Oちゃんの島で

夏休み 3

 


徳之島に行く前に割れてしまった歯の修復に突入。

この記事にはどうしても歯科的現象がとりついて

離れない宿命にある模様。

しかし、結局、仮に作りつけたレジンの歯は

実家の乾燥チリメンジャコとキュウリの和え物の前に

あえなく外れてしまった・・・

やれやれ、徳之島に関わっている間は、歯が治りそうにないのは

なしてじゃろうかね?

八月初旬以来、全く右で噛めない毎日が続いている。

 


 

重い思いをし、満を持して持ち込んだ

ビーム砲望遠レンズは、ダテではない。

 

今回、装備を絞って最初に入れたのがキヤノンレンズ

100−400mm IS USMであった。

最近の安い一眼レフデジカメが二台買えてしまうほど

大枚はたいて買っただけあって、空気が写るように澄んだ画像になるが

今回はしげみを飛び回る鳥類撮影なので、それほど澄んだ画像にならぬ。

 

訳は簡単、デジカメはISO感度を上げ、シャッターを高速で切れるようにすると

どうしてもざらついてノイズが多い画像になるから

空気が澄んでいようといまいとどうしてもザラザラの画質になってしまうから

正味のところ、すばやい動きに対応して三脚を使わずに居られることと

都合640mmの望遠を手持ちで使える手ぶれ補正の性能を頼るため・・・

なのが現実であった。

 

へりくつなどさておき

何が撮りたかったかというと

アカショウビン、カラスバト、サンコウチョウ、オマケのアカヒゲであった。

もちろん、夜間ともなればOちゃんおすすめの天然記念物を撮らねばならぬから

アマミノクロウサギ、ケナガネズミ、トゲネズミである。

 

宿を予約する前から、宿の奥さんがワザワザ電話をくれており

親戚の庭先で子育てしているアカショウビンは勝算があった。

庭先のビロウの木に陣取ったご家族のダンランを邪魔すると

夫婦そろって威嚇、攻撃してくるというから、それを利用しドアップ撮影を

目論んでいたのだ。

だが、行ってみるとアワレ、二日前に巣立った後である。

 

巣立ってしまってはマズイ。

巣立ったらワザワザ人間に威嚇する必要が無いから

あちこち逃げ回ってしまう・・・

地元の人の噂と、派手なキョロロロロロロロという泣き声をたよりに

アチコチ探し歩くことになった。

天然自然の生類(しょうるい)を撮影するというのは楽ではない。

 

地元の人によれば、例の林道入り口の神社の森や

川沿いのしげみに潜んでいるという。

神社は分かるが、川沿いといっても、川が細くて分からぬ。

徳之島の人は、橋がある、というが

内地の人間からすると橋とは思わず、タダのガード付き道路くらいで

全く気づかない4m弱くらいのものが多いのだ。

これは馬鹿にしているのではない、川を大切に思う島の人の心意気だ。

 

とりあえず、分かりやすい神社から行ってみる。

なにやらミスボラシイ、それはもう情けない姿の幼鳥らしきが居る。

親を呼んでる!

見た感じはヒヨドリである。

すると、親鳥らしきがやってきた!

時折ヒョ〜ロレルフィフィてな感じの南国系の声もする。

 

こ、これは・・・

 

狙いの鳥ではないが、長年見たかった鳥、サンコウチョウである。

ココのはリュウキュウサンコウチョウらしいが、どうせ渡り鳥なのに

なして琉球バージョンと本土バージョンがあるのかワケが分からんたい

というのが正直なところ。

渡ってくる前は、どげん住み分けとっとですか?とたずねたいことしきり。

 

みぎ上が親

おおっ餌をやっとる!

