冬も活発な生き物たち

 


真冬だというのに、結構あたたかで、妙に晴れが続く今年。

小夏日和もちらほらと、日中はTシャツにならないと暑かったり。

そろそろ、散り去ってしまう南国の桜。

この冬は雨が少なくて、とても過ごしやすくなりつつあるのだろうか?

立春でいきなり春一番とは、まっことその通り一番である。

 

伊勢から帰ってきてしばらく、毎年このシーズンになると、獣医屋ケンチャンから連絡が入る。

今夜あたり、イボイモリの観察へ行こう・・・と。

あたり・・・でなく今夜ドンピシャでしかないが、決まってそういうセリフで電話してくる。

 

ありがたいことだ・・・私なんぞを夜の観察に呼びつけたところで・・・とも思うが

夜の観察に付き合うようなモノズキも、この人類にそうそういるわけでもなし・・・か。

ともあれ、アクが強い私を友人としてくれる友がいることは、幸いである。

その夜はもっとモノズキ?の奥様も加わった。 世の中は深遠である。

 

出発前におよばれしたのがカレーだった。

実はさりげなく、ヤマシ・カレー。

ヤマシ=イノシシで滅多に食えないのだが、ケンチャン家では豚肉未満らしい扱い。

このごろ獣医の仲間に加わった女性がハンターで獣医・・・で、撃ったらしい。

殺すか治すか、どっちかにしてほしいものだ。

しかしこのハズム歯ごたえ、たまらんね♪ 薄味のカレーに引き立てられている。

シーズン突入直後のジャガイモも濃く、美味かった。

このカレーを意図的にこさえられたら、ケンチャン家の食卓も豊かになろうが・・・

いささかも意図していなのは間違いなく、島人らしテゲテゲ風味で片付けるしかないものの

やはりモッタイナイ・・・かな。

 

さて散歩である。

 

早速、厳冬気に活動するときにツキモノはこれ。 全長はせいぜい50〜60センチ程度。

マムシよりカッコイイ?太短い毒蛇、ヒメハブ。 出血性の毒を持ち血清はハブと共通だという。

ヒメとは、まことに良好なネーミングで、なぜなら、とても大人しいヘビだからだ。

踏んづけても咬まないほどだそうで、害の無い名前が相応しい。 ハブモドキ・・・くらいで十分。

ピット器官でとっくに熱感知しているが、こうして撮影しても、とりたてて襲ってくることはない。 

(ピット器官は視神経と直結していて、視覚と連動して熱源の位置を感じる仕組み、恐るべし!)

が・・・非情なまでの保護色で、じっとしている大人しさも手伝って、

半径1m以内に近づかないと、なかなか気付かないことが多いから、スリル満点でもある。

 

前日、40頭ほど見つかったとケンチャンは言う。

つまり雨の後の好条件で見たから、今日は晴れたけど観察しよう・・・と分析できる。

意地悪な分析とも思われるだろうが、相手はイボイモリ、水中で幼少を過ごす両生類だ。

昨年もそうだったが、たいがい次の日・・・はハズレである。

 

路側で1頭見つかった。

前日は道路上で見つかったというが、この日は雨でもないから路側だろうと予想して正解。

早速見落としだぜ、ケンチャン!と

言いたいところだが動かないで黒い物体は闇と感じるのが正常な動物の反応だ。

 

それにしても、これまでの個体と違う。 やけにデップリと丸いバディである。

写真の通り、体の断面が丸い。 こんな個体はこの3年、見たことがない。

奄美大島や沖縄本島のと似て、メタボ系?な体形で驚いた。

 

去年の印象だと、こんな感じ。 っていうか、なにやらヤタラにアバラ全開。

おそらく小形の下がオスだ。 メスを得るために虚勢を張って、あばら骨を広げている。

しかし、上のメスもスレンダーというかガリガリに近く、体の断面は丸い感じでない。

昨年までは雨が多すぎて、生きているのがやっと・・・だったのだろうか?

