一日、一麺の誓い
何だか訳が分からぬほど、雑味とグルタミン酸ばかりの
ラーメンは大嫌いだが、澄んだスープなら、やや食べる。
その他の麺類は大好きだ。
祭り屋台の、妙なソース焼きソバも、カップヌードルも
進んで食べに行かないが、案外いける口である。
中でも、地元?讃岐のうどん、ソーメンを筆頭に
稲庭うどん、パスタ、きしめん、大東そば、マカロニ、日本そば、
ビーフン、ちゃんぽん、冷麺など麺類は、誓いを立てねばならぬほど
放っておいたら一日何麺も食べてしまう。
ただし、かなりアルデンテ或いは、かたゆでだ。
だが、冷麦は例外で、今一歩ソーメンと比肩するうまさの
冷麦には出会っていないのが残念だ。
冷麦はソーメンと違って延べたものではなく、うどんの細いものだ。
麺をストレートに食べるだけに、腰が弱いから苦手となっている。
それにつけても
この秋、我が家の秋味たるカンパチも、あまつさえホウボウも食せない。
週末ごとに強風に風邪、それに週末平日関係なく高水温と
相次ぐ強烈な台風の影響を受けて、魚もだめなら野菜もない。
ふとスーパーで
最近キノコがお買い得なのに気づいた。
巨大でありながら分厚い身と、カサの開いていない、膜の残る
いい感じのシイタケを筆頭に、大好きなヒラタケ、エリンギなど
大型キノコが目に付いている。
他にもひょっとすると茶色いエノキだの、株ごとナメコとか
例年並のカスカスっとしたマイタケもあるのかも知れんが気に留まらぬ。
シイタケは常食なのでおいといて
やっぱり味はシメジではなくヒラタケである。
それも、シメジモドキとして売っている、しょぼくれたものではない。
シイタケをしのぐカサの大きさにまで至る、でも養殖モノである。
これがメッポウうまい。
立派さのあまり、思わずデュワッと空にかかげてみるが、別段何も怒らず
ウルトラマン・・・・・・・・・・・・ヒラ・・・・・タケ?・・・・・・
になっても極めて困るなあ・・・と
やってみたものの、あらためて迷惑心たちこめる微妙な長男・・・
意味が無さ過ぎ、あまりの虚しみに心がやられるので
良い子は決してマネをしないように。
気を取り直し
ふと、ご飯を炊きそこねたある日
やっぱり晩酌のあとは、きらめく炭水化物・・・だと思い
ふと久しぶりのパスタを思った。
だが、これまでのレシピではパスタにならぬ・・・
ヒラタケと、あとは野菜類・・・ネギ・・・
よしっ!
ならば、ヒラタケの旨味とネギの香り、味は日本人の醤油
そして辛味と香りはコショウだっ!!!
このあたりは、好むと好まざるに関わらず、自炊生活20年の勘である。
コショウの辛味と香りにこだわったのは、ヒラタケが不思議と生臭い事と
唐辛子の地力のある辛味より、コショウのあっさりした辛味が
あっさりしたパスタにからむ、ヒラタケの旨味を引き立てるだろうと
直感したからだ。
ヒラタケの仕込みは、手で丁寧に太さをタバコ以下に割くことである。
これが何とも美味しい旨味を引き出し
程よくキノコのウマ味を外側と内側に、分けへだてなく醸し出す
原動力となる気がする。
パスタのアルデンテ更に手前茹で上がり4分前、
油(長男はブドウ油)が油煙をだし始めたら
ネギを入れ、その後にすぐヒラタケを炒めるようなイメージで
ざっと入れ、ガーリックを少々
塩ひとつまみ振り入れ、かき回して火を通す・・・
が、ちょっとだけ火がとおってきたら、サカズキ一杯の日本酒を加え、
今しも、ゆであがりそうなパスタを入れる。
このアタリのゆであがりと炒め具合のタイミングは研究してほしい。
季節、鍋、フライパン、火力によって違うのだから。
パスタを入れたら、粗挽きコショウを振りいれ
醤油を一周くるりと素早く入れたら、微妙に足りない塩気、
しかるに塩を直感でパパパっと振り、フライパンを振り、素材を手早く混ぜて
味をまわしているうち、すぐに全てに火が通り
思ったより早く仕上がるはずだ。
(仕上がった!という勘がまだ・・・の向きには、出現するまで鍛えましょう)
しずしずと器に盛り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
果たして、20年の勘は長男究極味覚直撃であった。
う、う、う、う〜っ・・・・・・
ウマっあ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。
ちょいとばかり、久々に涙チョチョギレ気味なほど旨いパスタだった。
用意していた鰹節も不要。
ネギの香ばしさ、ヒラタケの香りとゆかしい旨味、キレのあるコショウ
ネギとパスタの和やかな甘み・・・想像以上の出会いじゃったな・・・
う〜む、長男でよかった・・・日本人でえがったぁ・・・とシミジミした。
こういう感動を、だれか大切な人に、あらゆる人に届けてみたい・・・
ま、話半分である。
この秋、さして例年並の海の恩恵の無い長男でもあるが
日本の味は、まだまだ奥深すぎて
その実力をば全く知らぬ、勉強不足、人生不足な長男でもあった。