三度目の八丈は
晴れ大陸
大東の後片付けがまだ終わらぬ。
大東の記事も、もう一本残っているのだが八丈島へ行くことにした。
釣りにしてみれば、三度目の八丈、三度目の正直。
なんかしら釣らなければなるまい、と決意していた。
ところが木曜から出掛けるハズが
忙しくも面白い仕事が飛び込んできたので一日延期。
着いてみれば、青空!凪!
これが本当に八丈なのか?
否、本当の八丈なのか?
前日受けた仕事に運がくっついてきたらしかった。
ついた日の夕刻、この上なく凪いだ海を見て
宿の近くにある、ナカッチョという磯へ行くことに。
この磯と藍が江という港があるから、あしたば荘に行くと前にも書いたが
ようやく近くのナカッチョの先っちょに上がれた。
先っちょに行くには飛び越えるには微妙に距離のある
1mくらいの溝があり途中に点在し、波間に見え隠れする岩の上を
ひょいひょいと運を天に任せて跳んでいくしかない。
この日は余程凪いでいたのだが、やっぱりギリギリ。
この釣り場はいったいどういうときに来れるのだろうか・・・悩ましい。
先端だけ水深が深く、潮通しも悪くない。
先っちょ以外は浅くて海中に岩が寝そべっていて釣り辛い鬼門の磯。
海中に岩が寝そべっているので、波が浅瀬に入った瞬間高くなり
ちょっとした波でもドッパンドッパンになってしまう、むやみに荒磯っぽい磯だ。
もう、ずいぶん本土で釣りをしていないせいか
最初に投げるルアーはめっきりポッパーとなった。
※水面で、魚が逃げたり、魚が何かを食べている音を出したりするルアーがポッパー。
通常投げるのは、ミノーと呼ばれる魚型の水中を泳ぐタイプだが
こと太平洋では回遊魚が多く、その場にいるのかいないのかを判断するのに
ポッパーを使うことが多くなった。
なぜか?
水中を泳ぐタイプだからといって、食いが良いわけでもないように思うし
泳がせる層を変えたり、大きさを変えたりして工夫する必要があるが
ポッパーの場合は簡単で、ざわつきを大きくしたり、よたよた泳がせたりするだけ。
弱点といえばお客さんにその気がなければ、まったくどこ吹く風であること。
ただし、日中の釣りを多くたしなむぶんには、これがとても重要で
やるきのないお客さんは居ても居なくても関係ないのだ。
な〜んて言えるのは、魚が回遊してくる可能性の高い太平洋の島ならではで
甘えちゃってるのかもしれないのだが・・・
ともかくも水中を泳ぐルアーは
相手の好む姿で、好む水深で、好むスピードを出さないと
食べてくれない気がするので、水面なら老若男女、お子様からおばあちゃんまで
みんな等しく食い気さえあれば、食ってきてくれそうな気がするからである。
(でも、釣りたいのは高校生くらいから、中年くらいまで?だが)
で、今回も使ってみたわけである。
残念ながらというか、幸い引っかからなかったが
カンパチの初子が、重たいだろう巨大なポッパーを水中から食い上げてきたっ!
夕方の海面にフラッシュバックで印象的だったのだが
カンパチが垂直にルアーの中央部をくわえようと水面まで上がったところ
勢い余って水面を出てしまった・・・という、若気の至りというよりは
幼いからこそパワーが有り余る・・・その勇士に感動であった。
20センチ余りの子カンパチは、果敢に18センチのポッパーにアタックっ!!!
波間に30センチもジャンプして、くわえたルアーを口の上に真横にしながら
夕暮れの黄金に染まった波の上でTの字を演じたのであった。
今でも克明に思い出せる光景である。
肉食の魚達は、あんまり相手の大きさを気にしない。
特に小さいころは、もっともっと気にしない。
運がよければ胃袋行きになるさぁ、という感じ。
ポッパーを使った釣りというのは、元気のよい魚だけを
うかがい知ることのできる、贅沢で残酷な釣りだ。
あまり食い気の無い連中を、無理矢理南氷洋から持ってきたオキアミで
おびき寄せて、軒並み興奮させて釣るのはどうかと思うが。
結局、貴重な凪ぎの夕刻、カンパチの健気なジャンプ以外には
微妙な魚影がルアー周辺で繰り広げる波模様しか見られなかった。
次の朝
不眠続きで、枕が変わっても眠れない体質の長男は
やっぱり眠れず、カナリ後悔したものの、どうせ眠れないので早起きは楽チン。
前回からずっと通っている過酷な磯、荷浦へ、マゾ魂?がうずいて行ってしまう。
行くのが苦しい磯は、釣っていてなんだか心地よいから
ルアーを操作するのも丁寧になるという珍現象(自分の習性)を知ってのことである。
眠れなかった理由は、枕が変わっただけではなかった。
なんと!島にはたくさんのホトトギスが渡ってきており、夜も鳴くのだ!!!
見ているか!高木博士!!!半月だが、月夜だと微妙に明るいからか?
ホトトギスが夜通し鳴くのだ・・・といっても夜半以降というのが微妙だ。
だが、明らかに薄明時(早くにある微妙な夜明け)とは全く違う
真夜中から、ず〜っと鳴きつづけるのだからタマラン!!!
