最近のイカ釣りはイカがなものか・・・
もうずいぶんになるが、イカ釣りがオカシイ。
折に触れて、そのおかしさの断片を伝えてきたが
ここまでオカシイと特集してみたくなった。
基本中の基本だが、釣り以前にイカは一年しか生きぬ。
一方、対象となる獲物が減ると、チマタにはこういう言葉がはびこる。
「小さい方が、美味しい」
取り尽くして獲物を小さいものまで根こそぎにしてしまうからだ。
いかがわしい現象である。
大きな魚が大味なのは分かりきっているではないか
しかし、マグロは好きなんだろ!だったらオカシイじゃないの・・・
だったらシビ食べた事あるんかい???
こんな素朴な疑問は、もはや通用せぬのが
小物まで取りすぎに悩むチマタの漁業周辺の現象である。
自己矛盾に気づくようなら、多分、今のような現象は生まれぬから
今更どうしようもないのだが。
どうしようもないが、困ったものである。
最近、内地では妙なイカ釣り風土が育っているようである。
特にイカ釣りに細かな気を使わぬのが長男流。
居れば概ね釣れてくれる、釣り人思いなターゲットである。
だから
魚の付け合せに、一番釣りやすい、アオリイカを釣る事が好きである。
しかし、最近はアオリイカを釣るのも難しくなってきたし
小難しい仕掛けも登場してきている。
多分、不況で頭打ちとなった、子供相手のブラックバス用具商売よりは
晩婚化したサラリーマンを狙った、チョイ高級系タックルの方が儲かるのだろう。
釣具屋も面白い事を言う。
「今は、コレじゃなきゃ釣れませんからねぇ」
確かにそうなっちまっているようである。
でも、イカ釣りごときに何万もかかる道具をすすめるような商売が
はびこるような釣り場になった今、いったい海はどうなっちまうんだろう。
不況から、船代や餌代を払わずにすみ
手軽に陸(オカ)から釣れる釣りにシフトした・・・
経済がアメリカと中国の板ばさみで、政府も経済の活性化を見出せない
意味不明な郵政民営化が唱えられ始めたころ、アオリイカ釣りは流行りだした。
しかし、もはや、餌釣りもルアー釣りも釣りモノは居ない・・・
そこにココ数年脚光を浴びてきたのがアオリイカであった。
九州ではミズイカ、八丈ではバショウイカ。
前述のように、釣りやすいし、本来は道具はイイ加減でも釣れた。
どうでもいいが、次の儲けどころの魚はナカナカ見つかるまいよ・・・
釣具メーカーさんよ・・・
お陰で多彩になったイカ餌木(えぎ)。
でも、使えるのはやっぱりトラディショナルな餌木だったりするのが面白い。
ここ最近、太平洋の水温がおかしい。
頼みの南大東でも、ここ数年アオリイカのシーズンがズレズレである。
ま、あそこは太平洋の真中で、更にアチコチ発破工事をしてしまい
かなり荒れ放題になりつつあるから仕方ないといえば仕方ない。
イカ餌木釣りというのはシンプルなものであった。
長男が最初にイカに出逢ったのは和歌山県。
御坊(ごぼう)の日高川という釣りのメッカに程近い塩屋という小さな港であった。
港で、大きなアオリイカを見かけて、すぐさま釣具屋にエギを一本買いに行った。
何を買ってよいのかわからないから、適当であった。
スズキ釣りの道具しかもっていなかったから、釣り竿はヒラスズキ用の長竿で
16ポンドテストの4号くらいの糸が巻いてあったと思う。
夕方薄暗くなってから始めるのが地元流らしかったが、待ちきれず
早々と始めたのだが、夕暮れにさしかかったころ、一番最初にかけた!
