また、つまらぬ意地がボ〜ズを招く・・・

 


反骨から行ってしまったオホーツクの旅。

やっぱり行ってみなければイカンものである。

ただ、美味いもの、というのはやっぱり魚ではなく

オホーツクに関しては、カニにつきていると思った。

カニ意外では、ホタテくらいなもんだった。

今回は、季節やら、値段もあるのか

ズワイガニ(マツバ、エチゼンともいう)勝負!という感じで

旅人にはズワイが供された。

 

長男は、ズワイは苦手である。

足が細いから、食べるのも面倒な上に貧乏くさいし、たいして栄養もない。

正直、生活不要食品として、ダメ食品のランクに入る。

でも、今回出てきていたのは、見たこともないくらい

とても太いズワイの足だったんだが。

同じ食べるなら、正確にはヤドカリになるタラバに限る。

でも別段こだわらぬ、食べずとも栄養に不安はないからね。

 

宿の最初の夕食は当然カニ。

出てきたズワイの足で、なかでも一番細いやつには切り込みがなく

とても貧乏な食べ方になるので、手をつけなかった。

そしたら次の日からは、カニの足は出てこなくなった・・・

紋別の宿、ことに小山旅館はとてもカニを大切にしているのではなかろうか。

それとも、最初の晩だけの客寄せサービス品なのだろうか?

 

ともあれ、正直ほっとしたのだが、それからは結構食事が地味だった。

 

だって、出てきた魚介といえば

ホッケ、サンマ、チカ?、すんごくショッぱいスジコ、御当地のサケくらいのもの。

地味なのはむしろ地元食が味わえるから大歓迎なんだけれども

どうも食材が乏しい感じ。

確かに、この時期で最低気温13度、最高気温20度、育つ野菜も少なかろう。

みるみる気温は下がるだろうし、冬に向かって気候の変化が激しすぎる。

 

ちなみにサケは60センチ、3キロくらいで

オスは一本1000円くらいからスーパーで売ってる。

メスはもちろんスジコにイクラを取るから、おなかの中は別料金。

それにしても、一切れ何百円のノルウェーサーモンとは雲泥の値差がある。

まあ、枕崎のカツオみたいなもんだが、野菜はこれといって特徴はない。

 

加えて

肝心のソイとかカジカといった美味しい刺身系食材は、宿では出ぬようだ。

沖縄のタマン(ハマフエフキ)、本土の天然シマアジといったところか。

今回は酒を断っていたので、外食できなかったが、次の機会は

本当に外食でも美味いものがないのか探索せねばなるまい。

 

ちなみに、ウニがないじゃないか!と思われるかも知れぬが

紋別周辺は砂の海である。

見渡す限り、砂浜であるから、ウニは居らんで当然。

だって、海草生えとらんもんね。

知床とかに行けば居るだろう、ゴマフアザラシが居るようなら

海草の林があって、多分海はもっと豊かだろう。

 

もうひとつウニにちなんでおくと

おそらく、ご存知のウニは卵だろう。

しかしだ、本当のウニの身は大きくないと食べられぬし、高価だ。

多分ご存知ない方も多いだろう。

ウニの身は柿色で、それこそ、食べ物である海草を凝縮した香りと

特に濃い味わいが珍味中の珍味である。

朝ご飯などでご飯にのせて食べるやつでも、一瓶ん千円するが

長男はこれが子供のころからお気に入りであった。

西日本ではあるが、下関あたりでは良く売っている。

もちろん美味いぞ。

参考:山口のウニの身、スゴうま

卵の味など、身に比べたらまったりしてるだけで、薄っぺらに感じるほど。

機会があったら一度お試しアレ。

 

さて

ご当地のサケ釣りに挑戦である。

現地調達ルアーは、スプーンという金属片系の原始的ルアーに属する。

これに、南国のトローリングなどで使うタコベイトというやつの小さいのを

ベラベラと派手にぶら下げたものだ。

更に、浮きをつけるというのだが、この浮きだけは勘弁して・・・と思った。

ルアーというのは引き方こそ命。

技と経験を駆使する意味のある部分なのだ。

これを浮きをつけて、ただゆっくり引けばよい・・・というのは乱暴だ。

 

だが

この意地が失敗だった。

目の前でサケの群れがビュンビュン通り過ぎ、沖でも目の前でも

バンバンジャンプするのに掛からぬ・・・

 

