懐かしの大地 対馬
まだ一年経っていないが、久しぶりの対馬である。
ゆっくり出かけたので、ついたのは夕暮れであった。
空港からレンタカーで一時間、対馬の南の果て
豆酸(つつ)の集落まで
これまたゆっくりと、オートマ車の肩慣らしにひたはしる。
宿に着いてから、せっかくだから夕日を見にでかける。
上の写真の岬にある遊歩道に赴いたのだ。
はるか断崖の下からきこえる波の音しか聞こえない松林。
そして迎える夕日。
きれいな夕日は、何とも残念だが初日が見納めであった。
あくる日、初めて憧れの釣り場へ降りてみたが
途中崖崩れのしていた土の足場は
さすがに5階建て程度の高低差ともなれば
ずいぶん肝が冷えた・・・久々の正統派恐怖感だった。
おりてみれば
小笠原・・・といっても申し分ない迫力ある釣り場だ。
向こうに見えるのが岬の先っぽである。
このとき、昼近い時間だったが、カンパチだか、イナダだか
ヒラマサだかわからないが、ルアーに食いついて
歯形を残していったものの、結局釣果はなかった・・・。
この後日、強風や雨で釣りにならなかったのだ。
真昼を迎えてから、さすがに日が高くなりすぎて
釣りを断念し、これまで行ったことのない港をまわっていった。
静かな秋空に、ただトンビが鳴いている。
こんなに心地よく、当たり前に懐かしい場所は久しぶりだ。
見てのとおり、海のそばにすぐ山が迫る。
ふとみると谷あいの田畑に、白い花畑が広がっていた。
そばである。
もちろん、田んぼでしっかり熟した稲もゆれている。
先月の強烈な台風をしのいで、しっかり立っていた。
海の近くなのに、山がちな風景を見ていると
信州と九州が同居しているお土地柄みたいだなあと
つぶやきたくなる。
集落のはずれには、廃校になった小学校がたたずむ。
こういった廃校はけっこうあちこちにあった。
草ぼうぼうだが、運動会もここで開かれたんだろうなあ
きっと。
もんだいは、下の、この写真・・・
朝から天気が悪く、風が強い日だったので、
釣り場をさがして海岸を歩いていたときのこと
ふとみると
大き目のイタチが散歩か・・・?
いやテンだ!だけどなんだか不思議な色だなあ
どことなく、ダイトウオオコウモリというかフルーツバットに
良く似たカラーリングである。
借りてきたぬいぐるみみたいに見えるが
足は逞しく、しゃれにならないくらい爪がすごい。
こんなの抱いた日には、手編みのセーターがお釈迦である。
テンという奴は、本来山のものだと思うが
このときは海岸の岩場をちょんちょん跳ねて散歩していた。
カメラ目線なのは、好奇心旺盛だからだろう。
おかげで何秒間か、カメラを構えた長男と、テンは
好奇心をぶつけ合いながらにらみ合っていたのであった。
対馬といえばツシマヤマネコが有名だが
実はツシマテンというのも立派に存在し
天然記念物であり絶滅危惧種でもあるのだ。
ちょっとした珍獣遭遇であった。
とりたてて、心地よい風と海と山と里以外何もなかったが
ちょっとほくそえみたくなる週末を過ごすことができた。
ちょっとした連休さえあれば
無理せず気負わずのんびりと、秋は過ぎていくのだ。