小さすぎる冒険

 


 

抑ウツは治ることもないらしく、時を経るごとに小さな変化がキツいと感じる。

独り好き勝手に生活しているから、小さな不自由もずいぶん嫌気に感じられる。

 

帰島の日が近づくにつれ、小さな不安が臆病を刺激し、いつもの吐き気まで。

 

抗うつ薬の副作用のしんどさは身にしみているから、戻る気は毛頭ないものの

不安に対する体の反応が徐々に大きくなっているのが、厄介なところなのだ。

 

不安を減らすには、事前の対処の積み重ねしかなく、出たとこ勝負はもうできぬ。

 

そんなワケで、もっとも不安要素だったJR参宮線を克服?するべく、伊勢市駅を

目指しつつ、土産を求めてみることにした。

 

そもそもの話、今回の不安の根源は、伊丹空港から鹿児島へのフライトが、

最終便でも10:45なことである。

 

早朝、来るか来ないか信用できない田舎のタクシーを待たず、最寄駅で乗車し

伊丹空港へ向かわにゃならなくなった・・と判断した。

 

それでなくても、駅までは2キロあまり。

Xデーに雨が降らないことを祈りつつ、土産を求めてJRに挑むのである。(笑)

 

JR参宮線は、世界に誇るべき、おそらく最先端の鉄道会社、JR東海にあって

一切の電子決済が通じぬ路線なのであった。

 

しかも、田丸駅は無人駅で、どのように乗車するのかもサッパリだ。

ネットには、乗ればナントカナルと書いてあるんだが、なおさら不安が募る。

田丸駅へは、スマホが案内してくれ・・便利な時代だなぁ。

 

駅のエントランスは、ぎりぎりすれ違わえれるくらいの階段・・・・

右は、惜しまれつつも取り壊し中の、駅舎なのだろう。

 

それにしても9:45になっても、来ないなぁ・・

近くにあった時刻表を見直すも、勘違いなどしていない。

 

やがて放送が入って、10分遅れで運行中だと謂う。

田舎のJRで遅れとは、またレアケースに見舞われたものであるなぁ・・

 

ようようやってきた汽車は編成が長く、想定していたワンマンでないのか!?

その昔、いっぺん参宮線を利用して鳥羽水族館へ行ったのに・・記憶に無い。

 

列車の中ほどに車掌さんがいる、ヘンな編成だったが、とりあえず乗る。

後ろには整理券が出る装置があると謂うので、後を目指すも、沈黙したまま。

 

しかも

車掌さんは前方へ行ってしまったので、もどるタイミングで赴いて、たずねる。

 

すると

現金で車掌さんから切符を買うのだと謂うし、ワンマンとそうでない車両は

現金決済の仕方が違うとのことだった。 なんと面倒な・・・

 

ワンマンでない車両にも、編成の都合上、整理券の発行機は搭載されてるし、

車掌がいる編成では、車掌が客の対応をすべて行うとのことだ。

 

説明はわかりやすかったが、利用方法としてはワカリニクイ。

しかし、わかっていないローカルルールが他にもあることを知るのは、帰りしな・・

 

それにしても、車内でちまちま現金で切符を発行とは、なんとも非効率なような。

一応、JRのロゴが入った用紙とは言え、ほとんどレシートだな。

 

とりあえず

あすの本番?に備え、松阪までの330円は確保し用意しておいて、

乗ったら切符を買うか、整理券をゲットしてから路線バスよろしく料金箱へ

支払いすれば済む・・のは、ばっちり理解した。

 

伊勢市駅は、宮川、山田上口のつぎ、たった3駅先である。

 

伊勢駅でなく、なぜ伊勢市駅なのだろうか・・語呂か???

しかしながら、同じ三重県にあって、最短地名で有名な津は、津駅なのだ。

伊勢は発音がスース―しているからか・・他の駅に間違いやすいのか?

伊勢市駅で降りたのは、もう何年ぶりか知れぬほど、記憶のかなたであるが、

徳之島に移住してからのことだから、14年以上昔ではない。

 

しっかし、前々から思うんだが、なぜか伊勢市駅はわざとそっけない佇まいに

仕立てられている気がする。

 

最高神たる天照大神を祀る内宮さんは、だいぶ交通の便がヨロシクないから、

政治的宗教的に伊勢市駅を簡略化しているのかもしれないなぁ。

もしかすると明治新政府以降の、国家の在り方を左右する駅でもあるからねぇ。

 

天皇家があがめる、もっとも大切な社が不便な場所にある・・・・

 

政府は、いかにも徳川幕府を悪印象にするために、いろいろと歴史づくりを

細工してきてい、その一端が伊勢市駅にも見え隠れしている?

