うつろいゆく海

変わりゆく釣り生活の果てに

 


今年の磯は暑い、例年は魂が熱いが、今年は海の中が暑い。

異変だ、異常気象だと言われる向きが多いが

人災じゃないのか?と我は思う。

確信犯だろ皆そろって、とも思う。

皆自分勝手に生活を続けたいから、自然現象にしてしまいたい

ということらしいが、我とてもそのお仲間だ。

 

今更驚かされたような事を言っても、被害者面しても始まらぬ。

いや、もう始まってしまったのだから。

今この瞬間に日本中でどれだけの石油が燃やされ

大気中に粉塵やNOXやCOXをまきちらしていると思っているのだ。

なってしまってから、なるべくしてなったことを誰に擦ろうというのだろう。

だから、我は驚かぬ、驚かされては居られぬ。

まだ始まりに過ぎぬのだから・・・

自然などというものは美化しても始まらない、完全に善良なるものなど

どこにもないのだから致しかたないじゃないか、だから受け入れて

かみ殺して、歯を食いしばって生きてくしか仕方ないんろうよ我々は。

 

ともあれ、なんだか38歳にもなって独身だとアレコレ考えてしまい

屁理屈っぽくなってイカンナぁ、まったくマッタク・・・

 

ま、ということも、多分ズイブン手伝って、この秋、大島は暑いようだ。

11月だというのに、Tシャツで過ごせる、汗だくになる。

それにしても、バスがまた変わった。

(左が1月、右が今回)

磯のそばのバス停に着いたら、まずすることは時刻表を撮影すること。

なんてったって、帰る時間が大切である。

バス一本逃したら、もうその日に横浜へは帰れなくなるのだ。

 

前はそうじゃなかったし、高齢の方々の足としても便利だったといわれる。

でも今は、とにかく経済原理のためだけに走るバスらしい。

うっ・・・また屁理屈っぽくなってるな。

不況ってやつは不便なものだ。

 

ただし、磯はずいぶんすいていて不思議だ。

高水温を見透かしているかのように人が少ない。

そんなこと気にしないメジナ釣り師があふれていても不思議ない時節だが。

 

磯に着いてみると、いい感じだ。

凪いでいて、穏やかで、大島初めて・・・という人が釣り場を埋めていない。

釣り場は空きだらけだ。

でも、海はどうだろうか・・・

 

凪いでいないと入れない、左の磯の先っぽに入ってみる。

実は今回、これまでの釣り方はすまいと、ルアーもできるだけ

これまでとは違うものを選んでいて、チャレンジだけが救いだろうと

実のところ、高水温や異常な海の感覚を読み切ってあった。

本当なら、とっておきのポイントがある右沖を目指すが、それはそれ

大切なのは、これからを釣り抜く力が我にあるか・・・なわけだ。

長男たるもの、屁理屈っぽいけれど、釣りだけは頑張るのだ。

仕事も人生も、ルアーと一緒に海へ投げちまってるけれど。

(たそがれているように見える朝)

 

ふと右手の、入りたい右の磯をみると、見慣れぬ同業者が居る。

大島初心者の困った餌撒きボランティアではないその姿・・・

それも、長男同様、キテレツタックルのチャレンジャーみたいだ。珍しい!

見れば長いながい磯竿をルアーロッドに改良して使っている。

高い磯の多い、伊豆諸島を完璧に意識しているところなど

痛いほど長男は解るぞォっ!!!

(以前、同じような竿を使い、南大東でバラフエやカスミアジを釣った)

正しいコダワリを大切にする、いいヤツに違いない。

しかしながら、投げているルアーは想い遥か大物狙いだ・・・

日中にそれはないぞ、それは・・・いくら大島でも日中は普通だぞ・・・

 

でも夢を失わぬ、その姿

好きだぞ長男は!!!

遠目にはガレッジセールのゴリ風だが。(腹は太め)

 

磯竿をルアーに使うのは、とても過酷なこと。

竿のしなやかさが、磯の魚をいなしてくれるが

長さから引きが強くなるため足元がふらつきがちになり、危険が伴うのだ。

しかも重くて長い竿を、あえて投げる回数も膨大なルアーに使うなど

常人には考え及ばぬことだが、それを実践する貴様はスゴイぜ!

