ぢぃまむ

 


内地風に落花生だが、島ではあまり口をあけずに

ヂマムィっぽく発音する。 島口とはとても微妙で難しい。

英語のLも難しいが、島口のヰ(ゐ=うぃ)やティ(本当は小さなヰ)は

聴くことも発音することも、なかなかに厳しい。

 

山口弁にもシゥヤァ(しわい)のように、50音に存在しない母音ゥヤの

ような発音があるが、ごくごく稀である。

ましかし、記述の難しさは、もともと文字の不備の問題で

もともと口語が先に在ったわけだから、日本語はもっと多様な発音を

持っていたと証拠である。 沖縄にあるファの発音は島にもある。

 

さて

まむ

 

ぢぃは「づ」の口のまま「い」と発音し、前歯でなく、もう2センチくらい

後ろで発音する「づゐ」である。

中国やロシア語にある「す」の口で「し」と発音するような音と似ている。

ロシア語しか記述できないがш(シャー)に似た感じだ。

 

島口の「ゐ」は、「え」の口のまま「い」と発音する感じ。

同じく口をあけないで発音することの多い、ロシア語のыに近いが

やはり別物であった。

 

ロシア語にしろ中国語の発音にしろ、舌と唇を使うが

島口のゐは、舌の真中から後ろや喉を使う発音のように思われる。

「わゐうゑを」の古き発音の名残なのかもしれない。

 

逆に「こ」の発音は「ク」に近いし、「て」は「ティ」、「と」の発音は「トゥ」

といった具合で変化していて、5段の発音が近づいているので

表現が豊かになっているわけでもない。

 

海藻=「ムゥ」(も?) ヤマモモ=ヤァムゥで藻も桃も同じ発音だ。

雲と蜘蛛、箸と橋みたいなものだろうが、ともかく口をあけずに発音される

島口のややこしさは、日々会話に登場するが、まだまだ馴染めていない。

 

★問題は、発音ではなく味である★

 

毎度、無駄にマエフリ長すぎ! マエフリの長さも問題か。(笑) 

 

でも、発音すら出来ぬ作物なんて・・・情けないというか

食べ辛いと言うか・・・申し訳ないというか・・・いただきものだし・・・

 

ともあれ島の赤土で育った大地の豆、地豆である。

ゆで時間はテキトーである。 主婦というか、主夫の勘というヤツである。

マメ科の種子は毒素を含んでいるので、十分加熱する必要がある。

落花生は殻に入っているので断熱されるから、ちょっと長めか・・・

ゆでていることを忘れていて、気づいたのだが、まだシャリシャリと

歯ごたえが残っていたから、ラッキーである。

あるいは、殻の断熱効果で、火の通りが悪かったのか???

なにぶん量が少ないので、中毒には至るまい。

こんなこともあろうかと、かなり濃い塩水でゆでてある。

塩分があるほうが、沸点は上昇するからだ。

 

発音にこだわったのは、同じ植物だからといって同じ味とも

同じ姿とも限らないことを思い出したからだ。

 

魚でも、沖縄の高級魚タマン(ハマフエフキ)は白っぽいが

伊豆大島では茶色の濃い。

海岸に生えているオカヒジキは、栽培種になるとえらい細くなり

ほとんど別物である。

 

島の外で食したバレイショの違和感が、もっともその感覚を顕にした。

正直、島の外で食べるジャガイモは味が無い・・・

山口弁で言うところの、スッポゥモナイ・・・(味がなく、すっぱさすらない)

感じそのものだ。

 

私も、ジャガイモなんて薄味のものだから、どこも同じと思ったが

赤土で育った春一番バレイショは、かなり味が濃いのか

食べなれると、他の地域のジャガイモを口にすると、

作物でない、もさもさした無駄なものを口にふくむような、

違和感が生じるのだ。

  

果たして、地豆とてそのへんのピーナッツとは全く違っていそうである。

島では元々、料理して食べる食材であり、菓子にも化けるが

いろんなオカズに変身することの方が多い。

 