でもすばしこくて上手く撮れんなあ・・・

 

根性で粘って、親鳥の姿を撮る。

なんといってもアイリングとくちばしのブルーが美しい。

オスは非常に長い尾羽を持つが、子育ては母親だけなのだろうか。

でも旅の前には長い尾羽を落とすというから微妙だ。

見た感じ、幼鳥は2羽程度に思えるので

ならばシングルマザーでも子育て可能なんだ・・・

 

今度はいよいよ川沿いだ。

川といっても、さっぱり分からぬ。

海に流れ込むところから、さかのぼって道を探索。

道を探していたら泣き声にあたる、そんな感じであった。

ちょっと心細めなセセラギを聞きとることで

かろうじて川沿いということなんだろうなあ・・・と実感する。

 

アカショウビンはカワセミに近い。

だが、川ではほとんど漁をせず、主に陸上生物を狩る。

一方、島の貴重な水辺には生物が多く集まることから

アカショウビンも集まるのだろう。

 

泣き声は少し遠いのだが、車を降りて慎重に歩いてみる。

目に付く動くものを探すのだ。小さな鳥はほとんどがメジロ。

それらとナカナカ撮影チャンスのない

気の強いヤマガラと好奇心満載のアマミシジュウカラだ。

 

小さな鳥に気を取られている暇はない。

とにかく中途半端に大きめでハトよりちょっと小さいのを探すのだ。

しげみの向こうで声がしたので、とりあえず枝の隙間から

ピントを無理矢理あわせこんで探していると、緑の中に赤い姿

まさしくアカショウビンだ。

緑に映えて美しい。

 

今度は松の枝から声がした!

見えぬ、何も見えぬ・・・

じっと見ていると、なにやら微妙に赤いものがうごめいている。

居た!アカショウビンだ。

ほとんど枝に隠れて微妙だ。

もちろんオートフォーカスはあてにならぬから

フォーカスしながら次々とシャッターを切る。

撮影できるチャンスが限られるとき、とにかくピントが合う前からシャッターだ。

影だけでも写せれば御の字である。

暗いのと、レンズが望遠のために、ピントがずれやすく

常にピントを合わせながら撮影するのも、なんだか楽しい。

カメラオタクになった気分だ。

 

やがて声に引かれて枝を移っていくところを見ると

立派な毛並みながら幼鳥なのだろう。

巣立って一週間もたてば、確かに親同然になっても不思議はない。

イソヒヨドリは可愛かったが・・・アカショウビンは親とても尻尾が短いから

巣立ちも見た目の成長も一見早く見えたりして・・・(そりゃ尻尾の長さだけだ)

 

時折

「う〜・・・う〜・・・」とうめくような遠い声がする。

こりゃまさに憧れのカラスバトに違いない。

違いないが分からぬ。

この時期はあまり鳴かないと言われるがそうではないのだろう

人の生活と合わないだけなのだと思う。

やがて、バタバタバタっと一際大きな羽音と共に黒い大きなハトの影・・・

ありゃ、真上にいらっしゃったんですね。

ハト類は神経質だがモノグサだから、ギリギリまで粘る。

でもじっとしているので、近くにいても分からない悔しい連中であった。

 

気を取り直し

少しづつ移動しながら見ていると

時折キョロロ声と警戒のゲゲゲ声を発しているが

どうも素早く動き回るものの大きな動きはなく

餌場として都合の良いこのあたりをうろついているようだ。

羽音を察知して、また上を見ると、やはりアカショウビン。

もう、大安売りに近い状態で、あちらからやってくる。

シャッターを切っていると、長男以上の神経質鳥類、アオバトほどではないが

なにやら、シャッター音を聞いているそぶりを何度もみせる。

首をかしげるように頭を横に向け、片耳をこちらに向けてみることで

音源の位置を探っているようである。

これがなんともカワイイではないか。

 

アカショウビンはなんとかなった。

前述の小鳥達も撮影しておきたい。

ヤマガラは初めて見るし、シジュウカラは本土のより小さい。

 

移動しようと思った矢先に、小型の鳥が目の前の木に止まった!

おおおっコゲラじゃん!ここのコゲラはアマミコゲラらしい。

普通のコゲラも滅多に見ぬ長男には全くコゲラにしか見えぬが

見られただけで嬉しいのでオカマイナシに撮影だ。

さすがキツツキ、爪が長いのが印象的だ。

 

薄暗いやぶの道をアチコチ歩いていると

台風の雨の後ということもあってハブが気になる。

でも、レンズを持ってしまうと、かなりその意識が遠ざかってしまう。

 

