秋、残り時間は・・・
荒磯に
秋がふんばる
大島へ
わが家の秋味はカンパチである。
秋磯で釣れるカンパチである。
去年はさっぱり、今年もさっぱりである。
大島の秋の味覚を何か一つでも
味わっておきたい・・・そう思って最後の秋磯へ。
金曜の夜から出かけるので
都合がいいように、スケジュール調整して
早めに帰れる都内の出張を入れておいたから
残業で苦しむことはない。
仕事も、釣りも一挙両得でなきゃ、長男がスタルのだ。
夜ともなれば
最近、ジェットフォイルが就航して
夜の客船を利用する人は、今まで通りに使っている島の人か
大きな装備を持ちこむ釣り人が大半となっているため
美しくエレガントに生まれ変わった大桟橋のターミナルだが
今夜、ほとんど待合を埋めるのは釣り人である。
といっても昼間は正しく、ふつうの東京湾クルージングを
横浜ベイエリアクルージングを楽しむ人で賑わうのだが。
今回は、釣具を充実させるために、カメラはヘッポコだ。
これが後になって釣果を左右することになろうとは・・・。
ズームの無い単三2本でうごくポケットサイズのものだ。
さて、磯についてみると
先客がふたり、磯の右手にある最高の場所に入っている。
チクショー!あの沖の根に、いつぞやの馬鹿でかいやつが
きっと居るのになあ・・・と思いつつも
こういうときこそ、心機一転、いつもいかない左側で・・・と
腕と度胸をみがくの〜さぁ〜♪ということに。
そう、いうまでもない
このドトウとシブキ、風・・・とくれば
懐かしいテンドウヨシミの、あの歌が浮かんでしまったからだ。
しかしシケている。
予報よりずっとシケている。
つ〜よい嵐をまともに受けてぇ〜♪とはならない場所と思うのだが
時折高い波が足元近くまで上がってきて結構キケンを感じる。
見れば入りたかった右の磯はウネリ直撃でカナリしぶいているので
チョッピリざまーみろ!と思ったりしていた。
左の磯は高く、これでもまだ割合安心なのだ。
沖に伸びた岩が波消しをしてくれるからだ。
だけどその岩が邪魔と言うか
本当はそこまで渡ってその上でも釣れるのだが
行けない・・・。
朝一番はアマリにサラシ(泡のベール)が広がっていて
思わずヒラスズキを探ってみるが、やっぱりいない。
カンパチを狙ってみても、泡があるのでやっぱり出ない。
多分、足元にはキチンと例年どおりいるはずなのだが。
で結局、例のピンクのワサワサがついたルアーを
沖に向かってブチ投げて、底近くを引いてくる。
こうなったら次の大物はマダイしかないのだ。
投げ初めてすぐ
何か雑巾が掛かったように、もさっと重くなった。
でも、ずんずん巻けるのだ。
巻くのをやめて竿先で聞いてみると・・・
ぐぐぐっと微妙に引く・・・おっ魚だ・・・この手ごたえというか
手ごたえの無さはもしや・・・
楽々と寄ってきた海面には真っ赤な姿。
おおっ初冬の美味!やっぱりホウボウであった。
大島では釣れるとそこそこの大きさがそろう。
ホウボウとしては、まあまあの38センチだ。
釣り味はほぼ最悪だが、味は最幸、最高である。
水中では今一歩やる気がなさそうであったのだが
上げたとたんグーグー鳴いて暴れまわり
上州屋のジグが岩に何度も叩き付けられ一発お釈迦となった。
ともあれ
これでもう、ボーズじゃない・・・
一安心して余裕が出てきた。
(この程度で余裕というくらいだから今年はいかに釣れていないことか・・・)
余裕が出ると、腕も振るってくるもので
意外に、何かもう一匹釣れるような気がしてくるのが不思議だ。
状況は悪い。
風も強く波もうねりも強くなり、寒い。
セーターを着込んで再チャレンジだ。
朝飯もついでに食べておく。
ルアーの場合、そこらじゅうをルアーで引き裂くように釣るので
海を休ませることが、良い結果を招くときもあるわけだ。
だから、休むときは徹底して休み、海も休ませるのだ。
で、予報どおり、やや波は落ち着いてきたが
なおも釣れない・・・
