大きな秋、大島の秋
これで元気が戻らなかったら仕方がない・・・
長男である私は、ズイブンと長男らしく生きてきたと思う。
心が病んでいる、そう思ったが、どうもそれだけではない。
元気が出ない材料は本来の心にあったようである。
心にある単純なことすら、ままならない不安と情けなさ。
大島に行きはじめて8年が経つ ・ ・ ・ ・ ・ ・
相模湾
目の前の大島
「ん?」何やってんだ俺は???
行きたい場所、釣りたい磯があるのに
土日しか行けない?
一生、土日しかない生き方のまま、指をくわえて生きる気か?!
素朴な疑問だった。
時分勝手にも思えるし、常識ハズレのようにも感じるが
本来、グレゴリオ歴以前に、自然の中に生きているはずだ。
しかし、それほどのワガママだろうか?
ほんの秋の一週間、釣りに行くことが、そんなに贅沢だろうか???
ソノくらいのことが許される国家であってもバチは当たらないと思うぞ!
我々が実現すべき、豊かな国の一つが、目の前で頓挫している
そんな小さな豊かさすらも得られない国に、住みたいだろうか?
ちなみに、江戸時大、グレゴリオ歴は採用されていない日本では
土日は無かった。
庄内では、庄内竿というのがあって、竹の継竿で
武士のたしなみとして、磯釣りが奨励されていた。
なぜ?
磯に行くまでの距離、行程は、足腰を鍛えられたからだそうだ。
それはそれとして
我々の自由はどうだ?
年休があるのに、秋の一週間ほどを休んで旅行に行けるだろうか?
いや、別に不景気だから、苦しいから、と言うのではなかろう。
盆と正月にミンナそろって休む、これが日本の休み方だが
とても心休まったり、豊かな心持ちになれるかというと
帰省ラッシュ、夏の海は混雑、初詣からラッシュ・・・
詣でるのは別に正月でなくても良い。
神仏を信じるなら、もっとタクサンもうでるべきだ、本来は。
意味のない仕組みに縛られて、ちっとも進歩しない社会に
ちょっと呆れ気味な長男であった。
皆、一生、未来永劫、このような社会好きな人が多い様に見え
僕はちょっと同じ立場では居たく無いので
思ったとおりに行動したくなってきている。
野良オジサンにでもなるかな・・・。
ともあれ、では休日には釣れないか?というと
釣りはできる、潮汐のタイミングとしてはメチャクチャだが・・・。
船がつく時間と帰る時間にはさまれた瞬間しかないが
それでも僕は大島で鍛えてきたつもりだから
釣れなくてはいけないのだ。
サラリーマンである今、腕と度胸でアタックするしかない。
さてさて
忘れてはいなかったが、台風男・・・
ヤッパリ来た、狙いすましたように、連休を狙って台風22号だ。
予約したら最後、ホウガイなキャンセル料を取られそうなので
「ゆく〜とぉ 決ぃ〜めたら 一歩と引くぅなあ〜♪」(by テンドウヨシミ)である。
港は穏やかに見えるが、昨夜はすごかった、体がゴロンゴロンしそうなほどだ。
幸い、もらいゲロもなく、睡眠は残念だったが、無事ならヨロシイ。
あの揺れだから、海はシケている。
ということは「つぅ〜よい嵐をまともに受けてぇ〜
腕とぉ こぉ〜ころをぉ〜磨くぅのぉ〜さぁ〜♪」てなもんだ。
台風は更に接近中だし、小潮だから、昼が満潮ということは、午前中は上潮だ。
つまり、潮が満ちてくる時間帯と言うことになるから油断できないのだ。
波も、潮位も上がってくる相乗効果でサラワレやすくなるわけだ。
案の定、歩きだし、日が昇ると、すっかりシケてきた。
ヒラスズキには絶好のサラシがアチコチにできて、タマラン・・・のだが
ここはヒタスラ我慢であった。
どうやら、この晴天のヘキレキにホンロウされた人が居り
熱海などでは防波堤でさらわれた人が出ていた。
オタンチン!土日しか釣れないから、秋の少ない爽やかな晴天で
どうしても竿を出さなきゃならなくなるのだ!
台風が接近しており、昼にかけて満潮を迎えるのに油断し過ぎだ。
爽やかに晴れ上がった土日が大切なんじゃない
命が、生き方が大切なのだ、それこそがグレゴリオ歴の報復と知れ。
海を相手にしている以上、それしか、言いようがないではないか。
ちなみに
僕はもっとオタンチン王であるから
少ない土日なればこそ、ナオサラ命懸けで挑む。
親からは、死んだときに分かるようにしておいてね・・・と請われている。
いつも覚悟して、首には住所氏名をいれたものを下げて出かける。
もちろん、サメが噛んでも切れないケブラー繊維の紐付きだ。
自然とはそういう場だ、と思っている。
今回、竿を出せなくなろうことを十分に予測していた長男は
初めて一眼レフデジカメを持って行った。
ナントもはや魚の姿は撮れないまま、ただひたすらトレッカーに身をヤツす。
クーラーと釣り竿が無ければトレッキングだが・・・ちょっとイメージが違う。
あちこちアレコレと歩き回り、冬のためのヒラスズキポイントを巡って
偵察しておいた。
さて
先週末は?というと
今度はシケは無いが、ドンヨリだ。
波は穏やか、潮は引き潮、暑くもないが釣れもしない。
本来、ピーカンではないので釣れやすいはずなのだが、大潮の引き潮
それは過酷な時間帯なのだ。
10時ごろ・・・
ザブッと安物ポッパー(水面専用ルアー)にカンパチが出た!
