空振りつづきの磯巡り

 


蛋白源はスーパーに頼る毎日が続いている。

島のヒラアジがようやく動き出したが、どうにも水揚げに至ることができぬ。

働いていないので、せめて食料は自給しなければならないが、難しいものだ。

まだまだ不眠は加速中、最近やっと吐き気はおさまったが、島の人との会話は

もともと会話にならぬので、ことのほか疲れるから、働くなどまだ先の話。

 

さて釣り漁をどうしたものか。

 

二度ほどアタリがあり、一度は針を折られ

一度は浅瀬の岩にルアーをこすり付け、外された。

折られた針はあとでペンチを使って折れるか試したが、曲がるだけ。

つまり法外なチカラが一瞬だけ一点にかかったようだ。

 

ともかくリーフの島は浅い、浅くてどうしようもないと思うくらい浅いが魚はいる。

 

ダイバーや地元の人の話では、リーフ内にも結構カンパチやヒラアジが入るらしい。

話は事実だと思うが、狙って釣れるほど確率が高い話ではないので要注意。

 

島の人が

コウだよと語るときは、たいがいは「そういうこともあった」とか「どこかで聞いた」で、

断言するほどの根拠はなく、一度そういうことに出くわしたら、そう述べる決まり。

情報としては良いが、役立つかは別の話だ、内地人の方にも思い当たるだろう。

 

情報は情報として、自分の身で確かめることが一番確か。

徳之島の磯は総じてこんな感じだ。(これも話半分ってことで)

 

【北部東側の金見海岸】

一見浅そうに見えるが、リーフは突然終わり3、4mくらいの水深になる。

海底はサンゴと珊瑚礁が削られた砂地である。

見て分かるとおり、沖合いに岩礁があるから、沖合いまで比較的浅いのだ。

カンパチや赤い魚(ハージンこと赤い高級魚スジアラも)など、沖の早瀬や

陽の届かぬ深い場所が好きな魚はやや期待薄か。

引き潮時にリーフの切れ目にアプローチすると良いが

凪でいては餌釣りで小魚しか釣れない。

 

ちなみに、徳之島の人は結構小魚を持って帰る習性があり

磯で釣れた10センチそこそこのクロ(オキナメジナ)でも持って帰るところは

さすがは釣ったら食べるお土地柄だが、誘われて一緒に行くと気の毒になる。

内地では小さなメジナは木っ端グレなどと呼び、恥なので持ち帰らないから

釣る対象にはしていないが、コチラでは定番らしい。 

白身でクセが無いので、南蛮漬けにすると骨までいけて、美味ではある・・・

凪の昼しか魚は居ない、釣れぬと信じているので、逆に小魚しか釣れないよう。

もともと探究心が少なめで、海をあまり好きでない事、シケは危険な事から

けっして無理せず凪の時しか活動しない島民の知恵なのではなかろうか。

南大東では、オバチャンが港でキロ単位の魚をバシバシ釣るのを見てきたので

男性が木っ端グレとは・・・と思ってしまい、正直なところ違和感は否めない。

 

【北部西側のムシロ瀬の磯】

島内でも、犬田布(いぬたぶ)岬とならび一級磯と名高い磯、ムシロ瀬。

風光明媚なので観光地でもある。 が・・・あまり釣り人は見ない。

基本的に何れの島の人らも面倒な釣りをしない共通点があり

わざわざ険しく苦しい磯に釣りに行く人は、よほどの趣味人程度のよう。

ご多分にもれず、一級磯のわりに浅い。

釣り人の道具立から見ても、ほぼホリデーフィッシングレベルの釣果らしい。

 

【北西部の浅間〜松原海岸】

空港は元々、浅いリーフを埋めて建造された。

埋めたために干潟は泥でおおわれたが、今はカニが増え鳥の楽園。

沖側は今も珊瑚礁が発達して、これマタマタ浅い磯である。

まさか魚は居まいと、珊瑚礁の間を縫うようにルアーを投げていたら

いきなり針を折られた場所である。 投げれば何か起こるものである。

リーフ周辺は常に泡が広がり、子魚が多い多酸素海域なのではないか。

したがって少しシケ気味で、自分の姿が見えにくくなると肉食魚も入るよう。

上空には例の2キロを超えるチヌを狙うタカ、ミサゴが旋回する漁場だ。

 

【西部の小原海岸】

小原と書いてコバル、クバルと読む鍾乳洞がむき出しになっている断崖。

だが、断じて混ぜ混ぜにしコクバルとは発音しないので念のため。

南大東や八丈島の磯よりハードな行程、たどり着いたら普通のリーフ、

絶対に二度は行かなそうなのに、島人にはある種憧れの人気ある磯。

好きな人でも半年に一度程度の険しさは、100mの高低差が物語る。

最初からロープ、途中は赤土の滑る急斜面、最後はロープで沢下り、

これでもか!と言わんばかりの行程に正直帰るのもイヤになる、難場。

通いなれれば、世界の磯を征するに値する?のかどうかは知らぬが

人が行きにくいから、浅いが豊かな磯だろう。

帰りの行程は気になりすぎるが、大自然あふれる気持ちの良い海岸だ。

引き潮でとても浅く、なんも居ないだろうとルアーを投げていたら

徳之島初のファイトらしいファイトとなった。 なぜか鮎カラーだ。

細い仕掛けだったので、ヘッピリ腰でファイトしていたらやられた・・・

3キロはないと思うが、おそらく磯際の飛び出した岩でルアーを外す技、

コレはおなじみ、浅瀬を得意とするカスミアジの仕業に違いない。

水深1メートルそこそこでキロ以上の魚が出るとは、恐るべし浅瀬!

