プチ友情の釣り特集「眼下を釣る」

 


友人が、さらに友人を連れて、釣りに行くという。

しかも、よりによって狭き大島の荒い磯へ、という。

困ったことに、この磯に初めての友も居るという。

 

さて

弱った。

 

その磯の名は赤岩。

言わずと知れた、知るひとぞ知る、

知らない人は関東での磯師のモグリというくらいの一級磯である。

近くて便利、深夜の定期船に乗って、朝方、伊豆大島に着いたら

波浮港経由セミナーハウス行きのバスに乗って、送信所前で降りたら

目の前が一級磯である。

 

もう、通い始めてマル10年になろうか。

この磯の特徴はなんといっても、その足元からの深さである。

 

よくよく荒磯なので勘違いする向きが多いのだが

荒磯で、いきなり足元から水深10m以上ということで

離島、あ〜憧れの離島の海があるんだ、そして俺は黒潮に向かって

餌をなるべく遠くへ流し、超大物を釣るのだ・・・と幻想を描く方々の事だ。

 

餌撒き隊の人たちは、深いんだから回遊魚か、大型の上物が居るだろう・・・

と信じているが、実のところ荒磯のわりに下は砂地なので

ヒラメか、ホウボウくらいしか居ない・・・のに流す。

すると来るのは、ソウダガツオ、ムロアジ、サバといった特段磯でなくても

防波堤で十分釣れる、オキアミ大好きな連中が連れてくるのである。

それも知らずに流す向きには、ほとんど何もこない。

当たり前だ。

運が良くてウスバハギの総攻撃に遭うくらいだろう。

赤岩は黒潮でもなければ、起伏に富んだ海底でもないのだ。

 

当然、獲物は足元に居るのである。

これに気づくのに、長男もずいぶん時間がかかった。

でも、沖の中層に魚が居ないことは最初の頃に分かったが。

周囲のボランティアではない釣り師の方の釣りを見ていれば

おのずとどこに魚が居るのか見えてくる。

シマアジは、竿先の真下で釣るのが常識である

というのを知ったのも、この磯である。

 

我々のやり方はルアー釣りである。

 

目標となる魚は

ヒラマサ、カンパチ、イナダ(ブリ)、ヒラメ、ホウボウ、時にマダイといった

回遊魚と砂地の底物という両極端な魚達だけである。

 

両極端な魚だけという環境はナカナカ他には無いと思われるが

これがまた実に曲者(クセモノ)である。

前者の回遊魚系は、カンパチに関しては足元に居着いていて

他は回遊を待つしかない。特にヒラマサは夜明け前から釣らないと駄目なので

我々定期船楽チン日帰り組みには無理である。

何しろ、日の出あとに船が着くのだから、とっくに夜が明けてから釣るのである。

 

通常、夜が明けきったらルアーでは釣れない・・・

そういう常識もまた無用という曲者の磯でもあった。

特に曇った日は、回遊魚も油断してルアーを食ってくれるので

うれしい油断禁物状態である。

 

さて、最近は潮の加減か、水温か、なかなかシーズンが特定できぬ。

でも、秋になったら秋磯に行って釣る、これは磯師の習性なので

それこそ修正できぬ、愛すべき恒例行事である。

 

本当かウソか分からぬが、我が感覚で思うところ、

赤岩の海底はこんな感じである。

久々に図解してみた。

 

有難いことに、餌で寄った小魚に、カンパチ(ショッパチ)がついている。

時折、回遊してくるイナダも、その小魚や、餌さ撒きボランティア隊の

オキアミ散布には足を止め、磯の周りにしばし立ち寄る。

そのほかの魚は、さらにその下に、餌のおこぼれを狙ってか

足元の最深部に潜み、虎視眈々と上層の餌や小魚を狙う連中、

ヒラメ、ホウボウであった。

 

時折、気のいい餌撒きボランティア隊の方が、カンパチが居るから

ルアーで釣れ、とすすめてくれるが、これは針のむしろである。

通常、磯のバーチカルジギングをやらないと釣れないのだが、

磯のバーチカルで一番つれるのは、磯であり、地球である。

運が悪ければ、しゃくったルアーが水面を割り、自分めがけて飛んでくる

そんな恐怖に怯えながら、最悪の状況を釣ることになるのである。

 

こういうときは、とりあえず真剣に釣るフリをして

せっかく譲ってくれた御仁に感謝するフリをするのが大切だ。

僕は下手だから、カンパチが釣れないんだ、そう正直に思うのだ。

まず、通常の場合、真下に居て、餌についたカンパチは

ルアー自体を追わず、ルアーでは釣りようが無い。

 

さて、そういう御仁が居なくても、真下にカンパチは居る。

オキアミよりむしろ小魚にねらいをつけているカンパチも居るのだ。

それを狙うのが磯の男の役目である。

 

釣り方は、長男の経験では3種類。

1)やっぱりバーチカルジギングしてみる。

2)ちょっと沖の水面に誘い出して、ポッパーで釣る。

3)ちょっと沖合いの中層まで誘い出し、ミノーで釣る。

 

1)は厳しい。だが、シケ気味の時には有効で、丹念に探ると

  必ず食ってくる。

2)波がほとんど無いときにやる。(うねりはいつもある)

  きびきびとしたアクションで食えば、活性は高い。

  反応が無い場合は、こちらもヤル気の無い、タユンタユンのポッピングで

  のったり誘うと、我慢しきれないカンパチが一匹だけ釣れる。

3)もっとも確率が高い方法だが、なかなか中層まで潜る

  重たくてアクションの良いミノーというのは無くて困る。

  今だと、K-Tenシンキングワークスかピンテールシリーズであろう。

  便利になったもんだ。でも、これだけでは駄目らしく、2)のポッピングで

  水面に目を向けさせ、深場にいるカンパチを中層まででやすくさせる。

 

そいでもって、食わないときは、底物に切り替えて、気分も切り替える。

よく考えてみれば、マダイなんぞ、昼行性であるから、昼釣れて当然。

やる気を出して損は無い。駄目でもヒラメか、ホウボウだ。

沖のシモリには大型のヒラメやブリ、ワラサが付いていることもある。

でも、これは特殊な超遠投ジギングでしか狙えないから、普通では無理。

 

一方、大島のホウボウは型が揃うし

やる気があるときは中層でも食うほどの元気者で有難い。

正直なところ、ヒラメより美味い。

刺身の身のしまり、甘味、出汁の味、さばきやすさ、どれをとっても

ヒラメより上である。

残念ながら引き味は最低だが、鮮やかな胸鰭を広げグーグー鳴いて

とっても愉快なやつである。一度は釣っておいて損は無い。

 

長男は今年、バーチカルジギングにピンテールの小型のを使うつもりだ。

 

釣れるか、釣れないか分からないところが楽しい

こんな釣り方は他には転用がきき難いが

まあ良いではなかろうか

どうせ今年からヒラスズキの特殊な釣り方で使う

このピンテールを手に馴染ませておきたいし・・・

ただでは転ばぬ長男であった。

 

しかし友らよ、釣り場、狭いよ・・・・足場悪いよ・・・・

おまけに天気悪そうよ・・・・

大島の磯はなかなか条件が揃わぬ、難しい磯なんよ。

何度も通わんと分からぬ、だから楽しいんよ。

いつか分かってもらえるかなあ。

つかめてもらえるかなあ、磯下の海の中の感じを。


ではまた