八丈は、天気晴朗なれど、湿度高し

 


週末、4連休がまた短縮されて3連休

しかしまあ、不況の我が社では休めるだけ御の字といったところ。

 

昼下がりの便だから、土曜の朝はゆっくりと洗濯だの

駐車場の契約の更新だのをすませてから羽田へ。

 

またしても搭乗口変更で、右往左往したものの無事搭乗。

タキシングしはじめて、なにやらフラップの感じがおかしい・・・

伸びきらず途中で止まったり、引っ込みきらない・・・

と、機材点検のため、退避するという。

10分ほどエンジンカットして、炎天下でエアコンなしに待ったものの

部品交換が必要ということで、機材故障。あえなく欠航してしまった。

ジェット機といえども、もろいモノである。

 

そう何度もあることでもないためか、かなりまずい段取りを踏みながら

つまらぬ客から罵声も浴びつつ、職員らはがんばって

最終便に我々をすべりこませてくれた。

 

もう夕方遅い。

レンタカーもどうせ二日間の料金だから、時間が下がっても固定料金。

フライトが遅れると、夕方の釣りも流れてしまい、レンタカー代もロスだ。

 

このところの週末は、やっぱり眠いので日曜の朝は寝坊することに。

こんなこともあろうかと、午前中が上げ潮の週末を選んであるのは

長男として当然である。

島の南がシケ気味なので、北側の磯へ行くと、不思議と人が多い。

 

おかしい、オカシすぎる!

餌撒きボランティア隊はカゴ釣りで何を狙っているのだ?

イサキとかタカベとかそういうのだろうか?

冬ではないのでメジナではないだろうが・・・

暑い時期に地獄の鉄板焼き状態の磯を目指してくるボランティア隊、大きな謎だ。

 

周囲は磯が浅いためか、海鳥の休むポイントとなっており

糞も多いのだが、不思議とゴマダラカミキリの死骸が多い。

あちこちに羽が落ちている。

この島の生態系はイタチなどを放ったことで崩壊している。

ゴマダラが増えており、比較的遅い飛び方だから海鳥でも獲りやすいのかもしれぬ。

食べられているのはもっぱら腹のところだけだ。

 

さて、海を見た感じでは、活気がないから、多分釣れまい。

ほどなくボランティア隊も撤退を始めた。

僕のほうは、今回不思議な仕掛け、名づけて

「寄らぬなら、寄せてみせよう、回遊魚」(川柳になってるな・・・)を用意しており

さらに新しくもヤサっぽい竿をテストすることも必要であった。

 

さて、竿を袋から出して継いでみると、おかしい。

店員さんから「この価格でオールチタンガイドですよ」とススメられたやつだが

ふんにゃりと曲がっている。

手で簡単に戻せるのだが、こんなことを繰り返しては、さすがにチタンでも折れる。

やっぱりヤサロッドでは飛行機の旅には向かないのだろう。

でも軽くて、ヒラアジがかかっても一応大丈夫な強度があるから

大東でも使いたいものだ。

ガイドが曲がらないように前後に厚みのあるクッションを巻くなどして

ガイドだけに負荷がかからないよう対策をしてやれば大丈夫そう。

 

ヤサロッドももはや長男の道具。そう簡単に見捨てるわけにもいかぬ。

 

さて、長男最新の川柳仕掛けの方はというと

投げると、ガッチャマンのツバクロのジュンペイが投げるクラッカーのように

回ってしまう・・・という表現で分かるだろうか?

同じ重さの二本のルアーをタンデムにした仕掛けだかららしい。

もっと高尚な表現をすると、連星と呼ばれる恒星の軌道に似ている。

二つの大きな太陽が、お互いの重力により、互いの重力バランスの中心で

互いが回っている感じ?・・・というのも分かりにくい表現かな。

 

ともあれ、要はクルクル回るということは、ルアーが飛行方向に対して

横向きになる瞬間があるので、飛距離が伸び悩むということである。

だが動きはというとオモシロイ。

ひとつはポシャッというポップ音としぶきを上げるタイプ、

もうひとつは小さなチャポンという音とともに頭を水中へひねり込むようにダイブし

弱った魚のアクションをする。

二本が同時に違ったアクションで魚を誘う、という思惑は的中した。

一投で二倍アクション、集魚力はありそうだ。

あとはジュンペイクラッカー兼連星現象を抑える改良を加えればよい。

対策は瞬時に考えられたので、後日、再テストしたら報告したい。

 

やれやれ、潮がたるいのか、水温が高いのかダイバーを乗せた船がやってきた。

カモメも暇そうである。(尻尾に帯があり、ウミネコっぽいが)

 

