きびしま、いやしま β号

生き物の島、変わりゆく島

きびしま、いやしま、べーた号

 

いたってせわしい始まりであった。

 

今回は蝶の連射は止めよう、空中で飛ぶ姿を

静止するまで撮影しつづけるのは、時間がもったいない・・・

そう思ったのだが、気づいてはいけないはずにもかかわらず

ふと気づいてしまった・・・

 

例年になく蝶の種類が多いぞ!

 

いやいや、いかんいかん、連射はしてはならぬ。

ぬぬっ!おおっ!アサギマダラに

なにやら違うのが混じっているではないか!

こ、これ、これこそがトンボ男、O崎より聞き及んでいる

リュウキュウアサギマダラじゃなかろうか!!!

おおっ?それに側らをハタっハタタッと蛾(が)のように飛ぶのもいるぞ

分からんが珍しい・・・

 

二種類の蝶に、エンジンがかかってしまった。

 

(アサギマダラ)

なんといっても、アサギマダラは日本の全国区の蝶だが

リュウキュウと付くからには沖縄の蝶!

これを撮らずして何を撮るんぞ?と

心の底に追いやっていた蝶好きの私が叫びまくっていた気がする。

 

いつから蝶好きになったのだろうか・・・でもスゴイ好きである。

特に飛んでいるときの蝶がなんとも・・・

 

最初は控え目に撮影していたのだが

やがて撮影がアサギマダラよりはるかにムツカシイ事がわかってきた。

飛翔速度、機動性ともにアサギマダラの3倍とまではいかないが

機動性に関しては倍以上違う感じで、異常にキビキビ飛ぶ。

カメラを構えて追いきれないうえ、シャッタースピード1/800では

全然、写真のぶれが止まらない!

 

 

は、速い・・・

 

この事態が、さらにかかったエンジンを全開にしてしまうことに。

1/1000でチャレンジだっ!!!

 

そこから

アレコレアチコチ、目撃ごとに道といわず森といわず撮影を続ける。

リミッターが外れた・・・

見かけない珍しい蝶は、イシガケチョウということが分かった。

(羽根が ぼろぼろだ)

島まるごと館のH氏を訪ねたら一発だった。

今年は多いのだという。

こいつは、非常に神経質で、警戒心が強くて

当初なかなか撮影できなかった。

しかし、リュウキュウアサギマダラを撮影していたところ

向こうからやってくることが多くなり、しまいには珍しくも

何ともなくなった、微妙に残念な蝶であった。

 

だが、その飛び方は二種類あり

空中で羽根を水平に開いたまま滑空しながら

ハタッ、すい〜っ、ハタタタッ、すい〜っといった具合に飛ぶのと

普通にハタタタ・・・と飛ぶのがいる。

それに、特にヒヨドリやモズにやられるのだと思うが

羽根が傷ついたやつがめっぽう多い。

わたってきたものと居着きのやつがいるのではないか

という仮説を唱える方もいるようだ。

 

さて

本題?のリュウキュウアサギマダラは空中では全く止まらぬ。

アサギマダラも同じだが、昼間は飛ばずにすぐ休む。

(強力な飛翔力だからクモの巣でも休める)

休んでいるところを申し訳ないが飛んでいただくこともある。

枝にはすぐ停まるのだが、空中で止まらぬ。

滑空しないで激しくハタハタするだけの飛び方だからだ。

 

(神経質で気が荒く、すぐ争う・・・)

アサギマダラは比較的休み休み、ふよふよふよ〜と時折滑空する。

この瞬間を狙うと次の動きが読みやすい。

一眼レフとはいえ、シャッターを押してから微妙にタイムラグがあり

それからシャッターが下りるので

理想的には0.1秒くらい先読みする必要があるのだ。

 

うーむ、理屈はさておき、難しいなあ。

 

どちら道、プロ用カメラであってもコレと大差なし、

工夫で切り抜けるしかない。

なにしろ、激しい動きで、ピントとかフレーミングとか

そんなレベルではない。

リュウキュウアサギマダラの動きに体を慣らして

胸の前にカメラを構え、手を自由にし、飛ぶ蝶にレンズを向け

手と腰の動きで直感的に距離を保つしか方法しかない。

 

そうして、まぐれでも撮れているカットを探すしかないのだ。

 

釣り人、ぶんはどこかへ行き

いつしかカメラマンの父の血を引く長男となっていた気がする。

ともかく、損得、意味のあるなしではない

そこに、撮らずに居られない被写体があり

自分の技量はないが、チャンスは目の前にあった。

(気も荒いが情熱的、島で繁殖中?)

