太平洋の真中で、ボーズを叫ぶ

長男・・・?

 


三連休が出来たら

ちょっと遠い島へ釣りにでかける、という生活に

ぴったりの島、それが八丈島であった。

 

もっとも釣りにウルサイ系統の島であるから、行き辛い島だが

宿とタイミングを工夫すれば、何とかなりそうな予感がする。

 

羽田から一時間かからずに着ける、黒潮真っ只中の島

どのような理由があっても、行きたくなるのも事実である。

 

この時節、まあ奄美や喜界島へ行ってイカ釣りをするのもよかろう。

だが、やっぱり美味しい魚が釣りたいというのが正直なところ。

なんだかやたらに忙しくなっている期末のスキをついて

パパッとでかけたのであった。

 

島は春。

東京から300キロ離れた南海でも、案外寒い。

フェニックスやら、すくすく育つ明日葉を見れば、南国を感じるが

気温は横浜とほとんど変わらない日が多いので

着るものが減らせず、装備はどうしても重くなって困ってしまう。

 

その上

波の高い伊豆諸島でも、特に風が強く、波は大島より一回り大きい。

伊豆大島で3メートルの波のとき、八丈では4メートルになる。

じっと立っていられない風と、到底釣りにならない波浪が

冬場、ずっと吹きすさんでいる島なのだ。

今回も釣りになるかどうかわからない、ちょっと心配な旅立ちであった。

 

とはいうものの

ちょっとやそっとの心配があろうとも、全然旅をやめることはない。

 

社内にある旅行会社で離島便のお願いをするのは僕だけだ。

今では社用オンラインシステムで個人のお得な予約も出来るようになったが

離島は別で、サポートされないから、直接お願いに行く。

最近わりと相談に乗ってくれるようになったK杉さんは

すっかり心得てくれていて、何も言わずに富士山席を取ってくれる。

どんよりした雲の上に富士山がのぞいていた。

 

横浜を出る時、前日からの雨は止んでいて

ちょっぴり助かった!と思ったが八丈では、雨が元気だ。

さすが太平洋の真中、水分には事欠かぬ。

空港に着いた時は止んでいて、もう大丈夫だ!と思ったが

宿に着いてからは、再びさらさらと降っては止みを繰り返す。

空港では美しいビジネス機が駐機してあった。

見覚えのあるガルフストリームIIIだと思ったが

ウイングレットがない・・・

(ウィングレット:主翼の先端にある、上に折り曲げたような翼)

良く見ると、ガルフストリームII、さすがは兄弟姉妹、良く似ていて

長男をひきつける美しさは前から変わらなかったのだなあと関心。

自然の鳥類についで美しい飛行物体と思われる、美しい機体

それがガルフストリームだ。

おなかの下に何かつけているが、おそらく撮影機材ではなかろうか。

半透明のキャノピーで下に開口があった。

 

さて、宿に着いてみれば

宿のご主人が、初めての客と思って、いったん案内しかけて

そさささーっと戻ってきて、あれ?と気づいたようである。

さすが長年民宿のご主人、人の顔の記憶力はすごい!

てゆーか、長男の顔は覚えやすいのだろう。

さっと、打ち解けた表情に戻った。

これが島の宿の良さであって、これがあるから島は安らぐのだ。

 

部屋は以前、千葉から着たS木氏が泊まっていた部屋である。

(全室コタツ完備)

畑にむかって開けた部屋が新鮮だ。

(装備は袋分けしてある)

(全部でこんだけだ)

怪しい準備しかできなかったから、持って着たルアーを確認し

雨止みをまって、偵察へ出かけるのだが

夕暮れまで、それほど遠くへ行くほどの時間はない。

 

実はあしたば荘を選んである理由は

近くに磯があるからだ。

何はともあれ、いよいよ八丈で初の磯釣りである。

 

案の定、磯は荒れてゴミも多い。

磯釣り師、つまりオキアミをまきたおす

いわゆる餌撒きボランティア隊のモノドモの仕業である。

八丈島では便宜上撒き餌は販売されていないという。

あくまでも、付け餌(ハリに付ける餌)として売っているらしいが

なぜか自動的に何キロも売ってくれるというからケッサクだ。

釣具店も背に腹はかえられんということだ。

だが、餌撒きボランティア隊が撒く餌によって

生態系は大きく変化して、磯の環境が変わっていることも事実。

コッパメジナから肉食のヒラマサまでが狂ったように食ってしまう。

 