それにしても、さっきから画像がおかしい。

昨夜、光るキノコを見に行ったときは、まだ大丈夫だったが

前回の八丈から帰ったときも起こった現象だが

青いノイズが画像下方に載りはじめている。

(前述のカミキリは右、竿は下、カモメは左、カメラの構え方による)

 

今回の島はとても湿度が高い。

 

どうも、わがデジカメは大東でも大丈夫だったのに、そのルーツ

八丈島ではダメみたいだ。

さすが源流、さすが八丈、すごい湿度である。

南から風が吹き、それに乗じて海中のほうが暖かいために

ぬるいもやが海面から湧き上がり、吹き上げられながら冷まされて

やや寒いような風になって吹き上がってくるという

長男にとってはチン現象中の珍現象。

昼寝すると快適だが、油断すると寒い。

部屋の中に本来干してあるはずのハンガーにかけたTシャツなども

じっとり冷たいというのは、大東でもありえない現象だ。

 

そういえば、来た時以来、海向きの窓の網戸には雨も降らないのに

水滴があり、朝にはやがて増えている。

 

すごい湿度だ。

 

おそらく、微細な回路の上に、しっとりと結露が生じて

青い桐のようなノイズをもたらしているに違いない。

赤ければ危機感もあるが、青には寛大という人間の弱点をついたような

ほんのりとした現象であったが

そのうちそうも言っていられないほどになった。

 

話はもどって磯の上

釣れないので、結局自分もボランティア隊同様、磯から撤退となった。

イデサリといった個性的な磯だが、海としては平凡で流れも普通だ。

 

昼間は特にやることはない。

熱く暑い磯で釣りなどやっても良いことはない。

最近は大東でもそうだ。

 

あちこち見て回って、最後に宿の下にある藍ヶ江港にいくと

ベストポジションに、陣取った態度のでかいジジイ団が居た。

 

石物師らしく、防波堤にピトン(くい)を打ち込んで竿を固定し

いらぬことをクッチャべっている、ジジイの井戸端である。

防波堤の石物師というものなんだかいただけない。

 

ふと、釣果はと見れば、石鯛が釣れているではないか!

まあ、人数分に足りず、必然的にジジイの一人以上は聞役だろうな。

 

それにしても、石物師の魚の扱いとはこんなものか・・・

(4キロ近いだろうな)

身が硬いから、夕方まで海水で身をふやかして夕食に食べるのだろうか???

水温は高め、あるいは気温と変わらぬ。

やれやれ、八丈は当初の予想通り、長男の苦手な人種が多いお土地柄である。

 

その夜

宿へ帰ってみると、妙なダイバー兼釣り人が隣でメシを食っていた。

自分がもぐった限りではルアーで釣れる魚は居なかったから

居る場所を教えてやっても良いという。

 

残念ながら、長男はポイントを聞かない、否、聞きたくない。

 

即座に、ダイバーが潜るポイントは陸からは届かないので

特に教えてもらう必要はないと申し出たら、急にとりつくろいながら

寂しそうな表情になり、船なら行ける・・・などと語り始めた。

(こんなイメージの御仁だった・・・)

もったいつけるくらいなら鼻から言うべきだが

モッタイつけて居る間に、相手に見破られるというアリサマ

人間、素直が一番ですたい。

 

ともかくも、悲しいダイバーによると、魚は居ないという。

 

しかしだ。

 

ボンベの泡をブクブクとたてながら

半径数キロに響き渡るような音響を発しつつエントリーし

平気で海中をカッポするような事態が日常である連中に

水中の情報を聞いても参考にこそなれ

回遊魚の動きは分からぬものではなかろうか???

南大東で語り合うような、その時期集中してあちこち潜り

状況分析して知らせてくれるのならいざ知らず

断片を語られても、長男は納得できない・・・のが関の山。

 

ダイバーも用心して潜るように望みたい。

果たして、イルカ以上の魚散らしかも知れぬ。

 

科学を極めるときにぶつかる事象がある。

観測者が存在してしまうときには、すでに現象は変化してしまっている

ということだ。

観測者が光を当てた瞬間

物質も組成をそのままにして居られない事がある。

 

ダイバーの目にしたことは事実だが、真実の現象ではないこともあるだろう。

 

はてさて

そんな微妙なダイバーの助言もありつつ

もはや水面にカンパチなどが現れることのない事は

経験上分かりきっていたから、今回は一度も早起きしなかった。

それはもう、心地よい朝寝坊をすることができた日々である。

 

夜明けからホトトギスやウグイス、ヒヨドリが鳴く。

まいっちゃうのだが、ウトウトしながら、また心地よく寝てしまう。

おかげで明け方はオモシロイ夢をたくさん見ることができた。

 

