我が家に風呂が

戻ってこなかった・・・物語

 


内地にはないシステムらしい、教員住宅。

僻地で更に離島・・・先生方の修行の場というよりは、島流しの池だ。

少しでもマシにしなければ、島の教育が落ちぶれるばかりだからと

手を差し伸べたような仕組みらしい。

 

そもそも天城町には、町営住宅以外の賃貸住宅がない。

実際のところ、島の妙なしがらみとか、因習とかに懲りて、

たちまち帰ってしまう教員も少なくない。

 

本来、優遇的な教員住宅だが、築34年もたつと、相当時代を感じる

タイムスリップ的な最新式である。 建てた当時は、先進住宅だったろう。

 

おっと、いきなり契約更新説明会での教育委員会の言い分が意味不明だ。

「町営住宅と違って、風呂もついていますから、大切に使ってください」というが

風呂が壊れたら、自分で買いなおせ・・・というのだ。

う〜む、賃貸住宅の何たるか・・・を知らぬらしい。

そもそも、期限付きであると明記されているものの、

貸し側が優位を振りかざし、一月前に立ち退きを口にすれば、

居住権にひっかかってくる・・・だが島では民間から公共までソレは通用しない。

常識的に、半年は猶予が必要である。

 

実のところ、古くなったが、島の3割ほど?の築50年住宅に比べたら贅沢な造りで

壊すにはもったいない・・・ものの、内地からやってくる教師からみると

嫌がらせか、島流し風住宅に見えるだろう。

 

サッシは腐って開ききらぬ、飛散防止ワイヤが錆びて、逆にガラスが割れている、

網戸がない、水道からは毎日錆び水が出る、洗濯機を置くスペースは

それを置くとトイレのドアが開かない設計、なぜか洗面所にミラーがなくなったまま、

風呂はタイル張りでなくコンクリ打ちっぱなし・・・とオシャレすぎ、

なぜか天井裏がないはずの鉄筋コンクリの家なのに、天井の隙間をネズミが走る、

そもそも、畳の隙間から、風とかクモ、ヤスデにヘビ等が侵入してくる・・・など

こんなタフな住宅に、内地からやってきたフツーの教員が住めるワケがない。

 

もっとタフな住宅に住んでいれば、いかに文化的、文明開化の香りがし、

嫌がること自体、わがまま至極とも思えるくらい、人間らしい仕様なのだけれど。

 

水洗トイレはない、柱は折れていても住める、天井はなく屋根が直接見える、

軒先はツーツーでそのまま屋根になっていて、ヤモリもクモも屋内出入り自由、

畳は腐っているので新聞で隙間をつめ、上敷きでカバー、

サッシはあるけれど、家のゆがみで鍵がかからないし、閉まったとしても

壁が板一枚で、節穴、隙間満載だから、畳の隙間とあいまって、強風のときは

家中を風が吹き抜ける、流しの下などに床下の見えない穴があったりすると、

そこからネズミやジャコウネズミが入り込んできて、台所をかっ歩したり・・・

 

慣れてしまえば日常なのだが・・・

そんな島の常識を体得するには、私でも3年が必要であった。

 

タイミングぴったりに、我が家の風呂が壊れた。

無論、完備されていたはずだが、自分で配備せねばならぬことになってしまい

そんな金などないから、鼻から出す気もない・・・

出てけと言われたら、すぐ撤去するのだから、設置する意味が分からんし。

幸い、鍋で沸かしてその湯を水で割っても浴びるには足りるので

不自由だが、無理はしていなかった。

 

すると地元のビミョーな個人ガス屋、Y本商店のオッサンが助け舟というか

リースをするようススメてきた。 月額2,000円で給湯器を付けるという。

修理費もリースだから必要ないのだそうだ。 なんて素晴らしいシステム!

 

早速お願いしたところ・・・やはり、さっそく想像を超えてきた。

仕入れはしたが、雨が続くから工事をせず、私は風呂なし生活・・・

晴れて工事したらしたで、部品の袋とか、玄関先にはパイプの廃材とかが

転がっていた・・・ しかも大型湯沸かし器はついたが、リモコンがない・・・

60度だか、80度だかの一定の温度の湯が沸くから、あとは勝手に

シャワーカランで調整しなさい・・・という仕組みであった。

リモコンや温度調節はさておき、電源も切ることが叶わぬ。

無論、サーモスタットつきカランなどでもないわけで。

 

島では、快適性などは無意味で、そもそも装備されることが大切なのだ。

 

予想通り、配管をいじった、ガス屋が依頼した友人らしいオッサンは

見た目以上にザツな工事だったようで、5日以上たった今でも、

小さな石やコンクリ片が蛇口から登場する。

リモコンも付けてないのに、コンクリ片はどこからだ!?