奇跡の一尾?・・・であった。
かけた!というよりは、あれ、根掛かりさせちまった・・・と思ったら
グイグイ引くので、初めてイカと分かったのだが。
地元の人の釣り方を真似て、竿を大きく上下させているだけの
何もわからぬままのヒットであったが、食べるには十分。
当時の会社寮の流し台を真っ黒にしながら調理したのを覚えている。
あれから十年以上の月日が流れ、今や、そんな荒っぽい釣り方では釣れぬらしい。
極めて細い糸で、アレコレ細かい小技を尽くして釣るのだそうであるが
イカは一年しか生きないということは、シーズンも考えず、
イカが小さいころを知っていて竿を出し、小さなころからイカを餌木を見せる。
どれだけの人間が、イカの目の前に不用意に餌木をボコボコと投げていることか・・・
いや、それほど釣れぬ海になったために、イカに夢中になった釣り人ばかりになった・・・
と、傷をなめてもしかたなかろうか。
何か、社会的ストレスが大きくなったのか、それともストレス解消の時間が
短くなり、おまけに経済的に追いやられた人間が増えたのか
悲しい釣り周辺の現象が釣具店でも見て取れるようになった。
若者は、貯めた金をつぎ込んで、近場で高確率で大物釣りのできる
ジギングに走り、そこまでやれない人間がイカ釣りに走った。
地球レベルの異変が起ころうとしている中、いろいろな釣りが
変化の時期を迎えているともとれる。
なんくるタックルとは何の関係も無いが
生物が発生して、まだ海にプランクトンしか居なかった時代。
そのプランクトンの一種が減ったために、全地球凍結が起こったという。
二酸化炭素よりはるかに多くの温室効果を生む、メタンガスを発生させる
プランクトンが減ったというのだ。
それで、全地球凍結・・・・
スゴイ話トです・・・
だからというわけではないが、生物が全地球的異変を起こすのは
別段初めてというわけではないのである。
海があたたまって、夏には強烈なスコールや強力な台風が吹き荒れる程度は
まだまだ序の口に過ぎぬということである。
そんなわけで、これからの釣りは、もっともっと辛くなるだろうし
これまでの常識が通用しなくなるだろう。
何より、海の生き物こそが厳しい生活に耐えているのだろう。
そんなこともあって、最近少し、海へ行くのが辛くなった。
何もせぬ長男ごときが感傷に浸り、哀れむことなど
逞しく生き抜こうとする生き物達にとって全く無用なことだが。
さて、そうはいっても、なんくるタックルである。
長男がイカ釣りをするのはサブ的釣りなので、あくまでも仕掛けは
大雑把というか流用であって、専用のものは用意しないし
もちろん、持ちたい気すらもない。
イカとはそれくらい、居れば釣れやすいものだ、と思っている。
その釣れやすいモンダと悟ったのがこの一匹。
夕刻の大東漁港で、地元のニイニイ(若い兄ちゃん)達が
えらく小さいイカ餌木を使って、チョコチョコと竿先を動かし
イカを誘っている様子である。
どうも、近くまでくるが食いつかぬ様子。
う〜む、イカにばれてるな、何かイカに食わせる衝動を与えないと
駄目なんだろうなあ・・・と考えつつ
本土流の強いシャクリでやり始めたら、確かに寄ってきた。
が、食わない・・・
チョコチョコやっても食わない・・・
そうだ!?ひょっとすると、これはエビのルアーなんだから
水底に逃げるフリをすれば、追いかけたくなるんじゃなかろうか???
と、目の前のイカを逃がしたくないばっかりに考えついた結論だった。
で、すい〜っと沈ませると・・・追いかける!
