地デジ化率87.5%

クロモンガラ100%

 


もう七月も終わり・・・早いものだ。

 

少し前、山海荘のオバサンから留守電が入っていた。

忙しかったのと、このところダルかったのでつい忘れていたら

またかかってきたのであった。

 

ずいぶん顔を出していなかったので、

元気ですか?(安否確認・・・)ということと

もう一つ重大な依頼ごとがあるらしかった。

それがデジタルテレビの設置。

なんだかずっと前に、そんなことを言われていた気がしたが

ほっとんど忘れていた・・・

 

島では、そのくらいの責任感と、物忘れの良さがちょうどいい。

 

かれこれ冬には在った気がするので、ずいぶん熟成が進むほどに

箱の中のテレビへ時間が注がれ続けてきたように思う。

 

天城町兼久(かねく)と徳之島町山(さん)は、天城岳をはさんで

山向こうの反対側になっているだけだが、なんだか遠く感じる。

実際に測ってみると、車で20分ほどだった。

途中の信号は2ヶ所。

 

で、久しぶりに訪れてみると

いきなりオバサンは、昼から貝採りに行きたいと主張、

その前にとなりの集落、金見の同級生を車で送っていくといい

とっとと出て行ってしまった。

 

このところ畑を広くしたので忙しく、春先以来、海にいけなかったよう。

次の日はお客があるから、今日こそ貝採りに行きたいという気持ちは

分からぬでもない。

 

とりあえず

山海荘で、一番華やかなのカラオケスペース(床の間ともいう)に

32インチ液晶テレビを設置することにした。

 

台所には、似た箱がいくつもある。っていうか前より増えている。

 

座卓上に、わりとアッサリ付け終わった。

けれども帰ってきたおばさんは、前のテレビがあった、

右隅の奇妙な白磁のところに設置したいという。

 

古いお宅にはナゾの置物が多いが、白磁の置物をはじめ

何十年も移動していないような、ナゾの小物達がひしめいている。

一品一品に歴史があるのだろうが、まったく無視され

時を重ねる姿は、どこのご家庭にもありそうな風景だ。

後述の食堂にあるテレビの右には、石狩名物、迷惑土産No.1の

熊の置物(鮭をくわえているやつ)まで完備されている。

うーむ・・・ホコリだらけの置物や、床の間&レーザーカラオケには

あまり触れたくはなかった。レーザーというよりVHDかもしれない。

 

寸法を測ると、ちょっと谷あい?に落ちて

永遠の暗闇の住人と化そうとしていたナゾのホコリだらけの物体をどけて、

カラオケセットを少々壁から離せば、うまく置けそうだ。

カセットも入るカラオケだっと思うが、まさかこのセット上に

デジタルテレビが乗る日が来ることなど、誰も予想しなかったことだろう。

 

これまたコードが切れかけて時々停まる

味わい深い集塵機(ごつい業務用掃除機)で

ジェット機並みのゴウゴウと騒音を発しつつ、ホコリを吸う。

半数以上は、定番のヤモリのウンコである。

 

もちろん、雑巾がけも必要不可欠だ。

とかくテレビの置き換えには清掃がツキモノである。

 

そうしてようやく設置したが、受信レベルがギリギリで

データ放送の受信が遅いことがある。

アナログからデジタルになったとき、チャンネルやデータ切り替え後

1秒〜数秒待たされてから表示されるのに戸惑うのに

データ放送の表示には、かなり待たされる。

 

パソコンに慣れていると普通だが、テレビが沈黙するのには

耐え難い傾向が見て取れた。

単にチャンネルを切り替えても、1秒は暗闇であるから、

アレ?壊れたか?と思てってしまうのは仕方ない。

 

まーしかし、それは慣れてもらうしかない。

 

亀山ではないが、明るさセンサーのついたナカナカの優れものである。

 

やれやれ終わった・・・と思ったら

貝採りをあきらめるから、全て取り付けてけ・・・

ということに、心の方針変更がされていた。

 

まー、昔風に食堂の神棚的な高度にある

20インチオーバーのブラウン管テレビ意外は

移動も楽だし、19インチの薄型テレビなら楽勝だと思った。

 

しかし、最後の一台でくつがえされることになった。

 