白い泡の広がる酸素あふれた浅瀬をナメてはならぬと教授があった。

数十秒だが、久々のファイトらしいファイトが味わえた磯である。

 

【南西部の犬田布岬

島で最も深い磯。

イヌタブミサキと読む。徳之島の西側はナゼか犬つきの地名が他にもある。

潮通しはすこぶるよく、水深はなくとも回遊魚が豊富と思うが、噂は聞かぬ。

背後には沖合いに沈んだという、将来は宇宙戦艦となる戦艦ヤマトの慰霊碑。

上から巨大魚は確認できるが、釣れた話は聞かない、鬼門の磯。

 

【南部の面縄漁港】

あまりヒネらないがメンナワではなく、一ひねりしオモナワと読む。

黒潮が南方から打ちつける、潮通しの良い漁港で、リーフが囲む。

島では最も水温が上がりやすい海域であると漁師は言う。

確かに南風ならぬ、南流が河川の水を流すので北は水温が下がりやすいが

黒潮本流の流れを受けやすい南部は、栄養分は乏しくとも暖かいだろう。

寒い時期は魚が集まりやすいポイントのようだが、大形魚の話はない。

南国の海域事情はかなり複雑であろうことが予想される事実である。

 

【東部は?】

山漁港から、スマガツオが巡る母間湾、そして最大の港、亀津まであるが

今年は今のところ、、あまり芳しい話は聞いていない。

豊かなリーフに囲まれているが、リーフを征することがないのか

イザリ(干潮夜の磯歩きしながらの海産採り)くらいしか良い話がない。

勇ましく水中銃を使う連中には昼夜双方とも、かなりの漁果があるというのだが

釣りはサッパリ良い話がない。

 

そんなわけで

島はダルそうな習慣と、開拓心不在に守られた海が広がっている。

豊かな島だが、もう少し美味しいものが食べたい野望・・・が正直なところ。

ゆえに手付かず、ゆえに豊か、ゆえに過酷で攻略困難。

 

まーそのー、なんちゅーかー体力があるうちに漁場を探り当てたい。

かくしだてしても仕方ない、正直なところ食べたい魚を探り当てたい気持ちは

日に日に強くなるばかりである。

 

これから季節は変わる、海も変わる。 自分が変わられるか?が問題だ。

釣った後、ヘロヘロの体で魚をサバけるか、それも最大の問題だ。


南国の教訓「行ったらイイよぉ〜」は行かぬがハナ

島で「行ったらいいよ」とか「行ってみたらいいよ」と言われたときは

行かぬ方が幸せることが多い。

これはタイガイ、自分は聞きかじり程度か、思いつきで言ったまでで

良く知らないけど今思いついたから、とりあえず行ってみたら?

というイイカゲンなおすすめ用語である。 内地では怖くてありえない感覚。

南国らしいテゲテゲ表現で、自分が行きたければ行けば?という表現なのだ。

オススメと勘違いして行ってみると、かなりガッカリ率が高いので聞き流そう!

自分の住む島は、ほかより奥深い!という間違った誇りから誘引される現象。

奥深さはドコでも同じなのだが。

 

実例

今日は天気が良いから、海に行ったらイイよ〜と友人に言われて行ってみた。

友人は海に入らないニンゲンだったが、厚意と受け取って実行に移してしまう。

水温が低く寒くて、気温の高さとは全く関係なく、ただヒタスラ冷たい海だった。

なんとなく思いつきで、行ってみたら?と言ってみただけだったようだ。

寒かった!と訴えたら、「あ〜まだ水温が低いのかも知れないね」だそうだ・・・

そげな無責任、有り得ないだろ!発言に責任持てよ!と思うところだが

これが南国のテゲテゲ習慣、引っかからないように。

更に「今日は行ってみた?」と厳しくチェックする人が居るが、更に聞き流し

アレは他に用があって行かなかった、とするのが正しい対応。

単なる興味・情報収集のため思い出しただけで、フォローではない。

厚意が引き金だが、テゲテゲ習慣もテンコ盛り、こちらも大雑把に対応しよう。

くれぐれも悪意が無いのが南国風で、始末が悪い現象である。

島人は生まれたときから自分本位のぶつけ合い、それを理解して大人の対応を。


ではまた