梅雨を呼び戻すレンズの話
雨男だった長男が、台風男に襲名して久しい。
持ち物までも伝染して、ジンクス化してしまうことも少なくない。
しかしながら、ここまでくると意識して予測可能な事態も
なくもなさそうなこのごろであった。
例えば、今度セリカがやってくるが、遠征に出かけるときと
車を洗うときに雨が当たりそうである。
こんなのは、慣れたものだ。
が、問題のレンズがあった。
キヤノンレンズEF100−400 IS USMという高級レンズだ。
手ぶれを補正する装置が内蔵されているので
望遠レンズなのだが、手持ちで撮影できる優れものなのだが
条件がそろうと降るのである・・・。
カワセミを撮りに行こう、そう思うと降るのであった。
このレンズはもともと、カワセミ用に買ったようなもので
動機は、鶴見川の支流の矢上川で偶然見かけたのを
まにうけて、これは長男が撮影するしかない!と思い込み
ビックカメラへ走ったという経緯がある。
すぐさま、矢上川へでかけたが、小雨に見舞われて
ほとんど使うことができなかった・・・
最初からこんな感じであった。
今回はさらに「エクステンダー」なる今のレンズを
超望遠化するレンズを付けての出陣であった。
見た目には分かりにくいが、カメラにレンズを付ける間に
はさみ込んで使うだけで、倍率がアップするというものだ。
日本語で解釈すれば「伸ばし屋」という名で焦点距離を伸ばし
望遠を超望遠化する「延長レンズ」である。
カメラに程近い部分に赤いポッチが二つ見えると思うが
カメラボディに近い一つがある(カメラボディに接合している)
のがエクステンダーである。
長さは3センチくらいしかないが、倍率が1.4倍になる。
びみょ〜に暗くもなってしまうが、 倍率を味方につけるため
いたしかたない・・・。
これによって、スーパーレンズが誕生する。
通常なら光学1.4倍で済んでしまうが、装着するのがデジカメだ。
フィルムより撮像素子が小さいので、さらに倍率がかかり
最大で400mm×1.4(エクステンダー)×1.6(撮像素子)
となり、な、な、なぁ〜んと倍以上の896mmになるのだ。
この超望遠で、手ぶれ補正がついたレンズは
とうていサラリーマンでは手の届かない7桁価格だが
明るさはさておき、スゲーレンズになるわけである。
もちろん、見た目だってスーパー光学ビーム砲だ。
通常のフィルム一眼レフ用レンズなら600ミリが
手持ちの限界といわれる向きもあるが、これなら大丈夫。
さながら、軽自動車を買うお金に、ちょっとお金を出せば
フェラーリ同等かそれ以上の性能の車が買えちゃってしまう
そんなイメージである。
魚でいえば、イキの良いアジを買う御代に、ちょっと奮発すれば
大トロが買えてしまう・・・そんな感じだろうか。
が、雨は降るのだ。
鶴見川という、日本で屈指の美しからぬ河川で
カワセミが健気に生きているからこそ
都会嫌いなのに横浜に無理やり生活する長男により
撮影される意味があると思うわけで、今回は情報を探索し
町田近辺の支流、境川がポイントであると分かっていた。
東急田園都市線の南町田という駅から、JR&小田急の町田まで
行脚(あんぎゃ)するルートで見られるというのである。
時に駅を降りて、次第に雨あしは強る一方で
土砂降りのなか実際に歩いてみたが
自然は、地元の日吉よりずっと凄かったものの、カワセミはやはり
早朝や夕刻など、条件が必要であることは常識どおりである。
しかし、久々に日本列島改造論当時、昭和40年代の自然に近い
素朴な表情に接することができた「土砂降り模様」であった。
(台風よりずっとましだ)
境川は、合鴨とかカルガモが多い、そして鯉が多い。
(カモは誰も気にしてないし、美味そうだ、冬が食べごろ?)
鯉も良く太って食べごろのサイズがワンサといるぞ!食料の山だ!!
否、川だ・・・
(写真では赤いヒゴイだけ見えるが、群れ全体はこの10倍近い)
その他、なれなれしく逃げないキジバトや
縁日の小さなミドリガメが成長してしまったのが水面からのぞくなど
都会らしい奇妙な自然も十二分に?見受けられた。
(久々にシマヘビさんも見ることができた)
蛇だって、蒲焼にすれば十分に美味そうなのが残念だが
シマヘビにそういった感情を抱くのも初めての体験かも・・・
雨の中
結局、本来の目的であったビーム砲レンズは使えなかった。
撮影は全て、小型デジカメで傘の下から、こそっと撮影したものだ。
この季節、やっぱり元気なのは植物だ。
とはいっても、やっぱり昆虫が飛ばないと実らないはずであり
元気なのは良いが、晴れ間を待つ心持ちは、長男以上だろう。
とはとはいっても、マチダは東京都である。
小自然はあっても、大自然に育つことはないだろう。
トンボだってイッパシに飛んでいるが、ヨドミの少ない川で
どうやって繁殖しているのか良く分からないし、数は少ない。
お祭り屋台でゲットしたカメの放流と放流鯉の宝庫に
鳥の宝石、カワセミが住み着いていることが微妙である。
美味いおそばの上に、なぜだか逸品の煮卵が乗っている
そんな感じだろうか。
食べてみると案外癖になるかも知れぬ。
この微妙さが、長男の撮影ソウルを刺激して止まないのだが
雨だけは、ちょっと・・・・である。
安価にフェラーリモドキを買ったとしても、本物フェラーリに
手を出すほどの心前はない長男であった。
(防水のプロ仕様レンズもあるだろうが、そこまでは・・・)
もう少しお金を出して、もっと凄いフェラーリモドキを買えないか?と
あれこれカタログに心が揺れつつ、カワセミにはアキラメがつかない
カワセミふぇち気味な症状も知りつつ
やっぱり鶴見川本流にコダワリたい、鶴見川びいき過ぎる
珍妙な心持ちの長男でもあった。