 

ガス屋なら分かるだろうが、給湯器につながる水道の元栓方面に

水栓なんてついていないし、屋外の露出配管でも20Aの塩ビ管である。

当然、取り付け工事のときに元栓を止められ、洗濯機がエラーを吐いていた。

取り付け時間はもちろん向こう都合、鍵をかけない土地柄ならではだ。

出かけているうちに、工事できるわけである。

 

コンクリ片は、このハナクソ的な工事中に配管に入ったようだが、どうやって?

どんだけザツにすれば、配管に泥やコンクリが入り込むのか、理解できぬ。

 

ガス管は、風呂釜のガス栓の手前をカットして途中から上に伸ばしている。

おそらく、風呂釜をつけたい人向けに下を生かしたみたいだ・・・と思いたいが

教員なのに、いまさらサイコロを付ける人はいないと思う。

え? 普通給湯器をつけたら、風呂釜を外すって?いやいや壊れていても

これをどけたら風呂から湯が漏れるでしょうに・・・ってことで、付けてあるよう。

ビミョーどころか・・・知らない世界の常識によって、給湯器がついた感がある。

 

テストで出湯(しゅっとう)した際に出た泥や石が、湯船や風呂場の床に堆積・・・

島では屋外も塩ビ配管は普通で、よくもまあ紫外線に耐えるものである。

もともと、屋内のフレキ配管をするような家がなかったから仕方ないし

安価な鋼管を輸入しない業者のため・・・もあるらしい。 やれやれ。

一応、給湯器近辺だけは、金属フレキ配管である。

4m、3,000円くらいで仕入れる鋼管しかないと聞いたことがある。

沖縄なら数百円だそうだ。

 

結局のところ

燃費の悪い島のLPガスを、だーだーと湯水に使うわけにもゆかず

コレまでどおり、沸いた湯をタライで受けて水で割り、浴びることにした。

泥水でシャワーが詰るし、気持ち悪いし。

それでも、鍋で沸かすよりは、瞬間湯沸しされる豪華さを実感できるのだ。

ハブだらけのジャングルの小屋で過ごすのを思えば、天国の奇跡だ!(笑)

 

もともと家の古風な設計上、狭すぎる湯船・・・入ると気がめいるので、

湯を浴びるほうが精神衛生上もよろしい。

当時の先進住宅だが、やはり設計者がナンチャッテだったようで

台所や風呂、洗濯機周りの生活空間設計が全くできてないから、

おそらく島のテゲテゲな男性設計者がテキトーにやった仕事だろう。

島の男性は家事をしたことがないから、まったく配慮する気もない設計だ。

 

島人は、想像しない、気にしないことで精神を軽くし、長く健康を保ってきた。

でも、それゆえに、生活や仕事の質を見失っている場合が多い。

こんな価値観のところへ、観光客がやってきたとき、同じ日本とは思えぬくらいに。

もちろん、南大東など、本当の離島とは同等かもしれないが

徳之島は航空便が4往復以上あり、日々連絡船のある、恵まれた島である。

テゲテゲは精神衛生にはとてもいい、ただ、外の社会と関わるところは

同じレベルにしておく必要があることを、サッパリ覚える気がない様子。

 

我が家の耐用年数は、どういう基準か知らぬが、38年だという。 あと4年。

それ以降は壊すのではなくて、これまたどういうわけか、町営住宅にするという。

(今はまだ、そういった条例はないようだが)

 

どうせ引っ越すなら、今度は山の方がいいだろう。

酔い覚ましに庭先を散歩してハブをゲット! ツマミがないから、から揚げに!とか

ネコに襲われたクロウサギを保護したけど、逝ったのでスキ焼きにしよっと♪ 

みたいなところ・・・が理想的だなぁ・・・(笑)

 

当部(とうべ)か三京(みきょう)あたりに、家があるといいのだが。

 

ともかくも、あんまり安住できないくらいのほうが、次への希望が膨らむから

風呂が半端で、めでたし、めでたし。


ではまた