冬の声が届くころ
ひときわ寒さが身にしみはじめるころ
なじみの顔がやってくる。
去年も♀だったけれど、今年もだ。
朝が明けはじめる時分から
高い口笛を吹いてアクセク働き始める真面目な性格。
ひょっとすると毎年、同じ場所で陣取るのかもしれない。
アクセクは昼頃には止めてしまって、また明日となる。
朝だけ几帳面なようであった。
寒くても、雨模様でも、朝だけは几帳面というところが
長男としては、きわめて気にいっていて
声が聞こえると、おっオイラもこうしちゃいられない・・・と
むっくり起きたくなる。
ちょっとした野心が芽生えていたのだが
今年も♀がきてしまって、ちょっとだけ期待ハズレだった。
というのも、♂だと、まことに分かりやすい鳥なのだ。
こいつがやってきたのだから、冬だな・・・と
あきらめがつくと言うか、説得されちゃうと言うか
納得せざるを得ないような気分に
自発的に、ひたってみようかなと思ったのだが
イカンセン、今年も昨年と同じである。
なぜ説得やら納得にいたるかと言うと・・・
♂だとこういう姿なのだ。
ちょっと画質からして、昔の図鑑みたいだけれど
これは先々週、対馬で撮ってきたもの。
もちろん、対馬でも朝だけ几帳面である。
こういう分かりやすい姿で現れたならば
まあ、あんたがワザワザやって来たのだから
冬だな、分かったよ、うん、冬なんだよな
寒い、冬らしい、良い冷え込みっぷりだよな・・・などと
さんざっぱら貴重な秋を、失敗連発で釣り逃した体験も
水に流してサヨーナラーとわりきれそうに思う。
そう、思えませんか???
思っちゃだめかな?
しかるに、最初は
この朝だけ几帳面に口笛を吹きまくりつつ
かといって、姿的に特長の全くない無難な姿の
この鳥は何者なのだ???と悩みつづけた経緯がある。
近所の目が、怪しい者を見る目であったが
くじけずにビーム砲レンズ搭載、超望遠ムービーカメラを
鳴声が聞こえると同時に電源を入れ
外に飛び出した昨年であった。
だがどうだ、
やっとの思いで撮影チャンスをモノにしてみれば
全身ほとんど麦わら的な、大自然一般型の単色。
特徴もない姿に、図鑑でも調べ難いな・・・と途方にくれたほど
オリジナリティに乏しい姿に見えるではないか。
ソレにひきかえ
♂の方はといえば、絶対に他と見紛うことなき
わかりやすい色彩・・・
今年こそ、この分かりやすい色彩に出会って
冬の到来を正しくあきらめてみたい・・・
と秘密裏に期待していたのだが
几帳面なのは、朝の鳴きっぷりだけでなく
毎年の縄張りポジションにもあてはまるようで
残念ながら、この調子だと、世代交代ナシには
ず〜っと同じ顔ブレのようである。
でもまあ、
毎年同じ場所で意地と縄張りを張るというのは
長男として、納得いかない訳ではなく
そのコダワリのイキザマは長男ソウルに共通する
何かを感じさせずにはいられないモノを放っている。
ジョウビタキ
それが彼らの呼び名。
高原が似合いそうなヒタキの名を持つ彼らだが
僕にとっては、冬の覚悟を示す鳥・・・
よしっ!
覚悟をしたぞっ!
冬よ、来てみろっ!受けて立つぞっ!!!
と意気込むと同時に・・・
あつあつの煮物が、ダイコンと豚バラ肉の煮込みが
実に美味しい季節になってしまったことを
身(おなか)にしみて感じる今日のこの頃であった。