オジサンは、離れというか、過去は軒先であった場所に

継ぎ足した部屋があり、そこで気楽に寝泊りし、漁の仕掛けなどを

作って暮らしている。

 

そこへは、一応分波器を使ったタコ足の一本が

はるばる屋外からやってきていた。

そのためか、ゲイン不足で地デジが受信できないではないか。

眠るときも子守唄的にテレビを点けっぱなしにするほどのテレビ好き。

歳相応に、省エネなラジオ深夜便をススメたかったが聞きそうにない。

しかも沖縄からの夜の電波は不安定で、周波数が変動するから

ときどき韓国語や中国語やナゾの言語の放送になる。

 

ケーブルをぶった切り、最短にして刃物で古びた同軸ケーブルの

毛のような線を磨き、導通をよくしてみたのだが

ずいぶん受信感度の強弱に波があって入ったり入らなかったりする。

どうやら、ケーブル自体も傷んで浸水している可能性もありそう。

 

結局、8台あって、オジサンの1台のみがアナログのまま。

 

花徳(けどく)にある地元電気屋が、旧ホテルニューオータニの山手に

中継局ができたと、テゲテゲに教えてくれたので、確認に向かう。

小魚にヒラアジっぽい魚がガバと出る漁港で、

ルアー釣りの好条件を横目に、海側から中継アンテナを視認。

 

帰って宿の屋上でアンテナを確認すると、正確に向いている、が・・・

アンテナの後方、受ける形になっている部分がまるっきり無い。

小さな中継局まで1キロもないが、

これでは受信感度自体も問題があるな、やっぱり。

 

ブースターはすでに入っていて、結構効いているようだ。

ただし、想像通り接触がかなり悪い。

 

ガス屋時代の、使わなくなった古いガス栓は触らない!

という掟が脳裏によぎる。

触っただけで、事態が悪化する一方なのだ。

 

しかし、触らなければオジサンのテレビは来年でストップする。

 

たまたまOちゃんからもらった、ほとんど廃棄物的なUHF・VHFセットの

アンテナがあるので、コレを付け替えつつ、様子をみようと決めた。

 

少し遅くなった昼食は、こともあろうに大嫌いな茶そばであった。

私は、嫌いでも食べられないというものはほとんどなく、

ラーメンだって、鹿児島名物かるかんだって、一応食べる。

だが、茶そばは食べる前から嫌である。

 

出てきたのは大量の盛りの茶そば、シーチキンと錦糸卵とネギ、

そして鹿児島特産?超絶甘い麺つゆであった・・・

 

どげんしょう・・・これ・・・食わんとまずいよな・・・っていうか

食ってもマズイよな・・・

 

私は、そば屋で、麺つゆとかき揚げのつゆを共用するのも嫌うほど

つゆに油が浮いたのが許せない性格であった。

 

しかし、やらんとシーンが前に進まない・・・

何も打開しない、腹も満たされない、午後の作業もできない・・・

思い切って具をドドンと麺つゆに入れ、

あまり混ぜてないのでちっとも辛くない粉ワサビを練り直して

つゆにたっぷり加え、茶そばを一口いってみた。

 

・・・・?

 

おおっ!?美味い!?空腹とは最高の調味料???(笑)

というより、シーチキンが効いている。

 

麺つゆと具が渾然一体となった、国籍不明の風味が

茶そばの無意味なオリジナリティを、見事にかき消し

とても食べやすい食品になっていた。

のびすぎて、茶そばの雰囲気が失われたのかも知れぬが・・・・

 

しかも、オバサンは大量にもらっているにもかかわらず

オジサンはさっぱり苦手な様で食べないため、

口減らしならぬ、口増やしがしたかったらしい。

 

悪いが、私は喉を通らないので、ついにこの間捨てたばかり・・・

島の人なら、なおさらオカシナ味に感じそうに想像できるから

もらった先の方も、たいそう奇妙な味に困っていたのかもしれない。

 

なんといっても、乾麺茶そばは最悪な食品だと思う。

ボソボソで甘くない抹茶ういろうを、つゆにつけて食べる感じ。

茶の意味も、そばの味も全く感じられぬ。

 

いわば

バニラ味のラーメン、略してバニラーメンみたいなものだ。

 

