あと一月でヒラスズキがシーズンイン!スズキも釣れんのにヒラスズキ・・・?
南紀を目指して釣りに出掛けてからもう10ん年。
紀州和歌山県の南部は釣りのメッカであった。
チナミに南部は、あの南高梅の南部(みなべ)じゃなくて
普通に南の部分ということだから念のため・・・。
ヒラスズキには大きく二つの釣り方がある。
浜や河口で静かに釣るやりかたと磯から荒波に向かって釣るやりかたで
両者ともに、えさ釣り、ルアー釣りがあって
ヒラスズキの磯のえさ釣りはタタキ釣りと言われ歴史は古いらしい。
長い竹ざおの先に糸を結わえ付け、針を仕込んだドジョウで
荒波の白い泡のところで水面をたたくようにする釣りである。
まあ、強風、高波だから、たたくようにしないと重くて太い竹ざおは
振れなかったのではないだろうか。
河口などでは小アジなどの生餌を泳がせて釣る、いわゆる「泳がせ」が多い。
ルアー釣りはそれをルアー(擬餌)に置き換えただけのことである。
後者の河口や浜ではやはり静かにしなければ辛いところで
ルアーは時にヤカマシイ着水音が気になるところ、神経質な釣りである。
一方磯は音なんぞ関係なく、はたまた、リールを使っているので
ルアーは遥かに遠くのポイントも狙うことができるのだ。
それに、何よりも怒涛逆巻く磯際から少しでも離れられるのがアリガタイ。
どちらにしても、スズキ通の本命シーズンは冬、
特にヒラスズキの脂の乗った刺身は一生に一度は必ず味わっておくのが
ヨロシイと思われるほど美味しい。
10年以上前でも、生け(生かした状態)で浜値がキロ4000円という高級品である。
もちろん、一般の釣り人は生けにせず、シメて帰ろう。
一部、セミプロ集団は特殊なルアー仕掛けで朝の仕事前に
磯で釣って、生かしたまま市場に卸すというが、これは真似できない技である。
太い仕掛け、小さくて重い手製ルアー、取り込みは抜き上げで
脇に抱えてキズ一つつけずに素早くやってしまうという職人芸であった。
6キロを超える魚をどうやって抜くのか分からないがスゲー人らである。
さて、10ん年前、大阪で夢見たヘッポコ長男が買った
最初の竿と最初のリールで何年も挑んで釣ったのがこの仕掛け。
ダイワ精工、カーボウィスカーパワーメッシュ・パシフィックファントム1204
(12フィート、3.6m4本継の振出し、今にして思えば長く硬すぎ!)と言う竿に
ウィスカートーナメントSS850と言うリール
道糸は12ポンド3号、ハリスは6号だったように思う。
まあ、何年も初心者のまんまなのが釣れないルアー人なわけで
いつまでたっても上手くなれずに苦労しているわけだが、
実は釣れない間にも、投げ方や仕掛けが上手になっているものだ。
そうして、何年かするうちにチャンスが訪れたときに、きっと必ず釣れる。
何度も描いたので、もう今更細かい描写はしないけれども
年末押し迫った、仕事納めの次の朝、南紀、日置川町の大浜で
チャンスに出遭った。
南紀では季節風でシケが出来て、それが週末というのは
なかなか出遭えないので、その朝も磯ではなく浜で釣っていた。
その数日前の週末、浜には転々とサヨリが波打ち際から飛び出しており
何かタダならぬ大きな魚の群が浜を回っていることが感じられた。
大潮の満月が空を明るく照らし、その恨めしい月が沈む頃
水面下から太陽がすっかり明るく空を照らしていた。
そこで使ったのがこの仕掛けである。
普通なら考えないが、これが恐らく何年も初心者だった僕が
培った全ての技の結晶だったのだ。
ジグ、それは最も使い手の心が反映される魚型のオモリ。
ルアー自体がオモリなので、使い手がアクションを付けなければ
単調なブラブラとしてなんとも金属的な振幅しかしない。
しかし、そのとき僕が手にしていたジグは小魚らしい外観と
比較的軽く、良く飛び、良く潜るが、アクションは軽やかという
一風変わったジグ(スミス、サージャー、28g)であったのが幸いしたのだろう。
すっかり夜が明けて、非常に目が大きく手ごわいはずのヒラスズキが
食ってくれたのである。
この時代の方が、今よりずっとオッサン風情が漂っている・・・
何だったんだろう、大阪時代って・・・苦労が顔に出てんのかな???
しかし、シメたあとのクーラー入りの旅路でズイブン縮んでしまったが
縮んだからナオすごい体高である。シッポもデカイ!