半端でやめたので、今度は底まで沈めてやれ・・・と・・・・
引き上げようとした瞬間グインと引きが伝わり、釣れてしまった。
そう、イカは沈むときに食うのである。
思った通り、逃げられると追うのが狩人の血というものである。
地元の人の釣り方、チョコチョコ系とかタダ引き!(だらだら引くだけ!)でも
なぜか大東のイカは釣れちゃうのだが、
長男は、もうこのとき、この釣り方に限る!と心に決めた。
使っている仕掛けは、ヒラアジ釣りの帰りの仕掛けそのままで
このときは確か・・・
●竿:ブローショット130H(13フィートのヒラアジ用の竿)
●リール:エンブレムX5500(磯投げ用の大きなもの)
●道糸:ナイロン7号(だったと思う)
●ハリス:漁業者用ナイロン18号
という、正にヒラアジさんご機嫌イカが?的な強烈な仕掛けである。
でもイカには餌木しか見えていないようである。
あれは2003年のこと。このイカを皮切りによく釣れた南大東。
その夕刻も、やはり地元の人がきており、長男はその脇で
ちょいっと投げてシャクリ、沈め・・・を二度くらい繰り返したとき
ググッと乗った!キロ手前のおかずぴったりサイズである。
地元の人には悪いが、釣り方も悟られたくないし、そそくさと
一匹で充分なおかずを手にしたので、宿へと帰ったのであった。
明くる朝もちゃっかりと・・・
大東のアオリイカは、前の記事にも書いたがおそらくクワイカで
アオリイカの中でも最も小さいものらしく、これ以上大きくならないようだ。
でも、このとき邪魔が入って釣れなくなった・・・・
このお客さんは、ゆっくり動くルアーが好きなようで、ソフトルアーや餌木に
良くやってきて、ユックリじっくり近づいて離れようとしない。
こうして撮影できてしまうくらい、餌木を気に入ってくれることもある。
でも、やっぱり釣れては困るミノカサゴ・・・場所を変えるにこしたことはない。
このときはあまりにも釣れるので、沖縄の炎天下でも釣れるのかと
10時過ぎから、またやってみたのであった。
追ってきていることは、見た目にすぐわかる。
餌木に抱きついたのもすごく良く分かる。
で、群れでその餌木を奪い合う姿が見えたので
二本掛けしてやろう・・・と欲張ってみたのだが
奪われまいとするイカの執念はすさまじく、つかみかかる他のイカの腕を
紙一重でかわしてしまうのである。
仕方なく一匹を上げて、再キャストしたら、もう群れは興奮のルツボ!
すぐに食いついてきて、あっという間に3匹釣れてしまった。
このときはさすがにイカ専用ではないが、サブタックルを用意してあったので
細めの仕掛けである・・・といっても
●竿:天竜製、ヒラスズキ用13フィート
●リール:シマノ、ステラ8000H
●道糸:PE4号
●ハリス:ナイロン銀鱗(ぎんりん)12号
餌木は確か、やっぱりオレンジだったように思う。
なお、この墨を残したせいで、地元の人にさとられてしまい
夕方は地元の人で占拠されてしまった・・・やれやれ。
あくまでも、魚を釣りに行くときのオマケ的なイベントなので
あまり本気は出さないし、本気を出すと釣れないものである。
確かこの次の日あたり、モズ男T博士を連れて行って、本気でやったら
全然釣れなくなっていた。
南大東でしか、長男の腕では釣れぬのではないか?と
思っていたが、そうでもないらしい。
喜界島でも、ヒラアジ系仕掛けで釣れてくれた。
宿の目の前が良港なので、やってみたのであった。
地元の人もイカ釣りを始めたので、やっぱり釣れるのか・・・と
やってみたもののアタリが無い。
初めて餌木をオレンジから緑に変えてみた。
これまでは大体オレンジで食ってきたので、交換したことが無かった。
もう真っ暗になってきたので、帰ろうと思った瞬間
足元でヒット!、そしてフワリと軽くなった・・・初めてのバラシだった。
もう一投、やっぱり足元でヒット、今度はしっかり掛かっていて
足元でブシュ〜っ!と墨だの水だのを吐いている。
これまでの釣りで概ね2キロ半くらいまではブリ上げ(ゴボウ抜き)が
出来ると踏んでいたので、思い切って抜いてみたところ
無事上がってきたのは、一キロオーバーのアオリイカであった。
夜なので、特に暗い色に変色している。