だが、徳之島の知恵は茶そばをも克服し

けっこう食べられるようにしてしまった。

 

実は、長男さんが発見した、新しい素麺の食べ方だそうで

冷やし中華っぽい食べ方が美味しいと、誇らしかったらしい。

長男さん発明の、自慢のメニューだそうだ。

島らしい食べ方だし、茶そばを制するホドの味付けは

内地の人間には考え付かないと思う。

くれぐれも高級麺だけは、やめときたいものの・・・

稲庭うどんとかでもやりそうだし。

(私は稲庭うどんが、日本の麺ではもっとも好きだ)

 

私が長男時代に思いついた最高の素麺は

キリリと酸っぱい、我が家の自家製梅干を、薄味のつゆに

きめ細かく包丁でたたいて入れ、溶いて食べる方法であった。

これは冷たいお吸い物としても、かなりイケルし、

熱い丹生麺やうどんでも美味しい。

 

ちなみに高級半田素麺を食べ飽きていた子供のころ

中華麺のように具をトッピングし、カボスやスダチをつゆに混ぜ

ほとんど冷やし中華っぽい食べ方をしていたことがあった。

あれは、まったくもったいない食べ方だった・・・

ただ、冷静に考えれば、子供の代謝は南国生活に近く

高級感は別にして、栄養価を効率よく摂取するには、

都合が良かったから、思いついたのかもしれない。

 

夏の島では常に体から汗が出て、脂分も出て行くので

サッパリだけでは、やはり土地柄には合わぬ。

シーチキンの油分は、南国で暮らす体にとってとても大切であって

それとともに麺類を摂取する知恵は、内地人にはないから

おのずと食べ方や味付けが違ってしまうのである。

 

それにしても

小さいころから、黒帯の太い素麺ばかりを食べてきたので、

ちっとも高級とは思わなかったが、確かに安い素麺を食べると

すぐ伸びるし、粉っぽくて格段に美味しくない・・・

 

ちなみに

私は1、2年以上寝かせた素麺が好きだ。

作りたての、初々しい弾力は失われるが、

ツルツルとした舌触り、おちついて確かな歯ごたえが加わる。

冷蔵庫には横浜から大切に持ってきた、一昨年の半田素麺が

寝かせてあり、今食べているのは去年、徳島から直送されたもの。

イーカゲンに食べるときはAコープの細いソーメンを適当にいただく。

 

閑話休題

 

長男さんの知恵で、難なく茶そばをクリアした。

午後は、オジサンの部屋の受信感度を上げようと格闘したため

気づくと夕刻6時を回っていた・・・まったく気づかなかった・・・

 

そうして、3人前として名高い?夕食も馳走していただくことに・・・

 

しかし、前菜というか、すきっ腹と喉の渇きで

オバサンのフルーツエンジンがかかり、パパイヤ半個、

パッション3個・・・ようやく片付くまえに、スイカ1/4個・・・

前菜というよりデザートだ・・・確かにスイカは野菜だし

パパイヤは野菜と果物の中間だが・・・

 

夕食前にどんだけ食うんだオバサン!と思ったら

オバサンはスイカは汁だけ吸って、吐き出しちゃうので

お腹が太らないらしい・・・ので、他人もその感覚で食べさすのだ。

そんなことは、他人にとっては心底ドーデモイイことだ・・・

オバサンの食べ方は、真似できないのだから・・・

 

ついに夕食がやってきた。

最近めっきり漁にでなくなったオジサンの代わりに

さっき近所の漁師さんが持ってきてくれたのが、大量のカワハギだった。

が、カワハギの形はしているが、カワハギ科ではなくモンガラカワハギ科。

だってカワハギのくせに、ウロコあるじゃん・・・

クセがなくて美味しい・・・らしいが、確かに南洋にしては臭わないものの

内地の尺度からすると、新鮮なのに匂う・・・

であれば逆に、内地の魚は南国のひとからすると匂うのかも知れぬ。

サバやイワシは、かなり臭さが気になると聞いたことがある。

 

もう南国の魚は慣れているので、かなり匂いは学習したから

島にしてはとても穏やかな食べやすさがある。

島で食べ物を評価するときは、慎重にしなくてはイカンのだ。

島人の大切にしている味を磨くよう意見するのも、島に住む内地人の役目。

 