久々に感動せしめた同業者であった。

 

で、我はどうかというと・・・

暇だから写真を撮ったりしてた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んだよな。

 

もう日も高く、やけに暑い午前・・・集中力は途絶え

いやな日常、こと失敗した最近の仕事を思い起こしてしまい

全然リフレッシュにならぬし、目の前の太平洋が全く意味のない状況。

いうまでもなく集中力も散漫である。

 

なにしろ、水温が高いじゃないか・・・

ん?ということは遥か沖合いを狙ってジギングするために

ロングキャスト(遠投)してるけど、これって無駄?いやいや

マダイ向けの釣り方は無駄だって事だよな・・・

じゃヒラメも厳しいのかな・・・ヒラメは高水温に弱いんだっけ???

などと釣り方面も集中不能に。

 

あれこれ考えたり、ヤナ仕事を思い出すことしきりだったが

いよいよ頭が混乱した末に空になり、心は空しくなったころ・・・

カククンっ!と何かがヒット!

糸を巻かずに竿先で慎重に魚信を聞いてみると

キョキョキョキョキョンっ!と細く弱く連続な魚信がくる。

 

こりゃ、ダツだな・・・

 

そう、ヤナ客・・・ダツである。

ルアーに傷を負わせ、大島からは、とても恥ずかしくて持って返れない

細長く招かれざる魚であった。

 

竿をあおり、一応せっかくの魚だから、万一ダツ以外だと困るし

アワセ(ハリを掛けるためのあおり)を入れ

逃がさないようにしておく。

それからおもむろに巻き上げてくると???

妙に足元の磯際で潜りにもぐる・・・あれ???

これこそ、カンパチの習性である。

いやはや、ダツでなくて良かった、と思ったが、それは一瞬のぬか喜び。

どうやら、やっぱり小さいお客さんである。

このあたりでショッパチとも呼ばれる当歳魚のカンパチが掛かっていた。

(ショゴ、シオなどカンパチ小さい頃から人気者だから地方名が多い)

もちろん、生命力の強さと同じく、小さいほど、大きさ以上に引くが

それでもやっぱり、カワイイやつである。

 

丁寧に、傷つけぬように岩にたたきつけぬ様にしながら潮溜まりに確保する。

いや〜、ひさびさ、二年ぶりのご対面だ。

よく見れば高水温なのに南洋好みのヒレナガカンパチではなく、本カンパチ。

美しい・・・

 

でも目は恐怖があふれ、わき腹に突き刺さるハリをしっかり見ている。

痛いのか・・・・・いや怖いだろうな自分に突き立つ巨大イカリバリ・・・

けど、こんなヤツ見たことない。

異様に物事を見据えている。

 

いずれにせよ30センチくらいしかないから、涙をのんでリリースだ。

側線を傷つけずにハリ掛かりしている。

久々の手ごたえを味わわせてくれてありがとう、

そしてハリを口にも脇腹にも掛けて申し訳ない。

 

アレコレ撮影させてもらってから、しばらくハリを外して潮溜まりで様子を見る。

うんっ!結構元気だな、よしッ!と心に決めた。

そっと尻尾の付け根を持ち、あごの下に手をそえて持ち上げ

海原にスローイン!(投げ入れ)である。

一応元気に行ったようであった。

しかしながら、アチコチ怪我をした魚が生き長らえる可能性がどれだけあるか

微妙なところだが、ともあれ、若魚だから生きるに違いない!!!

そう信じて疑わぬ長男であった。

(駄目と判断した時は、持って帰って食べますよ)

 

案の定、大きな心のあとは音沙汰なし。

 

いろいろやってみたが、アタリなしだから、11時を待たず早めに撤収開始。

誰も来ないので、磯は散らかし放題になりやすい・・・

暑いから磯の上に放り出してあったトレーナーなどを片付けて

何とかショイコを再セットアップした。

(トレーナーは左の岩の上)

 

久々の磯だから、ショイコを背負って歩くとひざが笑っている。

「このごろゴオロゴロしとったけんな〜」あらためて、ぼそっと反省。

 

