対馬のうらどおり


週末、またまた台風がやってきて

伊豆諸島ゆきをお休みにしてくれた。

先週、ちょっと無理して行っておいたのは正解のようだが

こういったイベントの後は、ゆっくり過ごせる週末というのも

ありがたいものだ。

 

ちょうど、対馬へ行ったときの写真をじっくり見てみる

のんびりとした週末になった。

 

対馬の場所はご存知だろうか。

福岡から北北西へ30分の韓国までわずか50キロ

日本国の古来より国境の島である。

 

その島の南端にあたる豆酸(つつ)にやって来たのは

豆酸崎に下りて釣りをするためだ。

観光地でもあり、駐車場に車を止められる便利さ・・・

ゆえの弱点もあるようだ。

 

はるか、下のほうで波の音がする。

どうやっておりるのだろうか・・・

 

駐車場の横には、釣り人の皆さんへ・・・という立て札。

間違いなく釣り人が多いのだ。

小さなマダイやヒラメは放流するようにとすすめている。

ただ、ここに来る人は

もっと美味しからぬ、商品価値の少ない魚を

狙っていたことが後で分かった。

 

ふと崖を見下ろす小さな草原に

獣道のような降り口を見つけたが

下の磯を眺めようと乗り出すと、足がすくむ。

足場がくさっぱらで、崩れやすい土だから

どうも下っ腹が定まらず

体が恐怖で動きにくい嫌な場所だ。

 

カメラだけを持って降りてみた。

装備を持って、この角度を下りるのだから凄い釣り場だ。

 

見上げると、はるか上のほうに草っぱらが見えた。

 

壮観である。

対馬の磯釣りはここに極まれリ!といいたいところだが・・・

 

足元はひどい。

岩場にはウニの殻、オキアミが散乱し、臭い。

メジナ、クロダイといった魚を釣るのに

わざわざ、ここまでやってきて、ここまで高価な餌を買い

撒き倒し、磯を散らかして帰るのだ。

ご苦労なことだ、高級餌やりボランティア隊が

毎日のように来るようだ・・・

 

正直、その種の魚を釣るのに

この一級の釣り場で

ここまでしなくてはならない物量主義の

腕の不味さを、プライドのなさを

いい加減思い知るべきであろうが、どうも無理のようだ。

最近のニッポンの磯釣りはコウイウことになっていて

残念至極だ。

 

日本中の磯や港にも居る魚なのだから

いくら大物の宝庫であるからといって

力んでここまでやって釣れた魚を、さらに魚拓にする・・・

力んだから、そのお疲れさん賞として

自分にご褒美をあげているのだろうか。

 

でも、メジナ、クロダイである。

釣り人以外、ぜんぜん興味のない魚だ・・・

 

まあ、それゆえに、漁協や人様に

これ以上迷惑がかからないで済んでいるわけだが。

 

わざわざヒラマサを釣るのに、対馬に行く長男もいるわけだが

傍若無人に、汚しまくって帰ったりはしないんだがなぁ。

 

まあ、用足しくらいはご勘弁だが・・・

 

どうもこの種の釣りをする釣り人のこだわりポイントというか

ロマンというかプライドというもののレベルが

到底理解できないのだ。

撒けば釣れるんだ・・・というわけではないが

そう思われても仕方がない。

 

クロダイには、最小限の餌を使って釣る

ヘチ釣りとうのもあるくらいで

もっと工夫して大物を釣っている人もワンサと居る。

 

メジナは餌で寄せないと、底のほうに居て釣りにくい魚。

つまり、撒き餌専門の魚・・・

釣りにくいから、ほかの手は使わず、撒き餌しちゃう安直さ・・・

でも、安いからと付け餌はスーパーでむきエビを買って

撒き餌のオキアミを少しづつパラパラと撒きながら

ひねもすジックリと狙う釣り師もいる。

 

一級磯まで来て、こんな釣り方であげた魚・・・

普通、冷静に考えたら、逆に恥ずかしいだろうに・・・

大きさだけを人に自慢する前に、釣り方を説明してみてはどうか。

な〜に考えてんだ、アンタラ・・・くらいしか手向ける言葉がない。

この種の釣り方をする人同士でしか通用しない尺度になっている。

 