調べたところ、クロモンガラで普通は食べずに観賞用とのこと・・・

 

島ではカワハギ(モンガラだが・・・)は人気のある魚で、

内地人でも、カワハギと言ってしまえば十分食せる。

魚の少ない徳之島では、美味しい部類に入る魚なのだ。

しかも、しっかりした歯ごたえがある身の個性は、他に代えがたく、

一般的な美味とは違うが、一度食べると、魚の新基準が増えた気がして

なかなかに可能性の深い魚である。

 

身は淡白だが、懐かしい歯ごたえはマガレイの刺身にソックリ。

懐かしさのあまり、涙が出そうになったほど似ていて美味しい。

カレイより味は薄めだ。

 

一方、煮付けは凄まじい格闘が用意されていた。

 

煮付けながら、身が異様にはぜて、見たことが無い状態だと

調理場のオバサンがしきりに訴えていた。

 

それを食えと・・・?

 

とどめを刺さず、生きたまま煮つけにされたからだと思うが、

身が骨から外れない! 硬い煮物の手づかみ体験は初めてだ。

しめる方法を知っといてほしいものだ・・・島の料理人だけに。

見ての通り

背中側から見たところだが、腹側があばら骨を無視して

弾力で反り上がっている。(写真では上の方)

 

身の弾力は、しっとりきめ細かく柔らかい煮付けのカレイとは違い、

プリッとした新鮮なゆでイセエビと、真珠貝のきめ細かで力強い貝柱を

足しっ放しのまま、2で割らなかったような味である。

未体験のどえりゃー歯ごたえで、そりゃもう絶品!

味が淡白でエビや貝ほどニオイにもクセがないから、

究極のエビ貝柱風味であった。

 

なんとも、感動的な食感である。

 

おそるべし、クロモンガラ・・・

ふつうは観賞用かもしれないが、食べてみるものである。

これでお酒があれば、なんぼでも食べていたい味であった。

歯ごたえが味覚の大半を占める私にとっては、とんでもないご馳走だ。

 

ちなみに、やせ気味だったためか、キモは薄味で少々苦かった。

といいつつ、刺身と一緒にいただくと、たまらんのだコレが・・・

暑い時期だから濃厚なものより、

アッサリとした海の香りと味わいがすがすがしい。

 

キリリとしたスダチのポン酢でいただきたいところだ。

 

あれこれ食べ終える前に、チョコチョコといろんな季節の惣菜や

テスト中?の食品などが出てくるのは、相変わらず。

美味しくも、量的には厳しいハプニングが続いている。

 

ゆっくりと?完食できるか焦りながら、苦労して設置した

上空にまします32インチテレビをながめる。

やっぱり地デジは美しい・・・

農作業から帰ってきたオジサンも、画面を見て感心している。

 

材料がなかったので、

風呂場向かいの工具箱に入っていた

冷蔵庫か何かのアースの線を利用して

とりえあえずの転倒防止策を施しておいた。

 

ビフォー、アフターはこんな感じ。

時計が大切だったと残念がっていたので

一応デジタルテレビの右下には、

小さく時間が表示されることを教えておいた。

 

ビフォー画像のテレビの右には、例の石狩の熊がのぞく。

西郷どんのチビ銅像の上空20センチの位置だ。

 

ま・・・ともあれ

なんとなく、役に立てたかな・・・といったところ。

これ以上テレビを熟成させるのもナンだし。

 

それにしても、鮮魚を食べたのは久しぶり。

この味だ、体が欲していたのは・・・

美味しく調理されていても、体が欲する栄養分が失われた

食品が多かったのだろう。

 

肝心のオジサンの部屋だけがアナログである。

7/8台が地デジ化完了、本日の成果だ。

 

関係ないが

おやじ殿は、地デジを「ぢでじ」と発音するので、

おふくろ様がいつも笑いをこらえている。

 

今日、たまたまモンガラ漁師さんが

俺はぢでじは全然興味ないから、と断言していたので

どうやら「ぢでじ」発音は、60代以降で同時多発的に

発生している可能性があるようだ。

なんだか・・・ぢでぢを洗う、泥沼化したお尻事情のようで

とても恥ずかしくも痛々しい音感なので、気になっている。


ではまた