「牛ふた」に思う
昔の質素な生活
「牛ふた」とは牛乳瓶のふたを集める趣味集団が使う用語であるらしい。
人生の未来目的優先の長男には懐古主義的もしくは収集癖的趣味に興味なし。
だから、夏休みに実家から、捨てるつもりでもってきた牛乳のふたにも
さしたる思い入れはない。
その昔
オーディオに没頭したことがあった。
否、確かにそれらに没頭したが、クロスオーバーと呼ばれた音楽から
フュージョンへと変貌する時代に、メロディアスな音楽を求めた長男にとって
より良い音質で、FMラジオからライブの録音をすることが楽しみとなっていた。
週末、NHKFMでやっていたウィークエンドライブスペシャルが
最大の楽しみであった。
78年だったろうか、ジャスフェスティバル イン 斑尾で前座をつとめていた
スクエアに感動してから、音楽に力をいれて聞くようになったように思う。
(ステレオの前でリキンでいたわけではないのだが)
そのとき、スクエアはツヅミを使っていた。
高価なシンセサイザーがとりざたされていた時分に
リリコーンを使いつつも、いきなりツヅミだったから、すごいインパクトを感じた。
(リリコーン:吹く電子音源コントローラー
電子サックス的楽器、見た目は金属の尺八風)
初めて聞く、澄んだリリコーンの音色にも酔ったものだった。
ラジオから流れる音楽、それが青春の音楽そのものであった。
我が家は貧乏であった。
だが、高校になり、お小遣いをもらえるようにもなった。
当時4000円は高いとも安いとも思わなかった。
レコードは今と変わらぬ値段で、2300円とか2800円とかしていた。
だが、FMラジオの音楽は録り放題であるし
10キロ以上かなたのレコード屋へ
一時間に一本のバスと、近鉄を乗り継いで行く時間も交通費もかからない。
とにかく憧れの高音質METALカセットテープが買えるのだ。
60分テープが4本以上買えるのが嬉しくてしょうがなく
早起きしたり、時間になるとオーディオの前に座り
秒読みするように番組を待ちかまえたものだ。
それから二十余年・・・
ふと我が家のオーディオのなかに埋もれたカセットプレーヤーを見た。
大学時代に購入した、ウォークマンプロであった。
フュージョン専用といっても過言ではない我が家のオーディオの核である。
ハーブアルパート、チャックマンジョーネ、カシオペア、プレイヤーズ、
日野皓正、松岡直也、今田勝・・・
とにかく、インストルメンタルが好きだった。
映画音楽もその中に含まれていて
ミーコのスターウォーズなどは最高に好きだった。(マニアック気味?)
ウォークマンプロは、まだ十分動く。
時折通勤などで聞いてみようと思っている。
同じく20年ほど前のカセットテープが残っているので
会社へのみちみち懐かしむ道行きも悪くない。
古きよきモノをあらためて眺めてみる、使ってみるというのは
懐かしくもあり、また新鮮インスピレーションがあって面白いものだ。
さて
今回、牛乳のふたを見たいと思ったのはほかでもない。
ふと通勤途上で森永ホモ牛乳の名を思い出したからだ。
徒歩通勤は暇であるから、いろんなことを考えるものだ。
この名の逸品を見れば、きっと今なら誰しも愉快になれるだろうから
記事にしなければ!と思ったのだ。
多分、この名以前に、前身があり、だから短縮形のホモになっただろう
と、思ったら、ホモジナイズ牛乳というのがそれ以前にあったようだ。
消化吸収を良くするために、脂肪球を均質化しているらしい。
おおっ!それでなのか!地方牛乳に均質牛乳ってのがポツポツあった。
硬くて、平凡で、平社員的な野心のない、一生ウダツのあがらぬ名だと
憮然とさせられたが、そういう意味だったのか!?