なにせ寒い海で脂肪をたっぷりと蓄えたオキアミが

こともあろうに黒潮真っ只中で食べられるのだから

北極点で美味い豚骨ラーメンを売っているようなものというか

すきっ腹のチーターの前にペンギンを置いたというか

貧困どん底の北朝鮮でアメリカ産の牛丼をふるまうというか・・・

そんな感じだろうか。

 

まあ、餌を撒き倒して八丈が潤うなら良いのだろうが

まったく納得出来ない現象であることに変わりは無い。

 

さて、サラシ(磯際の泡のベール)が広がっているので

あわよくばヒラスズキでも・・・と思ったが

やはり虚しくルアーが帰ってくる。

八丈島のヒラスズキは幻なのだろうか・・・と言うほど釣っていないが

感覚的には水温が高すぎるんではないだろうか、という気がした。

ただし、居るならば、この水温と餌撒きボランティアがあれば

巨大に育つに違いないだろう。

 

磯の裏は静かな湾になっている。

さすがは黒潮真っ只中、透明度がすばらしい反面

釣りは難しいよなあ・・・と思いつつ、今度はイカ釣りをやってみた。

八丈の磯は冬から春先、シケが続き過ぎるので

イカもそうそう浅めの小さな湾に入っては来ないのだろうか。

おかげでゆっくりと夕暮れを味わえたが

味わっているうちに帰り道が見えなくなるぐらい遅くなってしまった。

(はしごとロープもあるぞ)

八丈島の磯はコレデモカ!というほど険しい道を下りて釣るから

帰りは早めに切り上げないとカナリ危険なのであった。

 

まあ、この磯は非常に楽な方だろうが。

 

夕食は、生まれて初めての料理、麦のかゆが出てきた。

イモや野菜が入っていて、とても素朴で旨い。

 

脂の少ないこの時期のカツオもスッキリしていて良い。

相変わらず巨大ハマトビ料理が出現しているが

ちょっぴり生焼け気味だったが悪くない。

宿のご主人や、電気工事関係の社長さん、トビのニイチャンなどと

会話が盛り上がっているうちに、なんと!

焼酎一本空けちまった・・・

(当然、撮影した記憶はないし、後ピンだ)

 

あくる午前中ともなれば

自然に二日酔いであり、朝寝三昧となってしまいうことは必至だ。

何のために金曜のフライトを敢行したのか意味がなくなってしまった。

金曜夜の船便でやってくるお客さんが来る前の空いている朝

これを狙っていったのだが、なんのこっちゃゼンゼンダメである。

ダメだが結構心地よい。

 

それにしても、初めてではなかろうか、晴れた八丈は。

どうせ透明度も高く昼間は釣れそうにないし

しかもこれまた初めてのベタ凪ぎに近い凪である。

これでは釣りになるまいと、心地いい眺望ポイント

登龍峠(のぼりょうとうげ)へ行ってみた。

島の北側の海は結構シケていて、水深のある底土港は無理だ。

そういえば

今朝の防災八丈で出帆港が八重根と告げていたのを思い出した。

 

と、2月初旬だった前回よりずっと鳥の声が多いし大きい。

ウグイス、メジロ、アカコッコ、ヒヨドリ、ゼンゼン知らない鳥まで

あれこれ見かけるし鳴き交わしている。

なかでも全く調べがつかなかったのがこの鳥。

(アカハラとアカコッコの交雑種だったりして)

後姿しか取れなかったが、目のところと脇の下が非常に赤い鳥だ。

大きさはヒヨドリくらいだが、尾羽はやや短く、からだも太め。

アカコッコにしては、頭の毛を立てることができるからヒヨドリ気味。

木の幹に、こういうとまり方が出来るのもヒントになりそうだが

なんでしょうなあ・・・モズ博士Tよ、見ていたら教えて欲しい。

 

さて

夕まづめには前回目星をつけておいた磯へ入れそうである。

入れそうな状況だが下りられる道が見当たらない。

うろついているうちにようやく発見したものの

道はあるが車が入れられなさそうである。

雨などでわだちがボコボコで、道幅を考えると軽の四駆しか入れまい。

残念ながら今回の愛車はミラであり、下りたら最後

あがってこられそうに無いので、幹線道路のすぐ下に置いて

延々歩いて下りるしかない。

ちなみにこの磯は荷浦という。

  

溶岩がモリモリズリズリと海に出た時に出来たような

低めの洗濯岩系の磯と、突堤ような磯がセットになっている。

正面には八丈小島が見える絶景ポイントでもあった。

 