波が落ち着いてきたので、いつぞや変わり身の術を食らってしまった
上州屋のリーズナブルなルアーを使って、怠け気味に釣る。
先のマダイを釣るやり方は、長い竿を常に激しく上下させ
体力を消耗しすぎるので、途中、怠け気味に釣ることも必要だ。
沖の深場を休ませることにもなる。
この釣り方で引っ張り出せるカンパチは大体一匹で
大島特有?の磯際に居ついているやつをおびき出して釣るのだ。
普通ならキビキビやると比較的何度も出るのだが
シケているのでキビキビやっても出てこない。
なぜだか泡があると出てこないのがカンパチだ。
それでユルユルやったら、シビレを切らしたように一匹だけ
ぬぼーん、と出るヤツがいるのが分かったのが
今年の秋磯の成果でもあった。
もちろん、長い説明をできるくらいだから
当然?釣れるのであった。
それにしても良く引く。
予定通り、みなもをモワッと揺らしてルアーを飲み込んでの登場。
今回は足元に根(岩)がないので安心
逃げ込まれてヤッカイなことにはなりにくいのだ。
やり取りも楽しい、でもあまり楽しんでいると
せっかくの秋味を逃がすので
慎重に、早めにあげてしまう。
いいカンパチだ
美しいなあ、可愛いなあ。
これはヒレナガカンパチで、これが何十キロにも育つんだから
スゲー連中である。
小さい頃は縦長で、ずいぶん体高が高くてチョロQ気味なのが
すごく可愛いのである。
僕が飼いたい魚ナンバーワン・・・解っていただけるだろうか?
体高が高い分、長さの割に重さがありパワーもあるから
釣って楽しく食べて美味しい、しかも身も多いわけで
秋磯の満点魚である。
食べたい魚と、可愛い魚が共通であるというのは
どうも女性陣に言わせると普通じゃないらしいが
そんなことは関係ない、食欲と可愛さが同居しても
なんら問題ない、それくらいじゃなきゃ、自然と対峙できっこない。
可愛かろうと、可愛そうだろうと、涙をかみ殺して
釣ったからには殺し、感謝して食べる。
これが長男の信じる、摂理であるからだ。
はて
僕の更に左手で釣っている餌釣りのオジサンがやってきて
ルアーを見せてくれという。
釣れていて気分がいいので、アレコレ聞かれもしないことを
思わず説明してしまったりする長男であった。
オジサンは一度ルアーをやってみたいといっていたが
ナカナカ難しいので、ここでだまされない方が人生幸せなのだが・・・。
そのことを更に助長する事態が待っていた。
長男としては、酒屋の物々交換にはやや少ないが
ウマイ魚が二種類もそろったので、超余裕になっていた。
多分、いいカメラを持っていっていたら、なにやらパシャパシャと
その辺を写して集中力を欠いていると思われたが
カメラがチャチなのでそんなことはしないで、真面目に釣り続ける。
朝方、ホウボウが釣れたあと、ホウボウらしいアタリと
もう一つ、謎のアタリ?とも根ガカリ?(地球)ともつかない
激しく重々しい感触があった。
そのあともズイブン根ガカリしかかって
あれは根ガカリだったに違いない・・・と思うことにしていた。
オジサンは釣れない今の場所を移りたいのか
アチコチを偵察しているのを横目に、真面目に釣る。
すると、謎のアタリ?が来た!
げっ根カガリかよっ!!!
と思ったら、竿先がたたかれている!
おおっ、まだ釣れるのか!?本日は!
ぜっこーちょーじゃん!
もうビックリマークを使い疲れるくらい嬉しい。
しかも引く引く。
最初はのっそりしていたが、いきなり走り出す。
おおっ青物か?じゃカンパチか?
大東でヒラアジ釣りにも使った、特製改造投げ竿なので
パワーは十分、曲がりも十分楽しめる余裕がある。
糸鳴りを耳にしながら、しばらくやり取りし
最後に右手にある岩の間に入りそうになったのを力任せにかわし
水面に現れたのは・・・ありゃ?10時過ぎているのにイナダだ。
カンパチ以外は、日中は釣れないと思っていたのだが・・・
曇りの日だからだろうか?