しかし、その乳業用語を知らぬ人には、ホモも均質もどこ吹く風。
やっぱりホモ牛乳は、かなり愉快な名称であり
予想を裏切らないオモシロさだと思う。
昭和40年代のホモ牛乳のふたは、果たして最近のとは違うようだ。
加工乳がさかさまだが、最近のは上を向いているらしい。
でも一見して、ホモはホモの牛乳でホモ用なのかホモ向けなのか
ホモ養成用なのかさっぱり分からぬ。
マイナーチェンジしたくて、イメージを変えるためにネーミングしたのだろう。
ホモジナイズは長いから、ちょっとばかり馴染んでもらったカシラをとって
ホモにしよう・・・
思い切りすぎであった。
HOMOとふってあるのも、よりたくさん笑えるネタとなっている。
ホモ!を大きくすると照れくさいので、横文字も入れてみた・・・
実に分かりやすい顛末が見て取れる。
小学生時代、
これはズイブン笑わせてもらったし、飲むとホモになりそうで
妙にくすぐったい気がし、あまり飲みたいと思わなかったものだ。
一度だけ、どこか親切な友人宅のオジイチャンにススメられ
義理と人情で飲んだ気がするが・・・当時から義理堅い長男であった。
ほかにも謎は多い。
Gとはなんなんだ!?
当時流行っていた?ジャイアントロボからの引用か?
それともグリコの頭文字か?グレート、グッド??
グラビティか、グランドか、ゴリラ、ゴンザレス・・・キリがない。
ともあれ、この名は結構続いたらしい。
オヤジの北海道演習の戦利品と思われる北海道の牛乳。
当時小学生の長男にとって、自衛官のオヤジが持ち帰る
牛乳のふたが何よりのお土産であった。
や、安上がり・・・ていうかタダ・・・
しっかし、ホクレンって牛乳作ってたんだ・・・
しかも、リポミルクって何だ!?
リポビタンDでもブレンドしてんのだろうか!
サラリーマン用、朝の元気ドリンクを上回る牛乳だったというのか!?
自衛官にとって、この上ないエネルギー源だったというのか!?
微妙にオモシロネーミングなのが、明治ハイゴールド牛乳。
全国区の牛乳である。
ゴールド牛乳を上回るスペックで生み出されたのだろうが
微妙に高価だったりしたんだろうか・・・
ゴールドの上の名は作りにくい、プラチナ牛乳だと下だし、
上は水銀牛乳、鉛牛乳、ラドン牛乳、ウラン牛乳、キャリフォルニウム牛乳・・・
周期表の上のほうは放射性物質が多いのでNGである。
ウルトラやハイパーだと行き過ぎ・・・ベターだと自信なさそうだし脂っこそう・・・
上過ぎず、サッパリしつつ微妙にグレードアップしたイメージにしたかったようだ。
当時、明治乳業だと同級生の間ではヘルシー牛乳が最も著名であったように思う。
にしても、クリーム入りなんだなぁ。
よく見ると青森八戸工場だったりして
誰から仕入れたのかわからんなぁ。
メンコだったからねえ・・・それに新興住宅地だったから
いろんな友達が転校してきたもんだ。
金粉入りなどということは絶対にありえない時代だった。
昔のふたはほとんど黄ばんでいて
なんだか自らの齢(よわい)を感じてしまうが
一方なにやら心が和む。
当時の牛乳に、時代の隆盛を感じるし、地方のパワーを感じるのだ。
そりゃそうだ、新幹線とか長距離トラックが馴染みのない社会では
地域の企業が独立し、近隣の銘柄と競い合いながら、頑張っていたのだ。
苦悩したらしい珍妙なネーミングにも、頑張りが見て取れるではないか。
ほかにも、らくれん、チチヤス、ひまわり、オハヨー、毎日などがあり
わが生まれ故郷の防酪(ぼうらく)も語感は悪いがなじみだ。
どれもおおむね西日本のものである。
微妙なもの、奇妙なもの、笑えるもの、様々な牛乳、加工乳、乳酸飲料、
フルーツ牛乳、ヨーグルトなどの愛称が生み出されていたのである。
それにしても30年かぁ
ズイブン歳をとってしまったもんだなぁ。
牛乳のふたが、黄色くなるのも無理もない・・・
我が人生もずいぶん色あせたのだろうか・・・ねぇ・・・