バス停で怪しげな瓶底めがねをかけたおっさんにあった。

民家もないこんな場所で、手ぶらでなんばしょっとか?と思うが

言葉は正しく「こんにちは」といっていた。疲れても長男。

一瞬に打ち解けてしまい、アレコレ釣り談義。

なにやら、やはり大島も高水温で大変らしい。

アオリイカのシーズンも来なかったという。

ただ、波浮港方面では秋口に大型カンパチが出て4号の磯竿を

ボキボキ折られたそうな。すんげ〜さすが大島。

今は夜釣りでアジが入れ食いで、2時間で70リットルクーラー満杯とか。

クサヤは作り放題らしく、開いてクサヤ工場へ持っていくと

たちどころに?クサヤ化してくれるという。

う、美味そうだ・・・一夜干しクサヤにしてみたい・・・

 

やがて、軽トラのおっさんがやって来た。

瓶底殿いわく、地元の釣り名人らしい。

横浜からきた・・・などと僕のことを話していたが

「ああ、アンタこないだヒラメ釣った人だろ?」と笑っている。

おお!覚えとっとね、ありがたかぁ〜うれしかぁ〜

大島の人も釣りには鋭い。人が釣ったのをしっかり覚えているし

底抜けに明るく、底抜けに釣りが好きらしい。

 

ふと、大島に住んでもよさそうだな・・・と自然に思った。

 

けれど、おっさんのことは覚えとらんけん・・・悪いけど。

いろいろあるなあ、そういや昔、磯でアジの一夜干しを

焼いてご馳走してくれたおっさんも居たなぁ。

あれはクサヤじゃないけどチョット臭ったよなあ・・・微妙に・・・

けどま、やっぱり自然が豊かだと、心も豊かたい。

 

てなことで、危うく話が盛り上がったところだったから

バスが来たのに、手を上げそこねるところだった。

乗るぞ!という意思表示が大事なのだ、大島のバスは。

 

ともあれ磯をあとにした。

 

瓶底殿は挨拶し、皆との手前で早めに下りていった。

僕は終点、元町港で食事だ。

出帆港は岡田港かと思ったら、穏やかだから元町なのだ。

どえりゃー時間があるがね・・・と言いたい所だが

昨夜は船中、あまり寝ていない。

飯食ったらそこらのベンチで寝ることに。

 

さて、まず飯だ。

行きつけの「あべもり」さんで、この時節の昼の定番としている

トコ丼をいただく。(トコブシ丼ぶり)

夏っぽい秋風だったが、体中にしっかり海を充填した後だから

ビールも美味い。

見回すと、今年の秋のベッコウ丼

(島寿司的に、軽くタレにつけた刺身がのるドンブリ)はメダイ。

おお、次はアレを食べるけんね・・・と自分に言い聞かせる。

年初、絶対食べてはいけないと断言したアジのタタキ揚げ定食は

やはり消え去っていた。

 

お腹も満腹、お天気もいい。

昼寝にはもってこいである。

 

元町港の待合には岡田港のような畳の待合はないから

ベンチを占拠するしかない。

人気のない、二階のベンチに横になってしまうのだ。

昔は、だらしねえオヤジが勝手三昧しやがって、ったく・・・などと

青いことを考えていたが、今はそんな考えは微塵も思い浮かばぬ。

 

しかし前から気になっていたが、昼寝をするとやってくる

掃除のオバハンが居る。

絶対に怪しい。

二階分のこれだけ広いフロアだが、朝からキチンとやれば、昼過ぎて

人が待合にあふれる時分まで掃除を続けなくても良いはずだ。

なのに、毎回昼寝をするとまもなく、必ずやって来る。

今回は証拠として、撮影しておいた。

(一応プライバシー保護のため白黒です)

目的不明の怪しい掃除オバハンが右往左往しても、寝るものは寝る。

自分のイビキで目覚めつつ、またウトウトする。

心地よい昼下がりは、思いのほか、つとに過ぎていく。

 

帰りの船はさすがに土曜に帰る人も少ないようで、ガラガラ。

金曜夜に出帆する便でないと、磯が混んで釣り辛いから

長男としては、経験的に金曜出の土曜帰りにしている。

 

思えば、10年以上通っている。

船も、島も、バスも、東横線も、釣り道具も、不景気もズイブン変わった。

かすんだ夕暮れを見ながら、このあと十年後は何処に居るのだろう

などとシミジミしてしまう。

間違いなく、横浜には居ないだろう・・・居ちゃだめだしな・・・

秋磯初日、なんだかのんびりこんな事しててイイのか?と

いろいろ心はシケ気味の長男であった。


ではまた