礼賛、したたか生き物(2)

ウグイスと鳴きマネ

 


ちょっと冒頭はウグイスから離れる。

あ、そうそう徳之島の家が母間に決まった。

引越し先が定まったから、これで荷物のやり場にも困らぬ。

やれやれだ。

 

と、書き始めたころはホッとしたが、一昨日電話が・・・

大家さんと間を取り持ってくれた徳之島のYさんから。

大家さんの墓参が遅れて4月から貸したいということで

一ヶ月、住む場所がない・・・そういうの奄美的常識なのか?

Yさんは居候させてくれるというが、正直ウツで一ヶ月居候は

反対に心労がかさむから、嬉しいが辛い。

荷物は仕方がないので、無理やり新居へ突っ込もうと思うが

4月までは放浪生活である。

まー気候はぬくいし車中泊も悪くないか・・・

 

さて

南大東でモズ博士Tと出会って、鳥の見え方が変わった。

ワザワザ会わせてくれたのは、当時の民宿の料理長だ。

小さな頃から漠然と鳥が好きだったが、鳥は少なく

観察するのも、肉眼では難しかった。

同じ種でも、それぞれの場所で違う生活をしていることには

ごく最近、気づき始め、じっくり観察するうち、図鑑の内容も

かなりインチキ臭いと思えるようになってきた。

偉い先生とて日本全国、オールシーズン同じを鳥を

追いまわす事はできぬから、仕方のない事なのだが。

 

小さいころは農薬じゃじゃまきの田んぼに囲まれた

干拓地に住んでいたので森とは縁遠い生活だったから

スズメ、モズ、メジロ、トビくらいしか居なかった。

まだ残っていた、かなたの塩田跡から、

オオヨシキリやセッカの声が聞こえていたが

それが鳥と分かったのは最近のこと。

もちろん、子供の頃から得体の知れない音は

記憶しておくクセがあった。 根っからの長男だから。

知らないメロディーが夢に出てきて覚えていることもある。

テレビつけっ放しで寝込むような抜かりはない。 念のため。

 

そういえばモズ博士Tとは、もう10年以上の付き合いだ。

 

モズ研究ばかりかと思ったら、ダイトウコノハズクの調査や

島の様々な渡り鳥を観察していて、時々連れて行ってもらううち

彼らの鳥の見つめ方が気に入って、鳥がおもしろくなった。

 

釣りなのに望遠レンズを持って島へ行き始めたのは

それ以来である。

観光しないので、朝夕の釣り以外の時間がモッタイなく

観察で島の自然を知ることは、釣り環境を知ることにもなり

一石二鳥であった。


南大東で釣りをし始めたとき、一番ショックだったのが

磯のすぐ近くでウグイスが鳴いていたことだ。

 

ヒラアジなど魚とのファイトをイメージしつつ

緊張感をみなぎらせ、険しい磯に挑もうとする朝

 

ほーーーほーーホーホケキョ ・ ・ ・ ・ ・

 

はーーぁやっぱすぅ、朝の海っこは、気分さえ〜ぇもんだなぁあ〜

って き、気合が、これまでの緊張はドコいったんだぁぁぁぁぁ!

 

島の内陸で鳴かないのは、島の周囲にだけ林があるからだろう。

我が家の周りでめったに聞かないウグイスの声が、

アチコチで聞こえ、南国風情がダイナシな上に、のどかすぎ。

 

まー今にして思えば

南国の朝に意気込む向きに、むしろ無理があるんだけども。

 

ききおよんだところでは、その昔、

南大東島にはハシナガウグイス系のダイトウウグイスが居たが

別名、ダイトウハシナガウグイスと長々呼ばれていたらしい。

今は内地と同じフツーのウグイスに入れ替わってしまった。

どぉ〜りんでぇ、ほんのぼの懐かすぃ〜はんずだぁ・・・

 

地味に茂みと一体となり、蚊に襲われながらも

ようやく撮影できたものの、やっぱり内地のウグイスに近い。

が・・・立ち姿勢をとる姿は見慣れない。

内地のウグイスは背伸びせず、体を水平にしてヤブをうろつくが

立ち姿勢で警戒するのは、ダイトウの特徴と思えなくもない。

常緑の熱帯林では植物の葉が大きく成長するので

自然に習性が変わってしまうのかも知れぬ。

 

それはそうと

ウグイスが渡った後、定着している事実。

留鳥とされているが、実は嘘っぱちにちががいないと

思わせるに十分な真実だ。

島生活が厳しくなったら、また引っ越すのかもしれないし

常に移動のチャンスを狙っている生き様ともとれる。

 

ウグイスは土地土地で鳴き声が微妙に違う。

けれど、ナマリが生まれることよりも、

亜熱帯など冬のない地域に住む、ウグイスの周年の生活や、

冬でも暖かな土地に居るウグイスですらも夏冬で移動する。

事実を目の前にして、留鳥と簡単に決め付けるには

常に移動がダイナミックで、決まった型にハメずぎでは?と

疑念を抱き始めたのである。

 

そこで

とりあえず間近で観察するために口笛を吹き始めた。

下手だ、誰にも聞かせられないが効き目はあった!