この地豆は、とくに二期作でつくられた特製品。

役場の友人が、持たせてくれたものである。

職員よりも農家が似合う御仁であるが、2足のわらじとは便利であり

片方が上手くいっていれば、片方の不運も乗り越えやすいものだ。

そんな器用な生き方ができる友人が、羨ましくもある。

類稀な情熱家だからこその、器用さだろう。

 

さて味は・・・

なんというか、土の香りがするような、しないような。

シャリシャリとた歯ごたえとともに、地豆の香りが口に広がっていく。

乾いてカリカリしたピーナッツとは違う「ゆで」独特な味わい。

以前いただいた、山海荘のフニフニの地豆よりは、こっちが好みだ。

 

自家精米していただく農家のご飯の違いと、いい勝負といったところか。

 

悔しいが、これが薄い味なのか、濃い風味なのかは、まだ分からぬ・・・

この時期、生地豆があること自体、奇跡的ということは確かだが。

 

蟹工船に代表される臭い食品、カニを美味しいとするのも

土用にいただく、しょうゆと脂まみれのウナギも

存外生臭いイリコだしを、スッキリと普通に感じるのも

熱帯魚のカラアゲの磯臭さを普通と思う感覚も

すべて食文化という、習慣=慣れの問題である。

 

それぞれ間違いではないが、それは他の地では共通でない味覚・・・

かも知れないことを、わきまえておかないと、旅先でイサカイが起こる。

 

私は南国に引っ越したので、南国ではしばれる感覚がなく

寒さはそれほどこたえないが、暑さにはほとほと手を焼く。

気温19度で、角度のキツイ陽光があれば、もうTシャツ必須だが

島の方々はジャンパーなどを羽織っていたり・・・

そんな感覚と似たようなものか。

 

臭いカニやウナギが美味しいとされる集団の中で育ったので

それが美味しいと信じ、慣れてきただけのこと。

 

私が6キロ足らずのビーム砲レンズを

標準装備と感じているのと同じ、すべて慣れだ。

 

従って

今持っている慣れと、これからの慣れを、どのくらい上手く

感覚的に受け入れられるかがキーとなるのだが、言うは易し・・・

 

やはり限界は在る・・・甘すぎる調味とか。

さすがに、氷砂糖で調味した漬物・・・で、ご飯はいただけぬ・・・

塩分は普通なのだが、いわば塩のみの漬物をトッピングしたご飯に

おいしいから砂糖かけてあげる・・・と薦められているようなもの。

さすがにこれはハードルが高い。

 

数日の旅行なら異国情緒で済まされるが・・・

 

ともあれ、今年は郷土料理の取材で、たらふく島の味覚をいただいた。

甘さは好きは筋金入りで、ゴーヤチャンプルーに砂糖を入れようとするから

さすがに制止したほどである・・・ 

 

食後に

サーターアギー(まんまる大きい、島ドーナツ)を食べられるほどの

コッテリ脂好きにも恐れ入る。

さすがにこのごろ、私も慣れてきたので、サーターアギーは

丁寧にお断りしてパスすることが、出来るような間柄になった。

 

島の料理は、単品としての完成度は高いから、お茶請けや

一杯やるにはいいのだが、ご飯や、その他のオカズと組み合わせると

いかがなものか・・・という味がしないでもない気がするような?

 

間食に脂ものや甘辛い茶請け料理を口にするのは、農民時代の

習慣からだが、そうでない人が、今は好んで食べている。

味付けが暴走しているのかもしれない。

 

何しろ、現代食レシピはたいがいそうだが

足して足して、さらに足したものが多く、引いたものはほとんどない。

あれも入れ、これも入れ、さらに加えたものばかり。

 

素材重視の私には、ちょっと辛いが、それもまた文化。

日本の文化?にもなりつつある。

 

別に間違ったことでもないのかもしれない。

アレルギーが増え、それでも均一平等な味にしようとすると

サバだの小麦だの貝だのを使わずに、味付けする必要があり

文化というよりは社会現象といったところか。

 