頭の上に小鳥だ。

声からしてメジロではない。

人間の前に回りこんでこちらをうかがうあたり、かなりの好奇心。

コガラだろうと思っていたら、ネクタイがある。

羽根は緑味がないがシジュウカラだろう。

泣き声はやや濁っていて、そのうえ体格同様、少々小さい。

でも、ファインダーで見る限り、しっかりシジュウカラだった。

そうねえ、たとえるなら本土のシジュウカラが500ccのビール缶なら

徳之島のは350ccの缶強くらいかなあ。

向こうから接近してくる小鳥は、動きこそ速いがそれを制すれば

撮影はいたって楽である。なにせそれほど逃げんけんね。

 

そろそろ品切れに近くなった川沿いから戻って、

宿のご夫婦の畑があるという、林道入り口の「橋」の

手前を曲がった山沿いの道を行く。

橋ってこれかあ・・・全然意識していなかったが

谷の真中で道の両脇に3mほどガードレールがある部分が

実は橋であった。

内地の人間は、これは橋とは言わぬなあ・・・

シミジミ島の川の大切さを思い知る。

 

途中、思わずシロオビアゲハを見つけて撮影にいそしむ。

この蝶は飛んでいると、あちらから向こうへと読めぬ方角へと

よどみなく飛んでいく蝶なので、なかなかジックリ撮影できぬ。

たまたまヒッツキ系の雑草の花に寄っておりチャンスなのだ。

この花は大東でも大人気で、例のリュウキュウアサギやアサギが

好んでいる花でもある。

長男は、ナイロン製のややスベスベしたズボンをはくが

それでも引っ付いてヤナ花である。

 

鳥はしげみが好きだ。

だが、餌は平地が見やすいし、バッタなども日の当たる場所に居る。

だから、畑と林の接点が良いことは先刻承知。

キビ畑と林の接する未舗装の農道っていうか太いアゼミチを歩く。

メジロを追い立てているのは、やはり気の強いヤマガラ!

シャッターチャンスを狙って撮影だ。

アマミのヤマガラはマニアックに表現すると

本土のヤマガラより茶色が濃くて、オーストンヤマガラ風だ。

分布域を知らぬ長男は、鼻からオーストンヤマガラだと思っていたほどだ。

 

と!

気の強いヤマガラに追われた大き目の鳥が頭上を横切る。

どう見ても猛禽、タカである。

胸にシマシマがあるところからして佐川急便のセールスドライバーか?

んなことは絶対にないが、細かなしまがある。

 

撮影するいとまを与えず、すぐさま茂みの中に消えるという特技

ハトよりやや大きいくせに、機動性は抜群なようだ。

 

う〜む、ありゃなんだろう・・・

(あとで調べたら、ツミという小さなタカであった)

 

Oちゃんは結構穴好きだ。

鍾乳洞を案内したがる向きがある。

だが、長男は、それでなくても無防備な頭を打つし、暗くて撮影もままならず

それ以前に変化のある被写体に乏しい洞窟は苦手であった。

けれどOちゃんは、今回のうちにどうしても案内したいらしかった。

長男がアンチ観光旅行人であるにもかかわらずである。

彼なりに沖縄より旅費が高くて、普通なら行き辛い徳之島だからこそ

案内しておきたかったのだ。

けれど、残念ながら長男は費用で左右されるような旅人ではない。

知ってるだろ!Oちゃん・・・と言いたかったが、彼はまだ

どれほどの思いで、長男が島々をジワジワと旅しているか

分かっていないようである。ていうか、まだ話しておらぬ・・・。

 

ましかし、動く被写体はあった!

コウモリたちである。

すまんなOちゃん、変化の少ない鍾乳石は

長男の目には空気のようで写らぬのだ。

むしろ、ありふれているであろうコウモリでも

動けばそれはすばらしい被写体だ。

 

そういえば前回

南大東の冬に、ひとんちのサトウキビ畑の真中で

穴に突入した時は、前の日に降った雨の滴下水(したたる水滴)が

水中鍾乳洞の水面につくった波紋を写してたっけ。

やっぱり、今しかない表情を写したいんだよ長男は。

くれぐれも、ごめんな、Oちゃん・・・

 

ともあれ

夜ともなれば・・・

 

