島旅、いったん休憩

 


朝夕寒く、昼は至って涼しい南大東に別れを告げ

いったん引き上げることにした。

というのも、次から次へと渡り鳥が、ここ大東で見られる。

リュウキュウサンコウチョウか、サンコウチョウか不明だが

尾の長いオスもモズ博士T軍団の一人が目撃している。

寒いからそうなのかどうか不明だが、長男の直感では

シーズンが遅れ気味なのと、気象の異常化進行によって

鳥達が渡りあぐねている・・・そう感じるのだ。

このあと、徳之島へ行くことにしていたのだが。

 

さて大東へ来ている鳥達だが

ここからどこへ渡っていくのか不明だそうで

案外、本土も中部以北へ渡る中継地としては

うってつけなのかも知れないし

あるいは風に流されただけかも知れぬ。

もしくは、大型のシギ類などは南半球から飛んできて一休みし

カムチャツカを経てアラスカの干潟へでも行くのだろうか?

 

次々に入ってきているとはあまり思えないが

少しづつチュウシャクシギは増えているようにみえ

空港の草原で見られる群れは確実に長居していると思われる。

旅客機が離陸する時に飛び去るのを撮影してみたところ

チュウシャクの中に、便乗して逃げているやつが居る!

 

空港の草原やゴルフ場(南大東にもゴルフ場がある!)に

もっとも多いのが、ムナグロ。

今はその2番手くらいまで数が多いのではなかろうか???

多分総数では小型のシギ、ウズラシギやハマシギ、キアシシギなどが

多いのだろうが、大きくて目立つ存在なので

素人の長男は、ついそう思ってしまう。

ちなみに便乗しているのは、キョウジョシギとムナグロで

キョウジョシギは、かなり黒の部分が多い

コワオモテ系の固体ばかりである。

(完全に夏羽になっているためで、冬羽は顔も白っぽい)

  

強面は格好だけで、逃げ足は速い。

 

ムナグロはピタリと止まるか、トコトコ遠ざかるだけのことが多く

気がつくと目の前に居ることもあるヒョウキン者で憎めない。

ムナグロを見ると、なんだかちょっとほっとする様になった。

パッチリした目、様子を見るためにヒョッコリ伸ばした首、

黒いのから、シギのような色のものまで、いろいろなのが居るし。

※とはいうものの、シギではなくて大柄なチドリ・・・

 

僕の見た限りでは、明らかにセイタカシギは減り

どこかへ再び渡って行ったようだ。

中、小型のシギや、チドリも立ち寄り程度のはずで

よくもこの体でと思うくらい、海にも降りられない体で

海面スレスレの空気のもっとも分厚いところを飛ぶのだろうか。

島の夜、上空をピュイピュイと鳴きながら飛ぶシギの声を数多く聞いた。

夜っぴいて飛ぶことも平気なのか、それとも渡りの衝動が

そうさせるのかは分からないが、切ないくらい健気に渡っていく。

これまでのありふれた鳥、地味な鳥といった印象しかなかったシギだが

旅の無事を祈り、心のそこで「元気でゆけ」とつぶやく存在となった。

 

(ちなみにキアシシギ)

やはり渡りの疲れからか、真昼間に居眠りするシギも居る。

こっそり近づいて撮影し、忍び足で遠のいて、そっとしておいた。

 

中でも驚きなのは、キビタキ。

サンコウチョウもさして大きな鳥ではないが

キビタキは黒いからだに黄色い模様で、昼間飛んでいたなら

猛禽(もうきん、ワシタカのたぐい)から見れば、まさにリゲインが

飛んでいるようなもんだ。

スズメくらいしかないチビだが、渡る。

スズメも渡る種類があるらしい。

見たのも初めてなら撮るのも初めてだが

よく見ると眉と髭が濃い頑固ジジイみたいな顔で

正面からはどうもイメージしていたような可愛さがないなぁ。

(何じゃ、何か用かっ!と怒ってんのか?)