不眠症を、平日の晩酌をキッパリやめることで、ほぼ克服していたはずが

なんとまあ、今度は人に惚れはじめてしまった。

もはやこの歳になって再びこの手の心持ちが再起動することは

予想だにしておらず、長男の心中は非常事態にゆれているのだ。

しかして、再び不眠に悩まされつつあったイイ歳の長男であったが

今度の八丈島の夜は寛大で、眠りにやさしい御土地柄に変わっていて

前回のようにホトトギス夜通し耐久鳴き渡り選手権のような事態は

起こらず、静かに夜はふけ、そして明けていったのであった。

(ちなみに、長男は惚れっぽい一方で、本当に惚れるのには

 長いながい時間を要してしまい、なかなか心動かないのだが

 この特殊な体質が、ずいぶんと婚期を引き伸ばしているのは事実であった。)

 

帰りの朝

普通ならこれだけボーズを続けてしまった場合

ムキになって早起きし釣り場へ向かうが、今回は無用であり

実に穏やかな週末の島生活を送ってこられて、ほっとした。

 

だが、そんなこんなの出来事を楽しみ

小さな幸せを感じて終わるはずであったが

試練は最後に待っていた。

 

数ある長男の弱点のなかで、燦然と輝く苦手、それは英語であった。

TOEICもようやく460点の状態であって、昨夜の光るキノコ案内以上に

レンタサイクルを借りるところまで案内せねばならぬ。

いや、レンタサイクルは、僕のレンタカーを借りた事務所で事足りる。

だが、そのレンタカーショップで無事、自転車を借りられるかどうか

そして、帰りのバス停である、役場前をどう示したものか・・・

それらが強大な問題となって長男を襲ったのであった。

 

二人だけでレンタカーに乗り、口数も少なくショップへ向かう。

さじは投げられた・・・否、サイは投げられた。

 

いざ送り届けて、何とか役場前もわかってもらい

ちょっと緊張ぎみの店員さんのドギマギをフォローした時に

ふと「マイ、ネームカ〜ド」と自慢の巻き舌でRの発音をしつつ

手渡したところ・・・彼女も名刺を・・・

な、なんと相手はイーオンの英語の先生であった・・・

 

昨夜のファニエストイングリッシュライフを返せ!

その瞬間、走馬灯のように、その場面、言葉が

さまざまに心をよぎったものであった。

 

その英語の日本語訳を記すと

「俺がキノコを栽培するから、一緒に来い」

(本当は、これから光るキノコを見に行くから一緒に来い、だった)

返答は当然

「あんたが、キノコを育てるの!?」というものであったが

エーゴの理解力がない長男は

「あんたが光るキノコなのか?」とたずねられたように聞き取っから

どちらにしろ否定して正解だったのだが

グローマッシュルーム!という言葉、これまた発音がまずく

GLOWではなくGROWと発音した覚えがあり

「光る」キノコには微妙に程遠い・・・

 

(コレが噂の「グローマッシュルーム」、俺が育ててやるぜっ!)

 

どうだ!

ぶっつけ本番、意味不明ファニエストイングリッシュ、バイ、チョウナン。

英語の先生なら、鼻から教えてくれ〜い!!!!!!!!と

心で叫んだことが我ながら楽しかったが、今はもう遠い思い出となった。

 

もともと、商売柄熱心に島の風物を紹介しようとする宿の主人だが

まったくもってエーゴにならぬ。

で、義理堅い長男はつい助け舟を出そうとするのだが、逆効果であった。

 

エーゴの話せぬ長男、しかし熱意は通じたのか?

9時から出かけようと約束を交わし、 無事合流。

同行の富山からの日本人女性がフォローしてくれつつ

ひときわ霧深き夜の八丈で、キノコ見物は成立したのであった。

  

なして、島に来て英語を迫られるのか?

なして、魚より外人が多いのか分からぬが

八丈は言い知れぬ魅力に満ち

多少やかましいけれども、アレコレ鳥達も多く住み

長男の大好きなカラスバト(ハトの倍もある姿の黒いハト)

まで見られるという環境がとても心地よい。

 

もはや、次週は大学生の夏休みに突入し

八丈は再び長男には遠い島に帰った。

さあ、台風の多いこの夏、長男は何をして過ごすのであろうか?

 

光るキノコが他にもあるという。

もっと大きくてもっと怪しげに光るキノコ

今度こそ、美しく撮影してみたいものだし

ロマンチックな吸い物の具にしてみたいなあと思ったのだが

光るやつはどうも毒ぞろいらしく

撮影だけにせねばならぬ寂しさをバネに?

より切なく怪しい光を求めて、思いを馳せる長男であった。


ではまた