ただし、島であってもユルイばかりでなく、非常に洗練された

いや洗練をこのむ料理人もいるのは確か。

 

天城町で郷土料理の新田さんといえば、主婦なら知らぬ人はない。

以前、とんとんとんのこもりうたを島内三町で演じたとき

もっとも島らしい料理で、美味しかったのが天城町だった。

 

それぞれの町でも美味しかったが、郷土料理という点、

それでいて、内地のニンゲンにも見栄えのする配慮など

すぐれた小夜食だったことを覚えている。

それが「かあさんの店」、新田さんのこさえた料理だった。

 

このごろ、郷土料理教室を取材させていただくとき、

なぜかお邪魔している私に、分け前?をいただくのである。

このあたりの気前よさは、流石、男女とも推しの強い徳之島。(笑)

いや、料理教室はすべて年上の女性ばかりなので年功序列を

重んじているのだろう。 先輩は後輩に施さねばならないような?

対して後輩は絶対服従のような?(笑)

 

そのご利益によって得られた、究極の茶請け味噌がコレ。

新田さん特製、二段仕込みの塩分5%の米と大豆の粒味噌。

島では農作業の合間などに、食事を取るとき、必ず脂味噌がでる。

 

まず、茶請け味噌という独特の薄味の味噌に、砂糖をドッサリ混ぜ

そこへ三枚肉、二枚肉、貝類、焼き魚、揚げ魚、地豆などの素材を加え

加熱しながら練り合わせる料理だ。

足す方向で、ゴマやカツブシが加わることが多いが

私は総じて、足さない方が美味しく感じる。 砂糖も含め・・・(笑)

これは見た通り、地豆味噌。 足し尽くしたもの。

けして不味くないが、地豆の風味を感じられぬ残念さ。

 (注意 : 味噌マメとは別物。)

 

それはそうと

この新田さんの味噌、アルコール発酵に移行していて

自然な甘さが漂い、それはもう美味しい、モロミよりさらに美味しい

薄味味噌なのである。

深い味わいに、他の素材を混ぜることが出来ず、ご飯のおかずや

お酒のアテに、そのままいただいている。

 

島でも、これほどに洗練された味わいがあるとは・・・

この茶請け味噌には、調味料類など無駄が一切足されていない。

さらに、私にとっては足すことすらできない完成度。

ブレンド前提の、茶請け味噌としては味が深すぎる!

 

いやむしろ、化学が流行る前はこうした味だったのかもしれないが

新田さんの独自製法による5%は、過去にはなかった。

しかもこの製法は、郷土料理教室で教えられている。

ちなみに麹(こうじ)は、Aコープで販売されているもの。

 

腐るかどうかの瀬戸際は、7%前後に在るらしいことも

追究済みだからこそ、実現できた製法、とうかがっている。

深い、島人の探究心のなさに諦めていたが、ここまで探求された

逸品が存在していたとは、まだまだ奥深い徳之島を知ったことで

先の楽しみが増えた。

 

だが、他方でやはり島の信頼性を欠く出来事も多く

馴染んではまずいかな・・・と思うことも日常だ。

危機的な光景が日常になると、ナニを信じるのか分かりにくくなる。

 

駐車場外に停め、ドアは開放で用を足す。

役場での風景である。 無論、手前が入り口に近いからだが

ドアを開けっ放すほどの開放的なお土地柄だったろうか・・・?

時々Aコープの前などでも散見する。

交差点に駐車して・・・用足しや買い物も茶飯時だし、

トラックどころか、トレーラーがウィンカーを上げずに左折していく・・・

なんてのも日常茶飯事。 やってくれるぜ、神田運送・・・

トレーラー乗りと言えば、トラック乗り栄光の姿の一つだと思うが。

 

玉石混交のレベルも、ここまで至ると、判断にも困るのが

ご理解いただけるだろうか・・・

島の底なし度も、奥深すぎるこのごろ。(笑)


ではまた