気分最高の空振り日和・・・


冬休み中、伊勢はズイブンぐずついていた。

珍しく北よりの風で伊勢湾がシケているけれども

「これなら」とオヤジ様を奮い立たせる逆の意味も秘めていた。

我が家では伝説になりつつある、ヒラスズキの味だが

このヒラスズキというやつは、海のルアーをたしなむ者の憧れの一つ。

美味しいこと、釣りにくいこと、技が必要なこと、シケが必要なこと

どれをとっても釣り人の心をトキめかせることばかり。

スズキを釣るにはシケは必須である。そういう魚なのである。

ザワザワと波だった海面下になった時だけ我が物顔で泳ぎまわり

大胆不敵に餌を捕食するわけだが、これが一般の釣り人にはおっくうの素。

然して、オヤジ様はこの時を待っていた。

息子が帰っており、自分の秘密の場所へ案内して危険な釣りを堂々と楽しむ。

これは息子と言う触媒があってこそ、オフクロ様の認可がおりるところである。

さて

行ってみれば名古屋ナンバーのグレ(メジナ)釣りの客がいるだけで

スガスガしいほどに凪いだ海が広がっていたものだ。

ほどよく波だった海はどうした!わざわざ鳥羽を横切って志摩半島の奥磯まで

遠征してきたのは何のためだ!?とオヤジ様の顔は焦りながらも呆れ気味。

僕にしてみればオヤジ様以上にヒラスズキを狙ってきたので

予報を信じて大阪から和歌山の南部に出かけ

このような光景に唖然とするなど日常茶飯事であった。

一時間で来れる場所ならいつでも来れる近場だから気にすることもなし。

実のところ、幹線道路からは隔絶されたこの地は、関西の隠れ名所で

美味しい海産物を安く味わうにはこの地をおいて他にないというお土地がら。

シルエットがうかぶ観光ホテルがあるが、ここまで来るには国道の

わかりにくい交差点をふと左折し(伊勢、名古屋方面からきた場合)延々と

山中のワインディングロードを走らなければならないという、本来は陸の孤島なのだ。

果たして、ヒラスズキとは程遠い穏やかな海に、多少残念な気を察しつつ

けれど、このうまい潮風、伊勢湾屈指の大自然、ここちよく青く澄んだ海。

釣り人はまず、この光景に浸ることが目的の第一歩である。

せっかく温めていたポイントが使えないとわかって落胆するオヤジ様とは別に

久々に心地よい伊勢湾を眺めることができて、こっそり満足であった。

 

あまりに悔しかったのか、帰り道、執拗にアワビを馳走したいらしく

どんなアワビが食いたいのかと問うので

「そりゃ、手のひら以上じゃないとアワビじゃないね」などと見栄を切ったところ

夫婦岩の近くの二見浦の老舗によって一万円分のアワビを買ってくれた。

伊勢志摩のブランドに恥じないこの時期としては立派過ぎるアワビに感激である。

ただし、小笠原の宿と同様、実家に帰っているというのに

なしてか僕自身が調理せねばならないのが大いなる謎であった・・・。

 

肝まで美味かったことを付け加えておこう・・・刺身、ステーキも美味かったのだが・・・

やっぱりアワビは肝がうみゃーだわ。(なぜか名古屋弁)

ちなみにアワビの肝はかろうじて渦巻きのある後ろ側の、渦巻き部分に収まっている。

イキナリ肝臓!?と抵抗のある向きには、

まず、刺身を食べる醤油に溶いて身を食べると良いかもしれない。

潮風フレーバーが醤油を通じて口に広がり

マッタリとした、ほどよいマイルド感が心を揺さぶるだろう。

カニのミソもよろしいが、これを味わえばアワビとても

あなたの幸せ実感海産物になれるはずである。


それにつけても、なにしろやっぱり体質的に更新は水曜に限る・・・。


ではまた