あまり人を恐れないのか、長男が黒い顔で

夕闇に溶け込んでいたためか

わざわざ目の前を横切って飛んでくることが多く

ほとんど逃げないので、撮影は楽チンだった。

 

だが、これは次の撮影でなぜだか分かった。

次の撮影は釣りと掛け持ちで、やや早めに出陣。

すると、ダークグリーンの姿が夕暮れの遅い明るい林で目立つ。

ちょっと違和感を感じてお尻を向ける事が多かった。

まあしかし、人間の形が浮き立ち難いポーズ、直立不動と

カメラを枝で支えた木になったつもりで立ち尽くすと、やや和む。

本職の方々は、ハンティング用の葉が描かれたような

ナチュラル迷彩とでもいうような服装を用意できるが

長男の場合、釣りがメインであり、特に暑苦しい色合いの服装は

あまり持っていくことが出来ぬし、その姿で釣りをするのも

かなり違和感がある。

ま、プロじゃないので木になってがんばるしかない。

 

さて、掛け持ちする釣りはというと

横浜の釣友HMS氏が苦労して探しまわり、送ってくれた

黒金のジグでカンパチを狙ったが、来るのは小型のカッポレばっかりだ。

(下のヒレより背ビレがかなり長い)

(ヒレは上下両方長く体は短い)

(黒くて体が長め、体型はカスミアジ風)

見ての通り、個体差が大きいことが分かったのは良かった。

カッポレはなかなか釣れない魚として有名だが

これだけ連発することは幸せと言えなくもない。

が、お持ち帰りをすることは出来ないサイズであった・・・(40センチ未満)

すまぬ、HMSよ、ポイントの読みと腕が悪かったのだと思う。

 

けれども長い竿を使い、遠く、深く、しゃくりあげてくるジギングで

体はたくましくなったぞ。今だけな・・・

 

本来はバラクーダことオニカマスを釣るのが目的だったのだが

いつしか深いポイントに魅せられ、とり付かれた様にジギングしていた。

今度は家からも近い離島、伊豆諸島でも更にがんばる事に。

 

それでも磯でジギングして釣れない時は

珍しく港でも竿を出そうと向かったこともあった。

すると、今まで別のところで釣っていたオヤジがやってきて

急に釣り場をふさぐではないか!!!

大東には、ひどくルアーを嫌うヤカラが居ると聞いたが、コレだな。

しかし、大物釣りとはいえ、男らしくない短い船用の竿を使い

馬鹿でかいムロアジをつけて投げても釣れるはずないぞ・・・

やるなら、長めの竿でデッドベイトを作って、ルアー風に投げてやった方が

釣れるに決まっている。が、多分デッドベイトは知らない。

こちらもイヤミを出して、準備万端整えて、竿を担いで

じっと無礼オヤジを見続け、ニヤついていた。こうして写真も撮ってやった。

すると釣れないと分かるや、長男の対無礼オヤジポーズに苛立ったか

ムロアジを地面にたたきつけて、元の釣り場へ戻っていった・・・

多分、あきらめて帰ると思ったのだろうが、甘いな・・・へっぽこオヤジよ。

馬鹿丸出しだぞ・・・いい大人が・・・同じ釣り人として恥ずかしすぎる。

南大東の大海の前で、年下に向かってすることではない。

※デッドベイト=魚の内臓を出しオモリとハリを仕込む、いわば生ルアー

 

さて、そんなこんなで、もう帰りの船が。

出航は普通夕方だが、この日は早くて2時半。

荷物同様、吊り上げられて乗船だ。南大東の大地から宙へ。

残念ながら「俺は奴隷になりたくないんだぁ〜降ろしてくれぇ〜」と

叫ぶタイミングを逸してしまった。

モズ博士Tと鳥類研究軍団が総出で見送ってくれた。

今回は、かなりお世話になりました・・・また会うときまで、あばよ〜い。

心なしか、約一名を除いて、女性の方が良く手を振ってくれてるなぁ。

(ちなみに右手前の人は部外者だ・・・)

 

※業務連絡

M井君よ、今度奴隷船に乗せられる長男の写真、送ってくださいな。

 

出航すれば、明くる朝まで海の上。

普通なら退屈するが、長男はチャレンジする・・・

 

思わぬスクープ写真を撮影することになろうとは。

 

つづく

 


ではまた