Oちゃんの島で
夏休み
先週、ついに親知らず一本を抜いた。
ジーンと歯の奥のほうに来る痛みが、結構心地よくて
やばいなあ・・・なんで気持ちいいんだろう、この痛み・・・
口内炎を噛み締めるのより、もっと気持ちいい痛み・・・なしてだ・・・
しかし、ときおり頭蓋にズキンとくるので、やむなく歯科医へ。
親知らずが真っ黒に虫歯になっていたのだが
鏡の死角になっていただけで、まったく気づかないでいたという
長男きっての不祥事が発覚。
徳之島へ行って虫歯の心地よい痛みと同居するのは
いささか都会を引きずっていくようで、気が引けたから
あっさり引っこ抜いてもらったのであった。
抜いた後、少しはあの心地よい痛みがあるかな?と期待したが
何の事はない、痛みは全然なく、歯ぐきに穴だけがあいていた。
つづいて、休日出勤していたとき、仕事仲間との食事中・・・
酢豚を食べていたとき、パチッという軽い音がして
硬くもない豚のから揚げで奥歯が割れてしまったのであった。
どうも、台風が来ないと思ったら、今度は歯である。
南国へ行くなと八百万の神が告げているのだろうか。
ハブの島だ、確かに撮影も命がけかもしれぬ。
さて今回の島はどうなることやら。
かくして
歯が割れたのは、ダテではなかった。
来た時から風が強いなあ、と感じていたが
熱帯低気圧であった時分から随分影響が出ていたことになる。
リーフの島で台風を味わったことがなかったが
砂浜の多い島は、意外に風に弱いことが分かった。
少々の波で砂が巻き上げられ、濁りが入って釣れないのだ。
まあ、時期的に水温が高すぎて釣れない、というのもあるだろうが。
こりゃ、確かにクルーザーで出かけるのも無理もない。
みるみる台風が接近してきたが、なんとOちゃんは
台風で状況が悪くなるから、と
次の日に仕事があるにもかかわらず、林道を案内してくれた。
林道に向かう道すがら
風が林の上をザワザワと早足で通り過ぎる。
実は、島に来た当日にも行ったのだが
その日はOちゃんも休日で、宵の口に林道を走ってみた。
新たに舗装が終わった、宿の近くにある林道である。
さすがに、舗装が終わって一月たらず、クロウサギはまだ
安心して出てきてはくれないようだが、生き物は豊富。
宵の口なのに、サソリのソックリさんで
尻尾から酢酸(す)をふきかけるやつとか
赤い紋様のある1.5mくらいの蛇とか
ナナフシとか、前足が白く光るアシダカグモとか
天然記念物らしいけど、見た目には
水かきのないトノサマガエル風なのとか
尻尾の切れたオビトカゲモドキなどなど
徳之島の夜は退屈なしである。
しかし、その夜は違っていた。
前回、5回も目撃した林道だが表情が厳しい。
木々や草の葉が風で裏返され、白い葉の裏が目立つ。
生き物も見えづらいが、おそらく、生き物から見ても
敵だか、葉だかわからない・・・そんな状況だろうか。
蛇も虫も出てこない。
林道を進むうち、先行者が居ることに気づいた。
つるんで走っているところを見ると
旅行者を地元の人が案内でもしているのだろうか。
来る前の記事で予測していた最悪のパターンである。
先行者はタバコのにおいを撒き散らしながら走っている。
これは、かなりマズイ状況である。
観察ではなく単なる見物にやってきているのだ。
彼らをやり過ごし、いつもの頻出ポイントまで行ってみたが
やはりクロウサギは出ていない。
こういう時があるから、クロウサギの貴重さが分かるんだ
とOちゃんは言う。
前回の連発は、よほどの事らしかった。
帰り道、当然この厳しい状況で更に復路なので
人の気配を撒き散らした後だから
僕もOちゃんも、クロウサギはもう出まいと思っていた。
油断していた
まさかのところで出てきた!
おそらく、先行者は見ていないだろう。
帰りもユルユルと走っていた。
残念ながら最新装備も役に立たない。
草むらにさっと隠れられたら手は出せない。
しかも、ストロボチャージしてあったにもかかわらず
シャッターが切れぬ、これにはホトホトまいった。
一秒後、ようやくシャッターが切れた!
この一秒が長かった・・・
「一秒」
どうにもおかしい。
カメラがスタンバイモードになっていたら
4秒はかかる。
ストロボチャージランプは点灯していた。
原因は不明だが、カメラへの信頼は薄れるばかりだ。
せっかくの少ないチャンスを、また逃した。
映ったのは草陰の姿だけ。
(→こっち向き)
それでも、クロウサギを見られた事自体がすごい。
最悪の状況でも、なんとか見せたいという
Oちゃんの心意気がクロウサギを出させた、そんな夜だった。
次の朝からは、釣りもできぬ。
早起きして、教えてもらった宿の近くの林道へ行こうと思ったら
外は風、どしゃ降り・・・
不貞寝しかないではないか。
強風と時折やってくるどしゃ降り・・・
台風が行っても濁りが取れず、すぐには釣りができそうにない・・・
どうしたもんだかな。
轟々と、風も雨も海も吼えていた。