ラッキー!もらった!と
無理なヤリトリをしていたら、ん?突然磯際で魚が固まった。
岩に入りこんだようなのだ。
竿がテンションを保ったまま固定された!!!
スゲーヤツだ、本当に磯にヘバリ着きやがった!どんなカンパチだ?
何分待っても出て来ない、出て来ないばかりか、手応えも岩そのもの。
竿をあおって、ルアーを外すと、案の定硬い海藻であった。
もちろん
水面のルアーが水深2メートルの岩につく海藻に掛かるはずは無い。
窮地に立たされたカンパチが、変わり身の術を演じたらしい。
@カンパチは磯際に逃げる習性がある。
A糸に引かれると、尚磯際に寄ってしまう。
Bたまたま、磯に体が擦れるほど寄ってしまったとき
ルアーの針が硬い海藻にひっかかり、反動で針が外れた
Cルアーは硬い磯にそのまま残った
という顛末であったことが推理される。
うーむ、刺身が、我が家の秋味が・・・
悔やんでも仕方が無いが、自分の腕のナマリにやりきれない。
それから一時間、あれこれ、間食をしたり、お茶を飲んだり
カメラ撮影をするなど、殺気をなくして11時前に再開。
たまたま、となりの磯釣りカップルが休みに入ったもので
そちら方面の沖合いにある、謎の当たりが良く出るポイントへ
上州屋+例のピンクのワサワサ付きルアーを投げ込んだ。
3回しゃくった時、何物かが「グワッ!」と
ルアーをひったくったのであった。
ちょうど、使っていた竿は、ヒラアジ用で、南大東や小笠原で
使った物であり、大物をあしらってきた?剛竿である。
「おおっ!?」魚に引かれ
イイカゲンに強く締めこんだドラグから糸が出ていく。
これはスゴイ!コンナ魚が大島に居るのか?!
海ガメか?なんだ?と、そのパワフルで素早い動きは
どうも謎の沖合いポイントにある岩に回りこもうとしたらしく
ゴゾゴゾっとした手応えのあと「フッ」と軽くなって終わった。
外れた理由は、最も恥ずかしい理由である。
針を確認したら、あの、ワサワサを取り付けた時に
手違いで痛めて折ってしまった針先に、よりによって掛かったようだ。
研がねば!と思いつつ、忙しいので忘れていたのだが、情けない・・・。
命が懸かっている割には油断しすぎた装備である。
磯を回る習性と引きの強さからして
おそらく6キロ以上10キロ未満くらいの良形カンパチだろう。
エルニーニョが出ているので、水温が高く
大型が近海まで回ってきているようであり、今年は当たり年だ!!!
まあ、それがわかっただけでも
今週末の、大切な友人K氏を連れていく価値があろうというもの。
実は言い訳するわけだが
過酷で楽しくて、リスクも大きいけれど、魅力も膨大な伊豆大島の磯へ
初めて友人を誘った手前、入念に偵察しておく必要もあったのだ。
い、一応、偵察じゃけん・・・
ら、来週においといたんじゃからね・・・
ということで、やりきれない心を片付ける長男であった。
「てなこっとぉ〜言ぃ〜っても、リキン〜でも〜
ズッコケぇ〜まぁ〜るだぁしぃ♪・・・・」なのだった。
そういえば
何か分からないが、来島者を歓迎するチケットが配られていた。
福引券らしかったが、引いた瞬間、もちろん末等だ。
「オカシにしますか、クサヤにしますか?」
思わず
「クサヤ・・・」
クサヤはなぜか机の上ではなく、机の下に隠してあって
やはり特別な何かを秘めていることは推して知るべし。
カラのクーラーを背負い、帰った家には
鳥のスープがあったので、景気付けに夏野菜を加えてカレーにした。
夕食のしたくの最中はすっかり存在を忘れていたが
「おやっ?」そういえば・・・大切な酒の肴があったような・・・・
ふと思い出した。
一杯やりながら、チト悩む。
うーむ、カレーの色・・・この懐かしくもやるせない臭い・・・クサさ・・・
「ウン!コの味だねっ!」と
素朴かつ力強く叫びたくなるような組合せだ。
うげげ、なしてこのようなめぐり合わせになったのじゃろうか・・・と
テレビを見れば、NHKでは、最近問題になっている食品添加物の
香料の話・・・もう臭いの話はタクサンだ・・・
クサヤフレーバーの香料などがあったら、是非撲滅したい・・・
そう心に決めたくなるほどであった。
むかし、この匂いのする田んぼのそばの奈落に
唯一無二の生意気で可愛くて大切な弟が落ちたのだ。
そのことが頭に浮かんで、やるせない。
あの奈落から手だけが出ていた・・・のを
無心で引き上げたような気がする。
今、弟は北海道に居り、元気に暮らしている。
僕が唯一、人のためになることができた男のように思う。
生きていてくれてありがとう。
俺はもう、クサヤには負けないぞ!おまえは生きているのだからな。
確かに
あのときのニオイだが
一口食べてしまえば、慣れてしまい
凝縮された魚の旨味に酔いしれる長男でもあった。
末等よありがとう、来週こそ釣るからな・・・まってろよ大島。
見た目は凄まじいが
至って美味しい“納豆 meets クサヤ”茶漬けをほおばり
最後までクサウマさ克服しようと味わい尽くしつつ
何者かに豊漁を誓うのであった。
(残念ながらお茶漬け画像は今回、あまりにもスゴイので未公開に・・・)