夜は空も、クロウサギも、昆虫類も、蛇類も油断大敵。

夜はハブが木に居るというし、這い回る小動物も増加するから

どこを見て居たらよいか分からぬ状況がつづく。

それでも運転しながら発見してしまうOちゃんの視力は人間離れしている。

サソリそっくりだが、酢酸(酢ね)を尻尾から吐くやつとか

でっかいカマドウマなど、動くものは良いのだが

オビトカゲモドキなど動かないやつはやっぱり見え辛い。

尻尾の先がマダラで短く、再生中ね

最初に見たのと違って、再生尾が多いのは本当らしい。

完全な尾のやつは見当たらぬ。

 

トノサマガエルより大きいのだが

案外ガマガエル系にならず、ケロッとしたアマガエル風なのが

これまた天然記念物らしいハナサキガエル。

雨の後は結構あちこち林道を散歩しており

天然シーサー風に道端にたたずみ、ちっとも珍しさは感じぬが

大きさのわりに、非常に愛らしいケロッとした表情は

天然記念物にしてもヨイぞ、許す・・・と誰しも思わせると思う・・・

それに、ジャンプは強大かつ長大で

あっというまにピヨ〜ンっ!と飛び去ってしまう。

さすが天然記念物パワーだ。

 

まあ〜しかし、気負っていったわりに

本命アマミノクロウサギはなかなか写せぬ。

役場に掲示していただいたレベルに全く達しない。

ボケボケ・・・

なんじゃこりゃ・・・

確かに、あれは子ウサギだったから、今は更に成長している。

したがって、あれほどボーゼンとはしてくれぬのだが、それにしても

なんとまあ、モノノミゴトに撮れない腕に唖然とするばかり。

結局貴重なシーンを撮れぬまま退散したわけだが

収穫がなかったわけではない。

 

アマミノクロウサギは鳴き交わすのだ!

「ピィーーーーッ」その声は超音波に近いのではないかと思うくらい高い。

その声を、林で、沢で、実際に何度か聞けたことが感激だ。

ウサギが声でコミュニケーションするなんて、思ってもみなかった。

本来は警戒の声だから、我ら観察者が脅威になっていて

非常にまずいのではあるが・・・でも貴重な声が聞けて、本当に嬉しかった。

 

 

で、かなり遠かったので、やはりボケてるが、広場から逃げて

斜面を楽々と登る姿を撮影できた。

ストロボを新調していったカイがあったなぁ・・・・・・・シミジミ・・・

 

感動もヒトシオであったその帰り、更にお客さんが来てくれた!

油断ならぬ空からである。

なぜ油断ならぬのかというと、夜はハブも木に登り

枝から襲ってくるかもしれんという。

けれど、お客さんは鳥であった。

 

相当びっくりして、お客さんも天然自然の目が点モードである・・・

リュウキュウコノハズクだ。

ハトくらいしかなくて、カワイイんだな、これが・・・

いつも遠く近く、夜の林のあちこちで「コッホーっ」と鳴いていて

ぜひとも姿を見てみたかったのだが、思わず写真に撮れてしまい

スゴイ感激の連発である。

 

やっぱり、Oちゃんと長男のコンビは

夜の徳之島では無敵コンビかも知れぬ・・・そう確信した瞬間であった。

 

忘れないぞ、この夜を。

写真の腕がヘッポコで十数頭のクロウサギを確認しながら

撮影はカラッキシだめだったけど、長男はこの感激を一生忘れぬぞ。

Oちゃん、ありがとうな!

 


 

かくして

もはや次の旅を考えつつ

いわんや徳之島専用カメラも購入しつつ

とりあえず、旅続きで荒れ果てた我が家を立て直しつつ

画像を整理して、徳之島のOちゃんへ、お世話になった方々へ

フジのデジカメプリントにもお世話になりつつ

ちょっと見栄っ張りな2Lサイズ写真にして送るコノゴロであった。

 

でも安いんだよ、2Lサイズ写真。

 

考えてもみてよ

そのために、邪魔で、すぐインクリボンの世代が変わるプリンターを

2万円以上かけて買うより、近くのお店で

(しかも、ともてカワイイSさんという店員さんの居る)

頼んでから一時間以内に一枚80円でプリントアウトできるんだから・・・

イイご時世になったもんですたい。

 

年内には、最低一回はまた徳之島に行くけんね、と心に誓う長男であった。

それにしても、新調したデジカメ・・・湿度には耐えられるのだろうか・・・

 

その前に八丈で試すか?などと半分邪念の入り込む長男でもあった。

 


ではまた