はなには嵐が良くにあう
サクラが咲く頃といえば
なぜか雨や風が強いのは
サクラが望んでいるからだろうか?
人間のドンちゃん騒ぎから遠ざかって
思いきり咲きたいのかもしれない。
会社がえり
お寺の参道のサクラは
冷たい春の雨の中なのに
この上なく花明かりをはなっていた。
深夜だったけれど、家に戻り
こっそり三脚とカメラを持ち出す。
週末も多分嵐だろうと、雨男改め台風男となって久しい
長男の勘が、急げ急げとささやいていたからだ。
静かにさらさらと雨はふり
サクラの命を少しづつ時に刻んでいくようで
寒さのなかにほの温かさを感じる夜である。
サクラには雨闇がよくにあう。
さらさらという雨音が、花の声のよう。
年に一度だけのささやきの夜かもしれない。
僕は気付かぬうちに
ずいぶんながい事ささやきを聞いていた。
明くる朝、ふと枕元には
一枚の花びらがあった。
ささやきの夜の参加証として
どこかにくっついて、やってきたようだ。
長男以上に、マメだな、サクラってのは・・・
サクラにとっての、ささやかな宴
それは夜、それは雨の中
なのだろうか。