 

そんなことより、土産の買い物だ。

 

お゛〜、ポンコツ食堂が、なおさらポンコツになって現存しているぞ!!!

いっぺん伊勢うどんを食べてみたいが、どんだけ妙な味わいであったとしても

それが老舗の味だと納得いく店構えだ。

 

そもそも、伊勢うどんはどんなに美味しくても さほど美味しいモノでもないから

問題ないだろう。(笑)

 

さらに進むと、セントチヒロの風呂屋のような旅館「山田館」が現れた。

あれほど大きな構えではないが、夜になると・・あの雰囲気に近づくらしい。

 

そして、外宮さんの前にある「伊勢せきや」が土産の目的地である。

老舗と謂うには操業して半世紀も経っていなものの、貝や海草を炊いたのは

逸品なので、機会があれば是非ともご利用いただきたい。

 

一月もデートしていないカノジョに、アワビを炊いたのを持ち帰る算段だ。

いやいや別に・・カノジョの同等品をもらっているお礼だとか、そんな大それた

ドエロいダジャ心からではない。 まったく・・ けっしてアリャセンです。(汗)

 

帰りしな、同じ通りにある刃物屋に寄る。

「菊一文字」その名を聞くだけで、刃物好きなら買いたくなるネーミング。

包丁にも、その刻印があるのだ。

 

手打ちにもかからわず、三徳包丁が5,800円と、実に手ごろな価格。

欲しい・・が、機内持ち込みできないから今回は保留し、スゴスゴ店を出る。

 

10:54発、亀山行きで帰るが、先進の私鉄、近鉄とは異なり自販機が無くて

改札兼窓口のようなところへ行って、行き先を告げるに・・電卓をはじきつつ

けれど、システム自体は新しくて、新幹線と同じ空色のマルス券を発券。

昔ながらの硬券にしてくれたら、昭和的に嬉しいのに。

 

いよいよ、忘却して未知となったワンマンの車両に乗車となる。

え゛? ワンマンなのに、2両編成なのか!?

 

さておき、暑いから涼しい車内に入れてくれないかな゛〜と思っていたところ

スタスタやってきたオバチャンが、ボタンを押してドアを開き、さらに閉めた!?

 

アレかぁ゛〜

「お前はまだグンマを知らない」とゆ〜アニメで視た、高崎線の現象な。

 

しかしまだ、無人駅でいかにして降りるのか・・ナゾは残る。

現金をジャラジャラ入れる料金箱に対し、マルス券はどうするのか?

料金箱は中途半端に車内に露出しているが、そのすぐ上には、運転席を囲う

ガラスがあって・・まるで料金箱への現金投入を拒むような構造になっている。

 

あのガラスは開くのか? なら、どっちへ開くんだ??

ここ一月で見慣れた風景を車窓から横目で眺めながら・・料金箱に悩んでみる。

 

宮川駅で降りた客が、ワンマンの作法を示してくれた。

 

停車したらドアのボタンを押して開く。

そのタイミングで運転手がガラスをタバコ屋のババよろしく開いてコチラを見る・・

ので、マルス券を渡した。

 

そうしたら、マルス券は料金箱の右にある現金口とは違う、左の口にホイッと。

そ〜ゆ〜システムだったんかぁ〜、合点はいかぬが確認はできた瞬間。

 

ワンマンなら後の車両のドアは開かぬと信じていたのに・・

しれっとオバサンが2人降りてしまった。 一瞬、チラと定期を見せたようだった。

 

あくまでもデジタルでなく、ウソをついていないかどうか・・目視確認なのだ。

 

ソンナコンナで、あすの本旅シミュレーションを、達することができた・・ハズだ。

 

帰りしな、橋の上からすれ違いを眺める。 参宮線は単線で非電化だ。

ずいぶん年季の入った汽車じゃなぁ、先端の新幹線もイイのだろうが、

逆に心底鉄道好きの職員には、ある意味で人気かも知れぬ。

 

内地では、この14年あまりの間に全てが進化していると信じきたのだが

あながち、そんなこともないらしいことは、十分に体感できた。

 

ありゃ? 逆効果じゃんよっ!?(笑)

 


 

いよいよXデー。

 

幸い雨も降らず、定刻5:19の汽車はやってきて、エンジン音の中を松阪へ。

 

しかし

松坂はシミュレーションしていない、アナログJRと近鉄が交わりつつ、ホームが

フツーに同一会社のようにつながっているのである。

JRのレシート切符では、そのまま近鉄に乗車するのは、どうにも不安がつのる。

 

時間があるので、いっぺん自動でない改札を出て、券売機で乗車券を求めてから

先の改札にいたJR松阪駅の職員さんに、最後の疑念を正してみる。 と・・

 

