北の印象
初めての土地は思いのほか何もない
空港の周辺もくさっぱら、まちまでの路傍もくさっぱら
まずオホーツクへ行ってみる
空気がおいしい、海草もなにも落ちていない
なにもいない海、海辺のにおいがしない海
なめてみると案外潮は甘い
海辺には点々と廃墟
海人小屋みたいだが、男臭い使い方だったらしい
ホタテの山がちかくにあった、沖合いで捕れるのだろうか
ここはオホーツクとつながった湖、コムケ
海辺からまちへ向かう道は、ほとんどがまっすぐ
かたわらのくさっぱらは海辺の湿原以外は牧草地で
まちのそとの草原は全部牧場なのはおどろいた
シロツメクサが可憐に咲いているが
こんな低い草陰なのに大量の蚊が舞い上がって
長男、パニックになる
まちはそれほど広くないが、目抜き通りが3本あって迷う
今回の宿は、民宿ではなく旅館、僕んちより広いな
枯れた畳の臭いがする
テレビも多くのチャンネルが入るし、無料で見られる
エアコンはなく、ファンヒーターと扇風機完備
ひろすぎてどうしてよいか分からぬが
とりあえずゴロゴロしたり柔軟運動もやってみた
夕食まで少し時間がある
夕暮れのまちを散歩、車も人も少ない
あちこち店にシャッターが閉まっていて
家の数ほど人は住んでなさそうに思えるほど静か
ジンギスカンのお店、カニ料理のお店がちらほら
まちは工場みたいな建物が多い
紋別の港にたそがれの時
静かな海の中に鮭の群れが泳ぐ、にぎやかな海
あくる日は天気がどんより
オホーツクには鉛色の空がお似合いだと思う
日差しがないから知らぬ間に、すーっと寒い
更に北へ向かって走ると、海辺に程近い牧場らしい建物の廃墟
廃墟のわけはまったく不明
最近折れたらしい大木は、短くカットされ、道端に積まれているので
だれか足を運んでいる
折れずに残った枝にはコガラ、ヒガラ、シマエナガの群れがさえずる
喉の下が黒いのがヒガラ、羽ばたきがコガラ、しろっぽくて尾が長いのがシマエナガ
三種類も混じった、かわった群れ
名寄(なよろ)本線の名残、あちこちに鉄橋が残っている
カラスのお気に入りの止まり木らしい
鉄路はもうない
なんの利用もされない、ただ風雪に愛されつづけるのだろうか
いよいよ
30年間憧れの地であった、小学校地図の最果てサロマ湖
海と接する砂洲の岬を目指したが、道はテロ対策という名目で閉鎖されていた
バス停の待合にも
まちのあちこちにもテロの張り紙があった
サロマや、紋別を狙うのだろうか
ここを狙う暇があったら、寝て鋭気を養うと思うよ
漁船をジャックし、潮が満ちてきたときに湖と海の接点に沈め
上潮に乗じ重油や薬品でサロマを蹂躙(じゅうりん)する
とでもいうのだろうか
しかしそれってテロなのか
北の地はオホーツクの自然と名寄廃線に屈したかのように静か
今は鮭のいる海の方が余程活気に満ち
いったい、何のためにこのまちがあるのかわからない
人間にとって、この地はなんなんだ
けれど、紋別は今もそこにある