 

本来なら、一匹どまり・・・というのが通例?でガッカリして帰るはずが、チラホラと。

ただ、

パイプライン工事が無駄に?とも思えるほど路側の土を削ったり、無意味に?盛ったりしてい

こうして段差や草のない土砂の斜面で途方に暮れるような個体が散見される。

 

まるで枯葉のような感じなので、斜面で静止していると見落とす気満々になれるほどだ。

(中央やや左上の黒いの)

イボイモリは、この時節に繁殖する。 年度末の、差し迫った時期に工事しなければ問題ない。

のだが・・・なぜかこの時節に工事しちまうから、天然記念物の危機を招いてしまう。

ハブが少ないから・・・という理由ではないと思う。

単に役場の仕事は年度内でOKだから後回し・・・だろう。

 

確かに、直接殺してはいない。

例えば、チャン国が日本を攻撃し、動きの遅すぎる政府の判断が遅れてしまい占領され、

あげくに、日本国民を見逃してやるから出て行け・・・と勧告されるようなものだ。

殺さないだけで、住む土地を失った生物は生き延びるすべを失ってしまう。

今は死なないが・・・新天地で明るく生きよう!なんてラテン系思考できるだろうか?

それができたら、面倒なフクシマの除染は必要ないことは間違いない。

 

文化財保護審議委員は、文化財である天然記念物を守る義務がある。

が・・・島の生活も大切である。 パイプラインは、農業用水であった。

 

わき道で発見した、デップリと太った個体。

あんまり例外的なので、向学のために裏返してみた。

死ぬほどイヤなのか!?と心で念じ問うてみたところ、セーフ!と体で示した。

イボイモリは、どういうわけか野球を解するらしかった・・・が私は解せぬ・・・

なんでいきなりセーフ・・・なのだろうか。 ガイジン?

むしろ、ツッコミどころ満載感・・・阪神ファンか!?

 

ところどころで見つかる正座生物、アマミアオガエル。 5センチほどのメスばかりである。

オスは、こうして待っているメスを探しているのだろう。 路上で、けして動かない。

カエルの鼻デカ写真・・・イケル! イケルじゃん!! かわいいじゃないの!!!

カエルの眼前、2センチ以内に寄れれば・・・の話。

 

でも、存外寄れるものだたったり・・・

するものの、先の写真とちがい上記のアップの顔写真は、やや鼻先を低くしている。

アマミハナサキガエルだから、ハナサキを低くするのだ・・・ということはない。

逃げることをやめて、最大限の警戒をしている姿勢で、これではダメなのだ。

この姿勢になる数秒前に撮影を終えることが、柔らかい表情にとって肝要だ。

 

動物写真とは、例えば野生を何も知らぬ人類が見たとき・・・

イキイキした表情に見えるかもしれないが、それはいとも哀しい出来事である。

上の写真に似たのを見たりして、スゲ〜自然な写真と思い込んで本を買う向きもあるだろう。

買うこと自体は、売り手、買い手双方にとって幸せである。

しかしながら、社会性のある人類は、隣人の表情や振舞いを知っておくべきかもしれない。

 

エコとかホザク・・・いや唱えるのだから隣人を知らずして、人類だけのエコはありえない。

もちろん、単なるケチな節約術を、エコと言い切るのもオバチャン文化としてはいい味だが。

少なくとも、私の学習させられている?エコツアーガイドとかは、無駄に地球規模の

社会性もないはずの生物も含めた、超寛大で広範なエコを唱えるのが流行である。

流行だからといって、内容が充実しているはずもない。

いやむしろ、学習能力のない人らを煙に巻き、講習を受けさせてガイドと自負心を抱かせ、

更新料を巻き上げるようなニオイに、満ち満ちているようでもある。

 

そのようなことは、読者の方々にも私にも無縁のことのはずである・・・が、気にはなる。

エコを金で買うような社会には、あんまり住みたくない。

 

徳之島には記録なし!と信じられている風もあるベッコウマイマイも、

このシーズンだけ見られる妙なマイマイで、他のシーズンにはなぜか見かけない。

おそらく、私のライフサイクルと合わないのだろうけれど、ナイトツアーですら見たことがない。

殻の表面をおおう肉があるのが特徴で、しかもシッポの方を尖らせて長くしているところが

実に怪しい風体のマイマイだ。 おそらくシッポを頭に擬態させているのだろう。

こうした、時期が限られる生物ほど、学者さんの知識も薄く、伝説のような学説が多い。

それを知ることができるのは、こうして事実を見られる立場になってこそ・・・でもある。

 

さも、偉そうなことを言うように感じられたか???