洗濯岩系から釣り始めて少しした時、ポコンと何かがあたったが

その後音沙汰なし。ダツか何かだろう。

 

今度は突堤側でやってみると、ルアーが着水した時に

ダツが跳ねた!やっぱりダツはいる。

ダツを釣っても仕方がないので、底を釣ることにしたら

何かが引っかかった!!!ちょっとだけ重くてビクビク引くが

ぐんぐんリールが巻けてしまう。

慎重に上げてみたが、何のことはない、マダラエソさんである。

こいつが居るということは沖の底は砂地みたいだ。

八丈にきて釣れているのはこの魚だけで

この島は僕にとってはエソの島にしか感じられない・・・

手にとって見たらかなり太っていて美味そうである。

美味そうであるが、これでは味噌汁一杯分ぐらいにしかならぬから

宿の人の手を煩わせるだけだ。

多分メスだろうから、大きな心?でリリース。

 

ふと遠くに、かなり大きな客船見えた。

みるみるやってきて、八丈小島との間をすりぬけていく。

さっそくズームの力を使って船名をチェックすると、なんと日本丸。

外国の客船ではなく日本の日本たる客船である。

気に入らないデジカメだが、こういうところは便利だ。

 

あんな船に乗って旅をする時はこんな釣りは出来ないのだろうなあ

したくなくなってしまっているんだろうかなあ・・・などと

いらぬ心配をしてしまうくらい、魚信は遠のく夕暮れであった。

 

登りは10分もかかり、途中何度も休まねばたどり着けない

南大東以上に辛い行程の磯であった。

(こちらで荷浦の下から上を見上げた写真がありますが

                     70KBくらいあるのでご注意)

 

その夜は

4種類の魚で島寿司が握られていて、これまた絶品。

メダイ、メバチ、カジキ、トビウオだったかな?

今夜のお酒は控え目にすることにして

多めの明日葉湯で割って焼酎をいただいた。

焼酎無料・・・極めて危険で嬉しいサービスである。

 

無事お酒は控え目に終わらせることが出来、

肉体的にも疲れ果てていたので、心地よく熟睡できた夜であった。

 

今回は正味二泊二日、金曜午後にやってきて

日曜午前で帰ってしまうコンパクトな旅、いわば近征である。

近くて遠い不思議な島。

船では10時間と遠く、飛行機では近すぎるくらい。

 

最後の朝は早めに目覚めたので

夜明けの近い空をゆっくりと眺めてからでかけることに。

ふと遠く近く、口笛か、風車のきしみ見たいな音が聞こえてくる。

おお、これがヌエの声か・・・

口笛のような声で音程を微妙に変え、あちこちで鳴き交わしている。

鳥の声とは思えぬ、不思議な声であった。

 

いろいろ迷ったが、やっぱり港はセカラシイので

景色の良い荷浦に行くことに。

やっぱり磯は険しくなければ楽しくないし、混雑してはいけないのだ。

思ったとおり磯は誰も居ない。

魚も居なさそうだが・・・

 

八丈小島に朝日があたってきたが、音沙汰なし。

美しい光景、美しい海、美味い空気、魚が来ない以外は申し分なし。

大島も良いが、八丈の磯の方が

なぜか充電されるものが多い気がしたが、さだかではない。

 

朝飯前のきつい登坂だったが、気分は最高。

かわった草木も見られるし空気も美味い。

(ウラシマソウというらしい)

もちろん朝飯も美味かった。

 

さあ、今度はいつ来れるだろうか。

宿のご主人いわく、黄金週間直後が最高ではないかという。

餌撒きボランティア隊が退去した後が最も釣れるそうだが

来られるだろうか。

とりあえず黄金週間に年休をくっつけるのは止めておいた。

 

多分次はもっと多くの磯に入れるに違いない。

穏やかな八丈島ならば、ヒラマサだってガンガン釣れるんだなキットと

信じることにして、フライトまでの時間を利用して

再び登龍峠へ行き、八丈をチャージして帰る事に。

観光化しているけれども、自然も負けてない。

鳥も明日葉も元気な島である。

なんたって南大東の原点の島なんだから

長男の体に合わぬわけがなく、ムクムク元気が沸いてくる。

 

それにしても明日葉がアチコチに生えてるなあ。

 

さて、黄金週間はいよいよ大東だ。

まだ八丈なのに「かえって準備だな!」と

ボーズだということもお土産を買うことも都合よく忘れ去ってしまい

早くも次の釣りに想いを馳せてしまう長男であった。


ではまた