普通なら録音したものを流せばよいが

無駄な道具を持っていくほどの余裕はない。

しかもカメラを両手で構えるから、指笛は使えぬ。

 

遠くに居るウグイスは下手でも十分だませると知った。

意外にも簡単なほど3羽くらい集まってくる。

縄張りへの侵入者に化けるわけだ。

道路は縄張り境界になっているらしく、集まりやすいよう。

 

ごく近くまで接近されると見破られる、というか

聴き破られてしまう辛さがある。 下手すぎか・・・

ちなみに南大東ではホーホケキョより、ホーホケホキ↑と

尻上がりに良く鳴くので、ちょっとだけマネしやすい。

 

遠いときは高い声、ときどき変調して歌う。

数メートルまで寄ると、低くドスのきいた声で

こちらを間近からうかがう。

一オクターブ下げ、ホーホーホーホホッで止め、

最後のケキョは使わない。

なので、かなりマネもしやすくなる。

 

鳴きマネだけでなく「鳴き交わし」で

鳥を刺激したのは、これが最初。 ヒマだなぁ。

 

相手に合わせて鳴くと

近くを飛び回って警戒を続けてくれるわけだが

下手さと人間の気配を覚り数分で去っていく。

薄暗い茂みから出ないので撮影もかなわなかった。

 

ウグイスってのは、もっと簡単に撮影でき

スズメの次ぐらいに普通な鳥だと思っていたが

そうねぇ、ビーフンとパスタくらい違うかも。

小鳥ということ以外、ほとんど似てない。

 

横浜に帰って、晩秋の新治市民の森で

初めてウグイスの冬場の居場所を知り

同時に地鳴きとよばれる、繁殖期以外の鳴き方を知る。

ヂャッ・・・ヂャッ、と巨大な舌打ちのような声だ。

 

繁殖期以外でも縄張りはナントナクあるようで

舌打ちを工夫して鳴き交わせるようになった。

茂みに向かって2、3回舌打ちすれば応えが帰ってくる。

 

これがナーンカ楽しい、挫折したロシア語が通じた時と同じか、

それよりずっと嬉しいかもしれない。

 

同じようなヤブの中にすむホオジロ科の鳥は

細い舌打ちみたいな声で鳴くので、次々にマスターできた。

ホオジロ、カシラダカ、アオジなどである。

高く細い舌打ちで、チッ・・・チッ チッと投げかけると

そのうち茂みが騒がしくなって、時折出てくる。

 

鳥撮影は、ルアー釣りと通じている。

最初、ルアーは魚の目の前を泳がせなければ釣れぬ、と

本で読んで信じていたが、実際は集魚力があって

使い方によっては、自分で魚を寄せて釣ることができる。

カンパチをはじめ、水面に魚をおびき寄せて釣る、

99年以来、我が定番の技となった。

 

餌でないモノを使う釣りでは、周囲の好奇の目があって

結構な恥ずかしさを感じるが、開き直って使い続けたとき

イロンナことが見えてくる。

餌釣りよりも、はるか確実に狙いの魚が釣られると

分かってくるのである。

 

鳥も種類によっては、基本的習性がマスターしやすく

わりと簡単に、寄せて観察や撮影ができるのだ。

 

百倍は視力が良いかもしれない鳥の前に

棒立ちでスコープをのぞいている間抜けさに比べたら

口笛の恥ずかしさの方が遥かに意味がある。 と思うが?

せめてシルエットで分かり辛くするなら腰をおとせよ!

ダイバーらの目撃情報にも似た現象が見られ

ダイバーや船を気にしない魚、の限定情報ということだ。

情報には違いないが、ありのままの情報とはいえないだろう。

 

今まで

春先の里山は人出も多く、撮影していなかったが

伊勢の実家周辺にも、アチコチに居ることが分かり

逆に葉が少ない冬の方が、かえって撮影しやすい、

ってこともわかってきた、このごろ。

(ウグイス純正カモフラージュ色)

オスなら、鳴き交わすと陽の当たる場所まで出てくる。

実に話の分かる男である。

 

「う〜めの小枝でウグイスがぁ〜」と歌にあるが

警戒心が強く、本来低い木のしげみに居るウグイスは

そう長々と同じ枝でサエズッてはくれない。

チョコチョコと、人間の視線を避けて移動しながら鳴く。

ウグイスと思われているのは、メジロが多いだろう。

メジロの方が記憶の「うぐいす色」だからウグイスっぽく見える。

人を恐れぬので、梅の蜜を吸いつつ近くまでやって来てしまい

人目につきやすい。

だからといって、メジロは馬鹿にしちゃイケンのだ。

母島の遥か南、南硫黄島まで渡った覇者、海の果て?を極め

生き場を広げるタクマシさには恐れ入る。

 

話をもどし

ウグイスもハシナガウグイスも、オス・メスは別種?と思うほど

メスが二まわり小さい。 半分くらい?と思うほど。

ボリューム感を例えるならば、高級すし店のシャリの大きさなみ?