 

単純なことだ。 住んで観察すればアリテイにわかることで、そうもならんのが学者様たちだ。

利益の出る研究と、図鑑の充実とは別の話。

学術はもともと、広い知識を得られることを目的としていなく、生活の充実、進化を目的とする。

 

つまるところ

徳之島には旅費がやたら高いし、情報が無いので、学者や好事家が来られない場所。

マイマイやホタルなどは、これからの研究材料だろう。

先のモノズキ奥様が発見した、見たこともない大型のマドボタルの幼虫。

オオシママドボタルの近縁だとは思われるが、定かでない。

日本ホタルの会ですら、把握していない種であることは間違いない。

もちろん、図鑑には徳之島に分布するホタルなど、ほとんど記載がない。

調査していないのだから・・・当然といえば当然なのだ・・・

ブログには記載しなかったが、そこそこの新発見だろうと思われる。

帰りしな、あまりに腹が立つほどアレに似た葉を拾った。

こりゃ出来すぎである。 私が細工してはいないぞ、夜道にそげな余裕はないし。

 

しばらく歩くと・・・前方をゆくケンチャン&奥様が見落とした?のが路上にいた。

ちょっと置いてみると、やはり異様にそっくり。

どちらが擬態したのか分からぬほどの似具合。

イボイモリが闇や枯葉に擬態していることが、いささかなりともわかっていただけたか?

ま゛これはちょっと遊び心旺盛になってしまったものの、工事現場の繁殖地は至って静か。

さほど大きくもない島なのに、街灯など無縁の場所である。

 

内地に住むと、家の周りは夜も明るいかもしれない。

夜も無駄に発電し明るくするなど、資源の将来を危うくするだけである。

まして、世界のほとんどは闇をたしなむのが常識であり、宇宙のほとんどは闇である。

都会に憧れ、都会を常識と誤認するのは勝手だが、夜は闇と相場が決まっているのも

知っておくべきだろうな・・・と、あらためて感じさせられる。

島の我が家のまわりも、一応100mおきに街灯があるから、闇よりずっと明るい。

けれど、少しわきに入ると真の闇に近い空間が広がり、ハブの恐怖に身構える。

天敵が欲しいとはいわぬが、緊張感は大切な感覚だろうと思う。

 

実は、南国の冬だからこそ、ヘビの衰える真冬を選ぶ生物がいるのだろう・・・と信じていた。

内地でも寒い時節、アカガエルなどの両生類が繁殖するのだと知った。

まさか、雪が降る時分に繁殖可能な両生類などいないと信じていたのだった。

こちらに来てこそ知ることができた、内地の事実であり、私の思い込みは迷信そのもの。 

私たちは生物の頂点と自負して、有頂天になっているが、実は周囲に苦労しつつ

虎視眈々と、人類の死滅後を夢見て生きている生物達が・・・わんさといることを知らない。

けど、知ったところで変わらないだろうから、私は別にそのことを訴えることはしないし

必要もなかろうと思っている。 

 

人間は人間という孤島に住んで、他の世界を知らない・・・知ろうとしないのは

原始から、はたまたネズミ然としていたころからのクセで、なんも進化などしていない。

はたまた、他人のラッキーがいささか不本意に感じたりするだろう。

同族に対して、無駄に競争心=闘争心があるのだから、平和なんぞ妄想と知るべきだ。

戦いの均衡こそが、自然のバランスにほかならないのだから。

 

ともあれ、毒蛇がおり、人間優位でない自然を体感し、生活するのも悪くない。


ところで先日、20キロを越える魚が掛かったらしく、10号ナイロンを力だけで切られた。

10号ナイロンは、20キロほどの強力で引き合わなければ切れない釣り糸である。

イメージし辛いだろうから、直球で表現すると、乗用車用のバッテリーを釣竿の先にぶら下げた

そんな状態である。 あるいは、幼稚園の年長か、小学1年生がぶら下がっているとも云える。

 

これまでにない強力な相手が生活圏に現れたので、我が家で最強の仕掛けを用意しようとした。

ところが・・・竿の継ぎ手が入らない・・・???

横浜にいたころ挿入できた位置には、ラインが入っている。

さっぱり使ったことのない竿なので、皮膜の塗料が縮んだのだろう。

これでも入った方で、寒かった先日までは、もっと挿入できないでいた。

本来なら日々使っていれば、塗料も縮むことなく、普通に使えていたのだろう。

 

やっぱし、釣り・・・頑張らんにゃいけんいね・・・いけんのいね・・・と自覚した。

役場の仕事、友人知人のデザインの仕事は、なるべく融通してもらい、ヨタ波に弱い磯へ

入れるチャンスを最大限活かしながら、当面の生活を送ろうと思う。

 

ちなみに、この釣り場は南の伊仙町で、我が家から30分弱である。

横浜からの距離を考えれば・・・移り住んだカイのある手ごたえを得られつつある、釣り場であった。

 

よなよな、不思議な生物を観察するのもよし、釣りもよし・・・理想の生活に近づきつつある

きょうこのごろ・・・なのかもしれない。


ではまた