この後、いろんな場所へでかけて、何度も逃がしたが
ようやく2匹目が、なんと一匹目から10年近くたった、今年一月だった。
ヘッポコルアー人ということが分かっていただけることだろう。
だが、ヘッポコと分かっていても釣りたくなる、ロマンあふれる魚なのだ。
伊豆諸島の一級の荒磯、前日まで数日の向かい風のシケ
その日の日中、風は背後に回ってしまう。
その朝、条件は揃いに揃っていた。
無風、3メートルの波、誰も居ない磯、正面には富士山
手元には、なぜか川用で季節ハズレの鮎ルアー。
ルアーはさておき、コレで釣れなかったら、大島へ来るのは止めよう・・・。
釣り始める前、仕掛けを組み立てながら、正直そうつぶやいていた。
だが、やっぱりヒラスズキは釣れた。
南紀の荒磯用にと買った、当時の業界最長の重く長い竿を
かなり手を加えて、ルアーの飛距離を伸ばすようにしたものである。
この竿の詳しくは後述にゆずることにしておいて
リールはお気に入りのレバーブレーキ磯リールだが
これは無理に使う必要はないように思ったりする・・・。
ただ、足元で食ってくることが多いので
グッとレバーを握りこんで、針掛かりさせて、緩めて走らせ
ヤリトリしやすい間合いをとる・・・というのにはズイブン便利だった。
通常のドラグのネジをユルめないと魚を走らせられないリールでは
できない芸当である。
ここまで釣れなかった理由は雑誌を信じた悲しい過去があった・・・。
ヒラスズキは大きなルアーで釣れる、これが以前、関西の通説であった。
だが、これは、強風下で飛ぶルアーが
市販では重くて大きいものしかなかったからだ。
やはり、食いやすいのは手頃に小さめで、足元まで良く泳ぐルアーであり
市販の物よりは、前述の南紀のセミプロが使ったような
小さくて、オモリが沢山入っていて、良く飛び、良く泳ぐルアーが
適していたのであった。
しかし、そのようなルアーは、市販ルアーを使う人間には
想像がつかず、そのような商品は企画されなかったのであった。
しかし、不況に入った最近・・・ついに重くて泳ぐルアーが発売された。
ルアーを作る人間にとって、いわゆる既成概念があった。
良い動きをするルアーは、頭の方に重心がある・・・。
これは間違いでもないが、尻尾の方に重心があっても十分泳ぐのだ。
実は重心が後ろにある方が、激しく首を振るのだ。
なぜなら、首を振ろうとすると、その首に重心があっては
首が振れないから、実はある程度規制された動きというわけだ。
まあ、糸が頭についており、尻尾を振るように考えれば
頭に重心があるのが至ってふさわしいのだが
実は後ろにある方が、もっと頭を振ることは、既知の事実。
もう何年も前に作ったピラルクーミノーはこのことを取り入れており
空気抵抗の少ない小さなリップ(頭にある魚のように動くための抵抗板)により
重心が後ろにある事もあって、飛距離が素晴らしく、しかも良く泳ぐのである。
しかし、この自作ルアーは、コレ以来ちょっと面倒くさくて発展していない。
ともあれ、ようやくヒラスズキ釣りにフサワシいルアーが発売されていた。
のだが・・・・なぜか近くの釣具店では売っておらず、ちょっと残念である。
というのも、発足して間も無い会社なのだが、折からの不況で
HPすら持てない状況らしく、商品の出荷もままならないらしいのだ・・・。
こういう良い物を出す会社には、是非出資してみたい・・・というのが
マジメにお金を貯めている長男の正直な心持ちであるのだが。
正直なところ、機能もデザインも優れたルアーは数少ない。
とかくマイナーで狙う人も少なく、命のかかるような分野には
さして商品が出現しないのだ。
ましかし、プロト何とか・・・というネーミングが仮です!っぽくてダメだな多分。
自信無いのかなあ・・・これだけハッキリした他にないコンセプトなのに・・・。
最近、不況のせいか、なにかこう・・・元気のない雰囲気が
邪魔をするパターンである。
一方、別段それほどの緊張感を必要としない釣り(バス釣りなど)には
釣り人も多く、多少無駄の多い?デザインでも通用するため
様々な変チョコリンルアーが出没しているというわけだ。
だが、変チョコリン系では、半年後にはカゴに入り
特価300円などといった感じで売られていることもあり、物悲しい一面もある。
今や、手造りでは超一流のキクチミノーの量産型ですら
我が地元から通う松坂かいわいでは残り物扱いの安物なのだ。
やおら、安物というか、お買い得、掘り出し物をいくつも買いこんで
ほくそえむのもまた、実は楽しいのであるが、その境地に至るには
何というかその・・・達観(強い思いこみ)ができるには
それなりの釣れない歴に支えられた、危うい日々が幾年も必要なのだろう。
竿の方は、昔の竿でも十分使えて入るのだが
今は体力が無いサラリーマンのタメに?命よりは体力を選んだ
短めの竿(13フィート以下)が主流だが、僕は命が大事だし、体力はなくとも
ムリヤリ長い竿を使いたいので今は無きNFTの15フィート(4.5m)である。
強風の吹く和歌山のとある丘で、素振りに励んだこともあったなあ。
ズイブン手を加えてしまったからか?今も現役。
ゴールドサーメットトップガイド、折りたたみの巨大なテレスピンガイド。
木でできているアシストグリップ。
これがあると竿を握るときにチカラが入りやすい。
さびないようにと鉄工所のY氏が作ってくれた延長竿尻。
太いヒョウタンというか、癒着した鏡餅のような木部は自製だ。
水を吸わないように、オリーブオイルを染み込ませてある。
昔の竿は美しかったものだ。
今の竿はコストコストで、使う人の心までは考えてないために
味気ないただの塗装になってしまっている。
ともかくも長くて頼もしい竿である・・・と思えないことには
命をかけた高波との戦いはできないのだ。
心がひけたら、怒涛の中でヒラスズキを追うことは無理である。
長竿を振れる体力くらいは維持していきたい・・・・と
新たなルアーを手にして
せめてもの磯ルアー釣りソウルを燃やしつづける長男であった。