このことがあって

実は対馬、豆酸崎への長男のロマンは

ここにほぼ費えてしまったのであった。

案外、スケール小さいな、この磯も・・・

いつも行ってる伊豆大島と変わらんなぁ・・・

薩摩も大した事なかですばい。 

 

さて、磯釣りは大した事ない現場だったが

島そのものはやっぱりダイナミックだ。

左上には、レンタカーのミラが小さく見えているが

道路のすぐわきが崩れている。

だが、わずかに崩れていない道路のすぐ脇には

なんと・・・サツマイモが植えてある。

はるか下の海は、崩れた土が流れ出し、茶色の海水が漂っている。

 

こういった海岸べりの山道を超えると

小さな湾があり、次々に漁村が現れるのだ。

谷あいには集落と、わずかな田畑が広がっていて

逞しく生活している人の息吹が満ちていた。

 

テレビが映らないのか?

ケーブルテレビなのか分からないが

この集落にアンテナはない。

子供達は元気に海辺で遊んでいた。

 

子供は多いように思うのだが、廃校も多い。

子供が外に居る姿が多いから、子供が多いとは限らない。

木のそばには、主人の居ない、銅像の土台。

ニノミヤのキンちゃんあたりがいたのだろうか。

 

ひさしの下には、何の板か良く分からないけれど

なにやら文字らしきが見える黒い板で

ツバメの巣用の張り出しが付けられていてホッとする。

 

あちこちの漁港の外側には

不似合いなほど巨大な防波堤が作られており

新たに湾を埋め立てて安普請した港が見受けられたが

なぜだか、みっともなく地盤沈下してめちゃくちゃであった。

 

これって、税金使ってると思うのだが・・・

 

防波堤手前のところも、地盤の土が流れ去って

コンクリートが浮きまくっていた。

何年持つのだろうか、この防波堤・・・

この埋立地は、全く無意味な建造物である。

 

ところで、対馬でもアオリイカは獲れる。

だが、干し方はすごかった・・・

青空にたなびく白いイカ。

猫以外にも強力な干物ハンターが居るのだろう。

ひょっとして、増えすぎたイノシシだったりして・・・

 

干物にしてこの大きさだから、かなり良形のアオリイカである。

ちなみに、島ではミズイカとよばれ、九州一般での呼び名と共通。

ここの風で干されたイカなら、ずいぶんと美味いに違いない。

 

海岸には、板状の岩が転がっているのだが

こういう岩を使った丈夫な屋根をふいたもの

それが石屋根のようだ。

通常は高床式だが、こういった半石屋根の納屋もチラホラ見られる。

実は上のイカの風景カットの右下にもチラッと見えている。

重い屋根に良く持ちこたえているなぁと思ったら、やけに柱が多い。

 

車窓からふと行き先を見極めようとしたらビックリ!

ナンチュウ荒っぽい名前なんだ???と勘違いした。

ケチ、あれ、死ね?かよ・・・

正確には、死ねではなく、シイネであった。

でも、ケチ、あれ、は正解だ。

 

やっぱりスゲー名前だ。

 

例えば、釣り人が

「あれはどうね?」

「うーん、風のあって、釣り辛かったとばい」

なんぞという会話になるのだろうか。

 

年配ならまあ、昔からの仲だろうと思えるが

若い人が話していると、ちょっと異様だ。

アレとか、ナニとかで話が通じるんだ、こん人ら・・・

と誤解されるかもしれん。

 

さてさて

いつものように、海岸ばかりを見て歩いたが

なにやら大切なものが残っているものの

大切なものの一端は、やはり失われつつある姿があった。

 

走っている間、ずっと九州のAM放送から流れる

素朴な番組をずっと聞いていたが

やっぱり土地に根ざして生活する人向けの

いわゆる地元のラジオ番組は

何ともいえない味わいがある。

もともと、こう言う番組を聞いて育ったんだがなぁ。

 

大自然が残っているようで、崩れているようで

わりあい便利な島である反面、山猫やテンは苦しんでいる。

 

ブリ漁で有名な対馬、今度来たら、ブリでも狙ってみるかな。

 

海辺なのに、山あいから眺めるような、見上げる空も悪くない

済んだ空気と、懐かしく素朴な昔が残る島。

島の旅は、やっぱりやめられない。


ではまた