大東のとは違い、目の上が緑色系である。
大東のはどちらかというと青が強めでブルーグリーンである。
イカは良く身切れしやすいから、網やイカ専用の引っ掛ける道具で
あげる方が良いと言われるが、しっかり沈めて自分で抱きかかえさせたら
結構足一本で充分にあがって来るものである。
そうでもなければ、イセエビや元気な魚を抱きかかえた瞬間
暴れた獲物で足がブチブチ切れてしまう・・・・これでは商売上がったりだ。
このときの仕掛けは
大東同様だが、やや道糸が細くて
●竿:天竜製、ヒラスズキ用13フィート
●リール:ステラ8000H
●道糸:ファイヤーライン2.5号
●ハリス:ナイロン銀鱗(ぎんりん)16号
であった。
道糸は、イカ用に細かったのではなくて、真冬の奄美諸島では
このくらいの太さで十分な魚しか掛かるまいと思ったから細いのだ。
この次の日あたりだったか、同じ港でも、対岸にあたる
浅いところでやってみたところ、変わったお客さんがやってきた。
緑色からオレンジに餌木を変えてすぐのことである。
夕方、まだ充分明るかったので、丸いものが足元で
モワンと餌木にかぶさる姿が見て取れた。
引きはアオリイカより細かくギュギュギュギュギュっと引くし
かなり強いところからして、違うイカとは分かっていたが
水面に上げてみて、コブシメと分かったときは
さすがに驚いた。
こいつは体が丸くてタポンタポンしているところをみると
たっぷり水を体に蓄えられる。
だから、見た目よりずっと重くて、持ち上がりそうにない。
よかった、さすがは長男、こんな事もあろうかと
タモ網は用意してあるのであった。
まん丸で厚みのある体、コウイカ独特の体系である。
かなり本気でガブリときたようで、足の根元にしっかりからんでいる。
見た目が丸いので、小さく見えるが1.5キロもあるのだ。
ということは、水を含んであがって来る時は
2キロ近い重量だ・・・これだとさすがに身切れしそう・・・
タモがあってよかった。
ナンダカンダ言っても、まだ1.5キロ以上のイカを釣っていないので
大きな口をたたくのはイカがなものか・・・とは思うが
でも、イカはほとんど餌木の色とサイズだけで、
あとのタックルは何でもOKだと思う。
ともかくも、投げたら必ず底まで沈めて、シャクる。
大きくゆっくりか、速くか、す速く2、3度か、そしてまた徹底的に沈める。
この繰り返しで釣れるはずである。
これで釣れないということは、まず餌でしか釣れまい。
それだけ釣り場が荒れてしまっているということだろう。
悲しいかな、関東界隈では、小さくて、まだ餌木を知らないイカしか
だませなくなっている。
したがって、変な仕掛けを横行させ、それでも釣れるのだと
釣り番組で釣れる場所へ遠征しては釣れる姿を見せつける。
シーズンでもないのに、無理やりどこかへ出かけて釣ってみせようとする。
それでもなかなか掛からないので、小さなのが掛かったシーンまで
放送してしまう・・・だから小さなものまで持ち帰るヤカラが出る・・・
困ったものである。
長男にとって、この上ないお魚のお刺身の付け合せなのだが
そういう贅沢も言っていられない今日この頃になってきている。
こういった風な哀れな立場に立たされているアオリイカを
皆さんはイカがお考えだろうか・・・・?
同じような立場の、メバル、カサゴ、ソイについてもイカがだろうか・・・。
肝心な餌木の紹介が最後になるが
大東で幻の餌木師の手がけた餌木を借りたので紹介しておく。
上の方が幻の餌木。カラシの木で作るのだそうだが、これで毎日
何十杯も釣ってきていたとのこと。
仕事で大東を訪れた方で、本職ではないそうだが
アオリイカが居ると分かるや否や作ってしまったそうである。
オモリにひねりが加えられており、引くとユラユラ泳ぐ!優れもの。
カスミアジも追ってきたほど魚的に泳ぐ餌木である。
下は長男お気に入りのヨーヅリの3号オレンジ。
結局幻の餌木はボロボロで使うのに気が引けてろくに使わなかった。
が、その泳ぎ、チューニングはただならぬモノを感じたのであった。
ああ、また釣りたてのバター焼きを、墨とバターをからめながら
ビールをぐびぐびやりたいなあ・・・なあ・・・T博士よ、M井君よ。