モズ研究の世界的鳥類学者から

「観察に行きませんか」と言われちゃあ


南大東で五年ぶりの再会を果たしたT博士から

新人も到着したので新人の観察ポイント案内も兼ねて

野鳥観察に連れて行ってもらえることになった。

その前に、研究室に行って、珠玉のビデオを見てからだという。

研究室のドアの横にはトッテモかわいい

ダイトウコノハズクのついた研究室の表札がある。

なぜか、研究室は、奥山建設の女子寮にあるのであった。

このホンワカとしたイメージのAさんがダイトウコノハズクの作者だ。

研究室内にはビデオと釣り具が目に付く。

釣り具はもちろんTのものである。

(上のカットの左すみにも二本の大物用の仕掛けが

いつでも使えるようにセットされてある)

 

五年前、僕がたまたまTに竿を貸したのをきっかけに

大物系の釣りへとハマって行ったと言うが

研究室に多くの釣り具を持ち込むほどハマった理由が

俺のせいというのはT自身の説明によって理解できたが

あれこれ道具をタクサン持ち込ませたのは俺の責任じゃないと思う。

 

問題の「珠玉の生ビデオ」だが

今朝撮れたばかりのトレトレのモズ映像だと言う。

(ヒナが口をあけて親を待っている)

モズの子供の育て方を撮影してあり、それぞれ親がどの子に

どれだけ餌を与えるかを観測しているらしい。

モズのヒナにはそれぞれ識別マークが頭に付けられているから

わかるのだという。

最初はシールでマークしたのだが、親が器用にはがすので

今はペイントマーカーになっている。

が、

親はヤッパリ子供の頭にある遺物(マーク)に気付いており

事あるごとに、遺物をなんとかしようという愛情から

子供のマークを小突いていたが

最も小さい猛禽とも言われるモズの親のクチバシで

毎日事あるごとに愛情小突きに遭うヒナの気持は

察するに余りある気もする。

ということで、これが珠玉の正体だった。

 

のだろうか・・・?

 

気をとりなおして、いよいよ出発だ。

T博士の「ケートラの後ろに全員搭乗せよ!」という

勇ましい号令を期待したのだが、穏やかに二台で出撃であった。

僕は先を行くケートラに、おっとりしたM君と相乗りだ。

いつぞや、とんぼ男のOと

洞窟探検に出かけたときの事態を思い出し

ペーパードライバーじゃねーだろうーな・・・まさか・・・

と不安がよぎったが

良く考えれば、去年も居て、一緒に寿司を握ったのだから

ヘタッピのはずもなく、不安はまったくの空振りである。

 

さあ、観察だ。

機材を下ろして、帽子をかぶって・・・と。

モズ博士Tは既に双眼鏡片手に

ベストポジションで鳥を探し始めている。

しかし、気配を察して、鳥は既に遠巻き状態になっており

壁一枚あれば、鳥が逃げないで済むのだが・・・とぼやいていた。

長男を連れて行ってくれた御礼

カッコよく双眼鏡をのぞくTへのサービスカットだ。

 

サギ、カイツブリ、ミサゴ・・・

思わず巨人の星流に叫びたくなる名前のバンもタクサン居る。

しかし、ここで必ず見ておかなければならない珍鳥

白いカイツブリというのが居るらしい。

もちろんアルビノ(突然変異の脱色変種)だが

それが何羽も居て、決して途絶えず子孫に引き継がれ

ずーっと大東にはこの白いカイツブリが居るのだそうだ。

アルビノが優性遺伝してるのだろうか?

肉眼でもほどんど見えない白い点が

時折水から顔を出す。

望遠鏡で見つけてもらって、なんとか確認できるのだが

カイツブリは、ハトより小柄で、完璧に水中を泳ぎまわり

カナリの時間潜っているので見つけ難い。

しかも200ミリ相当の我がレンズでは非力過ぎる。

デジタル的に拡大してみたのだが・・・

カイツブリのイメージに見えなくもないような気もする・・・

 

次は飛行場横の新貯水池である。

どうも新人は機材の扱いが苦手というか未熟者であるようだ。

おっとりした性格も手伝って、どこ見てるかよーわからん人だ。

双眼鏡はこうして使うのだ!と教えることからはじめるT。

最近の双眼鏡はズームがついているというから驚きだ。

新人は、本来こういう操作を学ぶために来たのではないと思うが

ダイサギ、チュウサギ、コサギの見分け方もチョイ甘めな新人。

ふと振りかえると、すごい珍鳥が飛んで来たと言う。

足の長いツバメ風の鳥だが、実はチドリなのだそうだ。

名前もそのまんま、ツバメチドリ。

飛ぶ姿も、アマツバメくらいの大きめのツバメにしか見えない。

飛び方は千鳥風ではある。

昨日、磯でちらりと見かけたツバメ風の鳥はコイツかもしれない。

さっきの教訓を忘れず、今度は望遠鏡に最大望遠にした

一眼レフを接眼させて撮影してみた。

びしっとはピントが合わなかったが、まあまあだ。

色もほんのりと解るくらい写っていて、上出来ジョーデキ。

 

夜ともなれば、釣って来たイカとガーラ(カスミアジ)とビールで

勉強会は続く・・・

ホトンド勝手に大東そばの伊佐食堂を占拠していた我々であった。

この場にAさんが居ないのが残念だが

彼女はダイトウコノハズクを観測しているので

それにあわせて、夜行性女なのである。

でもって、大好きなダイトウコノハズクのマスコットも作っちゃうのだ。

でもって、ほんのり眠そうに優しい表情がとってもキュートなのが

この夜行性生活のためかどうかは未確認である。

 

今度は夏にでもAさんにくっ付いて行って

ダイトウコノハズクを見たいものである。

さすがに撮影は無理だろうけど・・・。

 

まてよ

ソニーから今度、ナイトショットのできるコンパクトデジカメが・・・

よし、次のデジカメは夜行性に強いやつにしてみるかな。


最後の問題は一番手前にある皿のカスミアジである。

せっかく、毎夜のように大東そばで会する我ら。

そして、研究費、滞在費を安く上げながらも、蛋白源は必要だ。

モズ博士Tから、皆で食べられる魚を釣って欲しいとの要請があったのは

この前の日のことであった。

釣りにハマらせた責任、イカしか釣ってない責任

せっかく五年ぶりに会ったのに、何か食べさせたい責任

 

タウリンだけでは体が持たない・・・魚肉が必要だ。

プチうつ病の長男は、責任感の渦が頭でグルグルしていたのであった。

それもそのはず、毎晩酒を飲むので、うつの薬を飲めずに居たのだから。

 

「こりゃ、死んでも釣らなきゃなるまい」

はやまった決意をする長男であった。

 

次週、いよいよ、またしても人生の方向を変えようとしている

釣りとなってしまった、激長編へつづく・・・


ではまた