 

ただ、シャッターを切り

へぼメモリーのトラブルにみまわれつつも撮りつづけた。

(青みがかって美しい)

へぼメモリーのロスは大きかったと思う。

CFカンパニーから以前購入した1GBメモリーだが

一度エラーでダメになり、交換したものであるにも関わらず

こいつが書き込みエラーで書き込めず、だいぶ撮影をロスした。

くやしい、こんなメモリーを持ってきた自分が悔しくて情けなかったが

すぐに違うメモリーをだし、撮りつづけるあたりが

なんくるないさ、うちなーんちゅソウルが宿る

大東に居る時の長男の運の強さといえるだろうか。

 

こんなこともあろうかと、代わりのメモリーを持ってきていたあたり

長男ソウルがしっかりと加勢している。

 

12万円以上はたいて購入したものの

エラーを吐くメモリーは、もはやどこへやったか分からぬ。

酔った勢いで、本能の長男がその存在を許さず

絶対に使わないよう、どこかへやってしまったみたいだ。

どこかへやろうと思ったことは覚えているが、どうにも見つからない。

でも、見つからなくて良いのだ、そんなメモリーは。

 

そうして撮り続けた中、苦しいながらも

空中カットは少しだけ止まった。

 

液晶で確認し、なかなか写らない腕を恨めしく思いつつ

現場でため息をつきながら蝶が写ってないカットを削除していった。

(この力みっぷり、休みたくなるはずだ)

今回の写真総数は1000カット以上、帰宅後さらに整理したあとでも

800カットを超えていた。

 

うーむ、カメラマンの血が、まだ足りぬと言っている気がするのだが・・・

確かに、今回釣りに専念するため、かなり自制していた感は否めぬ。

 

とはいえ

パシャっ、パシャパシャパシャパシャっと連射するシャッター音に

かなり癒された心持ちがしていることも事実。

うーむ不思議である。

さしてまともなカットも取れてはおらぬ、しかし、やるだけやった・・・

そんな感じなのだろうか。

(チャレンジしたが小さい蝶は尚難しい・・・)

 

だが、撮影は森の中だけにはとどまらない・・・

とどまらないが、それはまた別の項に譲ることに。

 

大東の晴れ渡った空、青々とした海を見ると

どうしても勝手に手がフィルターを付け撮影に夢中になっている。

 

蝶だけではない

どうしても、木漏れ日に輝くスイレンを見ると居ても立っても居られぬ

そんな体にもなっていた。

 

実のところ、スイレンを撮りに行ったわけではなかった。

釣れない、どうしたらよいものか・・・

 

宿の朝食をとりながら

いつものように島の父、ホテル吉里の社長がやってくる。

それとなく相談してみたところ

「もう、島の人間だから、神社でお願いしないと釣れないサ」という。

おお、たとえ冗談でも

もう南大東の島んちゅになれそうなんだなぁ、と思うとすごく嬉しい。

 

正しく拍手を打つことは出来なかったかもしれないが

大東神社にお参りさせてもらい、ふと視線の先に池が目に入っていた。

「ん?おっ!」

この時節、スイレンが開花しているのでは?

ひょっとすると、カワセミが居るかもしれないので

音を立てず、慎重に忍び寄りながら、カメラをセッティングする。

残念ながら・・・鳥類は居なかった。

だが、そこには木漏れ日に咲くスイレンがあった。

 

もう、そりゃもう、ダメである。

前に撮影した時は、100−400mmという長いレンズであったが

今回は28−135mmという短いレンズ。

思わず、スイレンに接近するために、ズブズブはまりそうになりながら

何カットも何カットも撮影してしまう・・・

 

美しい、薄暗いうっそうとした木立、いや半分ジャングルといってもいい

南大東の林の中の池、わずかにひらけた空からやってくる陽光を受け

輝くスイレンがそこにあった。

カラダが勝手に撮りたくなるのもしかたがない状況である。

 

そうこうしているうちに、時間が過ぎてしまう・・・

といったことは日常茶飯事化している長男であった。

 

別段、撮影旅行でもないのだが

しかし、目の前に現れた美しい生物や光景は、断じて逃すまい

そう考えるのは、カメラを持って旅に出ようと考えたことのある方なら

少なからず持っている、不思議な撮影魂(フォトグラフィックソウル?)

ではないだろうか。

 

 

物事は見過ごしてしまうと、二度と見られない。

人類として自分しか見ていなかった一瞬をとらえること

これが何とも心地よく感じられる。

 

撮りたい、と思ったらそれはチャンスだから

無理しないで撮ろう・・・

旅に出た時ぐらい、リミッター無しで活動するのも良かろう

フィルム代もかかんないしな・・・

 

手遅れだが

今度は高速で信頼性の高い1GBコンパクトフラッシュが届く。

もう、ガマンしなくてもよいのだ、350カット以上撮りつづけできるんぞ。

次の被写体はなんだろうか・・・

 

静かに、誰の目にもふれることなく、悠久の時に見まもられる自然

もし出逢えたならば、心ゆくまで目と心と光画に焼きつけたい。

 

一期一画だなあ・・・

 

ではまた。