暑い、地元でも例年になく暑いという。

何年か前、こんな年があったように思うから、まあ暑いといっても予想はつく。

昼間、通りには人が見えなくなる。

気温は、異常に暑い今年の横浜や都心のようにウダルほどではないが

なにしろほとんど垂直に日が刺すので逃げ場もないほどである。

青々とした空に恨めしさすら感じるような日和で、当然、釣りに行く気にもならない。

島で最大の海岸プール(海水浴場)も、暑すぎると人気がないらしい。

下の岩のそばに小学生が立っているが(見えるかな?)

穏やかとはいえ、どうやら小笠原方面を離れて更に東にあるはずの

台風9号のウネリが届いているようである。

プールの外の波の高さは決して低いとはいえない迫力だ。

 

さて、さっそく宿では部屋を我が家として道具類を展開し

大東生活モードである。ハリとルアーをばらしてあるので

組み立てるのも遠征ならでわである。

ツインの部屋を予約したのではなくて、いつもこうである。

ちなみにこれは、シャレか?どうか僕のHPを見て大東へ行った

いつぞやのW氏と同じ216号室である。

島の人たちによれば、W氏は島北部の荒磯から

釣果を携えて生還し、その感動のあまり、喜びの踊りを

伴奏もなしにあちこちで踊っていたという。

しかし、これはノー天気だとか、ラテン系だからではない。

あの荒磯から8キロもの魚を、崖を登って持って帰った者のみの知る

達成感のなせる技なのだ。

第一、アパート4階程度の高低差をただ担いであがるだけでも

かなりの重荷だ、というのも、何もない、ただ魚を持ってあがるのだ。

ヌルヌルとし、持ちにくく、死をもってヤケに重くなった魚を持ってくる気力。

もちろん道具類だって担いでいるわけだ。

加えて、だた高低差だけではない、ただ漫然と登れる状況ではない岩場。

片手がふさがっただけで、我々の日常をはるかに超えた危険のある

正真正銘危険な磯なのである・・・といっても想像がつかないだろう。

まあそのまんま表現すれば、ごく普通にひとまたぎするクレバス

しかし、下は3階のベランダの高さ・・・

必死でつかもうとする岩は手袋ナシでは手に刺さるような鋭さ。

ふとよろめいた、渡りかけた岩場、下は4m、海面から30m

転がれば日常に死が待っている。

彼は遂に大東の、いや島の磯ルアー釣りの

本当の達成感の一つを味わったに違いない。

その喜びは、自分の命の喜びであり、

僕はその喜びにハマッタからこそ、ここにいて仕掛けを作るのだ。

まあ、ざっと部屋のあちこちに道具類を並べたり

釣り装束をかけたりして、あっというまに我が家となる。

暇なときは海へ泳ぎに行ったり、洗濯したり

正に二食付きだけど普段のような生活そのものである。

 

準備万端

海を見に行くが、ともかくやっぱり暑い。

こう暑くては、さすがに魚も釣れないらしく、水温も高いという。

泳いでいてもヌルいそうであった。

 

暑さヌルさとは別に、やっぱり大海原と青い空を見れば

男というものはデッカイ人生であるべきだ・・・などと思うものだ。

地球の姿、地球の青さ、海の深さ、何もない水平線

浪漫チストには暑さ以上に薬となる風景である。

うーむ

でっかい男といえば・・・身長体重ともに・・・

やっぱウルトラマンだ。

宇宙のように深く青い海を見ると、でっかい男に成りたくなる。

駄目っすか???

おもわず海原にデュワッツ!とまあその・・・・

 

ようやく、西側の奇跡的な凪の末に見つけた磯

それが山羊鼻である。

塩害を防ぐために作られた、巨大な土手の間を抜けると

そこには岩場へ続くスロープがあった。

洒落ではなく本当に岩場へ向かって消えているのがスゴイ。

下を見下ろせば、山羊鼻が遥かに待っている。

(中央の沈みそうな岬)

とにもかくにも、降りるは降りる、といっても楽ではない。

巨岩が阻む、トゲトゲの岩場が牙をむく・・・あたりまえの大東が立ちふさざる。

ようやく海岸へ降りると、大きくて静かな潮溜まり。

チビでも立派な大東ブルーだ。

降りてみて、あらためて振り返ればずいぶんと降りたものだ。

土手も城郭のようにそびえている。

しかし山羊鼻の磯は潮通しがよく、水深もある一級磯だ。

一目惚れであった。

一目惚れといえば、行きの琉球エアコミューターの

爺長(おなが)さんというスッチー、激美人で

やにわに求婚したくなったほどだが

長男の平常心が勝り、相変わらず何も無い。

せめてツーショット記念写真の一つも撮らせてもらえば良かったかなぁ。

 

そんなことより、この磯、断じて釣れるはず、と見たてたのだが・・・。

ただし!目の前にヤケにデカイしもり(沈み岩)があるのが玉にキズ。

大きなしもりも大自然のいたずら、この程度を克服しなければ

釣りなどできはしない。

とはいうものの、今回の大東は暑すぎて、魚の追いはほとんどなく

結局大東遠征史上初の完全ボーズとなったわけで、遂にヘタッピがばれた

そんな21世紀の夏となったのであった。

ルアーに寄ってきたのは、磯のカニ、熱心に食べようとしていた・・・。

一心にルアーを動かしてハサミを口に運ぶ姿が健気である。

好奇心も旺盛だが、それ以上に食欲も旺盛だ。

ちなみに、横歩きなどという型にはまった歩き方などせず

前だろうと横だろうと素早く動き回るという

型にはまらぬ沖縄らしい自由で大きなカニであった。

 

ということで、ルアーを食ったのは、このカニと、バラクーダ、そして

ホワイトチップシャークことネムリブカだけ、しかも、しかもだ

陸に揚げた魚はゼロ、ゼロである。

波照間島以来の仏滅が二十回ぶん一度にやってきたような滞在だった。

いつになく、長いそれはもう長く暑い夏休み前半一週間であったのだ。

だが、コレだけではない、コレだけでは済まないが、また来週・・・。


ではまた