年末最後の役目

 


我が家の大切な年末行事、それは、餅つきだ。

これをやらねば年は越せぬ。

つくのは餅つき機だが、大切なことは、もむ仕事であった。

我が家に伝わる餅は、ついた後、もみ込むことで

腰の強い、煮ても焼いても崩れない、無敵の餅でなければならぬのだ。

実は、このもみ込む技が、世代を超えて受け継がれている。

もともと、もみ込み系の文化は山口県の母方にあるようで

今は亡き、頑固なじいちゃんから受け継いだ技前であった。

 

今年は、珍しく家族4人がそろったのだが、

弟が風邪でへばっており、風邪をもみ込まれてはマズかろうと

休ませることになったのだが、その分、もみ手が足りぬ。

 

そこで、今や私こと長男だけが受け継いだ技前

「両手もみ」が発揮されることになる。

何時もは3回に一回くらい両手もみを使えば良かったが

今回はフル稼働させねば、おふくろ様が良いリズムで切り分けていく餅が冷め

表面が乾いて、もみ込んだとき上手く丸くなりにくくなる。

もみ手はおやじ殿と長男の二人しか居ないのだ。

おやじ殿は日曜大工もこなす元自衛官兼航空写真家だから器用な方だが

結局、結婚してから餅もみを始めたせいか、両手もみの境地に至っていない。

おふくろ様は同じく今は亡きばあちゃんから、切り分けの技を引き継いでいる。

 

物心ついた子供のころから参戦し、親戚のなかでも

密かに抜きん出て技前を鍛えてきたのが長男であった。

(といっても、年、一、二回の行事なのだが)

 

これまで、両手もみを休み休みしか使わなかったのには理由がある。

それは、温度だ。

つきたての熱い餅をもみ込むのだから、当然ヤケド直前の状態での作業となる。

だから、片手を冷ましながら、交互にやるのが通常であった。

 

が、今回はそんな悠長な事は言っておれぬ。

そこで、ふと、シンプルな事を思いついた。

冷やせば良いじゃん・・・

そう、単純なことである、両手もみし続けられるように

アイスノンなどの冷媒で冷やしながらもみ続ければ良かったのだ。

これに気づくのに三十余年掛かろうとは、長男一生の不覚だが

まあ、思いついたのだからヨシとすることに。

これは非常に快適で、今までの苦労が馬鹿馬鹿しくなるくらい

当たり前に、かつ、心地よく作業を進められるのである。

できれば解けかけか、やわらかいアイスノン、氷のうの方が効率よく

手のひらをぴったり密着させて冷やせる。

 

利き手でない方でもみ込むと大体楕円になってしまうもので

それを右手で補正して仕上げるのが、普通だが

長男の場合、左手で箸もマウスも使えるせいか、左右のもみ込みの差はない。

もみ込んだ餅はべろんとしない。粘度を増し、渦を巻きせり上がって反発する。

ここが丸めるだけの餅とは違うところだ。

記憶によれば、おそらく両手もみが身についてきたのは大学生のころ。

高校のころに箸を左手で持つ練習をしたためかもしれない。

左手が飛躍的に器用になっていたからだろう。

(草餅との二本立て)

 

このもみ込んで腰のある餅を焼き、香ばしくしてから

雑煮にする、これが我が家の正しい正月の迎え方でもある。

 

餅つきも終わり、あとはオセチ作りがまっているが

それは大晦日の仕事だ。

ゆっくりと散歩して探鳥でも楽しむことに。

しかし、なんとも実家周辺は殺風景なところで、果てしなく乾いた冬の田が

つづき、一番ちかい小さな山まででも2キロくらいある。

しかし、どうしても鳥が見たい・・・いったん探鳥と決めて出た以上

地図で探しておいた、山向こうの池まで行って見なければならぬ。

 

幸先良く、家を出てすぐにチョウゲンボウ(隼の一種)を発見!

カメラをセットして構えるころには、なんと味気ない携帯電話の基地局の

アンテナにとまってしまった。

去年もここらで見たから、結構気に入って住み着いているのかもしれない。

けれど、待てど暮らせど飛び立とうとしないので、池に向け出発。

まっすぐに区画された農道をひたすら山のほうを目指して歩く。

 

ふと、ツイツイっと泣く小鳥が田の中に潜んでいるのに気づいた。

どうもスズメより大きいし、ちょっと馴染みのある姿である。

家に帰って調べたら、案の定ビンズイで、山に近いところに多いらしいが

平野のど真ん中の田んぼで群れているのが、ここら伊勢では一般的のようで

昔から見てきた鳥だが、調べたことがなかった。

かなり近づくまでじっと草陰に居て、一度逃げてもまだ残っており

3回ぐらいに分けて、度胸のない順に逃げていくのが面白い。

(後日、モズ博士Tに確認したところ、タヒバリとのこと。まだまだ修行が足りぬ・・・)

 

行き着くと、田丸城跡という小山があって、そのあたりは林もある。

そこを抜けて、半分やぶこぎしながら、シイタケ栽培で使われる道を散策。

なかなか鳥がいない。

ようやくエナガ、ヤマガラを見つけたけれども、枝が茂っていて撮影は失敗。

遠くでコゲラの声もしていた。

で・・・半分どこにいるか分からなくなり、遭難?しかけていたところ

木の間からみなもが見えた!

 

助かった・・・

 

湖畔にはいかにもカワセミが餌場にしそうな枝がたくさんあったのだが

居たのはなぜかビンズイ・・・

 

サギも、カモ類も居ない、なんとも殺風景な池であった。

自然が多いんだか豊かなんだか良く分からぬ田舎風景である。

あまりの殺風景さに、シャッター切るの忘れた・・・

 

帰り道、やっぱり何もない・・・

遠くに見える林の右のほうに実家がある。

そこまではただ、ひたすらに田んぼ、田んぼ、田んぼである。

吹きすさぶ風は少しだけいつもより寒さがやわらかくて

歩きやすい。

空気も美味い。

これで鳥がもう少し居れば楽しいのだが。

 

ま、そんなこんなで今年も無事暮れていく。

来年は大変な年になるだろうが、今はこの平穏な年末を

ゆっくりたっぷり過ごすことにした。


今年も、乱文、長文をお読みいただきありがとうございました。

来年もまた、張り切って書いてまいりますので

よろしくお願いいたします。


ではまた