ウルサイの何のって。
曇った次の夜は、遠くで鳴いていたのだが、薄曇の月夜が薄明に似ていたのか
夜通しヒュー、ヒョー、ヒェーとあちこちでトラツグミまでも鳴いていた。
都会のカラスから逃れたら、大自然の鳥達まで・・・まいったなぁ・・・
お陰で、周囲で鳴いている鳥に鋭くなり
おおむね、何が鳴いているか、すっかり分かるようになったが
眠気が頂点に達した昼間、宿で朝から夕方の釣りまで横になることにした時・・・
昼過ぎ、妙に変わった南国系の鳥がさえずっている・・・
朝方の釣りの後、結局寝付けず、重々しいウトウト状態のままであった長男だが
思わず鮮烈な声に窓の外を見たのだが・・・
居たのはなんと
百舌鳥(モズ)であった・・・。
その文字のとおり、カナリの舌の使い手であったが、すっかり忘れていた。
南国系の鳥のマネもやるのね・・・
分かる人には分かるかもしれんが、イソヒヨドリとセキレイと繁殖期のシジュウカラを
足して3で割って、華やかさを2倍にかけたような
澄んで、(泣きまねのせいか)チョット細めで、繊細な鳴きっぷりに
長男の耳も、スッカリだまされたのであった。
うーむ、鳥の多い、八丈ならではのモズのテクニックに完敗だ。
ところで
不眠だからオカマイナシに起きられた長男だが
朝、仕掛け作りに余裕を出しすぎ、微妙に出遅れて磯に着いた。
その一投目・・・
お気に入りのポッパーを、巻き上げてしばし・・・
「ん?」妙に重い。
なんかおかしいので、トラブルかも知れず
とりあえずルアーをアクションさせずに巻き上げることに・・・
でも、なんかピクピクするなぁ、と思っていたら
魚がついていたのだが・・・
また・・・また、お前かよ・・・・・・・
お前は底の魚だろう・・・それにココは水深10メートルはあるだろうよ・・・
なして食ってきたとばい・・・???
そこには、長男にとって、今回、八丈定番となってしまった
マダラエソがピチピチと元気に食いついていた・・・
は、八丈島には、お前しか居らんのか・・・・????????
お前を釣ってくれる人は、ちっとも居らんようじゃのう・・・
多分、大口で必要以上に食い気のあるマダラエソさんだが
他の釣りだと、スバヤイ他の魚に餌をとられ、釣られないのだろう、きっと・・・
八丈で掛かるマダラエソさんはいつも30センチ近い立派なサイズだ。
結局、今回もこのマダラエソさんだけが、私の釣りの友となった。
八丈は、マダラエソ天国・・・ヘヴン・オヴ・マダラエソ・・・
カタカナ英語に置き換えても虚しいばかりであった。
さ、三度目も腕に正直な海じゃのう・・・
ラッキーってのが通じん、愛想なしの海じゃのう・・・
むなしい、釣りについては虚しい限りだ。
あしたば荘のアルジであるY下マスターなど
「あれ?釣りするんだったっけ?魚持ってきたことないよね」
とキツ〜イ歓迎の一言もあったほど。
餌撒きボランティア隊ですら釣れてないじゃん!
あの朝、藍ヶ江の港のボランティア隊の皆さんが釣ったのは
ムロアジ一匹じゃないっすか、離島なのになにも釣れないんじゃないの?
とこっちがつっこみたいところだが、まだ全然勘所がないので
反論できんのが辛いなあ。
今回も長男はそこはかとなくアチコチの磯へ行ったのだが
▼ルアー釣りしようにも、足場が高すぎ・・・
▼餌撒きボランティア隊の人が居るところにしか魚が寄っていない・・・
▼陸からルアーで釣れる魚のシーズンをしっかりつかめない・・・
などなどどう釣れば釣れるのか見当がつかず、問題山積だ。
しかし、しかしだ。
これで長男が引き下がっては、大東で頑張ってきたかいがない。
今もコシタンタンと仕掛けを考え、餌撒きボランティア隊に負けず
餌なしで魚を集め、詐欺氏のように鮮やかに魚を釣ってしまいたい・・・
と思うこと至極であった。
魚の食い気は餌の匂いにあらず!
青物(ヒラマサ、カンパチなど)は音と見た目に訴えるべし!!
と、まだまだ、この程度では懲りない長男であった。
ところで
前回訪れた寒い時分から、一転して暖かくなった八丈。
大好きなガクアジサイが咲いていた。
そして、木苺(モミジイチゴ)が美味しかったのだが・・・
全島に害虫駆除の農薬散布がなされた後であった・・・
いまだに続く頭痛はこのせいか???
楽しい撮影とともに、少ないながら100枚弱の記録を残した長男であった。
それに、内地系の繊細なウグイスの物まねに苦しみながらも
ヘッポコなクチブエで八丈のウグイスを近くにおびき寄せ
まんまと姿を確認した。
こちらは撮影しても珍しくなかろう・・・ということで
近くに飛来し、電線で鳴いてくれたが眺めていることにも成功。
こんどは、あのにっくきホトトギスを騙しちゃるのだ!と
次回は練習に励むことに決めた。
ああ、次の潮は、いつだろうか。
八丈で、きっと釣ってみせるぞ、あしたば荘のマスター、待ってろよ!と
柔らかく(硬くじゃないのだ)、 心に誓って
微妙に次の島の釣りを思い描く長男であった。