人間なら女性が小学生くらいのなりなので、ロリロリカップル?!

普通はメスが大きい生き物が多い中、この小ささは

イタチやヘビが多い茂みで役立つのではなかろうか。

軽く小さな所帯(巣)は天敵を避けるのに好適だろう。

メスは茂みから出ることはなく、ほとんど知られない。

メスは縄張り意識が弱いのか、鳴きマネでは寄らないので

見えたと同時にすばしこく逃げ去り、さすがに撮影できない。

 

例外的に、小笠原のハシナガウグイスは好奇心旺盛。

1m以内まで寄ってきて、手が届きそうになる。

オスは警戒の声でなく、目の前で普通にホーホケキョと鳴く。

当然だがホーホケキョには、だいぶ母島ナマリがある。

いわゆる谷渡りは警戒の声だが、小笠原では警戒されない。

ちなみに南方系のウグイスは、写真のとおり

白い毛の下にある黒い羽毛が見えるミスボラシさが特徴。

オスは特にノドの両脇の毛が逆立っている事が多い。

 

1.5m以内、レンズの限界を超えて近づいてくるので

後ずさりしながら撮影することになるとは思わなかった。

(おそらくメス、全長シャリ2個分未満)

もちろん、鳴きマネ不要。

母島ではオスよりメスの方が大胆。 撮影は辛いけど。

日本全国、このくらい鳥が警戒しないと良いのだが

犬もネコもイタチもヘビも居て天敵だらけでは仕方ない。

しかも、鳥といえば捕って食べるか飼うか・・・人間の所業も

並大抵の事では済まされなかったろうから、自業自得か。

 

あちこちのウグイスにお相手してもらったお陰をもって

徳之島でも、アカショウビンやリュウキュウコノハズク

リュウキュウサンコウチョウ、リュウキュウキビタキなんかと

鳴き交わせるようになってきた。

ドリトル先生並みに話すのは無理だろうが・・・

一歩手前くらいなら、なれそうな気もしなくもない今日この頃。


次回予告

撮影の天敵?光なき宵闇。

アマミノクロウサギや夜の動物撮影へ。

放浪中にアップできるのか???



追伸

無事、裏技・引越しパック第一弾2コンテナを出荷。

集荷にきたニーちゃんに確認したら、コンテナ数の制限はないという。

おっさん!港北区担当のM山さん!話が違うぞ!!

 

逆に

あれ?まだ2個目のコンテナがスカスカなんですけど、

もう荷物はないですか?と問われた。

 

通常3コンテナまでのようだが、総量は2コンテナで入るまでに

我が家財資財は減ってしまっていたのである。

第一弾の出荷量は1.2コンテナ程度だと思う。

 

ちなみに、島では3コンテナを積載するトラックが路地に入れず

2コンテナまでしか一度に配送できないようだ。

 

4コンテナに入るかどうか・・・と言われて夜も眠れず減らしに減らして

最後にまだ動くパソコンも一台つぶして資源ごみとなった。

最後のコンテナは、当然1個でスカスカなワケだから

今あるものはなるべく積もうと思う。

空の衣装ケースとか、お気に入りのカーテンとか・・・

もう残っているのはほとんど廃棄してもいいものばかりだが。

 

気分的には余裕ができたが、なぜか僕のウツ・ライト最大の苦手は

「予定」であるらしい。 予定は必ず自分のためでなく人のそれと絡む。

その人自身には、むしろ好意を抱いていても結果は同じ。

小さいときから未来に決め事を作るのがヒドク嫌いで

習い物も、キャンプなどのイベントもダメ、そういう事だったか。

不安と予測不能な様々な事柄がココロに流れ込んできて

乗り越える前に避け続けて来たのかも知れない。

オリコウサンで居るために。

 

今はただ抽象的な不安と、無食欲やら吐き気やら不眠やらが

総出で体にまとわりついて、多分4月の入居までは続きそうだ。

やれやれ、もともと性分だけに値が深そう。

 

とはいえ、まーこりゃ気楽にいくしかないだろう。

せっかく長男ソウルを返上しているんだから。


ではまた