクロウサギの鮮明な写真やら

個体変異などが写ってくれば、また新たな意義が見出せるだろう。

 

あくる日は朝から雨が降り出した。

持つはずの天気が、やはりレインフォース(台風兼雨男のアメヂカラ)が

顕現してか、早速雨になってしまった。

撮影や釣りのこともあるが、オバチャンがススメテくれた

またとないレアなレジャー、モズク狩りに行きたかったのだ。

 

昼、本来はつかない昼食だが、オバチャンがソーメン汁を作ってくれて

完食するころには、雨は上がった。

 

ソーメン汁はたいそう美味しく、ラーメンはあまり好きではないが

冷静に言って、その辺のラーメンよりずっと旨いものであった。

ダシはアジサバ系と豚の双方だろうか?

コリッとした食感の不思議な煮豚の薄切りが乗り

濃厚な味噌汁にソーメンが入っており、にらの香りが食欲をそそる。

 

昼過ぎ1時半ごろが実は今回の大潮のもっとも潮位の下がるチャンス。

間に合う!

オバチャンにサトイモ袋を借りて、早々にポイントのヨナマビーチへ。

ただ、到着は1時半近く、底潮ぎりぎり。

大潮の上げ潮に追われるのはかなわないし

多くの人出を見て、もう採れないのではないか・・・と尻込みしたが

ここまで来たら、野生のモズクくらいは見てやろうと海へ入ってみた。

 

駐車料金を取られないだろうか・・・財布は宿に置いてきていた。

 

駐車料問題に後ろ髪を引かれつつ、サトイモ袋を手に、ヨナマビーチへ挑む。

おっ、お手軽にあるじゃないの、楽勝!と思って手にしたらニセモノ!

天草モドキのような、それでいてミニイバラのような

ちょっと固めの藻類が手にある。

これも、モズクの一種と思ってよいのでは・・・?とも思ったが

どう見ても、煮ても焼いてもモズクにはならぬし、モズクはナマ食する。

違う・・・と思ったほうが、後々幸せだな・・・と心を入れ替えて

やわらかく、ぬるりとした感触の藻類を手にした。

これだ!これこそモズク!!!

(これが自然のモズク!ぬめりの幕がある)

初めて野生のモズクを手にした感触は、一瞬にして体と脳に刻まれた

そんな実感が体に走る。

しばらくその感触で採っているうちに、ニセモノと微妙に色が違う事が

次第に分かってきた。

おっ、この色は違う・・・と思えるようになったのは

5分くらい採ったときだろうか。

それからは多少水深のある50センチくらいの水中だろうと

浅瀬だろうと、まず目で眺めて、色の違いで体が判断できるように

なってしまった。

すると、見る見るうちにサトイモ袋が満ちていく。

2キロ強(しぼる前)採るのに20分強くらいだったろうか。

ビーチに入ったのが1時半ごろ、帰りの車で走り出し

時計を見たのが2時ちょうど。

あまり採っても食べきれないし、マスターするとバコバコ採れるので

すぐに飽きてしまい、上げ潮を嫌ってすぐに採取終了してしまった。

一かきすると酢の物一杯分くらい楽に取れることもある。


※右の写真、ゲジゲジの藻がニセモノ

 

宿でオバチャンに話したところ、20分でこの量は多い!といわれ

ちょっと長男としてはおどろいた。

初チャレで、しかも箱メガネなども使わず楽々と

採り尽されたかのようなビーチで、長めのモズクを採れた。

サラリーマンから、野生の長男へ体質が変化しているのだろうか?

確かに、見渡すとかなりの人が、この二週間あまりのブームの間に

採り尽くした感もあるが、慣れてしまえば

まだまだ完全に採られておらず、結構残った株も多かった。

 

小さな珊瑚にくっついたモズクも多いのだが

体というか手首が自然に振り落とすことを思いつき

水中で手首を返して2、3度激しく振ると、重い珊瑚はチギレて落ち

新鮮なモズクだけが手に残る、そんな風にして着々と

サトイモ袋は満ちていった実感がある。

 

しかし、なんと豊かな海だろうか。

魚は今のところカラッキシ釣れないのだが

山が豊かなのだから、このくらいあっても当然だろう。

ただ、モズクの採り放題は珍しいことらしい。

普通なら、一週間もあれば採り尽されてしまうようであった。

それはそれで、微妙な心境にさせられてしまうが・・・

 

確かに買えば高価かも知れぬが

一度に採って、塩漬けしてしまって保存・・・というのも

あさまし過ぎる気が・・・モリモリ巻き起こってしまう長男であった。

新鮮なものは、常に海に置いておいた方が美味いのでなかろうか。

 

モズクの炒めもの、歯ごたえがシャッキリする。

 

次の日、長男がウカツに放ってしまったモズク楽勝話によって

宿のオバチャンが乗り気になり、船舶免許の講習に来ていた

先生を巻き込んで、再びモズク採りへ・・・しまった・・・

なぜか宿のオフィシャルカーをドライブをせねばならないのであった。

駐車スペースに入る直前、バックしたときに

アダンの木にやや突っ込んでしまった・・・まあ、慣れないんで・・・

(手前は先生、奥はカッパを着るオバチャン)

 

冷たい雨の中、海に入ると、海の方がやや暖かい。

しかも、昨日の人出によって、もはや激減したモズクは

かなり見つかりにくい状況になってしまっていた。

それでも、オバチャンは絶対にやりたいらしく

僕や先生は尻込みした。

しばらくやっていると、だんだん昨日の勘がもどってき

やや順調に採れる様になったため、つい本気を出してしまう。

恐るべし、人の欲・・・

 

昨日はあまり目にしなかった動物も目に飛び込んでくる。

謎の長ぁ〜くてフニョフニョで水っぽ過ぎ、持ち上がらないけど

結構早く動くナマコらしき存在・・・

(右がこちらを向いている頭)

顔というか頭は触手が伸び、ナカナカ宇宙生物っぽい。

 

青の美しいヒトデは、ペットにしたいような気もする。

大きさがまた持ちやすくてよいし、硬く滑りにくい肌触りも上品だ。

イイわぁ・・・しみじみイイ感じのヒトデである。

 

そんなこんなで昨日の4倍の時間で、やはり4倍くらいの漁を

してしまっていたのであった・・・しっかし寒っ!

雨も降っているし、顔がどうしても笑えない・・・

(笑えないのなら撮んなよ・・・と突っ込まない事)

ちなみに寒さと採れなさにコリて、船舶先生は早々に磯遊びしていた・・・

 

一方宿のオバチャンは島人の意地を見せ、内地人の長男に負けじと

苦労しながらも、どっさり採っていた。やるじゃね〜か!

(島人の海産物に燃やすド根性、見せてもらったぜ)

しかしさすがに、長男のマスターした、ハンドオートマ刈りは

真似できないようで、箱メガネで採らない長男に

先に来ていたご近所の方から、無理やり?メガネを奪い、長男に渡してくれた。

1/3くらいは箱メガネで採ったろうか?

確かに根こそぎ採れるのだが・・・水深があるとノゾキながら採れず

油断するとメガネが流れてしまいそうで、結構面倒くさい道具だった。

 

だが、採ったモズク・・・どげんしょ・・・

 

当面は、この雨のまま、遅い梅雨の戻りでシトシト天気がつづきそう。

Oちゃんとクロウサギを撮りに行けるチャンスは巡って来るだろうか。

こればかりは、レインフォースを信じ、反発力によってできる

晴れ間を待つしかなかろうか・・・


ではまた