(糸鳴りは、強い魚が掛かった時に、強いテンションで張った糸が
風や波などによって共振し「ヒューン」と微妙に鳴る現象)
滅多に使わないタモ網を伸ばして、ヘタなタモ入れをするのだが
何度も失敗、一度はルアーの針だけがからんで焦る焦る。
慎重に振りほどくと、幸運にも外れてくれた。
ヘマするとさきほどの餌つりのオジサンたちに
「残念したねえ」なんて嬉しそうにされてしまう。
なんとか取り込んで持ち上げようとすると
うっ、そこそこ重い・・・
さすが引くだけのことはある。
しかし何ともはや、大きくも、小さくもない・・・
出世魚だからイナダかワラサか悩ましい大きさ・・・
イナダと呼ぶにはちょっと大きめなのだが
ワラサというには気恥ずかしい、実に中途半端な
もちろん、魚には罪は無いのだが
チュウモノ中の中モノ・・・中物釣師を目指した僕だが
究極の中物をゲットした。
オジサンが戻ってきて、記念撮影してくれた。
どうも、こだわりがあるらしく、丁寧に撮影してくれ
やっぱりゆるめな表情が良く撮れている。
記念撮影するのも気恥ずかしいサイズ・・・
この気持ちも中物の醍醐味なのかも知れないな・・・
初めての心持である。
このことで、あのオジサンはルアーを買うのかもしれない。
そして、釣れない日々を過ごすのがいやで
道具が眠ってしまうのかもしれない。
オジサンの連れのオジサンは良く知っていて
500回投げて一回あたるかどうかだよな!と
力強くハズレな釣りであるとサトシテくれていたが
効いたかどうか微妙である。
とりあえず、もうクーラーに収まらない。
てゆーか
解体しないと入らない大きさだった・・・。
魚もさばかなきゃいけないし、もう食べきれないので納竿。
海は調子よさそうになってきてチョッと残念だが
まあ、これが僕のスタイルだから。
オジサンたちは、案の定、けげんな顔をしていた。
けれど、いいじゃん、場所譲ったんだから・・・
しかし、あれこれ片付けている間、ちっとも釣れない・・・
オジサン達、腕悪いんじゃないの?というわけではないが
こういう時が一年に一度くらいあるもので
餌よりルアーの方が、良く釣れる・・・なんぞということが
起こってしまうから、この釣りがやめられない
で、そうこうしているうち嫁さん釣るの忘れちゃう・・・わけだ。
バスに乗り、元町港へついてユッタリとした気分で昼食だ。
元町港なのでイカそうめん丼はオアズケだが
こちらには、とこぶし丼ことトコ丼がある。
プリッとしたとこぶしが美味い。
ビールのノドごしも最高である。
あとはうたた寝気分で、横浜への船を待つだけ。
帰りのクーラーがやけに重々しく、また妙にうれしく
横浜大桟橋から桜木町駅への足取りとても、妙に軽かった。
釣りネタだから長い長いのだが、もちろん食卓編がある。
帰ってからすぐに魚を卸し、コトブキ酒店へ直行だ。
久しぶりに物々交換できるのだ。
意気揚々と店に向かう。
魚と言うのは、卸してしまうと意外に小さい。
頭とシッポを除くと半分近いイメージになるくらい小さく見える。
片身となった姿を見て期待された
「大きいね」という言葉はない。
本来、中物師なのだから、期待してはイケナイ言葉だが
不思議と寂しいものである。
でも、食べてみると、案外その量があるのも事実。
で、今回は久々だったからか、夫婦して奮発してくれて
日本酒2本と交換してくれた。
残念ながら、ビールもオマケしとくわ・・・ということはなかった。
そこまで甘えちゃ長男がスタルことでもあるし。
ウマイ酒、ウマイ刺身
その夜、我家には「ウマイ、うまーい」が鳴り響き
思わず涙目になりながら
刺身に向かって両手を合わせ、何度も感謝の祈りをしてしまう
長男の姿があった。
その後のことは、覚えが無い・・・
ご飯も食べたようだが・・・
日本酒は良く回るので、気をつけて飲みましょう。
酒は飲んだら飲みきろう・・・ん?違ったか?
四合瓶は一晩でキチンと飲み切ってあったのであった。
次にこんな思いができるのは、いつのことだろう。
毎週でも良いんだけどなあ・・・