そのまま乗り継いで(近鉄は無人駅でないから)、行きついた先の駅で切符を示し

精算すればイイとのことだった。 結局、アナログなのか・・・・

 

とゆ〜のも、実は本旅に際して、二つのデジタルを確認しておけば不安を払拭する

ことが可能かもしれな、との思いからだったからだった。

 

その1) 近鉄の特急券のネット購入

その2) JALチケットのネット購入と、ガラホでタッチ&ゴー

 

お気づきかもしれぬが、近鉄特急は全席指定だから、事前購入が前提なのだ。

んが・・乗車券は別になっているから、極アナログ路線からの乗り継ぎにおいて

いかにしてデジタル的に乗車券を購入できるかが問題だったワケなのだ・・・・

 

特急車内でホッとしながらも、このままナンモせず特急の席に座って良いのか

不安になり、車掌さんがやってくるなり、たずねる。 と・・

特急券のネット購入については、この画面があれば十分だとのことだった。

パソコンから転送したものなんだが・・(汗)

 

昔から全席指定だから、ナリスマシはしづらいから、かな?

長年の運用上の結論だし、素人が疑う余地は無いと思うことにした。

 

飛び乗った客がテキトーに座ったのを、アンタダレ?となるシーンなら

幾度も眺めたことがある。

 

早起きして眠いなか、食欲はすぐれないが、食べておかないとダメだ。

きのう、スーパーで求めておいたサンドイッチ。

ボリュームがアリスギながら、日持ちの関係から、コレしか選択肢は無かった。

 

食べきれず、耳を残して静かに手を合わせ、食品ロスをわびる・・

 

今回は上本町が終点だから、ブラックアウトで乗り過ごすこともない。

リムジンバスに乗り、伊丹空港から無事にフライト。

 

と謂いたいところだが・・

チケットレスなので、思い切ってチェックイン無しに手荷物検査場へ挑んだものの

ガラホは沈黙・・・・・・女子職員の目には疑惑と迷惑がたぎっている!?

チェックインせず、QRコードも持たず、ナニシニ来たの! とゆ〜目ヂカラを感じる。

 

臆病なワシはソンナコトモアロウカト、QRコードをガラホの画面に出しておいたので

迷惑千万目ヂカラを抑え、なんとかコトナキを・・・

しっかし、なんでガラホが反応しなかったのだ?

 

搭乗ゲートの職員さんにテストしてもらったが、ダメだった。

最後の手段で搭乗するときに試しては? ヤブレカブレっぽいご意見をもらうも

後ろに並ぶお客を待たせるのはしのびないんよなぁ。

 

ありゃ?

そ〜いえば、ガラホの背面には、ほとんどベッタリとバッテリーが装着されており

NFCのアンテナはどこにあるのだ???

 

ネットで取説を検索したところ、表面にマークがあって、そこをかざずと乗っていた。

あんまりマークが薄いので確認できぬが、そっちをかざせば稼働できそうだ♪

 

取説どおり、まんまと表面なら反応してくれ、シレッと通過・・

とはイカナイのが、わが旅の醍醐味なのか?

 

反応したのに、センサーが赤く光ってエラー!

「JALのICカードではアリマセン」となっ?

 

しかし、ワシの焦り以上のスピードとパワーで職員さんが焦っている!?

 

どうやら、ゲートのシステムは、おサイフケータイを受け入れぬ設定であるために、

職員さんが、奥にあるタッチパネルをセカセカとタッチして、解除する運用のよう。

 

ここでもまた、アナログ対応かよ゛〜。

結局のところ、マイナンバーカードよろしく、ヒューマンエラーのようだった。

 

鹿児島空港での乗り継ぎには4時間・・・・・・ けれど、けさから胃腸不良だから

消化のいい日本そばをサラッといただきたくて、セキュリティゲートを出る。

 

も・・そばには何らかの丼ものが組み合わせられ、フツーのきつねうどんなど無い。

空港の外へ出るのも面倒なので、断食を決め込むことにして、いよいよ島へ。

 

着陸のとき、トリトリデッキを眺めていたら、スラストリバーサーでグイと前のめり!

ズドドドドドッ! と轟音とともに揺さぶられ、ホッとする瞬間・・

 

到着ロビーへ出ても、知り合いの顏が見えぬ・・ 空港を出ても、おらん・・・

来るとき同様、お願いしていたのを忘れて、会話に夢中だったそうな。(笑)

 

いつもの島に戻ってきた実感が、いっそうグイグイ来てしまう。

 


 

退屈でない島に戻ったハズなのに、ナゼか一月まえと顔ぶれが変わってない。

仕方ないから、気晴らしにキアシシギとともに、鳴いてみる。(笑)

 

上空からは、秋口に来るツメナガセキレイの声がしていた。


ではまた