先ほどの仕掛けに、更にカツオやサンマのぶつ切りを付けて流していると

更に良く釣れていたが、これなど、絶対に長男にはできぬ釣り方であった。

朝のヒトトキで、群れが回ってきた日には、一人5〜6本平均といった感じで

都合20キロ近い釣果をサンタクロースのように担いで持って帰るのが普通みたい。

ギャラリーのオッサンにしても、形(大きさ)など気にしちゃいない。

ともかく、周辺状況から群の大きさを知りたいだけなのだ。

もちろん、釣具店にも魚拓などアリはしない。

真中には余裕で撮影中の人も

思うに、これは釣りというよりは、みんなの漁なのだろう。

群が回ってきて、そこへみんなして繰り出して、サケを捕るイメージだ。

年に一度のお祭りみたいなもので、この他に、さしたる自然の大爆発はなさそうだ。

 

北の自然というのはデジタルである。

 

ドカン!と来たら、そのときだけである。他の時期は寂しいものだ。

南国のように、その辺に魚がいて、竿を出せば何か釣れる、というのはない。

量は多いが、種類が極端に少ないのだから仕方ないといえば仕方ない。

 

釣具店には、マス用のフライグッズやルアーがあったから多分

サケの季節以外なら禁猟が解かれるので、河川で細々とルアーフィッシングが

できるのだろう。

タクシーの運ちゃんも言ってたが、もう少し北に行けばイトウもいるということだ。

一部の人には美味いといわれるアメマスも近頃人気ターゲットだろうが

紋別あたりにもいるのだろうか・・・シーズンも違うし・・・

 

ともあれ、結局釣れないので、遂に浮きまで買ってしまったのだが

時すでに遅く、群は去っていた。

 

やれやれ、思ったより北の釣りは結構難しい。

でも多分次に来ることがあれば、群に当たると釣れそうに思う。

仕掛けも装備もポイントも、ほぼ分かったし。

 

爆発する北の恵みに、ぶち当たってみたい、そんな気になるほど

小さな河口に群れ、ジャンプし、4年間の長い長い北海の旅路の末に

不恰好なルアー仕掛けに釣られる身になれば、釣り人としてかなり心がいたむ。

それに食べきれないほど釣って帰る・・・これは北では多分当たり前なんだろうが。

年に一度の大群をしっかり捕って保存するのだ。

現在もそうしているかは別だが。

 

ただ

そんなヤワな心根は、中年の感傷など、全く不要なんだ。

 

どんなに釣られても、どんなに捕られても、彼らは故郷の川を上るのだ。

今、ただ自分の目指す一本の川しかない、まごうことなき一直線の生き様。

懐かしい香りのする川の流れ出る場所で、淡水に体をならし

徐々に繁殖に向けて、繁殖すべき溯上に向けて気持ちを高め

時にジャンプし、時に波打ち際を疾駆するその姿。

ぼくは、そのパワーと営みを、体で感じていたい、そう思い始めている。

悠久のオホーツクの営みを感じたいに違いないのだ。

 

もはや、反骨などどうでも良くなった。

 

市内のあちこちでカニ加工場から異臭がするのもどうでも良いのだ。

とりたてて、他に何も見当たらぬまち

唯一の観光が流氷のまち、新鮮なホタテとズワイガニだよりのまち紋別に

今年もサケがドンドンもどって来る!そう思うと心が熱くなるように思える。

釣りをやっててよかった。

こんな小さな川にも上る

かなり格好悪い釣りだが、今度来たら絶対釣ろう。

でも、老後でも十分できそうな釣りだから急ぐこともないだろうが

不思議とすぐ明日にでも、故郷を目指す姿を見ていたい・・・

い、いかん、はまったかもしれんなオホーツクに・・・と感づきつつ・・・

 

ん?だれだ!?せまい機内でカニを食ってるやつは!

臭うから、やめんか!!!

ったくもう・・・カニばっかり食べ、カニばかりを求め

土産はソコソコに自分のカニばっかり買ったようなやつが結構乗ってるな・・・

紋別便は、カニにとっての地獄絵図を描くに事欠かない人種が満ち満ちている。

 

カニはさておき、故郷を目指すシロザケの姿が、もはや心に住み着いて

昼夜をわかたず、長男の心にジャンプしつづける、旅心地であった。


ではまた